5.加入試験
ならず者達に連れていかれた場所は、木製の門のような物がある異次元の佇まいだった。そこをくぐると先程まで歩いていた街並みとは別世界だった。
庭には池が揺れて不思議な形の木々を反射させた光で照らしている。所々に無造作に見える石が置かれ、なんだか見ていると不思議と落ち着くんだよなぁ。
「どうだ? いい感じだろう?」
「……はい。なんか落ち着くっす」
「ふっ。そうか。まぁ、入れ」
中へ入るように促され、建物の中へと入ると玄関で靴を脱げと言われた。不思議に思いながら靴を脱いで中へとはいる。
土足禁止の建物なんだなぁと漠然と思っていたのだが、顔を見てニヤニヤとしていた黒髪の男が口を開いた。
「この建物はなぁ。俺の趣味なんだ」
「……はぁ」
「そして、ギルド本部としても使っている」
ここがギルド?
異様な様相だなぁ。
さすがは、ならず者。
段差を上がると座敷になっていて、縁側の通路を進んでいくようだ。なんだか、庭を見ながら奥に行けるなんていいなぁ。
爽やかな日差しと頬を撫でる風を浴びながら、縁側を進む。その先にあったのは、三十人くらいで鍛練できそうなくらい広い訓練所だった。
汗と木の香りが鼻をぬけていき、ここで多くの人が鍛錬したんだろうことを感じ取れた。柱や床は年季が入っていて色濃く、時間の経過を思わせる。
「ここで、一応のギルド加入試験を行う。相手は……」
後ろを振り返ると、緑髪をハーフアップにした同じ歳くらいの女の子がこちらを睨んでいる。
「コイツは、お前のひとつ上だな……速さは俺達の中で一番だ。ニイナ。ほら?」
最初の第一印象は、細い女の子って感じだった。だが、雰囲気が重かった。
流石は、このならず者集団に居座っているだけあると思い、感心した。
「……よろしく」
俺は、一応挨拶したのだが。
「お願いしますでしょ?」
頬をひくつかせながら、睨みつけてくる。
年上なんだからと言いたいのだろう。
分かってはいるけど、実力を見せたらそれも消えるかな。
肉体には自信があるし、スピードには俺だって自信がある。負けねぇよ。
「……よろしく……お願いします……」
葉を食いしばりながら挨拶をする。こっちも怒りに震えながら、拳を握りしめる。
ひとつ上くらいで偉そうにするなよ?
こちとら年で実力を測ってねぇんだ。
こっちが上だって事を知らしめてやろうか。
「ふんっ。やればできるじゃない?」
背が低いくせに、上を向きながら見下ろしてくる女。この女……ぶち殺す。
体からアドレナリンが分泌されているのがわかる。ドクドクと出てくるものは俺の体を駆け巡り、頭と体を熱くする。
「……言ってろ」
「ぐぬぬぅ。生意気な男……!」
ニイナと呼ばれている女が少し離れて中央に立つ。逆手に木製のナイフを持ち、構える。
対する俺は拳のみ。
だが、だらーんと手を下げてブラブラとする。
構えは取らない。
その方が早く動けるからだ。
チラリと周りに視線を巡らせると、先程一緒に歩いてきた白髪の男と赤髪の女が見ている。その隣には知らない青髪の男。
俺は、一応注目されているってことなんだな?
やってやるさ。
こんな女になんか負けるか。
「では………………」
始め合図が来ない。
なぜだ?
「あー、お前、名前は?」
「……ゴウキ」
男は頷くと先程のことは無かったかのようにまた初め出した。
締まらねぇなぁ。
「……では、ゴウキのギルド加入試験を始める。……始め!」
開始の合図と同時にニイナが駆け出してきた。
一目散に首目掛けてナイフを振り下ろす。
それを体を反ることで躱した。
そのままバク転。
今度は俺が肉薄する。
ナイフを持つ手を目掛けて拳を振り下ろす。
「あんた……ナメてんの?」
ニイナは歯を食いしばり。
ナイフをまた振るう。
難なく避ける。
「別にナメてねぇけど?」
今度は上段蹴りを放ってきたニイナ。
それを左腕でガードすることで受け止めた。
そのまま半回転してナイフが迫り来る。
手首を抑えることで止めた。
この速さなら問題ねぇ。
俺の方が早い。
「チッ……本気出すわよ! 風よ!」
掴んでいた腕から暴風が吹き出し、思わず手を離す。
距離を取って状況把握に務める。
視線を巡らせた先に、ニイナはいない。
右。
左。
どこいった?
勘が教えてくれた。
「帯電」
雷を纏わせて後ろへ下がる。
一瞬後にニイナが上から降ってきた。
ナイフを突き立てて。
その隙を俺は見逃さない。
すぐに前進する。
──バギッ
床を踏み抜いた感触があったが。
今はそれどころではない。
一瞬で肉薄し、ニイナの背に手を当てる。
──バヂッ
ニイナは痙攣すると気を失った。
「やめ!」
黒髪の男は口角を上げ、獰猛な笑みを浮かべている。近寄ってくると、ニイナを抱えあげた。
「ソウエイ、ニイナを寝かせてきてくれ」
「御意」
青髪のソウエイと呼ばれた男は、ニイナを優しく受け取ると住居の方へと運んで行った。
「俺様は、コクロウだ。よろしくな」
手を差し伸べて握手を求められているようだ。
それに応えて握手をする。
試験は合格か?
「あのー、試験は?」
「おう。文句なしの合格だ。ハズレ属性と言われている雷属性しか使えないって事だったが……。あぁいう使い方するなら、問題ねぇな」
一応戦い方を確立したつもりだ。
それを認めてくれたなら嬉しい。
「ただ、近付かせてくれねぇ様な敵は沢山いるだろう。それを想定した訓練と魔法の開発は必要だな」
「はい。精進します」
「はっ! いいことだ。ようこそ、ギルド ローグへ」
コクロウは両手を広げて歓迎してくれた。
ここからだ。
俺の冒険者人生が始まる。




