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26 フレンドリーに挑戦 相手は警察と政治家です

 私は元々貴族である。

振る舞いが貴族らしいか否かは置いておいて、生まれは貴族であることに間違いない。


更に子供の頃から家の仕事をしたくない母や祖母に押し付けられた結果、必要に迫られてお役人や権力者が集まる社交に出たこともある。


 貴族のお嬢様として、同年代と交友を深めるためのパーティーには、時間的都合からほ皆無に近いほど出ていないが、ビジネスとなれば別だ。


 更に最近では警備事業を立ち上げる都合から警察関係やその周辺、市区町村レベルの政治家から、大臣にまで会うこともあった。


 ここは初めて「家の名前があって良かった!」と珍しく感謝した場面だった。


彼らは私が家で冷遇されているようだと噂で知ってはいても、あらゆる方面に影響力があるジャッドの祖父はまだ健在であり、もしかしたら何か自分に不利なことが起こるのではと身構えていた。


むしろ銀行や投資会社にプレゼンをした時の方が「家格の権威になんて屈しないぞ」という正しい圧を感じた。


 私はその時の交渉を、ムキムキ男性たちを連れて行って視覚に訴えたり、警察の範囲を超えないという控えめな女性らしいプレゼンをしてみたり、今までの経験をフル活用して成功させ、短期間で事業開始にこぎ着けていた。


 警察や政治家が、私の後ろに、ありもしない祖父の影を見て、低姿勢に対応すれば、内容は良いのだからスムーズに進まないわけがない。


 更に私は、警察ではなく民間でしか出来ない雇用について提案することで、対面で話している担当者がそれ以上の人間に何らかの申請を上げる際に、メリットを感じさせることに成功した。


 対面で直接話しているならともかく、伝言ゲームになると、魅力というのは通じにくくなっていく。


どれだけ素敵な口紅でも、現物を手の甲にでも塗ってみなければ、書類一枚に赤い口紅とタイプされているだけでは買う気にならない。


けれどお役所内で上司の上司に許可を取るというような流れに私が直接口を挟むことはできない。


だから担当者がジャッドのサービスを、諸々情報を省いて、「新興企業の警備業」とだけ伝えてしまうかもしれない。


 その可能性をできる限り排除するために、インパクトが大きいメリットを分かりやすく提示した。


戦後の混乱により就職難から犯罪を繰り返す人々を更生させる案である。


 勿論救えない更生しない連中は置いておいて、元々犯罪をしたいわけではないのに、他に道がない場合、生きるために犯罪をし続けなければならない。


 私は、彼らの戦場と裏社会で身につけた技術や知識を警備の指南や、簡単な仕事に見張りを付けて配置し活かすこと、更に大勢いる元軍人の裏稼業者を把握するための情報提供者として雇う案を提案していた。


 いくら警察が追いかけても捕まえても牢を出れば再犯する人間が大幅に減る案に、警察や政治家たちは大いに喜んでくれていた。


やはりフレンドリーに会話する練習をしておいて本当に良かった!

笑顔が自然にできるわ!


ニコニコと笑いながら私は彼らと握手を交わした。

◇◇◇


 「凄え!見てみろよ!いつもの人数に加えて、軍人上がりで職に困ってたじいさんもプラスで依頼すれば警備料金が逆に安くなるって!」

「どういうこと?」


「職にあぶれた犯罪者が減って、この辺りの治安を良くするためにもなるし、社会貢献出来て、しかもお得ってこと!」

「だから?」


ある新興企業の若い社長と奥方は夜のリビングのソファでニュースを見ながら会話していた。


 「これに申し込んだら、うちの会社が良い企業ってアピールになるし、警備料金が安くなるし、じいさんの見張り含めて、いつもより多くの人数が警備してくれるんだよ!」

「凄いじゃん!」


奥方は赤いマニキュアを塗った両手をパチパチと合わせて拍手した。


 この、ビジネスに深く関わっていない人間にも分かりやすい仕組みは、ニュースや新聞、雑誌で発表されるや否や、非常に大きな話題となり、そしてかなり肯定的に受け入れられた。


◇◇◇


 私はこれによって、私を狙う連中を、可愛い天使レオを狙う連中を追い詰める複数の情報網と、熟練の職人たちとの関係を手に入れたのだった。


「社会貢献も出来て復讐も出来て、一石何鳥かしら」


今日もポストに血が滴る動物の死体を入れるという、レオが見たら泣いてしまっていたであろう嫌がらせがあった。


 しかし私は既に一部隊には匹敵する戦力を持っている。

秘密裏にレオとルイーズは安全な場所に避難させていた。


 「証拠をこんなに残してくれて、有難いわね……」

あの可愛い可愛いレオを怖がらせるなんて万死に値する。

私はメラメラと闘志を燃やしていた。


◇◇◇

 尚、死骸を前にくっくっと笑うジャッドを見ていたアルバは、あまりにも用意周到に立ち回る様子も合わせて、ジャッドはまるで魔女のようだと思ったが、その言葉はしっかりウイスキーと一緒に喉の奥に押し込んでおいた。

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