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掘り出し物は高くつく

「スゴいな…この辺では見られない動植物にレアアイテム…それに非合法そうな物がたくさんある」


テントの中では色以外を除けばほぼ同じペストマスクを身に着けた人間達が大勢いて、日常でよく見かける物もあれば、滅多に見かけない物や怪しげな物などを売り買いしていた。


「あんまりキョロキョロするなよ。逆に怪しまれるからな」


外とは景色が違って見えるため、思わず辺りを見てしまうも提案しただけあってこう言うことは慣れているステラが釘を刺してくる。


「それにしてもカラスとは不吉なマークだね」


「カラスって黒い鳥のことだろ。何で不吉なんだ」


カラスは夕暮れ時には多く見られるし、何もしなくとも割とよく見る鳥なのに不吉とはどう言うことかスザクには分からなかった。


「昔からカラスは地方によっては不吉の象徴とされているんだ。田畑の作物を荒らしたり、不幸を運んだりとかね」


「そうかなぁ、あたしはたまにカラスと一緒に飛ぶけどそんなことないけど」


同じ鳥であるフェニックスのスザクからすればカラスがそこまで悪いイメージを抱いているようには思えなかった。


「まあ、あくまでも僕ら人間の勝手なイメージさ。僕が言いたいのはカラスの中でもシンボルに使われているあのカラスはとても悪いカラスだからね」


しかしメイナスが不吉だと言ったのはテントのシンボルマークのカラスだった。


「あれは『ヤシャガラス』と言って『強欲』の象徴とされる幻獣なんだ」


「幻獣…フェニックスと同じなのか」


シンボルマークにされていたのはフェニックスと同じく幻獣と称されるヤシャガラスであり、自分と同じ存在なのかと思いスザクは興味本位で訊ねる。


「そうなるかな。まあ、それを言ったらセイリュウだって幻獣の一種さ」


「ほへぇ〜…そう言えば強欲ってなんだ」


「欲張りってことだよ。ヤシャガラスは様々な多種族から金銀財宝を奪い取ろうと悪行の限りを尽くし、強欲のシンボルになったのさ」


ヤシャガラスは巨大な闇のような翼で辺りを暗闇に包み込み、三本の脚で財宝を奪い取り続けたことで多各国を財政難にさせたことがある。しかも高い知性を有しており、生活必需品や食糧なども占領しては自分の良い値で取り引きし、年貢や税金などを取り立てては搾取し続け幻獣にしては巨万の富を築いたと言う。


「この闇ルートの取り引きも欲張りな人のために用意された非合法な商いってことさ」


とどのつまり、テントにヤシャガラスのシンボルマークがあったのはここは強欲な人間に取っては掘り出し物市場と言うことになるようだ。


「おい、それまでにしとけ。目当ての黒い野菜を手に入れるぞ」


「そうだね。何処にあるの?」


非合法な取り引きをしている人間に取ってメイナスの説明は気持ちのいい物ではないし、今すべきことは例の黒い野菜を手に入れることだった。


「お嬢さん、お嬢さん」


「あたし?」


すると子供とそんなに変わらない身長の胡散臭(うさんくさ)い老人がスザクに話しかけてくる。


「この花…いらないかい?気持ち良くなれるよぉ〜?」


老人は色とりどりの花を束ねた花束を怪しい売り文句を言いながら見せてくる。


「気持ち良く…」


しかしその売り文句にスザクは惑わされてしまい手を伸ばそうとする。


「待って、危ないよ!」


「お?ミエナか?」


しかし透明になっていたミエナが慌てて止めに入ってくる。


「危ない花かもしれないよ!」


「なんだ、何処から声が…くそ!?」


こんな怪しくない所がない場所で下手に触れるのは危険だと勧告すると、老人はカモを取り逃がしたと言わんばかりに舌打ちしながらその場を後にする。


「スザク、ミエナ、何してたんだい」


二人が着いてきていないこたに気が付いたメイナスは心配して戻って来た。


「スザクちゃんが変な花を触ろうとしてたんだよ」


「気を付けろ、離れ離れになると奴らの思う壺だぞ」


幾らスザクが不死身とは言え、生命まで奪われなくとも奴隷にされたり、金儲けに利用されたり、死んだ方がマシとも言えるような目に遭ってもおかしくないからだ。


「さあ、今度は離れ離れにならないようにね」


「ほへぇ…」


自分の監督不行届のこともありメイナスは目を離さないと言う様子を見せる中で、スザクは顔が赤くボンヤリとした様子を見せていた。


「あれ、スザクちゃん?」


「きゃああああ!?」


ミエナは肩を叩いて呼び掛けると聞いたことがない悲鳴を挙げたことにメイナス達だけでなく、周りにいた人々も何事かとこちらを見てくる。


「やだやだやだやだ〜!?見ないでぇ〜!?」


スザクは顔を真っ赤にして内股になり、両腕で体を隠すような素振りをしてモジモジしていた。


「スザク…?」


()()()()()よ〜!?見ないでぇ〜!?」


これはどうしたことか、いつもは堂々として…と言うよりも裸になっても平然としているはずのスザクが服を着ているのにも関わらず人に見られることを恥ずかしがっているのだ。


「えっと…どうしたの?」


「そんなに見ないでぇ〜!?見られたら…恥ずかしくて死んじゃうよぉ〜!?」


いつもなら死ぬような攻撃を嬉々として受け入れるのに見られるだけで死にそうになるなんておかしな話だ。


「なんか気持ち悪いな」


「ううっ…皆の視線が痛い…より恥ずかしいよぉ〜!?」


ここまで恥ずかしがる様子にステラだけでなく周りの人々も思わずドン引きしており、その視線がよりスザクを恥ずかしがらせることとなった。


「どうなってるの?」


「あ、この花は…」


こんなに恥ずかしがるスザクは前代未聞なためメイナスは原因を考えていると、彼女の足元に黄色のチューリップのような花が落ちているのを見つけた。


「それはさっきの変なおじさんが持ってた花だよ。きっとあの場から立ち去る時に落としたんどね」


「そうか、これはハズカシ草だ」


その花は先程の老人が持っていた花束の中にあった物で、メイナスはこれがハズカシ草と言う植物だと見抜いた。


「この花の花粉を嗅ぐと羞恥心が極端に上がるとされてるんだ。主にカップルが相手の恥じらう姿を見たいがためにプレゼントされることがあるんだ」


「えぇ〜、何その変なプレゼント」


とある場所ではカップル同士がお互いに恥ずかしがって焦れったいシチュエーションを作り出すために、羞恥心を上げるハズカシ草がプレゼントされると言う摩訶不思議な習わしがあると言うのだ。


「で、こいつは直るのか」


「はうう〜…顔から火が出そう…」


「まあ、一過性の物だからすぐには良くなるよ。それにしても肉体に大きな損傷や異常が起きない場合はフェニックスの力は働かないんだね」


多少のことはフェニックスの力で大丈夫かと思われたが、恥じらいが強くなるだけでは力は働かないらしく、しばらくスザクは恥ずかしさに悶えることとなった。


「ったく、目当ての物はここにあるぞ」


多少のトラブルはあったものの、ステラの案内で目当ての商品がある場所へと辿り着いた。


「いらっしゃい。何が欲しいんだい」


そこは出店と言うよりも箱に入れただけの品物を陳列させだけのブースであり、そこには値踏みするかのような愛想のない男が構えていた。


「黒い野菜ってのはあるか」


「それならこのシャドラゴラだな」


見せてきた箱の中には見ようによっては黒いマンドラゴラ、或いは高麗人参(こうらいにんじん)のような野菜が五本入っていた。よく見ると根っこの一部が魔族の角のように()じれていた。


「一本、五十ゴールドだ」


「さすがにそんなに持ってないよ」


「だな、高過ぎるからまけろよ」


この世界での為替(かわせ)だとゴールドは一万円単位となり、五十ゴールドは五十万円になるためステラがまけろと言うのも納得だ。


「これでも手に入れるのは楽じゃないんだぜ。運搬だって安かねぇんだ」


手に入りにくい代物は生産性がそもそも低かったり、非合法な物ならば監視の目が光るため運搬するだけでも相当神経を尖らせているはずだ。だからこそ売り手は値引きなんて冗談じゃないと言った様子だった。


「どうしても値引いて欲しいなら頼みがあるな」


「頼みだと?」


値引き交渉は売り手と買い手のどちらかが言い(くる)められることで決定するが、今回は売り手の方が頼みを果たせば取り引き成立だと話してくるためにステラは怪訝な顔をする。


「代わりになるレアなアイテムが欲しいとか、そんなんじゃねぇ。あっちの商会が見えるかい」


男が指差した先にはショーウィンドウにレアアイテムを展示したり、実際に使用して説明する実演販売をしたりなど大掛かりでやたら目立つ商会があった。


「ちょっとあいつらにちょっかいを出してくれれば三本をそっちの良い値で売ってやるぜ」


「営業妨害をしろってことかい」


「あいつらが客を独占して良いとこ取りするから商売上がったりなんだよ」


商売で黒字になるのは常に客足だ。客が多ければ多いほど儲かり、そうでなければ淘汰(とうた)されるまで赤字を出すだけだ。非合法なこの場所でもそれは変わらないのだろうが、唯一違うのは気に入らないのなら例え同業者でも手段を選ばないことだろう。


「どうする、でなきゃビタ一文も下げやしねぇぜ?」


「ふん、その約束は忘れんなよ」


「ちょっと、本気で妨害なんかする気?」


ニナを助けるために手に入れたい物があるのに、売り手が引き下がらない以上は他にないとは言え、ステラが商会を妨害しようとしていることにメイナスは難色を示す。


「バーカ、他に手があんのかよ。そもそもこいつらのやってることは褒められたことじゃねぇし、同業者から寝首を掻かれてもおかしくないことをしてんだ。ヤラれたらそいつはバカってことだよ」


これまで帝国の実験台にされ、グレーかブラックなゾーンで生きてきたであろうステラに取ってはこれ以上ない値引き交渉の材料であり、メイナス達とは育ちや環境が色々違い過ぎると格を示すのだった。


「妨害はあたしだけでやる。あんたらはそこの恥ずかしがりバカと一緒にそいつが逃げねぇようにしとけ」


話し方からして汚れ役は自分にしか出来ないと判断したステラは商人の男が手のひらを返して逃げないように見張りをメイナス達に託して商会に向かうのだった。


▷▷▷


「さあ、バルベス商会お墨付きの美女の奴隷が百ゴールド!お買い得だよ!」


「バルベス商会新発明の毒の魔道具だ。こいつを使えば大軍を纏めて始末出来る優れものだよ!」


指名された商会に近付くに連れて奴隷商売や使用すれば国を滅ぼしかねない魔道具などを取り扱うなど危険な匂いがより一層強くなってくる。


(なるほど、バルベス商会か。どうりでデカく商売してるはずだ)


バルベス商会はこの大陸に置いて五本指に入る大きな商会だ。表向き最先端の発明品や薬品、更にはレアモンスターのアイテムを取り引きするなど知らない人はまずいないとされている有名な商会だ。


だが、その裏では奴隷や違法なアイテムの売買、隔離指定や絶滅の危機にあるモンスターの密猟や取り引き、挙げ句には他の冒険者や開拓者が手に入れたり見つけたりしたレアアイテムを強奪すると言う黒い噂が絶えないのだ。


おまけに国家や貴族とも癒着(ゆちゃく)していて都合の悪い証拠や罪を揉み消す代わりに、悪どく手に入れた金品や商品を賄賂(わいろ)として渡すなどシンジケートの見本とも言える商会だった。


(こんな小さな街の闇ルートにまで加担しているとはな。メイナスの言う通り、こいつらもあのオッサンも大概強欲だな)


テントのマークが強欲を表すヤシャガラスが刻まれていたように、バルベス商会の表面上は綺麗でも腹の中はどす黒く貪欲ではあるが、あの商人の男も目の上のたんこぶである商会を手を汚さずにステラに潰させて、溢れた客を引き寄せて甘い汁を吸おうとする辺りかなり強欲でもあった。


『ギシャアアア!』


「Aランクの隔離指定モンスター『サイケデリックワーム』か」


商会を潰す方法を考えているとカマキリの鎌に蛾のような独特な模様の翅、そして大きな複眼をしたムカデのようなモンスターが目に入る。


このモンスターは凶暴性と攻撃性が高いのだが、最大の特徴はアクティブスキルの『催眠術』である。翅から出される鱗粉と複眼から放たれる催眠波で獲物の認識を狂わせる力があり、動けなくなったところを一気に仕留めるのだ。


以前に兵器として何処かの国に解き放たれた時は城が陥落し、王族は根絶やしにされたと言う歴史があるぐらいだ。


「催眠術か。あたしのと…どっちがスゴい?」


『ギシャア…!?』


しかし相手が悪かったとも言えるだろう。運悪く人間に捕まって取り引き成立まで目隠しされていたが、購入されるか自由になる前にステラと()()()()()()()()()


「なんかぁ〜…見られてないと見られてないで寂しいような…」


「どっちなの」


「あう!?やっぱり…恥ずかしいよぉ〜…」


「やっぱり恥ずかしいのかい」


「あんた俺と一緒にパフォーマンスで儲けないか」


見張りと留守番を任されたメイナス達は今だに恥ずかしくてくねくねしているスザクに苦笑いしていた。すると先程の商会のブースから騒ぎ立てる声がしてくる。


「なんだてめぇ!こんな欠陥品を俺に売る気か!」


「お前こそ!商品を盗む気か!」


「ぼったくりだ!ぼったくり!」


「弁償しろや!」


何が起きたかは分からないが購入者はクレームを言い放ち、販売者は代金を請求しているようだが、互いに納得がいかずに武器や魔法を使って乱闘騒ぎになっていた。


「あのお嬢ちゃん中々派手なことをするな。お陰で客足が遠のいていくぞ」


互いに後ろめたいことをしているため、騒ぎはご法度とされているため騒ぎに巻き込まれないように購入者達は商会から離れていく。


「でも、騒ぎが大き過ぎない?」


「一体何をやったんだろう」


どんな手段を使ったかは知らないが、これでは返って騒ぎが大きくなり人目に付いてしまうだろう。


「こりゃ今回はお開きだな。それで買うのかい」


潰してくれたのはありがたいが騒ぎが大きくて、これでは憲兵の目についてしまうと憂いた商人の男は野菜の取り引きを持ちかける。


「三本を三ゴールドで買うよ」


「良いだろう。ほらよ」


一応は非合法な取り引きを行う悪人ではあるが、約束通りこちらの良い値で売ってくれた。その証拠にシャドラゴラを先に三本投げ渡し、メイナスもそれに応じた代金を投げ渡すのだった。


「あばよ、良い一日をな」


「よし、後はステラと合流しよう」


「でも何をしたんだろう」


代金を受け取った商人はニヤニヤ笑いながらその場を去り、自分達も長居は無用だとステラとの合流を急ぐことにする。


▷▷▷


「おいおい、何してんだよ。テントの中がやたらに騒がしくなったと思ったら中の奴らが暴れ出したぞ」


待っていたレイラはメイナス達が出てくるであろうテントが騒がしいと思ったら、そこから大勢の人間達が殺意剥き出しで外に飛び出して戦っているのだから心配になっていた。


「ごめんね、シャドラゴラを手に入れるにはどうしてもね」


「とにかく手に入れたよ。例の黒い野菜」


「ふむ、こんなの初めて見たのう」


何はともあれ目的である黒い野菜であるシャドラゴラを手に入れたのだった。


「あの…それよりも」


闇取り引きの場での乱闘騒ぎに黒い野菜と印象深いことが目白押しだったが、それ以上に強い印象を与える存在にアメジスはおずおずと口を挟む。


「はわわわわ!?見ないでぇ!?恥ずかしいよぉ〜!?」


「えっと…スザクちゃんは何が恥ずかしくて厚着してるの?」


戻って来たメイナス達は無傷ではあるが、スザクだけはまだ恥じらい状態が治っていなかった。それどころか服を着ているのにまるで裸になったかのように恥ずかしがって、衣服はもちろん麻袋や布切れなど身に纏えるのなら何でも身に着けて体を隠そうとしていた。


「それは…ステラ、なんでスザクに催眠術なんか掛けたのさ」


「へへ、ちょっとしたイタズラだけだよ」


その原因は帰ってくるや否やステラが恥ずかしがるスザクに催眠術を掛けたからだった。


ステラは当初自身の持つ即死スキル『デッドアイ』でサイケデリックワームを仕留め、その肉を食らって肉体と能力を物にした。そして購入者には欠陥品を押し付けられたと思わせ、販売者には品物を盗んだと思わせる催眠術を掛けてバルベス商会の信頼を崩すように掻き乱したのだ。


その後で取り引きを成立させて野菜を手に入れたメイナス達と合流したのだが、引っ張られながらも恥ずかしがってくねくねするスザクを見たステラは何を思ったのか彼女にも催眠術を掛けたのだ。


「いつもは裸でも平気なくせに、素顔を(さら)すだけで恥ずかしくて死にそうだなんて笑えるだろ」


蛇の舌をチロチロ出しながらイタズラっぽく笑うステラは今のスザクの有様がとても滑稽(こっけい)でそれでいて新鮮に見えたのだろう。


「だからあいつに『お前は裸だ。服を着ていても裸に見える』って催眠術を掛けたんだよ」


「じゃからあんなに厚着をしているのか」


どうりでこれでもかと厚着をするのかと思えば、恥じらいが強まった状態で全裸に見えるよう催眠を掛けられたら服を着込んで雪だるまのようになるのも当然だった。


「わあああ〜ん!?恥ずかしいよぉ〜!?」


「確かに…可愛いかも♡」


ステラの言葉に同意したのはアメジスだった。いつもは平気で裸になりどちらかと言えばスザクに赤面させられる方だが、今回ばかりはスザクが見たことないほどに恥じらい赤面する様子は愛らしくて仕方なかった。


「ねぇ〜、スザクちゃん。少しで良いから顔を見せてぇ〜?」


それとは別にアメジスはスザクに対してとある扉が開きつつあった。


「はわ!?やだやだ〜!?見ないでぇ〜!?」


「おおっ、いつもはどんな攻撃も受けるはずのスザクが嫌がっておるぞ」


それは顔や身体を見せるのを恥ずかしがってアメジスの申し出を全力で拒否する有様にあった。その光景はアメジスでなくとも興味が(そそ)られる程だった。


「良いじゃないの〜、見せてよぉ〜。気持ち良いよぉ〜?」


「やあああ〜!?恥ずかしい〜!?止めてぇ〜!?」


「…スザクもスザクだけど、アメジスもなんか変な扉を開きやがったな」


恥ずかしがるスザクをこの目に焼き付けようと身に着けている物を剥ぎ取ろうとするアメジス。開きつつあった扉とは恥ずかしがるスザクを更に恥ずかしめようとする嗜虐心(しぎゃくしん)だった。


「ところでその野菜はどうやって使うの」


「夜行馬車を引く馬はこの野菜が好みでのう、賃金の代わりにこれで支払いをするのじゃ」


どうりで普通の賃金を受け取らないのかと思えば、特殊な馬車故にそれを引く馬がシャドラゴラを好むと言う。


「確かこの辺にも走っているはずじゃが…お、あれじゃな」


闇夜に不気味に灯る青白い炎が目に入り、そちらに向かってユウキュウを先頭に歩き出す。


「ガイコツ…ううん、ガイコツみたいな鱗を持った馬?」


「スケルホーンか。これはBランクのモンスターで夜間に置いてはほぼ敵無しの存在だよ」


馬車を引く馬の姿を見て驚いたが、最初は骨の馬の怪物かと思えば、よく見ると表面は骨のような硬質の鱗に覆われていて、(たてがみ)は青白い炎のようになったおどろおどろしい馬のモンスターだった。


「いらっしゃい。夜行馬車の利用かい」


「ああ、黒い野菜なら…って、あんたはさっきの!」


メイナスは馬車を操る御者を見て驚く。と言うのもその御者は先程の商人だったからだ。


「ちっ、どうりでこっちの良い値で売ったはずだ。夜行馬車に乗ってれば余分に持っててもおかしくねぇからな」


ヤケに円滑に取り引きが進んだかと思えば、シャドラゴラは彼が夜行馬車を運用するのに必須でたくさん所持していたのだ。そのため自分達は良い値で買ったのではなく余分にある物を高値で買わされたも同然だった。


「それで乗っていくかい?それとも良い値で買ってくれたシャドラゴラを無駄にするのかい」


「…『マンゾアスの密林』と『クリムゾングル』の中間地点である『ハーリアの街』まで」


さすがは非合法の売買で修羅場を潜っただけあって、完全にしてやったりの様子の商人にメイナス達は苦虫を噛み潰したような表情になるも、今は夜行馬車に乗って二つのダンジョンの中間地点となる街へ行く必要があった。


目的地を伝えた後、切符代わりであるシャドラゴラをスケルホーンに食べせた後に馬車の座席に座るのだった。色々あったもののニナを助けるための旅路がまた一歩進むのだった。

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― 新着の感想 ―
奴隷にされるスザク…R18で見たい展開だな…
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