表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
母がいない間だけ、幼馴染が俺の料理を食べに来る  作者: bonta
変えれぬ関係、変わる想い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/108

貴女の幸せを願うなら

「知ってるか前田さん。馬鹿は風邪にならないんじゃなくて、風邪になっても気づかないという説があるんだ」

「流石に酷くない!?ッゲホッ!」

 夏希は大きめの声を出したかと思えば、喉に負担がかかったのか咳込んでいる。俺の言葉に反応をするのはいいが、やっぱ自分の調子が分からないのでは?


「⋯⋯絶対失礼な事考えてるでしょ」

「さぁ?どうだかな?」

「うぅ⋯⋯怒らないって言ってたのに⋯⋯」

「怒ってはない。呆れてはいるけどな」

 まぁ、正直言いたい事は色々ある。なんでこの状態で外に出た?というか雪かきした?大人しくする事が何故出来なかった?


「ハァ⋯⋯」

 それら全てを、溜め息一つに押し込める。


「倒れたらどうするつもりだったんだよ」

 一人での雪かきというのは思っているよりも危険だ。それを病人がやるというのは流石に駄目だろう。


「でも、雪積もるし……ケホッ」

「まぁ積もるな。でも明日でも良かっただろ」

「明日は⋯⋯駄目だよ」

 咳き込みながらも、夏希は首を横に振る。


「一人でもちゃんと出来てるって、安心してほしいから」

「⋯⋯はぁ?意味が分からん」

 夏希の言葉に、少しだけ語気が強くなる。何だそれは?彼氏か何か知らんが、そこまで夏希に自立する事を求めるのか?というかこの状況でも見にも来ないとか、そいつは何をやってるんだ?


(俺なら、前田さんに無理なんてさせないのに)

 手に力がこもる。こんな感情になった事は今までなかった。顔も分からない相手に複雑な感情が入り混じる。


 そんな俺の様子を見て、夏希が少しだけ肩を縮こませた。

「……ごめんなさい。そうだよね、意味分かんないよね」

 しゅん、とした声。

 その様子を見ていると怒る気力も失せる。というか病人が目の前にいるのに何をやっているんだ俺は。


「……悪い、怒らないって言ったのにな」

 夏希はずっと一人だったのだ。母親は帰って来ていない。父親とも離れている。そんな状況なら、一人で何とかしようとするのは当然だろう。


 風邪を引いていても、雪が降ったとしても、誰もいない。誰かがやらなければいけないのなら、夏希がやるしかないのだろう。


「……一旦寝ろ」

 だが、そんな時に自分を頼ってもらえなかったという事実が、少しだけ気になった。


「でも⋯⋯」

「大丈夫だから、寝ろ」

 説得力はないだろうが、まずは体力を回復させる事が先決だろう。


「うん……分かった」

 俺の言葉に素直に頷いてはくれた。それでもどこか不安そうだった。


 ――だからだろうか。

「大丈夫だ」

 気付けば自然と頭に手を置いていた。子供をあやす様に、髪から額にかけて優しく撫でる。


「……」

「明日、大事なんだろ」

 クリスマスイブ。おそらくだが、好きな人と会う日。そのための練習に、俺は付き合ったのだから。


「今日中に治しとかないと後悔するぞ」

「⋯⋯治るかな?」

「治るさ、無茶しなけりゃな。だからとりあえず目瞑れ」

「脇阪くんが言うなら、間違いないね」

 残念ながら人の病気を治すような力はないが、それでも俺の言葉に少しだけ安心したのか、ゆっくりと目を閉じる。

 そのまま黙って撫でていると、規則的な寝息が聞こえてくるまで、それほど時間は掛からなかった。


(⋯⋯こうやって寝顔見るのは二度目だな)

 以前起きたビデオ通話事件の時のように、目の前に夏希の寝顔がある。画面越しではない、生の寝顔。⋯⋯変な気を起こさないようにと、直ぐに目を逸らす。


(⋯⋯さてと、一旦出るか)

 完全に夏希が眠った事を確認してから、俺は静かに立ち上がる。 窓の外では相変わらず雪が降り続いていた。

 自分の家の前も酷い事になっているだろう。午後勤の母が帰ってくる前に、自宅も何とかしておきたいが⋯⋯


(その前に、まずはこっちを済ませるか)

 玄関先に放り出されたスコップを思い出す、確か近くにはスノーダンプもあっただろう。


「大丈夫だから、って言ったからな」

 そう呟いて、静かに夏希の部屋を後にした。


「俺にここまでの事をさせたんだから、成功してもらわないと今度は怒るぞ?」

 そうして眠っている夏希を一瞥してから、部屋を出る。


(正直、あまり気乗りはしないんだけどな)

 俺が今日色々と手伝って、夏希の想い人に感謝されたとしても、俺としては何も面白くはないだろう。


 ⋯⋯だが、俺が夏希の想い人にどんな感情を持とうが、それは夏希にとっては関係無いことだ。


(今回はあくまでも、困ってる幼馴染の手助けをするだけだ)

 そう言い聞かせて外に出る。本当に夏希の事が好きだと思うなら、彼女が幸せな事が、一番大事なのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
その「2人で過ごす相手」が彼氏なのは間違いで 本当は主人公なのをサプライズで隠してる、もしくは彼女の親だと予想してたけど もしそのどちらかなら主人公の親が「ドンマイ」って笑ったりしないだろうし 友達の…
2026/06/12 08:19 タイヤグミ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ