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全属性適性ゼロと鑑定された俺、〈空欄〉のまま世界の仕様外で生きることにした 〜スキル欄が空白の俺は、なぜか全ての魔法と職業を条件無視で使えるらしい〜  作者: 空白 シオン


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第19話 檻の外側

 答えを出すまでの猶予は、三日。


 セドリックはそう言っていた。

 長いようで、短い時間。


 町は、いつもと変わらない。

 市場は開き、子どもは走り、畑では人が土を耕している。


 平穏だ。

 隔離としては、理想的すぎるほどに。


「……本当に、ここに留まれば」


 丘の上で、リアがぽつりと呟いた。


「大きな問題は起きないでしょうね」


「うん」


 否定はできなかった。


 条件は薄い。

 管理は届きにくい。

 僕が動いても、歪みは小さい。


 世界にとっては、正解だ。


「でも」


 リアが、続ける。


「それは、“世界の外で起きていること”を見ない、ってことでもある」


 その言葉に、胸が鳴った。


 遠くを見る。

 丘の向こう、さらに向こう。


 この町の外には、制限区域がある。

 管理が強く、歪みが溜まりやすい場所。


 そして――

 助けを待つ人が、確実にいる。


「……リア」


 静かに言う。


「もし、僕がここを離れたら」


「観測が再開される」


 即答だった。


「セドリックの言う通りね」

「あなたの行動は、全部“判断材料”になる」


 それでも。


 風が、変わった。


 さっきまで穏やかだった風が、急に冷たくなる。

 胸の奥が、強くざわついた。


「……来てる」


 リアも、気づいた。


「町の外?」


「うん。遠いけど……はっきりと」


 条件の薄い土地でも、完全な無風ではない。

 外で起きた歪みは、かすかに伝わってくる。


 ――放っておけば、広がる。


「……行く?」


 リアが、僕を見る。


 その目には、答えを求める色はなかった。

 ただ、覚悟を確認するだけの視線。


 深く、息を吸う。


 ここに留まれば、安全だ。

 誰も傷つかない。

 少なくとも、目の前では。


 でも。


「……行く」


 短く、言った。


「ここを出る」


「監査は?」


「受ける」


 拳を、軽く握る。


「でも、檻には入らない」


 リアは、少しだけ笑った。


「そう言うと思った」


 準備は、簡単だった。

 荷物は最小限。

 名乗る名前も、肩書きも持たない。


 町の外れ。

 境界を示す石柱の前で、足を止める。


 この一歩を越えれば、

 観測が再開される。


 数字が動き、

 記録が残り、

 判断される。


 それでも――


「……世界が、僕を必要としないなら」


 呟く。


「僕が、世界を必要とする」


 一歩、踏み出した。


 その瞬間。


 胸の奥で、はっきりとした感覚があった。


 ――見られている。


 遠く。

 とても遠く。


 でも、確実に。


「始まったわね」


 リアが、隣で言う。


「うん」


 頷く。


 檻の外側。

 境界の、そのさらに外。


 そこは、安全でも、正しくもない。


 けれど。


 **選択を、自分で引き受ける場所**だ。


 風が、強く吹いた。

 条件の濃い土地から、冷たい気配が流れ込んでくる。


 歪みは、待っている。

 観測者も、見ている。


 それでも。


 僕は、足を止めなかった。


 第1部の終わりは、まだ先だ。

 だが確かに――


 **物語は、次の段階へ踏み出した。**


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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