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20 ベルナール家の醜聞

 世間から見てベルナール家は、ジャッドが出て行ってから非常に愉快なことになっていた。


ノアの母親は、ジャッドが自分に何も知らせず出て行ったと知ると、敷地内にある息子たちの家に闘牛のように突撃した。


ノアとジャッドそして愛人であるルイーズとレオの家であり、一度突撃して警察官を呼ばれていたあの家である。

残念ながら義母に学習能力はなかったらしい。


 義母としては、「跡取りのレオを嫁が誘拐した緊急事態」だったそうだが、義母が貴族女性にあるまじきボディアタックをドアにかましている間に、いよいよ義母が狂ったと思った使用人によってまた警察が呼ばれていた。


 二度目の通報であることと、支離滅裂なことを叫び暴れる義母の異様な様子、そして怯える使用人からの聞き取りで、警察はパトカーで義母を連行した。


警察が到着した時義母は顔を真っ赤にして、オペラの一幕より大きな声で喚き散らしていたらしい。

「離せ公僕!!私を誰だと思っているのこのくぁwせdrftgyふじこlp!!!」

「何て言っているのか全然分からな……!傘を振り回さないでください!」


そこで警察は主に使用人たちに様子を聞いていた。

「大奥様は、お嫁様と、ご子息ノア様の愛人とお孫様が『夜逃げ』……、いえ、大奥様に何も言わずにどこかへお引越しされたことで動揺されているのです」

「引っ越しにしては物が残っているようですが?」

「そうですね、最低限の衣服や金銭といった物だけで夜の内に引越されたようで……」


「まるで夜逃げですね……、何から逃げたかは大体予測できそうですが……。大奥様はいつもこの様子で?」

「そうですね、一度警察の方に来てもらってから家への突撃は落ち着いていたんですが、お電話などでは割とこんな感じですね」


「お嫁さんと愛人さんが一緒に逃げるとは珍しいケースですね。結託するほどにお姑さんが怖かったのでしょうか?ああして先が金属の傘をふり回しているのを見ると、身の危険を感じるのは分かりますが……」

「ええ、お嫁様と愛人の方は仲が良く、一緒に愛人の方の子供を可愛がって育てておられたので、特にその子に危害が及ぶのを危惧していたものと……」


 「良い加減にしなさいよ!私はベルナール侯爵夫人よ!あの女は侯爵家の使用人までごっそり引き抜いて行ったのよ!!」

そう義母が自分から恥を晒しに行ったので、警察官たちは残った使用人たちを憐憫の視線で見ていたと言う。

「多くの使用人までこの家を見捨てていたんですね……」


 パトカーに押し込まれる時、義母は勿論抵抗し、その騒音は貴族の邸宅が並ぶ閑静な住宅街に響き渡った。


そしてその日の夕刊には「ベルナール侯爵夫人発狂!使用人への暴行未遂や公務執行妨害で逮捕!ベルナール家事業への影響懸念」といった見出しが並んだ。


意外と古い貴族たちも、事業や金銭に絡まないことで新聞社にゴシップを売り込んだりするのだな、と思ったりしたが、そうせざるえお得ないほど義母は騒音で迷惑を掛けていたのかもしれない。


 恥以外の何物でもない新聞が出た後、義父の会社はますますの退職者と新規の取引が停滞し、傾きに拍車がかかったそうだった。


◇◇◇


 ノアはアルバの友人宅で酔い潰れていたところを警察に保護されていた。

義父が迎えに行った時も朦朧としていた。


医師による診察は終えており、単なる深酒で全くの健康体だった。


 義父は初めてノアの頬を拳骨で殴った。

「殴ったね!ジャッドにも殴られたことないのに!!」

「当たり前だ!嫁に殴られるような身に覚えがあることが問題だろうが!!」


 「ジャッドが俺を苛立たせるのがいけないんだ!うああああああん!!」

「こら!おい、ここはまだ警察の敷地内……、立て!人に見られたらどうする!」

「うええええん!」


 アルバは寛容にも泣いているノアを可愛いと言って面倒をみてあげたことがあるが、普通はいい歳して泣いている男など引く。


 しかも警察の敷地内で、人通りが多いとは言えないが、全くないわけでもないところで酔っ払って泣いていたのだ。

迎えに来たパパが抱っこして車に乗せようとして四苦八苦しているのを写真に撮られて翌日の朝刊に載っていた。

家族揃って新聞デビューである。


 これによって社員にもインタビューしに来る新聞や雑誌の記者がいて、ノアが全く出社せずに満額役員報酬を受け取っていたことや、出社していた頃は社内で妻に暴力を振るっていたり、仕事を全て妻に押し付けたり、酒を飲んで出社して周囲に当たり散らしていたことが世間に暴露された。


◇◇◇

 ジャッドたちはお気に入りのリビングに備え付けられたテレビで、義父が記者会見を開いて頭を下げているのを眺めた。


 大人たちは「ほーん」という感じだった。

今までのことを考えればやっとバレたかというくらいで、特に感情が動くことはなかった。

強いて言えば、ニュースから事業に活かせる情報を収集する時間だったのに、既に知っていることを長々と流されてもなあという気持ちだった。


 「じーじ?」

記憶力の優れたレオが、ろくに孫に会いもしなかった冷血な祖父を覚えていたために、自身の祖父が頭を下げる様子を見せてしまった。


 「いけないわ!賢すぎる!」

「そうねー、『どこかの』おじいちゃんが映ってたね!」

「ほら!レオちゃん朝の『ごかぞくといっしょ』観ましょうね!」

私たちは素早くチャンネルを教育番組に切り替えた。


 朝は脳が吸収する力に優れている!可愛いレオが素直な良い子のまま成長出来るように、朝は教育番組にすることに暗黙の内に決まった。

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