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母がいない間だけ、幼馴染が俺の料理を食べに来る  作者: bonta
近いようで、遠い距離

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何故か始まる下校イベント

 ⋯⋯何がどうしてこうなってる!?


「考え事か?足止まってるぞ」

「な、なんでもない!靴ひも外れちゃってさー!」

 一旦靴紐を直すふりをしてその場に屈む。実際の所、今私はかなりのパニックに陥っている。


(なんで私が脇阪くんと帰ってんの!?こういうイベントが起きるのは夏希の方でしょうが!)

 そう、何故か脇阪くんに家まで送ってもらう流れになってしまっているのだ!


(今の状況、恋愛漫画なら唐突に挟まってくる当て馬クソキャラじゃん!)

 いやいや!私は脇阪くんの事好きとかじゃないけどね!?あれか?私達が一緒にいるのを見て夏希が嫉妬するイベントが発生するやつか?⋯⋯夏希の家逆方向だわちくしょう!


(⋯⋯いや!これくらい良くある事でしょ!優男なら家まで送るのなんて普通なんだきっと!)

 夜中になってしまった女の子を家まで送るのなんて、ドラマとか見てたら普通にあることだ!私は人生初めてだけども!


「よし結べた!待たせてごめん⋯⋯って、あれ?」

 考えをまとめてから、靴紐をしっかりと結び直し立ち上がると、手元にあった筈の鞄がなかった。


「そうか、じゃあ行くぞ」

 いや、あった。目の前の彼が持っている。


「ちょっ、何私の鞄取ってるのさ!泥棒?」


「お前荷物入れすぎだろ、重いんだけど」

 それは重いだろう。いつもは学校に置いておく教科書類が勉強のために入っている。⋯⋯本当に家で勉強するか分からないけど。


「なら持たなくても良いって!」

「なんだ?俺に持たれてると問題あるもんでも入ってるのか?」

「いや、そうじゃないけどさぁ⋯⋯」

「じゃあ別に良いだろ?限界になったら変わってもらうけどな」

 ⋯⋯この男、当たり前のように優しくしてくる!なんて危険な男なんだ!


「⋯⋯本当に、疲れてきたら変わるからね!」

 そんな扱いされたら、ペース狂っちゃうじゃないか!


「森下の家はこっから遠いのか?」

「私電車通学。だから駅まで送ってくれればいいよ」

 一旦は色々諦めて、素直に送ってもらう事にしよう。別に変な事は起きないでしょ多分。


「高校から駅まで遠くないか?歩きだと結構かかるぞ?」

「いつもは駅からは自転車なんだけどね、ほら、天気予報で初雪降るかもー、って言ってたから、朝は送ってもらったんだよ」

「なるほど、まあ結局降らなかったけどな」

 話しながらも出来るだけ、距離を置いて歩こうとしてみる。しかし、半歩ずらして歩こうとしても、私の努力を無視するように歩幅を合わせてくる。肩が触れるほどの距離ではないけど、それでも結構近い。


「そ、そのおかげで、今お姫様扱いされてるんだけどね!」

「随分お転婆なお姫様な事で」

 私の今の全力のボケに対しての反応。違う、そうじゃないでしょ!「お姫様ってガラでもないだろ」とか言ってよ!?


「今日は随分と賑やかだったな。たまにはこういうのも悪くない」

 そして当然のように車道側を歩くな!私は彼女か!?


「脇阪くんの事が分かんなくなってきたんだけど」

「そんなもんだ。人の気持ちなんて分からないもんだろ」

 あくまでも、いつも通りの延長にも感じる優しさ。


『脇阪くんって、案外誰にでもあんな感じだよ?』

 そんな私への対応を見るに、以前に夏希が言った通り、本当に彼は誰に対してもこのような対応をするのだろうか?


「こんな事誰にでもしてたら、勘違いしちゃうよ?」

「誰にでもはしないだろ」

 うわぁ⋯⋯もはや頭の中がグチャグチャだぁ。その言い方は卑怯でしょ?え?もしかして脇阪くんって私の事好きなの?


「お前が前田さんの友達じゃなかったらしてない」

 あ、そっちね、良かったような残念なような⋯⋯


(ちょっと待って!今のなし!)

 残念って、何を考えてるんだ私は!一瞬思考の中に混じった雑念を振り払う。私は夏希の恋路を応援するだけの者、その私が意味不明にときめいてどうするのだ!?


「夏希の友達じゃなかったら、普通の友達の私にはこんな扱いしないってことー?随分夏希に甘いんだね」

 気分を落ち着かせるためにも、精一杯茶化してみる。


「は?俺とお前友達だったの?」

 随分な冗談で返された。と思ったんだけど、本当に驚いている表情をしている。


「え、友達じゃなかったらなんだと思ってたの!?」

「え⋯⋯友達の友達?」

「すっごい距離あるね!?」

 さっきまでのドキドキした気持ちはなんだったのか!ほぼ他人扱いされた事には普通に腹が立つ。


「あー⋯⋯悪かったって」

「マジで無理、傷ついたわー」

「そう言われてもな⋯⋯友達って言うほど話した事ないだろ俺達」

 ⋯⋯そう言われると、そうかもしれない。


「一緒に遊んだ覚えもないしな」

 遊ぶ、か。脇阪くんの友達の基準がそこら辺なら、確かに私と彼は友達ではないのかもしれない。


「脇阪くん、家でゲームはする?」

 だけど、ここまで繋がりが出来た彼に、友達ですらないと言われないのは、なんとなく悔しかった。


「人並みにはするんじゃないか?ソシャゲはしないけど」

「ゲーセンには行く?」

「格闘ゲームなら、嗜む程度には」

 時間を見る。⋯⋯今からなら、一時間程度ならいけるだろう。


「なら今から!友達として遊ぶついでに分からせてあげるよ!勉学を疎かにした私の格ゲー力ってやつを!」

「お前それ言ってて悲しくならないか? というか今からは流石に⋯⋯」

「逃げんの?」

「⋯⋯あ?逃げるわけないだろ。負けて泣いても知らんぞ?」

 フッ、所詮はゲーマー、煽れば乗ってくる悲しき生き物だ。さて、私の心を掻き乱した罰だ。ボコボコにしてあげるよ!

 そうして駅近くのゲームセンターに入る。⋯⋯まさか私が憧れてた放課後ゲーセンデートが、こんなタイミングで叶うとは思わなかった。


「脇阪さんや、夏希の方は一人で帰したみたいだけどそこの所は?」

「まだ明るかったし、森下の事を頼まれたから仕方なくな」

「本当の所は?」

「なんか空気が気まずかったからだ」

「うへぇ⋯⋯脇阪くんって案外ヘタレ?って、知ってたわー」

「ヘタレで結構。襲われる心配ないだろ?」

「その返しはちょっとキモい」

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