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11 書類はよく読んでサインをしましょう

 私が帰国してから、「次はジャッドを逃がさないように、遊びは控えるように」と厳命されていたこともあるのだろう。

しばらくはルイーズ一筋で浮気はしていないように見えた。何しろ隣国から孕ませて連れてくるくらいだ。奴なりに別れないという意思は強かった筈だ。


 だが残念なことに奴のボケ茄子腐りピーマン脳みそにはキツツキが穴を空けており、鰹節よりも薄い意思はあっという間に易きに流れていった。


 身重の身体を気遣ってくれないノアにどんどん幻滅していくルイーズと、一応貴族として跡取りになるかもしれない腹の赤子に何かあってはいけなと分かってはいるが、下半身を抑えられない馬鹿の間の溝は大きく深く開いて行き、やがてノアは全く帰宅しなくなった。


 レオが生まれてからは例の情けない宣言をして、堂々と女遊びや夜遊びにハマり、なんなら「正妻も愛人も俺を構わないからこうなるんだ。心配ならもっと構え」という甘えた子供のようなパフォーマンスにも見える派手な散財の仕方をしていた。


 夜中に起床ラッパのようにドーンと派手な音で玄関を開けて帰宅し、やっと寝たレオを起こしたことがある。

ルイーズが寝かしつけにどれだけくるしたと思ってるんだいっそ永久に帰ってくるなと真正面から言ってやった。

花瓶の水を掛けられたので、花瓶で殴ろうとしたら使用人たちに押さえられてしまった。


 まあ奴も帰って早々文句を言われてついカッと熱くなったかもしれないので、涼しくなるように下着に薄荷油を塗っておいた。

風呂上がりの奴から絹を裂くような悲鳴が響いたが、レオが奴のせいでまた起きないように、オルゴールを掛けていたので、全然聞こえなかった。本当本当。レオも起きなかったし。


 どこそこのクラブで遊び、そこのキャストだがスタッフだか女性に宝石をプレゼントしたとか言っていたこともあるが、私もルイーズも嫉妬するわけなく、それは奴に愛情がないということもあるが、そもそもそういう類を好きではないというか興味がないので、「経費にしないでくださいね」と伝えておいた。


 レオが一生懸命寝返りを頑張って、短いお腕をくいっくいっとしながらもう少しでうつ伏せになれるかと、足もパタパタしていると、

「はっ、カエルみたいだな」

と二日酔いの頭を押さえて起きてきたクソが信じられない言葉を吐いた。


この天使がカエルに見えるなどというあまりに掛け離れた形容詞が衝撃的すぎて、

「……眼科行ってきたら?今日は休日だけど隣町の眼科ならやっているわよ、車いる?」と思わずクソのために優しい言葉を掛けてしまった。


奴は行くかばーか!と中学生みたいなことを言ってそのまま出て行った。


 ノアは酒が抜けず、昼の仕事もままならなくなっていった。


 これは好機だと思った。

うーだのあーだの言って、無駄に立派な机で何一つ仕事を進めない奴に、「サインだけすれば良いようにしておいた」と書類を渡す作業で済むように、仕事「等」を整えた。


 私に放り投げればどうにかなると仕事を放ったらかしにして、どう言い繕っても経費にならない夜の店の領収書をどうにかしろと怒鳴りつけるノアに、秘書たちも呆れ返っていた。私は策を張り巡らすような労力を使うことなく、ノアが管掌する事業や業務は全て私のものに出来た。


◇◇◇

 レオが二歳になった年、義祖父が亡くなった。

義父は、義祖父が長年の勘で回していた部分を言語化しようとし、義父から見ても古い慣習を撤廃しようとした。

どうせならと、この機会に会社の中を全体的に改善するよう指示を出した。


 その結果、長期に無断欠勤しているにも関わらず、満額で給与を受け取っている社員がいることが発覚した。ノアだった。

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