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それぞれの思惑は交差していく

「つまりあたしらはこの森から奏でられる不思議な音に操られてたのか」


「今は(わし)ら耳栓をしているお陰で何ともないんじゃな」


その頃ルアーネの手によって幻惑状態から復帰したレイラ達は事情を聞いて周りの木々をまじまじと見ていた。


「それにしても周りの木がなんでリュクウ達に夢みたいな物を見せてきたの?」


確かに音が鳴る木は珍しいが、思い返せば音で人間に幻覚を見せてくるなんてとても信じられなかった。


「分からない。けど、周りの木から強い憎悪が伝わってくるんだ。きっと違法伐採をされて人間に対して敵意を抱いているみたいなんだ」


ルアーネの持つゴッドプレシャスである『賢者の書』は神樹イグドラシルから作られているため、周りの植物が人間に対して憎悪を抱いているとルアーネに汲み取れたのだ。


「敵意だって?そんなこと植物に可能なのか?」


幻覚を見せてきたこともだが、基本的には意思を持たないはずの植物がここまでのことが出来るなんて並大抵の植物の力とはステラには思えなかった。


「例え口を聞けなくても植物にも生きようとする生存本能が存在するんだよ。それは見方を変えれば意思や心があるのと同じさ」


違法伐採されても木々は文句は一切言わないが、それでも種を遺したり、日光を浴びようと枝や木の葉を伸ばし、例え周囲に人工物があろうとも根を張って生きようとする生存本能は人間には計り知れない。


言ってみればそれこそが植物の意思であり、自分達を脅かす存在である人間に敵意を抱いても案外不思議ではないだろう。


「いずれにしてもアメジスちゃん達がバラバラになったのはマズいね。何とか合流しないと」


ただでさえ樹海でバラバラになるのは危険なのに、アメジス達は幻覚に惑わされたまま離れ離れになってしまっているため急いで合流した方が得策だった。


「合流も何も仮にルアーネの話を鵜呑みにするのなら、あたしらは敵対意識を持ってる連中に取り囲まれているのと同じだぞ」


「もっと言えば儂らの敵は木々だけとも限らんぞ…その辺の雑草も…」


違法伐採されているとは言え、辺りは木や草や花と植物に囲まれているのだ。本当に植物が人間に対して敵意を抱いているのなら、自分達の周りは敵だらけと言うことになる。


「でも、ルアーネお姉ちゃんがいれば大丈…きゃあっ!?」


ルアーネがいればなんてことはないさとリュクウは自信満々に答えるも、歩き出した直後に足首に(つる)が巻き付いて彼女を逆さ吊りにしてしまう。


「くそ、言った側から…ぶわっ!?」


木に登ってリュクウを助けようとするレイラだが、咲いていた花から黄色い液体が浴びせられ落下してしまう。


「何だこれは…ベタベタして甘ったるいな…」


「花の蜜のようじゃな。安心せい、儂が全部舐め取ってやろう。ペロペロとな」


「ひゃあっ!?止めろ!くすぐったいだろ!?」


花の蜜なら舐め取れば良いとユウキュウはソフトクリームを舐めるかのように、レイラの身体に沿って舌を這わせていく。


「うう〜…何か頭が変になるぅ…」


「リュクウ!ちっ、マジで敵だらけらしいな」


「どうしたら…」


そうこうしてる間に逆さ吊りにされたリュクウは頭に血が昇りぐったりし始め、さすがのルアーネも焦り始める。


「…そう言えばボクだけは襲われてない」


だが、ふと自分だけが襲われてないことに気が付くルアーネ。彼女だって周りの植物に襲われていたら『自分自身だけが現状に焦っている』と言う答えに行き着かないし、ある程度考える余裕があるのも何よりもの証拠だ。


「もしかして…聞いて!ボクは神樹イグドラシルに見初められたルアーネ・ハルフォント!君達の異変を感じてここまで来たんだ!お願いだ!ボクの仲間に手出ししないで!」


根拠がある訳ではないが自身が保有する賢者の書から神樹イグドラシルのオーラが出ているために、周りの植物達を畏怖させているのではと考えたルアーネはダメ元で頼み込んでみる。


「わうっ…!?な…何なの?」


「はあ…はあ…何か雰囲気が変わったか?」


突然リュクウを逆さ吊りにしていた蔓は彼女をゆっくりと地面に下ろす。花の蜜をユウキュウに綺麗に舐め取られるも何かが汚れてしまったレイラも森の雰囲気が変わったことに気が付く。


「何じゃ、木々がザワザワし始めておるぞ」


木々の枝や木の葉が擦れて森全体がザワめき、何処か不思議で心優しい歌を奏でているようだった。


「はふぅ…どうやらシンフォニーフォレストはボクらに敵意を抱くのを止めてくれたみたい」


やはりここに来る前から今現在に置いてそれに応えられたのはルアーネだけだった。他の面々からすれば単なる森のザワめきだが、彼女からすればそれは森からのメッセージだった。


「いきなりどうして…」


「何を言ったのじゃ」


幻覚を見せるほどの敵意急に失くすなんて、どんな交渉術をしたのか知りたいぐらいだった。


「ボクは何も…「皆さん〜!」彼女のお陰だよ」


ルアーネの台詞を遮るようにずっと探し求めていた声が聞こえてきて全員の顔が明るくなる。そして目の前に再会を待ち望んでいたと言わんばかりに忙しなく(はね)を羽ばたかせながら彼女は現れた。


「皆さん!来てくれたんですねー!」


「「「ニナ!」」」


「お姉ちゃん!」


突如としてディアバトロスによって攫われて行方知れずになっていたニナが妖精の姿となって一同の前に現れたのだ。


「無事だったんだな。でも攫われたのにどうやって逃げたんだ」


無事なのは良かったがそもそも攫われたのなら身代金やら要求があると思っていたが一切なく、それどころかニナはこうやって五体満足の無傷の状態で再会したことをステラは疑問に思う。


「それは…妖精族の方々が私のことを追放者の上に裏切り者と判断してここへ連れて来て…」


「やっぱり君は妖精族と何かいざこざがあったんだね」


妖精族は滅多に人前に姿を現さないため、自分達の存在が知れ渡るような追放者は珍しい。そのため住処を脅かされた妖精族は何かしらの理由で追放したニナを騒ぎの元凶としてシンフォニーフォレストへと連れ去ったようだ。


「それなら尚更解放された理由が分からねぇな」


話を聞く限りでは妖精族はニナを大罪人として扱っているのに、解放してレイラ達の迎えに寄越させるなんて本末転倒のような気がする。


「先輩が学園長の名前を出したことと、その力の一部を持っていることが認められたことでセレスティア様の元へ案内せよと命を受けました」


事情を説明し終えると周りの木々がまるで道を譲るかのように木の幹が(しな)って見通しが良くなる。それにより日当たりも良くなるが、何処か自分達に道を指し示しているかのようだった。


「光の指す方へ行けと言うことかのう?」


「そうだろうね。ボク達が何者かどうかを見極めるために…行こう」


どっちにしても行く宛もないし、シンフォニーフォレストでの異変のことも色々周知しているはずだと考えたルアーネ達は敢えてそちらへ進むことにするのだった。


「人間だ…」


「獣人もいるー」


「セレスティア様は何をお考えなのだ」


光を浴びながら木々の間を潜り抜けるとそこには赤や青と言った単色を基調に白い斑点があしらわれたキノコを彷彿とさせるミニチュアサイズの家が転々としていた。


そして家の中と外、更には空中にはニナと同じ妖精達が滅多に来ない外界からの来訪者に心配な様子を見せたり互いにヒソヒソ話をしていた。


「本当にニナお姉ちゃんみたいな妖精がいっぱいいるね」


「しかし歓迎はされてないようじゃな」


こんなに妖精が集まっている所を見るなんて一生に一度あるかないかぐらいだ。そんな滅多にない機会なのに妖精達の冷ややかな視線に居心地が悪くなってしまう。


「あなた達ですね、神樹イグドラシルに見初められたニナの友人と言うのは」


妖精達の集落の奥には屋久杉のような長い年月を掛けて成長した大樹があり、その根元には慈悲と優しさと母性に溢れた慈母像が生きて動いているかのような美女が待ち構えていた。


「綺麗…」


「あれが…妖精族の王…セレスティア…」


一目見ただけでその女性こそが妖精族の王であるセレスティアであることは間違いなく、リュクウでなくとも彼女のを目にした途端に語彙力(ごいりょく)が失くなって言葉に詰まるのも無理もないほどの神々しさがあった。


▷▷▷


「うわあああああ!?……ああああ…♡」


ルアーネ達が神聖な場所にいる間でシンフォニーフォレストの別の場所ではそれとは正反対の背徳的な色っぽい喘ぎ声が響き渡っていた。


「あ…ああ…かはっ…もう…止めてぇ…♡」


声の主は老木に手足が取り込まれ、身体を大の字に拘束されたスザクだった。口ではそう言いながらも、顔が赤く心の底では待ち望んでいるようで思わず生唾を呑んでしまいそうな艶姿だった。


「そんなこと言いながら物欲しそうな顔をしてるわよ」


それを満足そうに見ていたのはアルノだった。彼女も彼女で興奮しているのか、赤らんだ顔をしながら先程受けたであろう刀傷を治癒していくスザクの素肌に指を這わせる。


「次は毒に対してはどうなるかしら」


そう言うとアルノの白衣の袖からムカデが這って出てくると、狙い澄ましながら顎をカチカチさせてスザクの胸、正確には心臓に向かって毒液が(にじ)み出ている牙を突き刺した。


「あああああ♡む…胸が…苦しくて…何かジワジワしてくるぅ…♡」


心臓に鋭利な刃物が突き刺さる苦痛でもスザクには快感の一つでしかなかった。


「今あなたに複雑に調合した毒液を流したわ。心臓は血液を送り込むんだけど、それと同時に今ので毒液が全身を駆け巡るわ」


しかしただ突き刺しただけではなかった。心臓の機能を利用してアルノは毒液をスザクの体内に流しており、その効果はすぐに現れ始めた。


「あ…ああ…♡あぐぅ…足が…骨から…溶けちゃう…♡」


なんとスザクの左足の皮膚や筋肉、骨までもがみるみる溶解し肉片となって足元に落ちていくのだ。しかしスザクは溶ける苦痛とそこから不死鳥の炎による再生によって快感を得ていく。


「っ!?ぐああああ!?腕が痛いいいいぃぃぃ!?……ああああっ♡あぐぅ…うああああ♡良い…♡気持ち良いいいよおおぉぉぉ♡」


すると快感が遮断されたかと思えば右腕に脈打つ度に強い激痛が走り断末魔を挙げるスザクだが、すぐさま足が溶けた時よりも強烈な快感となって甘美な断末魔を挙げる。


「うぐぅ…♡らめぇ…♡頭…おがじぐぅ…なるぅ…♡」


「快感を一度遮断してから激痛を与えられるとその後の快感が堪らなくなるようね。もうこんなにぐちゃぐちゃじゃない」


特殊なキノコの力でスザクは神経系を支配され、あれから何度も快楽神経を遮断されてからダメージをストレートに与えられるも、すぐさま今まで以上の快感となって肉体を襲うの繰り返しをアルノから行われていた。


スザクを拘束している老木の根元には彼女の血や汗や体液による水溜りが出来ており、どれほどアルノの研究と称した残忍な拷問が行われたかを物語っていた。


「次は回復にも限界があるかどうか調べてみようかしら」


そう言うとアルノは指を弾くと老木の樹指を突き破ってヒルのようなヌルヌルとした粘液に塗れた触手が出てきたのだ。


「あなたを拘束しているこの木も私のお手製…しかもあなたを拘束するように耐火性にも優れているわ」


アルノはスザクの耳元で拘束している老木に付いて説明するが何が言いたいのか分からなかったが、端から聞くとこれから更にどんな凄惨なことが行われるか説明しているようにも思えた。


「だからあなたの炎を受けても決して燃えて灰になることはない…寧ろ元々死にかけているからあなたの炎を受けるとより生き生きするわ」


「つ…つまり…?」


快感と絶頂を何度も与えられて頭が働かないスザクはアルノの言っていることを理解出来なかった。


「これからあなたに更に何度も苦痛を与えてあなたの再生能力に限界があるかどうか確かめるわ。方法はこれまで通りダメージを与えるけど、再生した側からあなたの肉体とマナミナを奪っていくわ」


「んっ…くっ…♡」


言い終わるとヌルヌルの触手がスザクの身体に巻き付き、手足はもちろん敏感な部分を執拗に責めるかのように絡みつく。


そして触手から火花が散った瞬間に青白い電撃がスザクの全身を襲い、一部の触手は先端にヤツメウナギのような牙が円状に並んだ口が出現しスザクの皮膚を食い破って肉を抉り食っていく。


「はぎゃああああ♡がっ…ああああ!?きっ…いあああああぁぁぁ♡」


電撃と身体を食い破られる激痛はすぐさま快感になるも、キノコによって快楽神経を遮断され単なる苦痛になるも、すぐさま再び快感に変わってスザクの身体を襲い続ける。


「これは今まで通り。本題は…これからよ!」


再び指を弾くと赤い目が不気味な黒いクモと、大きな口が特徴的なイナゴの大群が現れる。どちらも鋭い牙を兼ね備えており、獲物を貪り食うのに適していると言っても良いだろう。


「まずは『ドラキュランチュラ』、彼女のマナミナを根こそぎ奪うのよ」


ドラキュランチュラと呼ばれるクモ達はスザクの身体に向かってその名の通りドラキュラのような鋭い牙を鉤縄(かぎなわ)のように飛ばし、彼女の皮膚に突き刺していく。


「かはっ…♡いいいいっ…♡す…吸われてる…♡あたしの再生したマナミナ…吸い出されるううぅぅぅ♡ああっ♡」


突き刺さった牙はスザクが再生の炎で復活させたマナミナや体液を片っ端からストローのように吸い、ドラキュランチュラの身体へと続く肉の管を介してドクドクとポンプのように吸い出しては飲んでいく。


「回復魔法とはどう違うのかしら。オートヒールでも回復するためにマナミナを消費するけど、それが失くなるとオートヒールは効果を失う…あなたはどうかしら?」


「あがっ…ぐああああ!?きひっ…いいいいっ♡」


マナミナや体液を吸い出される中でもスザクは激痛と快感の繰り返しを受け続けるも肉体とマナミナの再生も同時に繰り返していた。


「肉体もどの辺まで耐えられるかしら?『クラスターバイト』」


今度はイナゴのモンスターの大群がスザクの身体に群がる。電撃や触手なども意に介さずクラスターバイト達はスザクの身体を食い破っていき、指や耳などは噛みちぎっていく。


「ぎゃああああ!?かはっ…ひへぇあああ♡やめ…そんなとこ…齧っちゃ…あん♡ぐっ…ぐああああ!?ふぐぁ…♡そこ…ぐちゃぐちゃしないでえええぇぇ♡気持ち良いいいいいっ♡」


再び激痛と快感、そして再生の繰り返しがされる中でお構いなしとクラスターバイトと触手達は皮膚を食い破っては中の内臓を果実の中に侵入した虫のように食い荒らしていく。


「あがっ…♡きひひひっ…♡やめ…へぇ…♡本当に…♡あだま…おがじぐなっちゃう…♡何も…考え…られにゃい…♡」


内臓を生きたまま食われる激痛、マナミナや体液を吸われる脱力感、そして肉体を幾ら損傷しても再生の炎によって瞬く間に再生しては再び損傷の繰り返し…どれを取っても死んだほうがマシとも言える苦痛だがスザクには全て快感、或いは単なる耐え難い苦痛として受けるもすぐさま強烈な快感に変わって何度も絶頂していた。


しかし何度も絶頂を繰り返され続けたことで流石のスザクも快感に(とろ)けた顔で本当に気がおかしくなりそうだった。


「ふふふっ…止めないわよ。そう言いながら物欲しそうな顔しちゃって…あなたの精神が壊れようとも再生能力が限界を迎えるか、私の自慢の食いしん坊モンスター達が限界を迎えるか…試してあげるわ!」


「そ…そんにゃあ…♡ああっ♡またぁ…♡いやああああ!?痛いいいい……かはっ…♡あああっ♡」


まだまだこれからだと言われ、再び肉体を損傷する度に再生と苦痛と快感が押し寄せ悲鳴を挙げるスザク。


「あなたにも協力して貰うわ」


「はい、ご主人様」


後ろを見るとキノコが生えて、アルノの操り人形になったアメジスが前に出てスザクに歩み寄る。


「苦痛はもちろんだけど、快感の度合いによって再生能力は変わるのかしら?」


「アメジス…何を…ああん…♡」


具体的な命令はしていないがアメジスは先端がハートの形をした夢魔(サキュバス)の尻尾をスザクのヘソの下辺りに押し当てる。


「こ…これは…」


押し当てられるとスザクのヘソの下辺りにはハート型の紋章が刻まれていた。


「それは夢魔の淫紋。分かりやすく言えば…快感を倍増させる印ね」


「『感度激変(フィードバック)』」


「っ!?がっ!?うああああ!?ああああぁぁぁ♡」


呪文を唱えると紋章が淡くピンク色に光り、途端に激痛と快感が更に倍増してスザクの肉体を雷に打たれたかのように襲うのだった。


「さあ、これで痛覚も…そして快感も今までとは桁違いになったわ。この状態で再生能力は何処まで持つかしら?」


「アメジスぅ…♡こ…これじゃあ…あたし…ぎゃああああぁぁぁ!?…はひゃあ…♡ひひひっ…♡ほ…本当に…壊れちゃうよぉ…♡あ…あああああぁぁぁ♡き…気持ち良い…♡気持ち良いよおおぉぉぉ♡ああっ♡」


感度が上がり過ぎて常人ならばショック死してもおかしくないレベルだがスザクは不老不死であるため決して死ぬことはないが、耐え難い激痛とそれ以上の快感と絶頂が伴う破壊と再生の実験にスザクは再び断末魔を挙げてシンフォニーフォレストに不協和音を響かせるのだった。


▷▷▷


「ん…ここは」


その頃、唯一単独行動をしていたミエナは偶然にもきな臭い貴族のトードナを追って屋敷に辿り着いた。


「人里離れた場所なのにどうして屋敷が…」


人が寄り付かないはずのシンフォニーフォレスト。それはつまり人が住むであろう邸宅がないことを意味するのだが、シンフォニーフォレストから離れた訳でもないのにこんな大きな屋敷があるのは不自然にも思えた。


(わあ、スゴい贅沢な造り…趣味悪いけど)


見張りがいたもののゴッドプレシャス『ファントムハート』を使って霊体化したミエナは見張りの目をいとも容易く盗んで屋敷に侵入した。


中は金をあしらった豪勢な作りだがきらびやか過ぎて目に毒だった。それだけならまだしも、やはりナルシストなのか飾られている絵画や像はトードナがモデルとなっており中には裸婦像みたいな物もあって悪趣味の極みだった。


(メイナスさんは何処だろう)


それはさておき、今はそのトードナに不本意な形で婿にされそうになっているメイナスを見つけるのが最優先だった。すると何処かで饗宴でも行われているのか賑やかな音楽が聞こえてきた。


「ひゃはははは!そうだ、踊るのだお前達よ!」


音がする方へ向かい、壁をすり抜けて中を見てみるとトードナがやたら豪華な玉座に腰掛け、皿に盛られたフルーツやお菓子の盛り合わせをバクバク食べながら余興の踊りを見ていた。


その踊りをしていたのはまだ年齢が二桁になったばかりか或いはそれ未満の年齢の男の子達で、見た目は多くが中性的で服装は踊り子の衣装のようにやたら露出が高かった。


「何をしておるのだ貴様!キチンと踊らんか!」


すると一人の男の子の踊りが他と比べて(つたな)かったのが気に食わなかったトードナは食べかけの果実を投げつける。


「ごめんなさい!?ごめんなさい!?」


「貴様、私を愚弄しているのか!」


その男の子はトードナに怯えながら平謝りし、必死に追いつこうと踊るも我武者羅な踊りになってしまいトードナを不機嫌にさせてしまった。


(何なのこれ…あんまりじゃない!)


余興だろうが恥ずかしい格好で踊りをさせられている男の子達が酷い扱いを受けている光景にミエナは嫌悪感を覚える。


「トードナ様、彼はまだ新入り…それくらいで許してあげてはどうでしょうか」


見えないのを良いことにミエナは少し引っ叩いてやろうかと思っていたが、トードナと踊り子の男の子の間にアラビアンナイトのような衣装を身に着けたメイナスが割って入ったのを見て思い留まる。


「ふん、興冷めだ。片付けをしておけ」


一応は婚約者だと言うのにメイナスを見ても不機嫌は変わらず、メイナスと踊り子の男の子達に後片付けを押し付けて部屋を後にした。


「大丈夫かい」


「はい…」


トードナがいなくなったことでその男の子は泣き出してしまい、メイナスは背中を擦りながら励ますのだった。やがてその男の子は仲間の踊り子達の元へ向かい言われた通り後片付けを行う。


「メイナスさん…」


「…っ!?……ミエナかい?」


メイナスが一人になったのを見計らってミエナは霊体化したままコッソリと話し掛ける。


「どうしてここに…いや、きっとこの森の異変が全ての元凶だと分かってここまで来たんだね」


仲間とのまさかの再会に驚くものの、屋敷があるシンフォニーフォレストで何が起きているか周知しているためすぐに納得するのだった。


「皆もここにいるのかい?」


ミエナと再会出来たのは嬉しかったが、ここには彼女しかいないのかと他の仲間達の所在も訊ねる。


「皆とここへは来れたんだけどね、気が付いたら皆と離れ離れになってて今は何処にいるかは分からないの」


「…分かった。取り敢えず君だけでもこのことを知ってて欲しいんだ」


出来れば他の仲間達にも自分が得られた情報を周知して欲しかったが今はミエナだけに伝えることにする。


「トードナの狙いは…このシンフォニーフォレストの何処かにあると言う戒めの神殿の『願いの精杯』だ」

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