不死鳥少女は工夫を会得する
「とにかく今は僕らがこれからすべきことをハッキリさせることだね」
領主探しのことは一旦置いておき、今回の冒険で露呈した欠点や至らぬ所を改善すべきだとメイナスは進言した。
「例えば?」
「スザクは戦闘スタイルを開発しないとね。ゴッドプレシャスは強力だけど、戦闘技術に直結してる訳じゃないからね」
フェニックスの力はこれまでにも何度も見てきたが、戦闘に特化している訳ではないためスザク本人の戦闘技術は素人とまで言わないが玄人とは言えないだろう。
それに今回のことだって容易に捕まらなければ悪意ある敵に回復手段として利用され、自分達が苦戦することもなかったはずだ。
「だからこそ君には戦い方を学んで欲しいんだ」
「例えばどんなのだ?」
「大きく分けて二種類じゃな。武器による白兵戦や己の身体一つで肉弾戦をする『前衛タイプ』、儂やアメジスのように魔法やアイテムを駆使して遠くから遠距離攻撃をする『後衛タイプ』じゃな」
まずは基本中の基本とも言える戦闘スタイルを割り出すことから始まった。ユウキュウからの説明を聞いていたスザクは少し考え込むと…。
「そう言えば炎は普通に使うけど、他の魔法とかはどうやって使えば良いんだ?」
「他の魔法に興味があるの?」
「いや、炎は自然に使えるけど他のを使うとなるとどうなんだろうって思ってな」
スザクからすれば炎を扱うことは呼吸するのと同じだが、それ以外となるとどうやって行えば良いか見当がつかなかった。
「なるほど、今思えば確かにスザクはサイマジックや火属性以外の魔法は使ったことがなかったね」
フェニックスの炎で忘れていたが、スザクが炎以外の属性魔法を使ったことがないのを思い出して、その質問に納得するのだった。
「それらは大体が集中力やイメージが必要だったりするかな。けど、これらは適性によって良し悪しが変動するから何とも言えないね」
「適性…ってどんなのだ?」
「ボクは自然魔法に適性があるからこうやって普通に使えるけど、逆に相性の悪い火や爆炎の魔法は扱えないんだ」
苦手分野と得意分野は人によって変わる。魔法などもそうであるため、適性によってはユウキュウの二つの分類に分けられることが多いのだが、魔法を扱えるからと言って何でもかんでも扱える訳じゃない。
例えるなら車の免許。普通自動車の免許を取得したとしても、戦闘機やクレーン車などの車を扱える訳ではないのと同じ原理だ。
「あれ、でもシンフォニーフォレストでは…」
「あれは君やセレスティア様からマナミナを貰ったからだよ。そうでなきゃ全属性のエレメントを扱える訳がないんだよ」
ルアーネの台詞に疑問を覚えたのは戒めの神殿で発動したエレメント・アスガルド形態を見たからだった。しかしながらあれは様々な事情が重なって発動することが出来たため、今の通常状態では実現不可能であった。
「じゃあ、あたしは炎以外の適性はないってこと?」
「魔法適性は一目見ただけで判別出来るものじゃないんだ。ある時、実は魔法に適性があって魔法使いを目指す人も少なくはないんだよ」
「それに他の属性は会得しようと思えば出来ないこともないからね」
適性はもちろんだが、他の属性を扱うにはそれなりの鍛錬や修練をすることで身に着く場合もある。
「例えばどんなことするんだ」
「水のエレメントなら滝行や水練、土のエレメントなら洞窟や地下に潜ったりとか、とにかくそれぞれのエレメントの源となる場所に向かって鍛えて適性を見出し、会得するのが手っ取り早いかな…まあ、一番危険なのは雷魔法と爆炎魔法だけどね」
エレメントは自然の属性をその身に宿すと同時に体内のマナミナを変換させて放出するのだが、適性を見出したり新しく会得するにはその源となる場所へ向かい実際にその身に宿すのが一番となる。
メイナスが挙げた二つの属性の他にも、自然の魔法ならば森林浴や植林をして草木と触れ合ったり、氷魔法ならば雪の降る大地や氷の大地にて氷雪を一身に受けるのが一番だ。
因みに最後に挙げた雷と爆炎についてだが…察しの通り、これには落雷や爆発をその身に受ける必要があるため雷雲の真下に立って落雷を受けたり、火山地帯で噴火を受けてみたりと、鍛錬でその身に宿す以前に自分達の命を危険に晒す自殺行為に近いため時には修練が禁止される場合もある。
「へぇ〜、アメジスもそうしたのか」
「あ、私は元から適性があったからそう言うのは…ただ、精度や威力を高めるならそう言うことをするのは聞いたことあるよ」
魔法をよく使うアメジスもそんな事をしたのかとスザクは関心するも、アメジス本人は夢魔と吸血鬼と言う二種の魔族のハーフであるため、魔法の適性そのものは非常に高かったため難なく使いこなせたのだ。
(スザクの場合はどれもこれも普通に…と言うか喜んででやりそうだけどな)
(まあ、あくまでも今回は適性とかを見出すだけだから、そこは追々で…)
敢えて爆炎魔法と雷魔法の修練方法を言わなかったのはドMなスザクのことだから、喜んで雷雲や火口まで飛んでいくと考えたメイナスの配慮だった。
「魔法はそれぐらいにして、次は武術や武器はどうじゃ」
空気を読んだかは分からないが、ユウキュウは話題を魔法から逸らすように変える。
「スザクの場合は空中戦が得意そうだよね。武器も持たせたいところだけど、どう言うのが良いかな」
「なあ、そうは言うけどよ、あたしらの中で技術のことを言い合っても同じことなんじゃないのか」
暫く考え込んでいたがステラの言う通り、ここにいても自分達の持つ戦闘技術や武器を擦り合わせだけでは単なる模倣でしかないため上達するかどうか分からないし、そもそもスザクの戦闘スタイルを開発するのならば他にも適性があるように思えた。
「ううん、これについては八方塞がりか」
「学校やギルドにも当たってみようよ。そこなら何か分かるかもね」
鍛錬にしろ開発にしろ、やはり実戦の中で己のの身体一つに覚え込ませる必要があるため、そこは自分達以外の誰かに頼ることにした。
「後はそうだな…敵に捕まっても脱出したり、それこそ最初から捕まらない立ち回りが必要かもね」
「そもそもスザクちゃんは不死身だから倒される心配はまずないけど、捕まることを前提とした戦い方が重要だね」
戦い方と言えば相手を如何に倒すかが前提になってくるが、スザクの場合はルアーネの言う通り不死身であるため、そこを根本的に変えるべきだろう。
「あたしってシンフォニーフォレストの時以外にも捕まったっけ?」
指摘されるほどまでに捕まっていたかと後頭部を掻きながら言うスザクに、メイナス達は何とも言えないような顔を浮かべる。
「デザードライキャニオンでも私とニナちゃんとで捕まっちゃったでしょ」
「ボクの記憶が正しければ、アンデッドセイリュウの時だって、リュクウと一緒に取り込まれなかったっけ?」
「ベロベロッグやエレキランチュラの時も捕まってたし」
「それにネクロマンティスの時は僕達を襲ったでしょ」
思い返せば倒されないだけに敵やモンスターの攻撃を受け続け、その度に快感に浸ってしまうために動けずにほぼ捕縛されていることが多かった。
「…ネクロマンティスの時?あれ、そうだっけ」
仲間達から過去の失敗談(?)を聞いていたスザクは身に覚えのない内容に首を傾げた。
「そう言えばネクロマンティスの時はいつものスザクちゃんじゃなかったような」
あの時は今回のように敵に利用されて敵対したが、アメジスはいつもと何かが違うように思えた。
「ネクロマンティスは鎌を当てた人間の霊魂を抜き取り捕食するんだけど、奪った魂を完全に吸収する間は抜き取られた肉体を操り人形のように操るゴッドプレシャス『死人形劇』があるんだ」
あの時スザクの様子がおかしかったのはネクロマンティスのゴッドプレシャスよって、魂を抜かれた後で肉体は操り人形にされたからとルアーネが説明する。
「モンスターにもゴッドプレシャスがあるのか?」
「それを言ったらフェニックスの『不老不死』だってそうさ。他にもバジリスクの『デッド・アイ』とか玄武の『ガイアピース』とかね」
「まあな、そう言うことだ」
ゴッドプレシャスは何も人間や異種族に宿るとは限らない。その証拠にフェニックスやバジリスクと言ったモンスターや幻獣にもゴッドプレシャスは宿っており、何かしらの形で得られたアイテムにもその恩恵が含まれていることが多い。
分かりやすいのはアンロスの街で話題にあった『不死鳥の灰』だ。灰とは言え不死鳥の不老不死の力の片鱗でもあるため大変貴重な素材となっており、現にアンデッドを生み出すのにも使われていた。
歴史上に置いて他にもバジリスクの死の眼光を放つ眼球やセイリュウの気象をコントロールする角や牙、更には幻獣の一種である玄武の甲羅の欠片など、古文書やおとぎ話でしか聞かない伝説のアイテムはゴッドプレシャスから由来していることが多いのだ。
「でも、ネクロマンティスに魂を抜かれていたのなら、何で蘇生しなかったのでしょうか」
不死身なら魂を抜かれた時点で蘇生するはずなのに、何故あの時はそうならなかったのかニナは疑問に思う。
「それは多分、肉体には異常がないからだよ。魂を抜かれるだけで、肉体そのものは無傷のままだからスザクちゃんの『不老不死』には含まれないんだよ」
「でも魂を抜かれるのなら死んだことになるんじゃ」
蘇らなかったのは肉体そのものに影響が無かったからだとルアーネが説明するも、魂が抜かれる=死ぬことになるからそれで復活しないのはおかしいとアメジスが挙手した。
「その状態は多分、幽体離脱…つまり肉体は生きているけど、魂が肉体から一時的に抜けていたから蘇生の定義に含まれなかったんだと思う。もしもあのままネクロマンティスに魂が吸収されていたら、そこから蘇生出来たんだと思うけど」
あの時スザクの肉体も魂も完全には死んでいないから、フェニックスの蘇生能力が働かずそのままネクロマンティスの操り人形になってしまったのだとルアーネは結論づける。
「取り敢えずスザクのフェニックスの力のことは大体分かったけどよ。それよりもまずは捕まらないよう強くなるべきだろ」
「そうだね。今後のことを考えながら特訓してみようか」
「具体的にはどうするんだ」
座学や考察はこれぐらいにしてステラの言う通り、ここからはスザクの強化訓練をするために場所を変える。
▷▷▷
「確かここで採取クエストをしたんだよね」
「懐かしいな」
訪れたのはスザクがミスティーユに来てから間もない頃、採取クエストで訪れた森の中だった。
「あの時は白いバジリスクのことで色々噂されてたけど」
「それは…あたしがこの辺を彷徨いてたからな」
同じ頃に白いバジリスクが出現して、一時的にミスティーユ付近のモンスターの生態系が乱れたことがあった。そのことに関してはステラはバツが悪そうにしていた。
「そして今回行くのは更に奥の湖だよ」
「ぐっ…なんたってそこへ行くんだよ」
更に過去の失敗を根掘り葉掘りする場所に行くことにステラは提案したメイナスに対して顔をしかめる。
『ゲコゲコ』
『ゲケケケ』
湖には人間を容易く丸呑みに出来そうな大きな口と身体を持つカエル型モンスターのベロベロッグが辺りに集まっていた。
「あのベロベロッグ達に捕まらないように立ち回るんだ」
「なるほど、ベロベロッグの舌はとても速い。それを回避しつつも、不規則に動く舌を躱す技を身に着けさせるんだね」
相手は鞭のように舌を扱うため、回避や立ち回りを徹底するならばちょうどいい相手だろう。
「その他にも技を磨くと良いよ」
「技って、アメジスとかが魔法を使う時に言うあれみたいにか?」
「それは魔法を使う時の呪文。技と言うのは魔法やゴッドプレシャスのような特殊な力だけに頼らず、自分の身体と武器なども使い、戦いに有利な動作を見出すのさ」
手本を見せて欲しいとメイナスは視線をレイラに向ける。
「技には大きく分けて既存の技とオリジナルの技がある。まずは既存の技、既に誰かが編み出した技の多くはスキルとして扱われることが多く、訓練次第でモーションを無意識で繰り出せるんだ」
「パッシブスキル『居合斬り』!」
スキルの概要としてレイラは一度ナイフを納刀した後、一気に振り抜く居合斬りのモーションをやってみせる。
「パッシブはそんなスキルを意識することで使えるけど、アクティブスキルは更に無意識下で繰り出すことが出来るんだ。けれどもそっちは才能によるところが多いかな。獣人族の鋭い感覚とかステラの熱感知とかね」
学校でも教えられたことを改めて説明するとスキルにも更に大きく分けて二種類存在する。一番多いのはパッシブスキルであり、アクティブスキルとなると扱えるのは種族特有の特性や天賦の才能が由来していることが多い。
「ゴッドプレシャスとは違うのか」
「レベルが違い過ぎるよ」
そこまで行くとゴッドプレシャスと間違えそうだが、結局はスキルの域は出ず、不老不死や相手を睨んだだけで即死させたりと神格化された力との差は大きい。同じ火薬でも花火とダイナマイトほどの違いがあると言って良いだろう。
「でもわざわざ口にして言うのは何でなんだ」
「ビシッと決まるからだろ」
「それもあるけど、言わないとチームプレーをする時に仲間がどんなスキルを使うか言わないと下手したら巻き添えを喰らってしまうからね」
いちいち呪文や技を口にして言うのは仲間への配慮があってこそだ。もしも言わずに広範囲の技を使えばフレンドリーファイアを起こすこと間違い無しだ。
「それでオリジナルの技なんだけど、これは自分で技を作り出すことだね。既存の技やスキルや魔法に自分なりの工夫をするんだ。さあ、やってみて」
「例えば?」と聞こうとしていたスザクだが、それを見越していたメイナスは自分で考えてと言わんばかりにベロベロッグと戦わせようとする。
「待って、スザクちゃん」
しかしその前にアメジスがスザクの腕を引いて何か耳打ちする。囁いていたために上手く聞き取れなかったが、少なくとも単なる日常会話で聞くような単語とは思えなかった。
『ゲコゲコ!』
『ゲケケケ!』
獲物を見つけたベロベロッグ達は水から出てきて舌舐めずりをしていた。
「よ…よし!やるぞ!」
以前にベロベロッグの分厚く粘液塗れの舌で全身を舐め回された感触を思い出したのか、スザクは多少興奮しながら身構える。
「よっ!はっ!ほっ!」
しかし今回はその舌に捕まらないようにする訓練のため、スザクは表情を引き締めて両腕を炎の翼に変えて羽ばたき、ベロベロッグが伸ばしてくる舌を上下左右と回避していく。
「ほほう、意外にも素早く飛べるじゃねぇか…と言うか、あいつ気持ち良い思いをするためにこれまでワザと捕まってた訳じゃないよな」
アクロバット飛行をするスザクを褒めるものの、それまでそんな動きが出来るのなら捕まる心配もなかったはずだと気が付いたステラは核心に迫るような発言をして場を凍りつかせる。
「こ、これからだよ。スザク、避けるだけじゃなくて君からも反撃してみるんだ」
「反撃…」
誤魔化すようなメイナスの言葉にスザクはふと考え込む。思えば快感による炎で反撃したことはあっても、自分から反撃したことはなかったからだ。
「これをどうしたら…はひゃん!?♡」
考え込んでいたスザクは背中にヌルリとした生温かい感触とくすぐったさが走り抜ける。どうやら避けたと思っていたベロベロッグの舌が背中の筋に沿うように這ったために思わず声を漏らしてしまう。
『ゲコゲ!』
「あ、しまっ…」
思わずいつものように快感に打ち震えてしまい、動きが鈍ったところに別のベロベロッグの舌がスザクの脚に巻き付いたのだ。
『『ゲケケケ!』』
「わっ、わわっ、そんなにいっぱい来たら…♡」
他の個体が放った舌は胴体や胸の谷間などに巻き付き、次第にスザクの動きを鈍らせると同時にヌメヌメとした感触が快感を与えていく。
「おい、いつもの調子に戻っちまうぞ」
「しょうがないなぁ」
これでは元の木阿弥であるため、やはり難しいかとステラとメイナスは共に肩を落とす中でアメジスが一歩前に出る。
「スザクちゃん?さっきのこと…」
「っ!そうだった…離せ!」
これはどうしたことか、アメジスがそれだけ言うとスザクはハッとなって快感に打ち勝とうとベロベロッグの舌を振り解こうとする光景に誰もが目を丸くした。
「あやつは快感にはめっぽう弱いはずなのに耐え忍ぶとは、どんなまじないをしたのじゃ」
「さっき何か言ってたけど、もしかして…あれ?」
「ふふふっ、頑張ってる♪」
ユウキュウとミエナの質問に何も答えなかったが、アメジスの不穏な微笑みが全てを物語っているようにも思えて、何故かそれ以上聞くことが出来なかった。
「スザクちゃん!炎を使って舌を焼くんだ!」
「そうか、えい!」
舌とヌメヌメの感触による快感に苦戦するスザクにルアーネがアドバイスしたことで、ベロベロッグの舌を焼いて振り解くことに成功する。
「よし、脱出したぞ。けど、ここからはどうしたら…あの舌をどうにかしないと」
舌を焼かれたことで火傷に苦しむベロベロッグだが、やはりあの舌を防がないと大変だと言うのが理解出来たスザクは何か方法がないかと舌に気を付けながら考え込む。
『ゲコゲ!』
「おっと!捕まるか!」
そうこうしてる間に火傷しなかったベロベロッグの舌が伸びてくるが気を付けておいたお陰でスザクは安易に避けることが出来た。
『ゲコロロ…!?』
「ありゃ、何だ」
すると避けたベロベロッグの舌は勢い余って木の枝に巻き付いてしまう。しかも絡まって取れなくなったのか苦しそうに藻掻いていた。
「…そうか!よし、掛かってこい!」
何か思い付いたのかスザクはベロベロッグの頭上ギリギリを滑空する。
「あっかんべー!お尻ペンペン〜!」
『『『ゲコロロ!』』』
更にスザクは思い付く限りの挑発をしてベロベロッグを怒らせて舌を伸ばさせる。それを見たスザクはニヤリと笑い、伸ばされた舌を不死鳥の脚ではあるが鷲掴みにしていく。
「それそれそれそれ〜!」
『『『ゲコゲ…!?』』』
「わあっ!ベロベロッグの舌を結んじゃいました!」
バルーンアートでも作るかのように掴んだ舌を巧みに絡ませ、ベロベロッグ達の舌を一箇所で結んで解けないようにしたのだった。
「どうだ!さっき枝に絡まったのを見て思い付いたんだ!」
「良いよ、スザク。工夫するって言うのはそう言うことだよ」
偶然とは言え、工夫を凝らした戦い方の切っ掛けを掴んだ瞬間だった。
「さあ、フィニッシュだよ。どうせならその炎にも工夫したらどうだい?」
「炎にも工夫を…」
今さっきも出来たのだから自身の炎にも何かしらの工夫が凝らせないかと考え込む。
「いきなりでは難しいじゃろう。どれ、手本を見せてやろう」
フェニックスだけに元から勉強が苦手なスザクの鳥頭では工夫を凝らした戦い方は難しいと考えたユウキュウは扇子を広げる。
「スザクよ、これを見るのじゃ」
「ユウキュウ!…何だその動き」
姿を現したユウキュウは両手に扇子を手にして、日本舞踊のような踊りを披露する。
「これは舞いと言う踊りじゃ。お主ならこの動き、会得出来るじゃろう」
扇子による舞いはまるで鳥が飛翔をしているかのようで、ユウキュウはチラチラと空中にいるスザクを見ながら訴えかける。
「動き…あ、そうか。あの動きをマネしろってことか!」
最初は舞いに首を傾げていたスザクもユウキュウの動きと視線が何を意味するのか察して、見様見真似で合わせるように飛翔する。
「良いか、炎を意識するのじゃ。そうすると自然と動きが滑らかになるぞ」
ユウキュウは手に持った扇子をユラユラと揺らすように水平にはためかせる。
「それは簡単だな!」
そう言った動きを意識したことはなかったが、ユウキュウのアドバイスと自身の炎のお陰であっさりとマスターする。それにより自身の炎の翼は扇子のようにはためき、範囲内にいたベロベロッグを焼き尽くす。
「身体は宙を舞う木の葉のように余分な力を抜いて軽やかにするのじゃ。それにより相手の攻撃や動線に逆らわず、受け入れつつ流すのじゃ…見ておれ」
これは難しいため実際にベロベロッグの舌攻撃の前に自ら出るユウキュウ。案の定、彼女にも舌は伸びてくるが大袈裟に伏せたりジャンプしたりせず、腕や足を軽く上下させる、伸びてくる勢いに任せてのらりくらりと避けていく。台詞通り宙を舞う木の葉のように軽やかながら掴み所のない動きを見せた。
「なるほど…こうか?」
言われた通り身体の力を抜いてみると、確かにそれにより伸びてくる舌の勢いが直に伝わって来て、不思議とその勢いに身体が勝手に舞うように動いてくれる。
「良いぞ良いぞ。一番のポイントは相手の動線に流されつつも、己の動線を如何に通して攻撃を当てるかじゃ」
これまでは基本的な動きと立ち回りだったが、肝心の攻撃を教えるためユウキュウはベロベロッグの舌を掻い潜りながら、攻撃を当てられるポイントを見出すと足腰に力を込める。
「儂は魔法でヤラせて貰うぞ。爆炎魔法『ボム』!」
それまで軽やかに避けていたユウキュウは狙いを定めた場所まで踏み込み、爆弾が結び付けられたクナイを刺していくと同時に呪文を唱えて一気に爆破していく。
「あんな感じか…よーし!それええぇぇ!」
ユウキュウの後を追うように舌を掻い潜りながら炎の翼でベロベロッグ達を焼き払うスザク。ユウキュウの舞いに似てはいるが、炎の派手さもあって思わず魅了されてしまう。
「よしよし、上等じゃな。その動きや工夫を忘れるでないぞ」
「ありがとう、ユウキュウ。それでこのベロベロッグはどうする?」
ユウキュウに感謝を述べる傍らでスザクは爆破と炎で骨の髄まで焼かれたベロベロッグ達の処遇をどうするか訊ねるとメイナスは任せておけと微笑む。
▷▷▷
「あむ…ん〜!ベロベロッグの丸焼き美味しい〜♪」
教会に戻って来たリュクウはしっかりと焼けたベロベロッグの丸焼きを他の子供達と共に美味しそうに食べていた。
「へぇ〜、ベロベロッグって意外と美味いんだな」
「あたしは結構好きだぞ、ベロベロッグ」
「そう言えばベロベロッグはバジリスクの大好物だったね」
ベロベロッグを初めて食べた者は多くいたが、フライドチキンのように外はカリカリで中は肉汁たっぷりでとてもジューシーだった。
「仕留めたモンスターは余さず活用しなきゃね」
「そうです、奪った命を粗末に扱ってはいけませんよ」
練習のためとは言え仕留めたベロベロッグは教会だけでなく、ミスティーユの人々にも料理として振る舞われることで供養されるのだった。
「なあ、アメジス…今日の夜、良いかな」
「うん、約束だもんね」
食事中にスザクとアメジスは互いに顔を赤らめながら密談をしていた。その内容とは…。
「あああああああ♡気持ち良い…♡アメジス…あたし…おかしくなりそう…ああああああ♡」
「ふふふっ…夜はこれからだよ、スザクちゃん♡」
その夜、スザクの快感に溺れる断末魔と舌舐めずりをするかのようなアメジスの甘い声が一晩中教会に響き渡り、ベッドと暗闇でよく姿は見えないが二人は熱く身体の境界線が溶けてしまうほどに重ね合っていた。
「うるさいぞ!お前ら!?」
「ってか、約束ってそれかよ!教会でふしだらなことをするな!?」
目も覚めるほどの恥ずかしい二人の甘い声と蜜月に誰もがドキドキして眠れなくなってしまうのだった。




