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2級冒険者

“カラン”


「いらっしゃいませー」


軽快なベルの音と共に本日のお客様が来店した。

革の防具を身につけて背中に大きな剣を背負った男の人。

何度か来店してくれている常連客様だ。


そんな彼の称号で代表的な物は「2級冒険者」だ。

実はこの世界、称号というものは簡単に着く。

何なら産まれた瞬間に「〇〇家長男」などが着いたりするしその後も家の立場だったり学校に行っていたらその名前だったり仕事だったり。

あまりにも簡単に着くから2桁になる人も多い。


他にも「苦労人、世話焼き、自由奔放」などなど一体誰が決めたのか分からないような称号もよくある。

ちなみに道具には所有者の名前や製作者の名前が称号として着いていたりする。


そんな風に簡単に称号が着くこの世界、スキルが制御できる前は本当に大変だった。


称号はRPGゲームなどでよくあるポップアップみたいな感じで見ることができる。

しかし、制御できるようになる前は視界に映るもの全ての称号が見えてしまったものだから日常生活もままならなかった。

何せ視界がポップアップで埋め尽くされて地面もほとんど見えていなかったからね。


あの頃はスキルを制御する事に命をかけていたと言っても過言では無い。

5歳児の僕、我ながらよく頑張った。


そんな訳で死ぬ気で制御できるようになった今は称号を見ようと意識を向けるとポップアップが現れるようになった。


同じ人や物でも知らない内に称号が増えていたりするから定期的に確認するようにしている。


なぜって?


そんなの面白いからに決まってるだろう?



例えば2級冒険者の彼。

彼の称号には新しく増えたものがあった。


「失恋」


そして以前まであった「彼女(溺愛)」が無くなっている。


そう、称号は消えることもあるのだ。

役目を終えたからなのか前はあったのに今は無くなっている称号も多々あったりする。


それもまた面白い。


4日前に彼が来店した時はまだ「彼女(溺愛)」だったので今日までの4日間で振られてしまったらしい。

よく見ると表情も普段より少し暗い。

やっぱり溺愛していただけあって引きずってるのかな。


どんまい。元気だせ。


彼を見る視線が何処か生温かくなってしまうのは許して欲しい。


そんな感じで出会う人の称号をこっそりチェックしている訳だがもちろん誰にも言ったりしない。

この世界には個人情報保護法なんてものは無いが誰だって自分の情報を勝手に見られるのは嫌だろう。

まして、称号を見れば人生が分かる。

隠したい秘密ももしかしたら見えてしまうかもしれない。


トラブルの元にしかならないスキルだけど好奇心は止められない。

だから僕のスキルの事は内緒だし見た情報も基本的には全て僕の心の内に秘めている。



それにしても失恋か。

仕事に影響が出る前に立ち直れたらいいな、なんて柄にもなく少し心配してしまった。



その5日後に「彼氏(受)」に変わってて度肝を抜かれたのはまた別の話。

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