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第8話(地図1)

第8話


 しばらくマリーとルカから離れて、周辺の人物や歴史のお話になります。


・・・・・


 むかしむかし、この大陸は群雄が割拠し戦乱が続いていた。今から約500年前、偉大なる大王が大陸を統一した。大王は統一国家の名を神聖王国とした。そしてその王国が存在する大陸は神聖大陸と呼ばれるようになった。


 大陸統一の偉業を成し遂げた偉大なる大王は「聖王」と呼ばれる事となった。そして大陸統一宣言の年を「聖歴元年」と定め、以後その世界の暦として長く用いられる事となった。


 聖歴220年、神聖王国の東西で反乱が勃発。


 王国内の大諸侯、西方大公と東方大公がそれぞれ王を名乗り独立を宣言。それぞれが西方王国、東方王国を名乗った。これが同じ年に起こったことはもちろん偶然ではない。双方が示し合わせてのことだ。

 神聖王国は鎮圧のために軍勢を差し向けたが、東西から挟撃される形であるために分が悪い。しかし国力においては神聖王国が東西の王国を圧倒している。


それぞれの国力は神聖王国9000万石に対して西方王国2500万石、東方王国2000万石である。

 

 膠着状態に陥った3国は和議を結ぶ。神聖王国は東西の王国の自立を認める。神聖王国国王のメンツを立て、東西の王国はそれぞれ神聖王国の優位を認める。神聖王国国王を兄、東西の王を弟とする。


 東西の王国の新王家はいずれも神聖王国の国王家とは遠縁の親戚であり、遡ればいずれも初代聖王にたどり着く家柄だ。そのような事情もあってこのような形の和平案がまとまったとされる。


 この時代には神聖王国の国力が他の2国を圧倒していた。しかし時代が下るとその差は小さくなった。なお、ルカとマリー達が属しているのは西方王国である。


 西方王国がはじめた学校制度。元々は王国内の諸侯の子供達を人質にとって閉じ込めておくための口実としてはじまった制度なのであるが、貴族の子弟に教育が行き届き行政能力が向上したために国内生産力が大きく増大した。学校制度がはじまってからの50年ほどの間に国内の農業生産力が倍増し、王国全土で石高5000万石を超えることとなった。ただし成長限界に達したのか成長はそこで止まっている。


 学校教育による国力向上。このような歴史的経緯があったために西方王国では他国に比べて学校教育が重視され充実している。


・・・・・


 東方王国は別の形で国力を伸ばした。3代王の時代に諸侯の全廃を断行した。それまで大陸の3か国はともに似たような統治形態をとっていた。公爵・侯爵・伯爵という領主階級が領地を経営し、王はそれらの上に立つという統治形態だ。


 しかし東方王国ではそれを廃した。かつて神聖王国の諸侯の一人であった東方王国王家。それが反乱を起こして自立したのである。同じ事が自国で起こらないとは限らない。


 王は「諸侯全廃」という奇策を思い立った。諸侯を廃し、そのかわりに試験で選別した優秀な役人を領主として配置する。領主は任期制にして4年後ごとに異動させる。もちろん諸侯は反発し内乱が起こった。相当の血が流れた。しかし王のこの大改革に成功した。


 この改革の後、王は自らの国を「帝国」と称し、自身を「皇帝」と称するようになる。以後、この国は東方帝国と呼ばれる事となる。


 世襲貴族を廃して優秀な官僚に領地を統治させた結果、帝国の生産量は倍増した。元々2000万石だった生産力が4000万石となった。しかし、帝国の躍進はここで止まらない。


 南方大陸征服。

 

 この大事業を帝国は成し遂げた。


 3国がある神聖大陸。その南方にはまた別の大陸がある。南方大陸と呼ばれている。南方大陸には南方王国という統一王国があり国力は大きい。統一神聖王国時代にも独立を保っていた。


大陸といっても地続きである。帝国領の南東端から細長い地峡を介して南方大陸とつながっている。地峡の幅は狭い所で数百メートルしかない。


 この細い地峡の北側と南側に要塞がある。南側には南方王国の要塞。北側には東方帝国の要塞。この要塞はかつての統一神聖王国が建国されるよりも以前からずっと存在する。どちらの要塞も地形的要因もあって難攻不落。かつて大陸を統一した聖王ですらここを抜くことができなかったと伝わる。


 帝国はここを落としたのだ。南方大陸側の要塞を陥落させた。名将ヤマダ元帥の奇策。それは帝国に伝わる有名な物語として現在も語り継がれている。


 国境の要塞を突破した帝国軍は南方王国を蹂躙した。初代王の独立戦争から3代王の諸侯全廃に伴う内戦まで戦乱の続いた帝国。その軍は精強だった。それに対して南方王国軍は弱かった。弱いだけではなく数も少なかった。数百年の長きにわたる平和により平和ボケしていた。国境要塞が突破される事を全く想定していなかった。


 かくして帝国は南方大陸を完全併呑し植民地とした。南方大陸4000万石。これを加えた帝国の総生産力は8000万石。大国となった。


 東方王国の3代王として即位した帝国初代皇帝。諸侯を全廃して国力を倍増させ南方大陸を征服。すべて彼一代の事業である。20歳で王に即位し85歳で崩御。在位期間は聖歴265年から聖歴330年。65年の長きにわたった。その偉業から大帝または東方大帝と称されている。


 大陸に存在する3つの国。西方王国・神聖王国・東方帝国。いずれの国も神聖王国初代聖王の子孫である事を統治の正当性としているため、現在にいたるまで大陸全土で「聖歴」が使用され続けている。


・・・・・


西方王国5000万石

神聖王国9000万石

東方帝国8000万石


 ここ百数十年、この状態で3か国が大陸に併存している。東方帝国は神聖王国を攻めたい。神聖王国は西をガラ空きにして東とは戦えない。西方王国は神聖王国と国境を争うこともあるし同盟を結んで帝国との戦争に援軍を送ることもある。


 神聖王国と西方王国では国内諸侯の対立で国内がまとまりにくく、東方帝国ではかつて優秀だった官僚システムが腐敗して国家をむしばんでいる。


地図1


挿絵(By みてみん)



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