3.追放
ヒュードルを倒してしまって次の日。朝から、職員室へと呼び出されていた。
朝から憂鬱な気分になり。これから、どうやって生きていこうかなぁと頭の中で考えを巡らせていた。
──コンコンッ
一応扉をノックして中へとはいる。
「失礼しまーす」
「来たなぁ! ゴウキ! 昨日は私の美しい顔をよくぞ黒くしてくれたなぁ! もう貴様はこの学院にはいられないぞ!」
はいはい。そうでしょうねぇ。そこまでは、想定通りです。どうぞ、退学処分を。
あまり驚きもせずに平然としていたら、それが気に入らなかったようだ。顔を真っ赤にして歯を食いしばっている。
「はーい」
適当に返事をしていると後ろから気配が。
振り返ると昨日の髭のジジイだった。
「おっ? ジジイ……」
「ぼっほっほっ。ちょっと良いかな?」
ジジイに道を開けるとヒュードルの前に躍り出た。一気に職員室内の空気がピンッと張り詰める。
「が、学院長! これはですね、教育の一環でして!」
「……ヒュードル先生。昨日は、生徒に向かって合成魔法を使いましたねぇ? しかも殺傷能力の高い、ファイヤーストームでしたか?」
おぉ? ジジイは学院長だったのか。だから、見たことあったんだなぁ。ヒュードルの慌てようはちょっとおもしれぇ。
ちゃんと見ててくれてたんだな。さてさて、学院長はあれをどう思ったのやら。
「いや、あれはですねぇ。そこにいるゴウキが、実戦を知りたいというから、だったら見せてやろうということで見せてやった次第ですよ!」
「ほぉぉ。闘技場に上がらせて、生徒に向かって殺傷能力のある合成魔法を放つのが実戦を教えるためだったと? そういうんですね?」
ヒュードルは顔を真っ赤にしたまま震え出した。怒りに震えているのかもしれない。
「そ、そうです! ゴウキが実戦を知りたいとい──」
「──大切な生徒に合成魔法を放つなど、していい訳がないでしょう?」
冷たい声が響き渡る。先程までの学院長の温かいような雰囲気はなくなり、今は凍てつくような冷たさを感じさせる。
ヒュードルは今度は顔を青くして震え出す。と同時に、壁が軋む。学院長からは魔力が漏れ出していた。
おおぉ。すげぇ魔力だ。ジジイ、やるじゃん。大魔法使いだと言われるだけあるな。このジジイなら、もっと雷魔法を知っているんだろうか……。
「わ、私は! 生徒のことをおもっ──」
「──もう結構。ヒュードル。あなたは、この学院の先生として相応しくない。立ち去れ」
「そ、そんな! なんで私が辞めないといけないんですか? ゴウキが悪いんでしょう!」
別に俺は悪くねぇし。何にもしてない。ただ、全力で戦っただけだ。
「雷魔法のみの適正の生徒を差別するような教員は要りません。お引き取りください」
最後の学院長の言葉を聞き、ヒュードルは荷物をまとめて去っていった。トボトボと歩く背中は、反省ではなく、怒りに震えているようだった。
「さて、ゴウキくん。君はどうしたいのじゃ? 学院に残るかね?」
「んー……。いや、辞めようかな。このまま宮廷魔術師になっても、多分楽しくない……。だったら、力を思う存分発揮できる冒険者になるわ」
「ほっほっほっ。そうかい。では、昨日言った通り、ギルドを紹介しよう。いくつかあるギルドの中でも、君に合うだろう」
そう言って懐から出した封筒を俺へと差し出してくる。少し戸惑いながらもそれを受け取る。中身はあとで見てみよう。
一応頭を下げて礼をする。
「ゴウキくん、その鍛え上げた肉体と、諦めない精神力。そして、雷の力。私はのぉ、君が頂きに立つということも不可能では無いと考えておるんじゃ」
「頂き?」
頂点ってことか?
冒険者の頂点ってなんだ?
「Sランク冒険者、帝じゃよ。今は、雷帝の席が空いておる。その席に座れる可能性は十分にあると思うんじゃ。精進するんじゃぞ?」
「えっ? 雷……帝……ですか?」
「ほっほっほっ。じゃあのぉ」
学院長は笑いながら、職員室を出ていった。その後ろ姿は大きくて。偉大な大人の風格を見せていた。
気まずい空気になっている職員室からいそいそと出ると、自分の部屋へ行って荷物をまとめる。
学院の門へとやってきた。振り返って大きな校舎を見つめる。ここへ来て、宮廷魔術師になるのが夢だった。
入学の時は、雷魔法の有用な使い方を学べると思ってワクワクしていたものだ。それが、蓋を開けたら、ただバカにされるだけ。
そして、痛めつけようとしてきた。でも、その結果自分のスタイルが発見できたのだから、いいのかどうかはわからない。
「雷帝か……」
さっきジジイが教えてくれた。冒険者の頂の話。今は、そこを夢にしたい。目標を失ったが、すぐに新たな目標がみえた。
「よしっ! 俺は、雷帝になる! 絶対だ!」
学院へ最後の挨拶に深々とお辞儀をし。
勢いよく頭をあげると振り返って歩き出す。
気持ちが高揚している。
ジジイのくれた封筒を開けてみる。
中には短い文が。
『この子を頼んだ。
ゴイス・ユーケス』
あのジジイが大魔法使い?
全然細くもねぇし、小柄じゃねぇ。
言い伝えってのは適当だな。
もう一枚入っていた。
『冒険者ギルド ローグ』
おいおい。この名前……。
大丈夫なのか?
このギルド?
口角を上げながら、一歩踏み出す。
その歩みは、これからの夢に向かっている。




