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12 義母のアポなし突撃の撃退法

 社内監査の後、何故か義母から私とルイーズに、お叱りの電話がかかってきた。


 取り次いでくれた使用人に、面倒だからと何度か居留守をお願いしたが、彼らが理不尽に義母に怒鳴られていたので、ええ何しろジャングルの大きな鳥の鳴き声かと思うほどデカい金切り声が受話器から漏れて聞こえていたので、さすがに面倒だという理由で人様に迷惑を掛けては申し訳なく、仕方なく出ることにした。耳栓を装着してから。


 「お前は一体何をしているの!形だけでも正妻でしょう!?目立ちたがりのお前に我が家の仕事を『させてあげている』のに、妻の役割に加えてそれすらも怠けるの!?」

「怠けているのはノアですね!今年に入って一回も出勤してないので!監査の人も驚いていましたよ!お義父さんから聞いてないですか!?」


「聞いたからわざわざ電話しているんでしょう!あなたは夫を仕事に遅れないよう起こしてあげ、送り出し、温かなご飯で健康を維持し、仕事に集中出来るよう雑務を手伝うのが役割でしょう!どうしてそんな簡単なことも出来ないの!?」


「本当に大人になっても簡単なことが出来ないなんてってイライラしますよね!ノアは遅刻しないように一人で時間通りに起きることも、給料を貰うなら仕事をしなければいけないってことも分からないんですよ!」


「お前が支えないからでしょう?!使えないわね!この、クズ!ボケ!馬鹿!クソよm」

「そうですね!クズには出来ないので、お義母様が見本を見せてください!!じゃあ私はきちんと起きるために寝ますね!」


ルイーズが義母と話す機会を奪ってしまったが、ルイーズはこのやり取りを聞いてひいひい笑っていて、話すのは無理そうだった。仕方ない仕方ない。


義母の声は大きすぎて、受話器から部屋中に響くので、使用人たちまで肩を震わせていた。

普段は私の言葉遣いを丁寧に指摘する執事がグッと親指を立てていた。


◇◇◇

 翌日には、同じ敷地内なので義母が突撃して来たが、あまりにドアをバンバンどんどん借金取りの真似かと思うほど叩いていたので、変な人かと思って警察に通報してしまった。


後から聞くと、義母は灰掻き棒だの杖だので叩いていたらしい。音がまあ凄まじく、使用人たちも女性陣を中心にかなり怖がっていた。


 早朝に激しくドアを叩く人なんて絶対に怖いしおかしい人だ。窓から外の様子などを見るのは相手を刺激して危険だと考えた。いやあ、怖くて怖くて少しばかり判断力が低下していたかもしれない。


「警察ですか!?朝早くから玄関を凄い勢いで叩く人がいて、女二人の家ですから怖くて。ええ外は見ていないから『どんな人かは分からない』んですが、どうも何か硬いものでドアを破りそうなほど叩いているんです!女ばかりの家なので怖くて……」


 まさか貴族女性であることを誇りにしている、良いお年の侯爵夫人が、ドアが凹むほど叩くとは思わなかったのですよ。仕方ない仕方ない。


 警察に認知症ではと呟かれた義母は、わなわなと顔の肉を震わせていた。

首の色と顔の色が大分違うが、そんなに震わせたら白粉が襟に付かないのだろうか。


 それ以降、義母は家に突撃はしてこなくなった。

人間幾つからでも学び直せるものだ。よそ様のお宅に許可なく訪れてはいけないと覚えてもらえた。老年ではあるが、やっとお分かりいただけたようで何よりだ。

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