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どこにでもある至って普通の剣

道具屋の仕事はお客様への販売の他にも色々ある。その中でも重要な物と言えばそう、入荷だ。

店をする以上販売する品物が無ければ経営なんてできやしない。この店ではお客様から飛び込みの買い取りをすることもあるけど仕入れのほとんどは昔から付合いのある業者に任せている。

そんな業者の担当者がさっきまで来ていたわけで、現在店の裏には大量の在庫が山積みになっている。

表の方はベルが鳴るまで放置で大丈夫なのでとりあえずこの山を整理するところから始めよう。


と、整理を初めてしばらくして少し気になる物を見つけた。

物にも称号がつくことは以前話したかと思う。品物を整理する際念のため称号も確認するようにしているのだがその中で一つ目についた物があった。

見た目はごく普通の長剣で他にも同じような長剣を数本入荷している。

一般的な長剣という物の多くは称号欄に製造者の名前と“長剣”と記載があることがほとんどだ。時々追加で“〇〇が愛用した長剣”等の記載があることもあるがこれもまれなことだ。


そんな中見つけた長剣の称号欄はと言うと、ある種異様な存在感を放っていた。

“どこにでもある至って普通の長剣”

こんな称号始めてみたし逆に何かありますと言っているような物だと思う。

ただ残念なことに僕の称号眼は称号を見る事ができると言うだけなのでそれ以上の情報を集めることができない。

非常に残念でならない。

とりあえずしばらくは販売しないでおいて仕入れた業者に仕入れの経緯を確認してみようと思う。


それでも一つ確かなことがある。

それは、称号は嘘をつかないと言うこと。

これは僕がこのスキルと数年付き合ってきて分かったことだが、称号はその人や物のありのままを記す物だから称号欄に書かれていたことが嘘だったことは一度も無いのだ。

と言うことはつまり、こんなにもおかしな称号だというのにこの剣が“どこにでもある至って普通の長剣”であることは紛れもない事実なのである。


称号は本来見える物でも無いし称号が変わっているからと言って値段を上げるわけにもいかない。

なんせどこにでもある至って普通の長剣なのだから。

見た目も普通、性能も普通となれば値段を上げる要素が無い。


とは言え気になる物は気になる。

今回は仕入れの情報が分かり次第販売になるだろうけどそれまでは密かな僕の楽しみにさせてもらおう。

他にも長剣は何本か仕入れているし一本くらい置いておいたって困りはしない。


今回みたいに意味不明な称号がついていることも時々ある。

そんなときは今回みたいになぜそんな称号がついたのか調べられるところまで調べるようにしている。


なぜって?

そんなの面白いから以外の何があるって言うんだい?


この世界は地球に比べて圧倒的に娯楽が少ない。

だからこそどんな小さな事でも自分で娯楽を見つけないと退屈で仕方ないのさ。


そんな中で称号について考えたり調べたり妄想したりするのはとっておきの娯楽なんだよ。

と言う訳でこの剣は一旦僕のとっておきコーナーに保管しておこう。

もちろん調べがつき次第きちんと販売する予定だから安心してよね。



後日、業者から例の剣の仕入れについて確認したところ、この剣を打った職人が徹夜で同じ長剣を作り続けた際に「どこにでもある至って普通の剣」とブツブツつぶやきながら作業をしていたらしい。

職人のつぶやきまで称号にされてしまうなんてなんておもし…恐ろしい世界なんだろうね。


もちろん経緯が分かってスッキリしたから翌日には他の剣と同じく一般的な値段できちんと販売したよ。

お店に並べた次の日には売れたからきっとこの剣を作った職人さんも喜んでるね。


今度はどんな面白い称号が見られるか楽しみだね。

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