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目を覚ますたび、世界が過去へ巻き戻っていた。14日目、僕は「地球誕生」の秘密を知った。  作者: 久遠寺大安|不可思議ラボ


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12/14

第12話 46億年前に隠された異常

『第一観測者の

原本を検出』

僕は画面を見つめた。

原本。

その言葉が

頭から離れなかった。

「僕が偽物だって

いうのか……」

隣でさくらが

僕の手を握った。

「お兄ちゃんは

お兄ちゃんだよ」

僕は彼女を見た。

小さな手は

温かかった。

「ありがとう」

だが

疑問は消えなかった。

もし本当の僕が

あの塔にいるなら

ここにいる僕は

何なのだろう。

そのとき

足元が激しく揺れた。

ゴゴゴゴゴ。

透明な保護領域に

新しい亀裂が走った。

『生命維持領域

損傷率 三十五%』

僕は黒い塔を見た。

地平線の向こうに

そびえ立っている。

「どうやって

あそこまで行く?」

スマートフォンが光った。

『中央接続塔への

移動経路を生成』

地面に

青い線が現れた。

その線に沿って

透明な通路が

伸びていく。

僕はさくらの手を引いた。

「走ろう!」

「うん!」

僕たちは

通路を駆け出した。

*

外の世界では

巨大な岩石が

空から降り注いでいた。

赤い大地が裂け

溶岩が噴き上がる。

透明な壁の向こうは

地獄のようだった。

「お兄ちゃん!」

さくらが叫んだ。

前方の通路に

亀裂が走っていた。

その下には

真っ赤な溶岩が

流れている。

「止まって!」

僕はさくらを抱き寄せた。

亀裂は

どんどん広がっていく。

『移動経路

維持限界まで

残り四分』

僕は周囲を見た。

逃げ道はない。

そのとき

通路の壁に

七本の線が現れた。

僕は反射的に

手を伸ばした。

青い光が走る。

次の瞬間

足元の通路が

修復され始めた。

「できた……」

スマートフォンが震えた。

『第一観測者の

権限を一部確認』

『記憶照合率

十五%から二十二%』

頭の奥に

見知らぬ映像が流れた。

白い研究室。

巨大な装置。

そして

無数の地球。

その中央に

一人の男がいた。

僕だった。

男は

誰かと話していた。

「これ以上

世界を増やせば

危険です」

女性の声だった。

男は答えた。

「分かっている」

「それでも

続けるんですか?」

「娘が

生きられる世界を

見つけるまでは」

映像が途切れた。

僕は

息を整えた。

「やっぱり

僕が始めたのか」

さくらが

不安そうに尋ねた。

「何か見えた?」

「少しだけ」

僕は答えた。

「でも

まだ全部じゃない」

そのとき

黒い塔の扉が

目の前に現れた。

*

塔の表面は

完全な黒だった。

岩でも

金属でもない。

光を吸い込むような

不思議な材質だった。

高さは

雲の向こうまで

続いている。

扉には

七本の線が

刻まれていた。

僕が近づくと

線が青く光った。

『第一観測者

複製体を確認』

僕は立ち止まった。

「複製体……」

『原本との

接触を許可します』

巨大な扉が

ゆっくり開いた。

中には

白い空間が

広がっていた。

床も壁も

天井も白い。

外の灼熱の世界とは

まるで違っていた。

中央には

巨大な球体が

浮かんでいた。

その中に

無数の地球が

映し出されている。

「こんなものが

地球誕生前から……」

僕がつぶやくと

背後から

声が聞こえた。

「正確には

地球という概念が

生まれる前からだ」

振り向いた。

そこに

一人の男が立っていた。

僕と同じ顔。

同じ身長。

同じ声。

だが

右腕も左腕も

ちゃんとあった。

男は

静かに微笑んだ。

「ようこそ」

「お前が

原本なのか」

男はうなずいた。

「そうだ」

僕は

さくらを背中にかばった。

「何のために

僕を作った?」

男は

巨大な球体を見た。

「僕の代わりに

世界を観測するためだ」

「なぜ

自分で行かない?」

「僕がここを離れると

すべての世界が

停止するからだ」

僕は

息をのんだ。

「どういうことだ」

男は

球体に触れた。

すると

無数の地球が

一斉に光った。

「この塔が

世界の接続を

維持している」

「それと

お前に何の関係が?」

「僕の意識が

装置の中枢に

接続されている」

男は答えた。

「僕が眠れば

世界も眠る」

「僕が死ねば

世界も消える」

僕は

男を見つめた。

「だったら

なぜ僕を

旅させている?」

男は

少しだけ

表情を変えた。

「君に

答えを見つけて

ほしかったからだ」

「何の答えだ」

「娘を救いながら

世界を守る方法だ」

僕は

さくらを見た。

彼女は

男をじっと

見つめていた。

「お父さん……?」

その声に

男の顔が歪んだ。

「さくら」

男は

一歩近づいた。

「会いたかった」

さくらは

僕の後ろに隠れた。

「でも

あなたは

私のお父さんじゃない」

男は

立ち止まった。

「どうして?」

「お父さんは

私を守ってくれる」

男は

悲しそうに笑った。

「僕も

守ろうとしている」

さくらは

首を横に振った。

「違うよ」

「何が?」

「あなたは

私を見てない」

男の表情が

消えた。

さくらは続けた。

「ずっと

昔の私だけを

見てるんだよ」

僕は

その言葉に

胸を突かれた。

確かに

目の前の男は

さくらを見ている。

だが

その目には

今の彼女ではなく

失った娘の姿が

映っているようだった。

長い沈黙のあと

男は口を開いた。

「君たちは

何も分かっていない」

僕は

身構えた。

「何が?」

男は

巨大な球体を指さした。

「この地球たちは

ただの世界じゃない」

球体の中に

一つの映像が現れた。

そこには

白い病室があった。

ベッドには

小さな少女が

横たわっている。

さくらだった。

「またその映像か」

僕は言った。

「もう知ってる」

男は

首を振った。

「違う」

「何が違う?」

「君が見てきたのは

最後の記録だけだ」

男が

画面を操作した。

すると

病室の映像が

巻き戻り始めた。

一日。

一週間。

一か月。

一年。

そして

ある日の映像で

止まった。

そこには

元気に走り回る

小さなさくらがいた。

男は

静かに言った。

「この子は

最初から

病気だったわけじゃない」

僕は

画面を見つめた。

「どういうことだ」

「病気になった原因が

あったんだ」

男は

別の映像を開いた。

巨大な研究施設。

その中央に

七本の線が

浮かんでいた。

「僕たちは

次元接続の実験を

行っていた」

「七次元の?」

「そうだ」

男はうなずいた。

「だが

実験中に

事故が起きた」

映像の中で

青い光が

爆発した。

研究施設が

激しく揺れる。

警報が鳴り響いた。

そして

画面の隅に

一人の少女がいた。

さくらだった。

「まさか……」

僕は

息をのんだ。

男は続けた。

「事故の影響で

さくらの体は

次元的に

不安定になった」

「それで

病気になったのか」

「そうだ」

男は

拳を握りしめた。

「僕が

娘を死なせたんだ」

僕は

何も言えなかった。

男は

球体を見上げた。

「だから

取り戻そうとした」

「地球を作って?」

「最初は

別の地球を作れば

事故の起きなかった

歴史を選べると

考えた」

僕は

画面を見つめた。

「でも

失敗したんだな」

男は

うなずいた。

「何度も」

「それでも

やめなかった」

「やめられなかった」

男の声が

震えていた。

「そして

あるとき

気づいたんだ」

「何に?」

「さくらを救うには

地球を作り直すだけでは

足りない」

僕は

男を見つめた。

「じゃあ

何が必要なんだ」

男は

静かに答えた。

「地球が

誕生する前の

宇宙そのものを

変える必要がある」

僕は

息をのんだ。

「宇宙を?」

「そうだ」

男は

巨大な球体に

手を伸ばした。

すると

地球の映像が

すべて消えた。

代わりに

真っ暗な空間が

現れた。

そこには

何もなかった。

星も

惑星も

光さえない。

「ここが

最初の場所だ」

男は言った。

「地球が

存在しなかった次元」

僕は

暗闇を見つめた。

「ここから

地球を作ったのか」

男は

うなずいた。

「そして

次の地点が

君の旅の終点になる」

僕は

スマートフォンを見た。

画面には

新しい表示が

現れていた。

『第五観測地点』

『地球誕生以前』

『移行準備完了』

僕は

男を見た。

「お前は

ここに残るのか」

男は

静かに答えた。

「僕は

ここから動けない」

「じゃあ

次の世界で

何をすればいい」

男は

少しだけ笑った。

「最初の選択を

やり直してくれ」

「最初の選択?」

「地球を

生み出すかどうかだ」

僕は

息をのんだ。

「生み出さなければ

どうなる?」

男は

答えなかった。

その代わり

さくらを見た。

そして

小さく言った。

「その子が

生まれることも

なくなる」

僕は

さくらの手を握った。

「そんな選択

できるわけない」

男は

ゆっくりうなずいた。

「だから

君を作ったんだ」

その瞬間

塔全体が

激しく揺れた。

巨大な球体に

亀裂が走った。

『警告』

『全分岐世界の

接続安定性が低下』

『中枢崩壊まで

残り三十分』

男の表情が

変わった。

「時間がない」

僕は

さくらを抱き寄せた。

「どうすればいい!」

男は

青い扉を指さした。

「第五地点へ行け」

「そこで

答えが見つかるのか」

「分からない」

男は答えた。

「だが

君なら

僕と違う選択を

するかもしれない」

僕は

男を見つめた。

そして

さくらの手を握った。

「行こう」

「うん」

僕たちは

青い扉へ向かった。

その直前

背後から

男の声が聞こえた。

「一つだけ

覚えておいてくれ」

僕は振り返った。

「何だ?」

男は

静かに言った。

「地球は

最初から

存在していたわけじゃない」

「分かってる」

「違う」

男は

首を振った。

「君が知っている

最初の地球は

僕が作った

最初の地球じゃない」

僕は

足を止めた。

「どういう意味だ」

男は

暗闇に浮かぶ

七本の線を見つめた。

「僕たちが

地球を作り始めた

本当の理由は

さくらだけじゃない」

僕は

息をのんだ。

「じゃあ

何のために?」

男は

ゆっくり答えた。

「地球が

存在しない宇宙では

人間そのものが

生まれない」

「それが?」

男は

僕を見つめた。

「つまり

僕たちも

最初から

存在できないはずなんだ」

僕は

何も言えなかった。

「なのに

僕たちは

地球を作った」

男は

静かに続けた。

「その矛盾を

解くために

君を旅させたんだ」

その瞬間

青い扉が

強烈な光を放った。

僕とさくらの体が

ゆっくり浮かび上がる。

男の声が

遠ざかっていった。

「第五地点で

確かめてくれ」

「僕たちは

いったい

どこから来たのか」

そして

世界が

真っ白になった。

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