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目を覚ますたび、世界が過去へ巻き戻っていた。14日目、僕は「地球誕生」の秘密を知った。  作者: 不可思議ラボ


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第4話 次に目覚めたのは恐竜の世界

『保存可能人数 一名』

巨大な機械の画面に

その文字が浮かんでいた。

老人。

女の子。

そして僕。

三人のうち

一人しか残せない。

『残り時間 二分五十九秒』

数字が減り始めた。

「早く選べ」

老人が言った。

僕は首を振った。

「選べません」

「このままでは

全員が消える」

女の子が

僕の服を握った。

「お兄ちゃん……」

その手は震えていた。

僕は画面を見た。

三つの名前の下に

小さな文字があった。

『保存対象は

次の観測地点へ転送』

つまり

選ばれなかった二人は

ここに残される。

崩壊する世界に。

「ほかに方法は?」

機械は答えない。

僕は画面に触れた。

その瞬間

別の表示が現れた。

『移動者による

管理権限の要求を検出』

『認証を開始します』

青い光が

僕の全身を包んだ。

『第一観測者の記憶を照合』

頭の奥に

激しい痛みが走った。

見知らぬ映像が

次々に浮かんでくる。

真っ赤な地球。

何もない宇宙。

無数の光る球体。

そして

機械の前に立つ

もう一人の僕。

「何だ……これ」

『認証失敗』

光が消えた。

『記憶欠損を確認』

『通常選択に戻ります』

残り一分四十秒。

老人が僕の肩をつかんだ。

「娘を選んでくれ」

「娘?」

僕は女の子を見た。

「この子は

あなたの娘なんですか」

老人はうなずいた。

「この世界ではな」

僕は言葉を失った。

「三十年前

わしは別の時代から

ここへ来た」

老人は続けた。

「だが帰れなくなった。

ここで暮らし

家族を持った」

「じゃあ

あの子のお母さんは……」

「本当にいた。

作り物などではない」

老人の声が震えた。

「たとえ世界が

誰かに作られたものでも

ここで生きた時間は

本物だった」

女の子が

老人を見上げた。

「おじいちゃん?」

老人は微笑んだ。

「大丈夫じゃ」

その笑顔を見て

僕は決めた。

画面に手を伸ばす。

だが

女の子の名前を

押そうとした瞬間

彼女が僕を止めた。

「だめ」

「どうして?」

「お兄ちゃんが

いなくなっちゃう」

僕はしゃがんだ。

「僕は大丈夫」

「うそ」

女の子は泣いていた。

「さっき

手が消えたもん」

僕は答えられなかった。

『残り時間 三十秒』

機械が警告音を鳴らした。

僕は女の子の名前に

指を重ねた。

『保存対象を確定』

『転送準備完了』

老人が深く頭を下げた。

「ありがとう」

次の瞬間

女の子の体が

青い光に包まれた。

「お兄ちゃん!」

彼女は叫んだ。

「また会える?」

僕は笑った。

「きっと会える」

光が強くなり

女の子の姿が消えた。

画面に文字が現れた。

『保存完了』

『第二観測地点へ転送』

『残り時間 十秒』

僕は老人を見た。

「あなたは?」

老人は静かに笑った。

「わしは

ここに残る」

「でも……」

「この町には

わしの人生がある」

老人は扉の外へ歩いた。

崩れ始めた江戸の町が

その向こうに見える。

「おぬしは

先へ進め」

僕は叫んだ。

「どうやって!」

老人は振り返った。

「眠るのじゃ」

「眠る?」

「おぬしは

眠るたびに

世界を越えるのだろう」

『残り時間 五秒』

床が大きく揺れた。

僕は目を閉じた。

眠れるはずがない。

こんな状況で。

だが

頭の奥から

強烈な眠気が

押し寄せてきた。

老人の声が

遠くなっていく。

「次の世界でも

人を見捨てるな」

『三』

『二』

『一』

僕の意識が

暗闇に沈んだ。

*

最初に感じたのは

湿った土の臭いだった。

次に

生暖かい風。

耳元では

聞いたことのない

鳥のような声が

響いていた。

僕はゆっくりと

目を開けた。

頭上には

巨大な葉が

重なっていた。

木の幹は

信じられないほど太い。

見上げても

先端が見えない。

「ここは……」

僕は起き上がった。

足元には

見たことのない植物が

生い茂っている。

遠くから

地鳴りのような音がした。

ドン。

ドン。

ドン。

一定の間隔で

地面が震えている。

僕は息を止めた。

木々の向こうから

巨大な影が現れた。

長い首。

太い脚。

建物ほどの体。

「まさか……」

巨大な生物が

ゆっくりと

木の葉を食べていた。

恐竜だった。

僕は動けなかった。

図鑑で見た姿より

はるかに大きい。

その背後にも

何頭もの恐竜がいる。

群れで移動しているのだ。

僕は空を見上げた。

雲の形も

太陽の光も

現代と変わらない。

だが

ここに人間の町はない。

車もない。

建物もない。

あるのは

果てしない森だけだった。

「本当に

過去へ来たのか」

僕はポケットを探った。

スマートフォンがあった。

電源ボタンを押す。

今度は

画面が光った。

『第二観測地点』

『約六千六百万年前』

『白亜紀末期』

僕は思わず

声を漏らした。

六千六百万年前。

恐竜が絶滅したと

考えられている時代だ。

画面には

さらに文字が続いた。

『残り移動回数 十二回』

『観測対象を確認中』

そのとき

背後で枝が折れた。

パキッ。

僕は振り向いた。

茂みの奥に

二つの黄色い目が

浮かんでいた。

低いうなり声。

巨大な頭が

ゆっくりと現れる。

鋭い歯が

何本も並んでいた。

「嘘だろ……」

肉食恐竜だった。

僕は後ずさった。

恐竜は

僕の動きに合わせて

頭を傾けた。

そして

大きく口を開けた。

僕は走った。

必死だった。

背後で

木がなぎ倒される。

地面が震える。

振り返る余裕はない。

目の前に

倒木があった。

僕は飛び越えた。

だが着地した瞬間

足を滑らせた。

体が斜面を転がる。

土と葉が

顔にぶつかった。

ようやく止まると

目の前に

暗い洞窟があった。

僕は迷わず

中へ飛び込んだ。

直後

巨大な口が

洞窟の入口に迫った。

歯が岩にぶつかる。

恐竜は

何度も頭を押し込もうとした。

だが

入口が狭すぎた。

やがて

足音が遠ざかった。

僕はその場に

座り込んだ。

全身が震えていた。

「死ぬかと思った……」

呼吸を整えながら

洞窟の奥を見た。

暗闇の中に

青い光があった。

僕はゆっくりと

立ち上がった。

その光には

見覚えがあった。

江戸城の地下で見た

機械と同じ色だった。

洞窟の壁には

七本の線が

刻まれていた。

そして

その下に

日本語が書かれていた。

『第二観測地点』

『地球再現実験』

僕は息をのんだ。

やはりここも

本当の過去ではない。

誰かが作った

もう一つの地球なのだ。

さらに奥へ進むと

小さな足跡があった。

人間のものだった。

しかも

子供の足跡だ。

僕はその場に

しゃがみ込んだ。

足跡の先には

見覚えのある

小さな靴が落ちていた。

江戸の町で

僕が助けた

あの女の子の靴だった。

その瞬間

洞窟の奥から

かすかな声が聞こえた。

「お兄ちゃん……」

僕は顔を上げた。

暗闇の向こうで

何かが動いた。

だが

そこに立っていたのは

女の子ではなかった。

人間の形をした

銀色の機械だった。

機械は僕を見つめ

静かに告げた。

「第二地点へようこそ」

そして

信じられない言葉を

続けた。

「あなたが救った少女は

すでに

六千六百万年前の

歴史を変え始めています」

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