第14話
第14話
マリーはルカに口づけし、そして何事もなかったかのようにまた席についた。
マリー
「あなたのそのお話。お受けいたします。」
ルカ
「本当ですか!?」
マリー
「ただし!」
マリー
「ただし、5年後です。5年後あなたの気持ちに変わりがなければ、あなたが二十歳になった時にもう一度今日の言葉をお聞かせください。その時、私は喜んであなたの妻になりましょう。」
ルカ
「5年後ですか? ずいぶん先の話ですね。私は今すぐにでもあなたと結婚をしたいと思っているのですが・・・」
マリー
「まあ、今すぐにですって? ルカ、あなたのご両親はこの話を知っているのですか?」
知っているはずがない。そんな話が通っているはずがないのだ。ルカ本人は良くても、マリーは罪人の娘で、子持ちの未亡人。そして祖父クロフォード公爵の政敵ラスター大公の愛人。
息子がそんな女と結婚したいといって素直に許す親はいない。
ルカ
「確かに両親にはまだ話していません。これから話します。必ず説き伏せてみせます。」
マリー
「難しいのではなくて? でもご両親が納得されないなら私は正妻ではなく愛人でも結構です。そのかわり、サラの結婚相手をあなたが責任をもってみつけてください。親権者として。」
ルカ
「必ず正妻にする。それにサラは自分の娘として、責任を持って良い嫁ぎ先をみつけましょう。」
マリー
「それに、来月から士官学校に入学でしょう?」
ルカ
「確かにそうだけど、男爵としての知行があるから結婚しても生活には困らないよ?」
マリー
「でもあなた、士官として武勲を立てて領地を得るのが夢なのでしょう? なら学業に精進なさい。」
確かにルカは常々そのように話していた。
ルカ
「じゃあ、2年後でも良いのでは? 士官学校は二年間だから。」
マリー
「士官学校を出てすぐに? それで一人前の士官と言えるのですか?」
ルカ
「・・・」
ルカには返す言葉がない。
マリー
「5年たてば私は27歳。決して若くはありません。それでも、もし5年間あなたの気持ちがかわらなければ、その時は喜んであなたの妻にでも愛人にでもなりましょう。」
ルカ
「5年でも10年でも、私の気持ちがかわる事はありません。」
話の流れ上、ルカはこう答えるしかない。
マリー
「まあ嬉しい。そのお言葉を私は信じます。」
マリーは立ち上がり、またルカの前に立つ。そして身をかがめてもう一度ルカに深く口づけをした。
・・・・・
(マリーの心境)
5年待てと言った。少年の恋心など熱病のようなものだ。時間が経てばすぐに冷めてしまうだろう。わかっている。それで良い。それでも自分はこの少年の言葉が嬉しかった。だからこうした。だからこれで良い。
舌を絡ませ長く深い口づけを交わしながらマリーは自分をそう納得させた。




