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母がいない間だけ、幼馴染が俺の料理を食べに来る  作者: bonta
変えれぬ関係、変わる想い

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普通じゃない関係性?

「カスタードもある程度冷めたな。キウイでも挟んで見るか」

 二人に作ったパンケーキを食べさせながら、氷水に触れさせたカスタードを混ぜながら冷やしていると、粗熱がとれ、滑らかなカスタードが完成した。レンジで作った簡易版だが、即席としては充分だろう。


「え、果物まであるの?」

「田舎者はご近所付き合いで貰えたりすんだよ」

 焦げたパンケーキにカスタードを塗り、いちょう切りにしたキウイフルーツを乗せて挟んでみる。


「これである程度食えるもんになっただろ」

 森下が焼き上げた物なので、まずは森下に毒味させてみる。

「食えるもんっていうか、もはや別物じゃない?すっごい美味しそうなんだけど?」

 別物と言われると、確かに、見た目としてはどちらかというとフルーツサンドに近いか?その見た目からか、森下も手掴みでパンケーキ(?)にかぶりついた。


「お、美味しい⋯⋯!」

「そりゃ良かったな」

 まぁ多少の手間は掛かったが、美味く食べれる事に越したことはないだろう。

 少しだけ手を付けてみると、カスタードの甘さとキウイフルーツの酸味の中に、少しの苦味を感じる。なるほど、これは悪くないな。


「キウイの酸味が良いね。いくらでも食べられそう」

 夏希の口にも合ったようで、三人で食べた事もあってか森下作の焦げパンはすぐになくなった。


「美味しかった⋯⋯美味しかったんだけどさぁ!」

 そうして一瞬で焦げパンを食べきった割には、森下は何か不服そうだ。これ以上に何を求めてるんだこいつは。


「欲を言えば、さっきのパンケーキに付けて食べたかった⋯⋯!」

 本当にただの欲張りじゃねえか。なんだこいつ。


「⋯⋯まぁ確かに、美味しそうではあるよね」

 夏希も夏希で、少し魅力を感じているようだった。


「⋯⋯はぁ。カスタード余ってるし、もう一回焼けば良いだろ」

 溜め息が出るが、食べたいと言ってくれている事には悪い気分はしないし、この状況で断る理由もない。


「え?マジで!?作ってくれるの!?」

「作るのは良いけど、本当に食えるのか?何枚目だよ」

 俺が見てる限りでも、一人三枚は食べている。甘ったるい物ばかり食べていたら胃もたれしそうだ。


「フッ、甘いねワッキー!女の子にとっちゃ甘い物なんていくらでも食べられるんだよ!」

「太るぞ」

「それは禁句でしょうがぁ!」

「そりゃ悪かったな」

 森下を雑にあしらいながらも、メレンゲを泡立てようと準備をする。


「脇阪くん、私も手伝ってもいい?」

 そのタイミングでの夏希の申し出、コイツの事だから、食べるだけというのも申し訳ない、なんて考えているんだろう。


「分かった、じゃあ頼むわ」

 拒否する理由もないので、カスタードクリームを冷やすために使っていた氷水をボウルに当てて、夏希に卵白を泡立ててもらう事にする。


「ある程度泡立ったら、何回かに分けて砂糖を入れる。⋯⋯そうだな、それくらいで一回入れてみるか」

 白く泡立ったあたりで砂糖を入れて、再度泡立てる。難しいようで、メレンゲ作りはハンドミキサーがあれば案外作れるのだ。


「こんな感じでいいの?」

「そんな感じだ、あと二回くらい繰り返してもったりしてきたら完成だな」

「⋯⋯もったり?」

 ⋯⋯分かんないよなぁ。料理ってレシピ見ても意味分かんない時あるんだよな。

 

「今回は見てるから大丈夫だ、出来たらこっちの生地と合わせるぞ」

 メレンゲが出来たとしても、それに入れる生地がなくては意味がないので、手早く別生地の準備を進める。こちらの生地は混ぜるだけなので簡単なものだ。


「いやぁ⋯⋯共同作業ですなぁ⋯⋯微笑ましくなっちゃうね」

 森下はそんな状況を見てニヤついている。微笑ましい物を見ている表情には見えないが?コイツにも手伝わせ⋯⋯いや、惨事になりそうだな。


「ねぇ今なんか失礼な事考えなかった?」

「気の所為だ」

 砂糖と塩を間違えそうなレベルだなんて思ってないさ。


「そういやさぁ、夏希はどれくらいここでご飯食べてるの?」

「⋯⋯え?」

 手持ち無沙汰なのだろう、暇を持て余した森下の質問に夏希がたじろいでいる。


「な、なんの事?」

 ⋯⋯完全に目が泳いでいる。それで隠せるわけないだろ。


「隠さなくたって良いでしょ。脇阪くんも白状してるよ?ほれほれ話してみようよ」

「⋯⋯部活が終わった後に、脇阪くんがまだ居たらかな」

 夏希が諦めたように、質問に答える。秘密にしておきたい気持ちも分かるが、バレるのも時間の問題だし、話せる内に話しておいても良いだろう。



「へぇー、じゃあそんなに頻度は多くないんだ」

「? なんでそう思うの?」

「いや、だって陸上部の練習終わってからじゃ、かなり遅くなるじゃん。それまで脇阪くん何してるのよ」

 森下の言葉に、夏希の手が止まる。まぁ確かに、夏希が来るまで暇になる事は多いな。



「⋯⋯え?何その間」

「⋯⋯多いと、週に四回はあるけど」

「はあ!?ほぼ毎日じゃん!」

 森下が随分と驚いているが、多い週は、だ。平均すれば週に三日くらいだと思う。


「いや、脇阪くんも学校で夕飯食べてるからで⋯⋯」 「だからって、そんなに長い間待ってる事おかしいとは思わないの!?」

 待ってるなんて事はない。⋯⋯まぁ、食べる時間を合わせている事を、待ってると言えなくもないが。


「そう、だよね。迷惑かけてるよね⋯⋯」

「違うわ!私が言いたいのはそうじゃなくてさぁ!」

「森下。声がデカい」

 謎に荒ぶっている森下と、変な罪悪感を抱いている夏希。その両方を宥めるために会話の間に割って入る。


「脇阪くん!私毎日夏希とご飯食べてるなんて聞いてないよ!?」

 何聞いてたんだコイツ。毎日ではないだろ。


「毎日じゃない、タイミングが合う時だけだ」

「タイミングって何!?完全に夏希の事待ってるよね!?」

「部活動の一貫だ」

 ⋯⋯と、言えなくもないと思わないか?

「無理がある!その言い訳は無理があるよ!」

 いや、そこまで言い訳なんてしてるつもりはないんだが。


「やかましい。騒がしくするなら作ってやらんそ」 「えぇ⋯⋯まぁこれ以上は何にも言わないけどさぁ⋯⋯なんかおかしいとは思わないの?」

「? 何が?」

 学校で食事をする事に変わりはないのだから、自分の夕飯の時間を夏希が部活動を終えたタイミングに合わせるだけだ。まぁ流石に真夜中になるのは困るが。


「⋯⋯もういいや、なんか私が間違ってる気がしてきた。⋯⋯いや私間違ってないでしょ」

 そう言いながらも、森下に随分と呆れた表情をされている。馬鹿にされてるようでちょっと腹立つな。


「脇阪くん、こんな感じで大丈夫?」

 だが、今は料理に集中することにする。メレンゲは繊細な物なので、手際の良さが大事なのだ。


「そうだな、良い感じだ。じゃあこっちの生地と合わせて⋯⋯焼いてみるか?」

 せっかくの機会だ。夏希の経験値を増やすのも悪くないだろうと、焼きの工程も頼んでみる事にする。


「⋯⋯失敗するかも」

「失敗したら、また作れば良いだけだろ?何事も」

「挑戦、だよね?じゃあ失敗したら脇阪くんが食べてね」

 言うようになったな、コイツ。


「別に良いぞ?前田さんの食べる分が減るだけだからな」

「⋯⋯失敗しないように頑張る」

 軽口を交わしながら料理をしていると、少しは以前のように話せるようになった気がする。目の前に共通の目的があれば、多少の気まずさは誤魔化せるものだな。



「はぁ⋯⋯夏希愛されすぎでしょ、これ⋯⋯」

「なんか言ったか?」

「なんでもねーよリア充ども!」

 そんな俺達を見ての琴音の呟きはあまりに小さく、俺達の耳に届く事は無かった。

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