第9話(地図2西方王国)
第9話
今回も周辺のお話です。
マリーとルカの西方王国の話。王国内で単に「王国」という場合にはこの西方王国のことを指す。
この王国には三つの領主階級が存在する。大領主たる公爵、中規模領主たる侯爵、小規模領主たる伯爵。彼らは諸侯と呼ばれる。西方王国には約500家の諸侯が存在する。
公爵・大公家は5家、侯爵家は数十家、伯爵家は数百家。
クロフォード公爵家300万石
ラスター大公家250万石
リシュモン公爵家200万石。
特にこの3大貴族が王国を動かしている。
ラスター大公家
西方王国は聖歴220年に神聖王国から独立する形で成立した。この時の初代王を西祖王と称する。西祖王にはラスター卿という優秀な弟がいた。内政・外交・諜報にたけた人物。西方王国の独立に際して功績が大きかった。その功に対して西祖王は弟に王国南東部の領地と大公の位を贈り報いた。以後その子孫は代々この大公の称号を名乗る事を許された。今に続くラスター大公家の祖である。
大公という位をもつのは王国で唯一ラスター家のみである。所領の大きさでこそ国内第二位だが、王国内での格式は第一位である。国家の祭典における席次は国王に次ぐ次席を占める。また、王家の血統が途絶えた時にはラスター家から王を出す決まりとなっている。
ラスター大公家は代々財務大臣として王国の財政を取り仕切っている。現当主ラスター大公ジャンは聖歴500年時点で年齢40代。王妃の弟として権勢をふるっている。
リシュモン公爵家
リシュモン公爵家の祖は初代西祖王の時代に武勲を立てて一代でその地位を得た。初代リシュモン卿は一介の騎士に過ぎなかったという。
独立戦争の際、単騎で敵陣に突撃して敵将を討ったとか、1000の敵兵が籠る城塞に単騎で突入してこれを陥落させたとか、西祖王が戦場を敗退した時には殿をつとめて1万の敵兵の追撃を阻止したとか、リシュモン公爵家の始祖伝説は嘘くさい逸話で彩られている。
しかし、一介の騎士が公爵の位を得るに十分な武勲があったのだろうと一般に信じられている。成り上がり者として軽侮されたというような話は伝わらない。
独立戦争に参加した貴族の複数の家には、戦場でリシュモン卿に助けられたとか、リシュモン卿と苦労をともにしたとか、リシュモン卿とともに武勲を挙げたとかいう伝承が数多く残されている。
そのような歴史的経緯からリシュモン家は代々王国軍元帥の役職を世襲し、軍事において強い発言力を有している。
当代の当主ダンは聖歴500年時点で年齢60代。20年前に発生した帝国の「大侵攻」を撃退した名将・豪傑として知られる。隣の神聖王国に侵攻しその王都付近まで侵攻した帝国軍。援軍として派遣された西方王国軍を率いてこれを撃退したのがダンである。
石高ではクロフォード家・ラスター家に劣るが、ダンの個人的力量から信奉者が多い。王国北方に領地を持つ。
クロフォード家
西方王国における最も古い家柄。王国西南端に広大な領地を持つ。500年前に大陸を統一した聖王の時代よりも古い時代から存在する名門である。王国西南端の港街クロン市をその発祥とする。その後長い年月をかけて周辺地域を切り取り大貴族となった。
西祖王の独立戦争時代にクロフォード家は難しい立場に立たされた。神聖王国側から挟撃の誘いを受けた。東の神聖王国軍と共闘して西から西祖王を討って欲しいと。もしそれを行えば西祖王は敗れたであろう。反対にクロフォード家が西祖王につけば王は東側の敵に注力できる。西祖王が勝ち独立を遂げるだろう。クロフォード家が味方した側が勝つ。そんな状況だった。
結果としてクロフォード家は西祖王に味方することを選択し、西祖王は勝利した。その功績から代々王国宰相の地位を与えられている。
いつの時代も西方王国王家にとってクロフォード家は恐ろしい存在でもある。王国の西側で強大な力を持っているのだ。神聖王国と手を結ばれて反乱を起こされると厄介だ。さりとてクロフォード家を取り潰せるほどの力が王家にはない。軍を西に向ければ東の神聖王国に襲われる。ゆえに懐柔して従わせるほかない。このような関係が建国以来ずっと続いている。
クロフォード家の強さの源泉は大陸南西端の港街クロン市を拠点とした海上交易だ。交易相手は南方大陸のマロン市。クロン市からマロン市までは船で2日と近い。
この大陸では海運がほとんど行われていない。大量の木材を使用する船が貴重で高価過ぎるからだ。大型船を建造できる技術者もほとんどいない。クロフォード家が独占している。この世界では海上交易はもちろん、船で兵士を運ぶとか船同士で戦をするとかそういう方向の発展もない。
大陸で唯一、このクロン市と対岸の南方大陸マロン市との間でのみ大規模な海運が行われている。貴重で高価な船を使ってもモトがとれるくらい、この交易の利潤は大きかった。この海上交易を独占しているがゆえにクロフォード家の力はその領地の石高以上に大きい。
クロフォード家の現当主リチャードは聖歴500年時点で年齢60代。自分の娘を王妃として嫁がせた。娘は王子を生んだが間もなく死亡。すぐ後にラスター大公家の娘が後妻となったため、王妃はラスター大公に暗殺されたのではないかと当時噂された。真相は不明のままである。
つまりクロフォード公リチャードは第一王子の祖父である。そしてルカの祖父でもある。第一王子とルカは従兄弟同士である。
地図2 西方王国




