永遠は牢獄
「セレスティア様…何をなさるのですか」
自らの命を投げ売るような言い方にニナは恐る恐る訊ねるが、セレスティアは穏やかな微笑みを浮かべていた。
「ニナ、私は長いこと大精霊として生きてきました。それはいざと言う時にシンフォニーフォレストや妖精族を守るためでした。その本懐を遂げる時が今なのです」
長らく大精霊として君臨したセレスティアはいずれこんな日が来るであろうとずっと考えていた。そんな日が来なければ良いと思いながら他の妖精族と過ごしていたが、自身に定められた使命からは逃れられないと覚悟に満ちた表情で答えた。
「でも、どうしてボクが必要なのですか。今だって森が壊されて頭が痛いのに…」
何をするのか賢者の書でも分からないが、森林破壊によってシンフォニーフォレストと共に弱っている自分に何をさせるかと困惑するルアーネの肩にセレスティアは諭すように手を置いた。
「『賢者の書』が与えるのは知性だけではないのです。逆に知性が高くなってしまったことで、あなたは不可能を理解した途端に自らの限界を決めてしまうのです」
ルアーネに限らず誰だって目の前の困難を打ち破れないと悟ると『不可能』や『無理』と考えて諦めてしまい、それが自身の限界に繋がることになるのだ。
「あなたには自分が思っている以上のスゴい力が眠っています。何故ならあなたの持つ賢者の書はあなたを育ててくれたイグドラシルの一部…彼があなたのことをずっと見守っているんですよ」
「…イグドラシル」
文字の読み書きすら教えて貰えずに捨てられたルアーネは賢者の書に導かれ、そのままイグドラシルの教えを請うことになったが、両者の間には親子愛に似たものが確かにあるとセレスティアから告げられてルアーネは賢者の書を抱き締めながらイグドラシルを想う。
▷▷▷
「頭痛い〜!何なのこれ〜…」
『はは、まだまだじゃのう』
賢者の書を手に入れたばかりは膨大な知識が頭に入り頭痛に悩まされるも、イグドラシルは枝や葉を使って頭痛に悩む自分をよく看病してくれた。
「甘い〜…!」
『勉強した後の甘い物は格別じゃろ?』
勉強のご褒美として甘い樹液を舐めさせてくれたりした。ただあまりの美味しさに盗み食いをして虫歯になり、イグドラシルから枝で治療されたこともあった。
「わあ~…!高い〜!綺麗〜!」
『落ちるでないぞ。ワシは世界で一番大きな木じゃからな!』
勉強の気晴らしにイグドラシルの頂上から見える景色を見せて貰いルアーネは大喜びしていた。
「すぅ…すぅ…イグドラシル…」
『ルアーネよ…ゆっくり大きくなるのだぞ』
夜は母なる神樹に抱かれ安らかな寝息を立てるルアーネにイグドラシルも慈愛に満ちた声色になる。
「イグドラシル!行ってくるよ!イグドラシルが学園長をしているパズレインスクールに!」
やがて大きくなったルアーネはパズレインスクールへ入学し学年首席になるのだが、記憶の片隅に置いていたイグドラシルの言葉が今のルアーネの心を大きく揺さぶった。
『しかし良いかルアーネよ。この世は知性が全てではない。だからと言っても力が全てでもない。これから行く学校には友人が出来るじゃろう。その友人と絆を強めればお主の想像を超え、想像を絶する強力な力が目覚めるじゃろう。ワシはそう…信じている」
▷▷▷
「信じている…イグドラシル、分かったよ…信じるよ!今のボクが皆を助けられるほどの力に目覚めることを!」
イグドラシルの思い出を胸にルアーネは吹っ切れたように叫び、セレスティアと向かい合って共に頷くのだった。
「私の今の姿はエレメントの集合体なのです。ですから私をイグドラシルの一部である賢者の書と合わせることで絶大な力を得るはずです。元々妖精族は昔の人間達にエレメントを授ける仲介役を担っていましたから何ら不思議ではありません」
「つまり賢者の書と一体化するんだね」
方法は至ってシンプルであった。つまりセレスティアはエレメントそのものであり、一部ではあるがイグドラシルと一体化すれば状況を好転させられると言うのだが、ニナはそれを聞いて表情が凍りついた。
「そんなことしたら肉体はエレメントそのものになって霧散してしまい…セレスティア様の魂は消えてしまうんですよ!?」
具体的な消滅方法を聞かされ、改めて自らの命を投げ売っていることにニナでなくとも表情が凍りつく。
「最悪の場合はそうなるでしょう。よろしいではないですか、あなたを冤罪でこの地へ攫った愚か者が消えるのなら喜ばしいでしょう」
「愚か者じゃありません!セレスティア様はずっと…私が生まれる前からずっと皆を守って来たんですよ…それなのに何で…やるんなら追放者である私が代わりに…あう!?」
自嘲するような言い方にニナは反論するように自分が身代わりになればと口にした途端にセレスティアから頬を叩かれる。
「確かにあなたは追放者…だからそもそも妖精族のいざこざには関われないんですよ。追放者を身代わりにし、使命を果たさず生き残った大精霊の方が妖精族の恥ですよ…」
押し殺すように呟くセレスティアは身体が僅かに震えており、顔からはポタポタと雫が石の床に落ちていく。
「あなたにはもう既に大事な仲間がいるのに!あなたのことを追放した愚か者のために死ぬなんて恥だと思いなさい!死ぬ覚悟があるのなら大事な仲間を最後まで守り通しなさい!この大馬鹿者!」
これまでの穏やかで慈愛に満ちた雰囲気をかなぐり捨てて、ニナが自ら死を選ぶような選択をしたことに本気で怒るセレスティアに誰も何も言えなくなる。
「私は長く大精霊として君臨してきましたが…それと同時に多くの妖精族の死を見てきました」
大精霊になると妖精族の中でもほぼ永遠に生きられるようなのだが、それは多くの同胞の死を見るのと同じであった。新しく生まれきた妖精族の子供が天寿を全うして死んだり不慮の事故や戦いで命を落としたりと場面は様々だった。
「何よりも私の愛した人も、その子供も私より先に亡くなってしまうのが辛いのです」
誰かを愛しても子供を成しても大精霊である自分だけしか生き残れないために、いつしかセレスティアは平和を守る使命と永遠を生きれる幸せの裏側で、ずっと孤独であると言う想像を絶する辛さ味わい続けたのだ。
「でも…でも…セレスティア様には妖精族の皆があるんですよ…これからもずっと…」
それでも死ぬことだけは留まって貰おうとしたが、メイナスがニナの肩に手を置いて首を横に振っていた。
「ニナ…ダメだよ。セレスティア様はずっと妖精族のために自分自身と孤独感と戦っていたんだ。だから『これからもずっと』なんてワガママ、セレスティア様に取ってどれだけ残酷な言葉になるか…もう自由にさせてあげるべきなんだよ」
ただこれからも変わらずに大精霊として平和に暮らして欲しいと思っていたニナだが、メイナスの言う通り使命を背負ったまま平和を守り続けていたセレスティアからすれば、愛する人達が先に死んで自分だけ生き残る孤独の苦しみを味わい続けろと言っているのと同じであると気付かされ涙してしまう。
「ごめんなさい…ごめんなさい…その辛い気持ち…私も知ってたのに…アスラさん…!?」
人間のアスラに恋をし禁忌を犯して猫になったものの、死に別れたことで叶わぬ恋に終わり、愛する人を先に失う辛さを経験したニナはセレスティアの苦しみを痛いほど理解出来た。
「ありがとう、メイナス、ニナ。私のことを理解してくれて…さあ、やりましょう」
「…はい!」
謝罪は了承として取ったセレスティアは軽く頷き、決心が揺るがない内に始めようと向き直り、その決心に応えるようにルアーネも力強く返事をした。
『いい加減にせんかぁ!』
それまでモンスターに足止めされていたアラクネメシスは口や手の平、更にはお尻から一斉に蜘蛛の糸を吐き出して押し返す。
『何なのよこいつは…むっ!?誰よあんた、そして何をしている!?』
気が付くと見知らぬ人物がいて、ルアーネに抱き着いて淡い光を放っていることにアラクネメシスはただ事ではないと警戒する。
『メイナス以外はいらぬ!纏めて細切れにしてやるわぁ!』
そうはさせるかとトードナは指先から斬れ味を持つ糸を操って斬り刻もうとするが、たくさんの木々が遮るように石の床を突き破り、糸は木の幹に食い込むも抜けなくなってしまった。
『この!?小賢しいマネを…!?』
食い込んだ糸を何とかしようと引っ張ってみるも、見事に食い込んだ上に糸は複数本あるため聖剣の如く中々上手く引き抜けなかった。
「集中して…私と私の中にあるエレメント…そしてシンフォニーフォレストやこの世のあらゆる場所にある全てのエレメントを感じ取るのです」
あすなろ抱きをされているルアーネは目を閉じてセレスティアの体温や肉体と言った生命の躍動を肌で感じ取り、全てのエレメントに向けて意識を傾ける。
「感じますか…この森に小さく燻る火種や小川のせせらぎ、風の流れや木の葉の一枚一枚に葉脈が流れているのを…」
火ならばメラメラと燃え、爆炎ならば火をも上回るほどに爆ぜ、水ならば悠久の時を流れ、氷ならば逆にあらゆる時を止め、風ならば如何なるものよりも早く飛び、雷ならば光よりも早く、土ならば全てを支え、自然ならば生命の息吹を、光ならば全てを照らし、闇ならば全てを包み込む…と言った具合にルアーネは森羅万象に存在する、あらゆるエレメントの根源たる自然現象をその身で受けて体感していく。
「スゴい…スゴいとしか言いようがないよ。ボクは自然と土のエレメントが扱えるけど、全てのエレメントを宿したみたいに力が少しずつ溢れてくるよ…」
「あなたの一部であるイグドラシルは生命だけでなく全てを育む…私の持つエレメントをも」
言われてみると全てのエレメントを体感しただけではない。身体の中に集まった力が強くなり過ぎて次第にダムの決壊の如く溢れそうになっており、おまけにその影響か身体が虹色に輝き始めたのだ。
『おのれぇ!何をしている!?』
斬れ味を持つ糸で邪魔な木々をようやく切り捨てたアラクネメシスは虹色に光るルアーネとセレスティアを見て、根拠がある訳でもないのに全てが手遅れだと悟った。
「さあ…ルアーネ!解放しなさい、エレメント・アスガルドを!」
「エレメント・アスガルド!!」
虹色の光と太く長い木の根が二人の身体を包み込むと、ルアーネの華奢な身体付きにくびれが現れて魅惑的なボディラインを描きながら背が伸び、滑らかな曲線を描く胸部はスザクにも負けない豊満な果実を実らせると同時に、髪は丸みを帯びていくお尻に届くほどに伸びて、慈愛に満ちた女神のような姿へと変わっていく。更に背中にはアーチ状の茂みが出現し、それぞれのエレメントを纏った花が咲く。
「これがエレメント・アスガルド…言葉に表せないほどの感覚だ。身体まで変わっちゃった」
賢者の書でも理解出来ないほどの力をその身に宿したルアーネは余りの出来事に感動していた。
「セレスティア様は…」
「まさか、もう…!?」
「ううん、ミエナちゃん。ニナも心配しないで。まだボクの中にいる。セレスティア様はエレメントに姿を変えてボクと一体化したんだ」
姿が見えないセレスティアに最悪の事態を考えるも、形を変えて今は一つになっているだけだとルアーネが諭すもすぐに真剣な表情になる。
「でも、この状態は長く続かない。早くあいつを倒さないとセレスティア様は本当にエレメントそのものに還元されて消えてしまう」
この状態はセレスティアの消滅を招く、正しく命懸けの形態であるため、その前にアラクネメシスを倒すしか手はなかった。
「命を懸けて貰って悪いけどよぉ、スザクの不老不死があるんじゃどうやって倒すんだ」
ルアーネからすれば今の形態は間違いなく最強ではあるが、持久戦には向かないためスザクを取り込み再生能力と蘇生能力を手にしたアラクネメシスには相性が悪過ぎるのだ。
「だったら奪い返せば良いんだよ。ボクに任せてよ」
しかしルアーネにも考えがあるらしく、姿が変わった自分達を見ているアラクネメシスの背中にいるスザクをジッと見つめる。
『姿が変わったからと言って、今の私を倒せると思ってんの!』
「確かにそっちはデーモンスピリットと魔神獣、それとスザクちゃんを取り込んだんだろうけど…こっちはイグドラシルに全てのエレメントを持つセレスティア様と融合したんだ。そっちこそボクらの繋がりを甘く見ないで欲しいな!」
木の根が意思を持つように石の床を突き破りながらアラクネメシスに向かって伸びていく。
『はっ!雑草の根っこで攻撃だなんてガッカリよ!それにフェニックスから奪っているのは再生能力だけじゃないのよ!』
見せつけるように血管を激しく躍動させるとスザクの身体から瑞々しさが失われて干しブドウのようになるが再生の炎によってすぐ元通りになる。
「うはあっ…♡くう…♡また激しく…吸ってる…♡」
だが、回復した側から血管は再び血肉やマナミナを根こそぎ奪い、そこからまた再生の繰り返しをするためスザクは快感の沼に沈んでいく。
『雑草は焼き払うに限るわぁ!火魔法『フレイム』・ウェーブ!』
トードナの手の平から放射状に炎が放たれて木の根が一瞬にして炭に変わる。まるでスザクがフェニックスの時に放つ炎のようで威力も普通の火魔法の何倍もあった。
『ぎゃははは!このまま貴様らを散々邪魔してくれた虫けら妖精と共に炭にしてやるわぁ!その後でメイナスと願いの精杯を手に入れて、私は輝かしい未来を掴むのよぉ!』
最初はルアーネの力に警戒したものの奪ったフェニックスの炎で全て焼き払えると確信し、下品な笑い声を上げながら勝利宣言をするのだった。
「それはまだ早いんじゃないのかな?」
『何を負け惜しみを…っ!?』
フェニックスの炎を前にしても強がりを言っているのかと思っていたトードナだが、少なくとも口先だけではないと目の当たりにした。
「「「ウッドール!」」」
なんとエレメント・アスガルドの姿になったルアーネが十人に増えていたのだ。
「おいおい、どうなってんだ」
「ふむ…分身スキルにしては動きが自由じゃな」
目の錯覚でもないし、ある程度のモーションを繰り返す『分身』スキルとは違い、増えたルアーネ達は違うポーズを取ったり準備体操をしたりとそれぞれの意思で独立して動いているようだった。
「さあ、これでもまだそんな余裕ぶってられるかな」
『だ…黙れ黙れ!所詮フェニックスの炎で焼き払えば同じことよ!死ねえええぇぇぇ!』
火の鳥と比喩されているフェニックスの炎はドラゴンの炎にも匹敵するため、増えたルアーネ達を焼き払うならこれ以上の炎はないだろうと再び同じ魔法を使う。
「水魔法『アクア』・フォール!」
すると一人のルアーネが水魔法で空中から水流を落とし、人工的に滝を作り出して炎の波を打ち消す。
『なっ…小賢しい!火魔法『バーニング』・リング!』
「ああああっ♡ううっ…♡」
再びスザクからマナミナと血肉を干からびるまで吸収すると、今度はフェニックスの炎で車輪を複数作り出して地面を転がしたり、ネズミ花火のように壁を這わせたりしてくる。
「水魔法…!」
『バカめ!』
先程と同じく水魔法で打ち消そうとしているのを見たトードナは蜘蛛の糸で車輪の軌道を操り、他のルアーネや戦いに介入出来ずに傍観していたアメジス達に向かっていく。
「氷魔法『アイス』!」
「土魔法『ロック』!」
「自然魔法『ウッド』!」
しかし全ての炎の車輪はルアーネ達が遮るように出した氷、土、木の壁によって見事に防がれ、ルアーネ達も事なきを得るのだった。
「雷魔法『サンダー』・スピアー!」
「風魔法『ウインド』・スラッシュ!」
防がれて呆然とするアラクネメシスに槍のような雷魔法がトードナの腹を貫き、風魔法の刃が蜘蛛の脚を数本切り落としていくのだった。
『ぎゃああああ!?おのれええぇぇぇ!』
「うあああ…あ…あ…♡ふわああ…♡吸われて…戻って…また吸われて…気持ち良い…♡」
苦痛に悲鳴を挙げながら炎で再生するトードナだが、枯渇するまで吸われ再生する快感の連鎖にスザクは絶頂の真っ只中だった。
「おかしいな。最初はスザクと同じく快感に浸っていたのに、今じゃそんな余裕がない感じみたいだな」
「あんな気持ち悪い奴が気持ち良くなった姿なんて吐き気がするぜ」
見た目は先程よりマシになったとはいえ、メイナスに気持ち悪いことを想像させるなとステラが苦言する。
「どうやらトードナはアラクネメシスを操るのに特殊なキノコを使っているみたいなんだ」
「そう言えばアメジスの時もキノコに操られてたな」
戦いに集中しながら聞き耳を立てていたルアーネからそう聞かされ、アメジスの頭に生えていたキノコも彼女を魔族の用心棒に仕立てあげたため、アラクネメシスもそのキノコでコントロールしてても不思議ではないと考えた。
「でも取ってつけたような制御能力だから、次第にボロが出るようになってきたんだ」
伝説の魔神獣をコントロール下に置いたのは天晴であるが、それでも何処まで通用するかは別問題である。
「それがお主の見据えている勝ち筋かのう?」
ユウキュウはキノコのコントロールを無効化して、魔神獣の意識を取り戻させることがルアーネの作戦なのかと訊ねるも首を横に振られる。
「ボクらが取り返すのは…スザクちゃんだけだ!」
「ひゃあっ♡はうん♡これは…木の根?」
既に血管のような触手に身体を蝕まれていたが、近くの石の床を破って伸びてきた木の根がスザクの足を這い上がり、血管にも負けじと魅惑的な身体を堪能するよう根を張り巡らせる。
「スザクちゃんの力を…今度はボクらが貰うよ!」
「ひぎいいっ♡いやっ…激しい…♡」
「ふおっ…!?スゴい…」
「これは…確かに…♡」
「気持ち…良いかも…♡」
木の根から乾きを癒すようにマナミナを吸い上げていくと、体力が回復するだけでなく多幸感も吸い上げているのかルアーネと増えたルアーネ達はスザクと同じく余りの快感に顔を緩ませ膝から崩れそうになる。
「くうっ…♡試しに…爆炎魔法『バースト』!」
『ぐぎゃああああ!?』
快感に抗うようにルアーネは爆炎魔法をトードナの顔面に命中させる。当たるとタイヤが破裂したような音と衝撃と共に炎が広がり顔の肉を抉る。
『き…ぎざまぁ…!?よぐもぉ…わだじの顔に…傷をぉ…!?』
「…元から醜かったがこの方が自然と見れる面構えになったのう」
ユウキュウは平然と言ってのけるが、今のトードナは顔面の肉が抉れて傷どころか頭蓋骨が少し見えていて、慣れない人間が見たら吐き気を催しただろう。しかし元から心が醜かったため、それを考えれば割と見れないこともなかった。
『こんなことしてもすぐに……!?』
ダメージはすぐさまスザクの身体から奪った再生能力で回復するかと思われたが、いつまで経っても何も変わらないことに違和感を抱いた。
「ああああ…♡うっ…くううっ…♡ふはあ…♡ルアーネ、気持ち良いよぉ…♡」
「ちょっと…ボクも集中してるんだけど…♡」
「けど…くうんっ…♡ヤバい…♡」
「頭…真っ白になりそう…♡」
振り返ってみると石の床を突き破った木の根がスザクや血管に根を張り巡らせて、そこからマナミナや血肉を横取りしていたのだ。しかもその際にスザクだけでなくルアーネ達も快感に蕩けた表情を浮かべていた。
『きいいいいっ!貴様ぁ!?何をしている!?』
爆炎魔法で折角の美人顔を傷物にされて苦しい思いをしているのに、回復力を横取りされた上に気持ち良い思いをしているルアーネにトードナはヒステリックな雄叫びを挙げながら斬れ味を持つ糸を射出する。
「くふぅ…♡知ってるかい、蜘蛛の糸は火で溶けるんだよ?火魔法『フレイム』・ウェーブ!」
快感に腰が砕けそうになっているためカッコ悪いが、先程の意趣返しと言わんばかりにスザクの炎を利用した火魔法で糸を焼き溶かす。
「これでボクらは不死身になった。条件は五分…どっちが勝つかな?」
両者とも永遠の命を持つフェニックスの力を奪いながら戦うことになり、史上類を見ない永遠の戦いが幕を開ける。




