6 落ち込んでいたら知らない間に
最近になって女性の社会進出をより進め、それによって国力を上げようとする政策の下、貴族女子高等学校も表向きは教育機会の平等を謳うようになって、比較的裕福な庶民の女子も入学するようになった。
彼女たちなら大企業を抱える貴族と実家の縁を繋ぎたいだろうし、共学中等学校時代やパーティーでノアの顔面に惹かれている子も大勢いた。
実際ノアはかなり手を出していた。
成績については分からないが、門戸の狭い貴族の学校に入学してくるのだからむしろ、貴族の子供たちより賢いのではないだろうか。
お互い利がある良い相手だと思うのだが、ノアの両親や祖父母は、ノアの伴侶は貴族の血筋であってほしかったのだ。
しかし貴族の女子たちは未だに経営など男性の仕事と思っている子が多く、むしろ事業を取り仕切り働く女性ははしたないとすら考えている。義母のように古い概念を押し付け続ける女性がしぶとく影響力を持っているせいだ。
消去法で、貴族兼経営まで出来る女性がジャッドしかいなかったのだ。だからノアの家はノアが馬鹿な限り、ジャッドとの婚約を解消しない。つまり永遠に解消する気がない。
ジャッドの家はと言えば、母と祖母は古い考えで婚約解消など恥ずかしくて出来ないし、相手は侯爵家嫡男なのに何が嫌なのと首を傾げていた。
父は昔から祖父に何も言えず、そのくせ母や私には横柄で、祖父の言うことを聞けと怒鳴りつけるだけだった。
貴族社会が戦争で崩壊した時代を生き抜いて大企業を作り上げた祖父は、女の意見など聞かない短気で怒りっぽい老人を絵に描いたような人だった。
私が嫁に行けねば困るだろうから、祖父の友人の孫と結婚させてやろうと、私のために整えてやったのにと、面子を潰されたとよく激怒していた。
激怒したついでに追い出されないかと目論んでいたのだが、我が家は私の下に子供が出来なかったので、仕方がなく私を置いていたようだった。
母が子供を産めないのは負担を掛けすぎる祖父や父のせいな気がしていた。
こればかりは推測の域を出ないが、お妾さんも祖父に早く子供を産めと追い詰められたらしく、逃げ出してしまったので、この家で嫁でいるのは辛かろうと思う。
母も祖母も貴族女性らしくおっとりして大人しい。男性の言うことは全てYESだ。自分に非がなくても、夫がそう言うなら自分が至らなかったのだろうと思ってしまう。
やれやれと思うことはあるが、時代がそれ以外の選択肢を与えなかったのだから、祖父母や母のことはあまり恨んでいない。好きでもないけれど。
◇◇◇
さて、婚約者やその家、実の家族に辟易して、いざとなったら一人で生きていけるように必死で勉強したことが仇となったことが発覚した。
なんなら先進国に倣って、女性の活躍を〜というパフォーマンスで、無理に祖父の会社の仕事を手伝わされるようになった祖母や母に泣きつかれて、経営の勉強になるなら良い機会だと下心満載で、助けたのも悪かったかもしれない。
あの時はさすがに落ち込んだ。
落ち込んで、気が付いたら外国で働いていた。小説でよくある、泣きながら歩いたら知らない場所だったというやつだ。仕方ない仕方ない。




