テスト期間は唐突に
テスト期間を向かえた月曜日、普段通りの時間に登校する。ドアを開けると、いつもよりも少しだけ静かな教室に、どことなくひりつきを感じる。
といっても、まだテストまで一週間はあるので、いつも通り携帯を弄っている生徒も多いけれど。
「もう十二月に入る⋯⋯今年こそは彼女作って⋯⋯」
「抜けがけは許さねぇぞ?俺達は仲間だよなぁ?」
⋯⋯テスト勉強とは関係ない話で、殺伐としている所もあるみたいだ。
「あ、おはよー夏希、ちゃんと勉強してる?」
自分の席に着くと、友人の琴音が私に気づいて声をかけてくれた。
「おはよ。勉強はあんまりかな。テスト期間の事忘れてた」
「そんな事ある!?夏希ってやっぱ結構お馬鹿さん?」
そこまで言わなくても良いんじゃないかな。⋯⋯別の事で頭が一杯で、テスト期間の事を忘れていた事は秘密にしておこう。
それにしても、
「ちゃんと勉強してるんだ、偉いね」
普段は「勉強なんて、青春には必要ない!」なんて豪語していた琴音ですら、朝から教科書を開いている。
「夏希、こういうのは姿勢が大事なんだよ。勉強しているように先生に見せる事が評価に繋がるんだよ!」
自信たっぷりの表情で、琴音はそう語る。それはテストの点数というより、内申点狙いじゃない?
「つまり、教科書は開いてるだけで、何も考えてないんだろ?」
後ろの席の脇阪くんが、中々に辛辣な言葉を浴びせる。手元には授業で使っているであろうノートと、蛍光ペンで要所がマーキングされている教科書。明らかに、琴音のように本を開いているだけではなさそうだった。
「正解!こんな文字ばっかりの本、私は読めないね!挿絵に美少女用意しな!」
何故そこまで胸を張って言えるんだろう。琴音のそういう所は真似しても良いかもしれない。
「前田さん、友達は選んだ方が良いぞ」
真似すると脇阪くんに嫌われるらしい。
「失礼な!何事も形からでしょうが!」
「それは意欲がある奴が言う台詞なんだよ。少しは中身を頭に入れるんだな」
「なにさちょっと頭が良いくらいで!」
「出来ないよりは、出来た方が良いだろ」
ギャーギャーと琴音と脇阪くんが口論になっている。この二人って、喧嘩する程仲良かったんだ。
「第一、私脇阪くんに話しかけてませーん!夏希との楽しい会話に割り込まないでくださーい!」
「そりゃ悪かったな、頑張って赤点回避しろよ」
そうして、喧嘩に一旦の区切りがついたみたいだ。⋯⋯というか喧嘩だったのかな?
「夏希、今回ばっかりは脇阪くんは敵だよ!私達は出来ない者同士で仲を深めていこう!」
「ええ⋯⋯?」
勝手に仲間判定するの辞めて欲しいんだけど⋯⋯
「脇阪くんに見せてやろう!努力すれば、凡人が天才を超える事が出来るって事を!」
いや、脇阪くんって人より頑張ってるってだけで、天才とかじゃないと思うんだけど⋯⋯
「そうか勝手に頑張れ。応援はしといてやるよ」
琴音の言葉に少しの引っかかりを感じたけど、当の脇阪くんの方は、心底どうでもよさそうだった。
「そうと決まれば、放課後一緒に勉強しよう!」
「良いけど⋯⋯私、あんまり役に立てないよ?」
こうして放課後の勉強会が決まった。どうせ家に帰っても何も捗らないし、琴音と一緒にいられるのは、少しありがたかった。
「ワッキーおはよー、ノート貸して」
「毎回だなお前⋯⋯ちゃんと返せよ?」
横目で見ると、ため息をつきながらも、上原くんにノートを渡している。素直に助けを求めれば、私にもノート貸してくれるかな?
「サンキュー。これで今回も大丈夫そうだわ!」
「お前はもうちょっと自分でなんとかしてみたらどうだ?」
だけど、軽く言い合いをしている二人の会話を聞いて、
(いつも、迷惑かけてるし、今回は辞めとこう)
そう言い聞かせて、今回は脇阪くんには頼らないと決める。たまには自分の力でなんとかしないと、駄目だと思ったから。




