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目を覚ますたび、世界が過去へ巻き戻っていた。14日目、僕は「地球誕生」の秘密を知った。  作者: 不可思議ラボ


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第5話 恐竜が絶滅する本当の理由

「あの子が

歴史を変えている?」

僕は銀色の機械を

見つめた。

洞窟の奥には

青い光が満ちていた。

人間の形をした機械は

微動だにしない。

「少女はどこにいる」

僕が尋ねると

機械の胸に

文字が浮かんだ。

『保護対象 生存中』

「だったら

会わせてくれ」

『現在

接触は推奨されません』

「どうして?」

『少女の存在が

この時代の進行に

影響を与えています』

僕は意味が

分からなかった。

たった一人の子供が

六千六百万年前の

地球を変える?

そんなことが

あるはずない。

「何をしたんだ」

機械は右手を上げた。

すると

洞窟の壁が

透明な画面に変わった。

映し出されたのは

広大な森だった。

巨大な恐竜たちが

湖の周囲を歩いている。

その中に

小さな人影があった。

「いた!」

あの女の子だった。

彼女は岩の上に座り

何かを抱いていた。

画面が拡大する。

小さな恐竜だった。

まだ子供らしい。

片脚に

傷を負っていた。

女の子は

布を巻いていた。

「助けたのか……」

僕は思わず

つぶやいた。

機械が答えた。

『本来

その個体は

三時間前に死亡する

予定でした』

「予定?」

『死亡しなかったことで

周辺の行動予測に

変化が発生しました』

画面に

無数の線が現れた。

一つの線が

何十本にも分かれる。

さらにその先で

数千本に増えていく。

『小さな変更は

未来の分岐を生みます』

僕は画面を見つめた。

「でも

恐竜一頭を助けただけだ」

『その一頭が

将来の群れの移動を

変える可能性があります』

「それが

何だっていうんだ」

機械は

しばらく沈黙した。

そして

新しい映像を映した。

空に

巨大な光があった。

地平線が

白く染まっている。

次の瞬間

大地が吹き飛んだ。

巨大な衝撃波が

森をなぎ倒していく。

僕は息をのんだ。

「隕石……」

『六千六百万年前』

『大規模衝突事象』

画面には

地球へ接近する

巨大な小惑星が

映し出されていた。

僕は知っていた。

恐竜絶滅の

大きな原因とされる

あの衝突だ。

「もうすぐ

落ちてくるのか?」

『衝突予定まで

四十一時間』

僕は言葉を失った。

あと二日もない。

この森も

湖も

恐竜たちも

大きな災厄に

巻き込まれる。

「少女を

ここから出してくれ」

『転送には

観測者の承認が必要です』

「僕が承認する」

『権限が不足しています』

また同じ答えだった。

僕は歯を食いしばった。

「じゃあ

何のために

僕をここへ呼んだ!」

機械の目が

青く光った。

『あなたの判断を

観測するためです』

僕は動きを止めた。

「判断?」

『あなたは

第一地点で

自分より少女を

優先しました』

「当たり前だろ」

『しかし

その行動は

世界の安定性を

低下させました』

僕は首を振った。

「人を助けたことが

間違いだって

言いたいのか」

『正誤は

判定していません』

「だったら

何を見てるんだ」

機械は答えた。

『選択の結果です』

その言葉に

背筋が冷たくなった。

江戸の町も

恐竜の世界も

僕の行動を

試すための場所なのか。

「少女を助ける」

僕は言った。

「どんな結果に

なったとしても」

機械は

静かに道を開けた。

洞窟の奥に

青い扉が現れた。

『保護対象への

移動経路を開放』

「最初から

行けたんじゃないか」

『あなたの選択を

待っていました』

僕は何も言わず

扉をくぐった。

*

扉の向こうは

巨大な湖のほとりだった。

湿った風が

顔に当たる。

遠くには

首の長い恐竜が

群れを作っていた。

僕は岩場を走った。

「あの子は……」

さっきの映像と

同じ場所を探す。

だが

岩の上には

誰もいなかった。

代わりに

血のついた布が

落ちていた。

僕は拾い上げた。

少女が恐竜に巻いた

あの布だった。

「どこへ行った……」

そのとき

茂みから

小さな鳴き声がした。

振り向くと

子供の恐竜がいた。

片脚に

布の切れ端が

巻きついている。

僕を見るなり

後ずさった。

「大丈夫だ」

僕はゆっくり

手を伸ばした。

恐竜は逃げなかった。

その首には

小さな金属片が

ぶら下がっていた。

七本の線。

江戸の老人が

持っていたものと

同じ模様だった。

「どうして

お前が……」

僕が触れると

金属片が光った。

そこから

少女の声が流れた。

『お兄ちゃんへ』

僕は息を止めた。

『この子を

助けてあげて』

『私がいなくなっても

一人にしないで』

「いなくなる?」

僕は周囲を見回した。

『それから

あの銀色の人の

言うことを

全部信じちゃだめ』

音声が途切れた。

僕は金属片を

握りしめた。

「何を知ったんだ……」

その瞬間

スマートフォンが震えた。

画面には

赤い文字が浮かんでいた。

『観測対象に異常』

『衝突予定時刻が変動』

僕は目を疑った。

『残り四十一時間』

その数字が

急速に減り始めた。

四十時間。

三十時間。

二十時間。

そして

『残り六時間』

「何だよ……」

空を見上げた。

雲の向こうに

赤い点が見えた。

まだ昼間なのに

はっきりと

輝いている。

「まさか

もう来てるのか」

僕は洞窟へ戻ろうとした。

だが

来た道が消えていた。

そこには

切り立った崖しかない。

僕は立ち尽くした。

背後で

大きな足音がした。

振り向くと

巨大な肉食恐竜が

森から現れた。

洞窟で僕を襲った

あの恐竜だった。

小さな恐竜が

僕の足元に隠れた。

「またお前か……」

肉食恐竜は

ゆっくり近づいてきた。

逃げ道は

湖しかなかった。

僕は子供の恐竜を

抱き上げた。

重かった。

だが

置いていけなかった。

一歩ずつ

水辺へ下がる。

そのとき

森の奥から

鋭い音が響いた。

ピィィィッ。

肉食恐竜が

突然立ち止まった。

頭を左右に振り

苦しそうに鳴いた。

僕は音の方を見た。

木々の間に

女の子が立っていた。

「あっ!」

僕は叫んだ。

「こっちへ来るな!」

だが彼女は

動かなかった。

手には

銀色の筒を

握っていた。

筒の先から

青い光が伸びている。

肉食恐竜は

その光を避けるように

森へ逃げていった。

僕は駆け寄った。

「無事だったのか!」

女の子は

僕を見上げた。

「お兄ちゃん」

「探したんだぞ」

彼女は笑わなかった。

「時間がないの」

「分かってる。

隕石が落ちてくる」

女の子は

首を横に振った。

「違うよ」

「何が?」

「隕石は

まだ落ちない」

僕は空を見た。

赤い点は

さっきより大きくなっていた。

「でも

あれが……」

女の子は

銀色の筒を差し出した。

「これを見て」

筒の側面には

小さな画面があった。

そこに

二つの地球が

映っていた。

一つは

僕たちがいる地球。

もう一つは

恐竜が生き続けている

別の地球だった。

「どういうこと?」

女の子が言った。

「この世界は

二つに分かれたの」

僕は息をのんだ。

「二つ?」

「私が

あの子を助けたから」

女の子は

小さな恐竜を見た。

「死ぬはずだった命が

生き残ったでしょ」

「それだけで?」

「それだけじゃない」

彼女は空を指さした。

「隕石が落ちる地球と

落ちない地球に

分かれちゃったの」

僕は

言葉を失った。

「じゃあ

あの赤い光は……」

「隕石じゃないよ」

女の子は答えた。

「あれは

もう一つの地球」

僕は空を見上げた。

赤い光が

ゆっくり広がっていく。

確かに

その表面には

雲のような模様が

浮かんでいた。

「二つの地球が

近づいている……?」

女の子はうなずいた。

「このままだと

ぶつかっちゃう」

僕は少女を見た。

「どうすればいい」

彼女は

銀色の筒を握った。

「どっちかの地球を

消さないといけないって」

「誰が言ったんだ」

女の子は

洞窟の方を指さした。

「あの銀色の人」

僕は唇をかんだ。

あの機械は

最初から

このことを

知っていたのか。

そのとき

空に巨大な文字が

浮かび上がった。

『第二地点

分岐異常を確認』

『二つの地球の

統合を開始します』

大地が震えた。

湖の水面が

空へ持ち上がった。

森の木々が

根元から浮き始める。

僕は女の子を抱き寄せた。

「つかまって!」

彼女は僕の腕を握った。

その瞬間

スマートフォンに

最後の警告が現れた。

『統合完了まで

残り十分』

『統合後

一方の地球は消滅』

僕は二つの地球を

見上げた。

どちらにも

生き物がいる。

どちらにも

守るべき命がある。

そして

画面の一番下に

新しい選択肢が

現れていた。

『保存する地球を

選択してください』

僕は指を止めた。

江戸の町では

一人しか救えなかった。

今度は

地球を一つしか

救えないというのか。

そのとき

女の子が

僕の耳元で

小さく言った。

「お兄ちゃん」

「どうした?」

「私ね

知ってるんだ」

「何を?」

彼女は

二つの地球を見上げた。

「本当は

どっちも

消さなくていい方法」

僕は

彼女の顔を見た。

「どういうこと?」

女の子は答えた。

「だって

この地球を作ったのは

お兄ちゃんなんでしょ?」

僕の心臓が

大きく跳ねた。

「誰に聞いた?」

少女は

僕の背後を指さした。

「そこにいる人」

振り返ると

銀色の機械が

立っていた。

だが

その顔はもう

機械ではなかった。

そこにあったのは

僕自身の顔だった。

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