10.アサシンスタイル
しばらく休憩していたら、足は回復してきたみたいだ。力が入るようになってきている。これならば、まだ動ける。戦える。
「ゴウキ、どうだ?」
「いけそうっす」
「そうか。じゃあ、行くか。無理そうなら言ってくれ」
アセイさんの優しい声掛けに俺は嬉しくなってしまった。ならず者と言われているが、みんないい人だから。
「はい。ありがとうございます」
お礼を言って立ち上がると今度はニイナが近寄ってきて声を掛けてきた。
「あんた、緊張してんの?」
「まぁ、多少は?」
「視界は広く持ちなさい。そうすれば、ゴブリン程度はどうとでもなるわ」
「……うっす。あざす」
先輩らしいアドバイスに思わず感謝する。ニイナは面倒見がいいみたいだ。なんだかんだと文句はつけてくるけど、俺のことを考えてくれているんだと思う。
アセイさんは俺とニイナのことを気遣いながら立ち回ってくれていて、何もしていないように見えているんだけど、実は周りを警戒してくれているみたい。
足に力を入れて立ち上がる。どうにか体力が少し戻ったようだ。このまま残りの三体をどうするか考えないといけないな。
「よしっ。行きましょう」
「いいのか?」
「はい!」
アセイさんが気を使って聞いてくれたが、もう結構力が入るようになっているから大丈夫だと説明する。すると、頷いて先頭を歩いてくれた。
「あんたさ、自分のできることを考えて敵を殲滅した方がいいんじゃないの?」
急に歩いている最中にニイナが口を開いた。こちらを見ると怪訝な顔をしている。もっと俺に考えてゴブリンと向き合えということだろうか。
でも、たしかに俺は自分の戦い方を確立したけど、うまく戦えていない。なぜなのだろう?
「そうだな。やってみる」
「あのさー。アサシンしてみたら?」
言われている意味がわからなかった。アサシンとはどういう意味だろう? あのアサシンか? 隠れて殺す殺し屋の?
「アサシンって?」
「あー。魔法学院では、そのスタイルは教えないのね。あのね、隠れて潜んでいて、そこから一気に急所を狙って終わらせるような戦闘スタイルをアサシンっていうのよ」
それは初めて聞いたな。戦闘スタイルに名前があるということも初めて知ったんだが?
俺が無言でいると、怪訝な顔で睨みつけて来た。
「えっ? もしかして、アサシンスタイル知らない?」
「……すまん」
腕を組んで胸を押し上げると、ニイナは難しそうな顔をしてこちらを見ている。戦闘スタイルがあるのは、わかる。「前衛」「中衛」「後衛」というのはあるから。それ以外に戦闘スタイルがあるなんて知らなかった。
「スタイルは沢山あるわ。隠密行動が得意な人は『アサシン』、前に出て攻撃を受ける自信のある人は『タンク』、遠距離からの攻撃が得意な人は『スナイパー』、回復することに特化しているなら『リカバリー』等などいろいろあるわ」
「冒険者の間では常識なのか?」
「まぁねぇ。冒険者学院もあるから。でも、魔法学院でも通っていればわかるスタイルよ?」
それで理解した。俺は魔法学院をすぐに辞退した。だから、それを学ぶ前に出てきてしまったんだ。まぁ、それは仕方ない。今、ニイナが教えてくれたし。これで覚えてうまいこと倒すしかねぇ。
「まっ、すぐに辞めたんだものね。なら仕方ないわ。私が教えるから問題なし。まずは、物陰に隠れたり、足音をたてないのが基本。後は、素早く近づいて仕留めるのよ」
なるほど。言いたいことは理解した。そして、スタイルの攻め方も理解した。であれば、普段からいないと思われていたほうが好都合ではないか?
「俺、隠れながら後を追うようにします。先頭お願いします!」
手を合わせてお願いすると、渋々OKしてくれた。本来、依頼を受けている俺が歩いているところに遭遇したゴブリンを倒さなければいけない。
ニイナは、アセイに視線を送って確認しているようだったが、アセイは「まぁ、手を出さなきゃいいだろう」ということだった。
草むらに隠れながら二人と並走する。なるべくニイナへ襲い掛かる前に倒さなければならないだろう。
少し進んだあたりで、ガサリと草が何者かの気配を教えてくれた。すぐに殲滅しなければならない。俺は、あえて通り過ぎ、後ろから確認しに行った。
そこにいたのは、ゴブリンだった。
「帯電」
即座に肉薄する。
地面のめくり上がる音がするが、もう関係ない。
だって、目の前にいるから。
横へと勢いのまま殴りつけて絶命させる。魔力の気配がして、横へと飛びのく。先ほどまでいた場所へ風の塊が通り過ぎた。
またゴブリンマジシャンが一緒だったらしい。でも、二度も見れば俺だって対処できる。初見だったから難しかっただけだ。
即座に魔法が放たれた射線を追って駆ける。
周りの景色が流れていき、視線の先にゴブリンマジシャンがいる。
勢いのまま殴ろうとして、何か音がした。
首を曲げると、すぐ横を何かが通り過ぎ、後ろの木へ刺さる。
ゴブリンアーチャーもいるようだ。
まずは、マジシャン。
一度立ち止まってしまったが、詠唱をさせない様に首を掴み。そのまま感電させた。それで絶命させて次へと向かう。
草むらへと潜んでジグザグに移動する。こうすることでどこにいるのかを錯乱しながら迫ることができる。ゴブリンアーチャーは俺がどこにいるのかを把握できていない。
いける。
体を低く保ち、地面すれすれを移動する。
ゴブリンアーチャーはいきなり目の前に現れたように感じただろう。
目を見開いて硬直していた。
俺は、お構いなしに上へとアッパーカットをお見舞いし、感電させた。
「ふぅぅぅ。これで五体。なんとかなった」
「うん。やるじゃない。一度経験したことでしっかりと学んだようね。やっぱり、アサシンスタイルが似合うみたいね」
ニイナが褒めてくれた。そして、教えてくれたスタイルがやっぱり合っているかもしれない。このスタイルが発見できただけでもよかったかも。
次の依頼でも、使えるスタイルなんだろうか?
池に行っての採取。
難しいんだろうか?




