手紙
アレスはシャルーダの手紙を届けに東の地方に訪れた。
「この辺りに旅芸人って来てないか?」
アレスは街の人にそう聞いた。
「あぁ、時々来てるよ。来てくれた時は賑やかで楽しいんだよ。」
「そうか」
「そういえば前にもう1人芸人がいたなぁ。その人面白かったんだけどなぁ。いなくなっちゃったんだよ。その仲間の人たちに聞いても黙っちゃって教えてくれないんだ。」
「…あぁ、その人の事は知っている。」
「そうなの?じゃあその人に言っておいてくれよ。帰ってきてくれって。」
街の人はその事を聞いて期待に満ち溢れた様子でアレスに頼んだ。
「そいつは死んだ。」
容赦なくアレスは現実を突きつけた。
街の人は唖然としている。
「教えてくれてありがとう。じゃあな」
そのままアレスは別れを告げる。
アレスは情報の通りに東の街を転々と歩き回り、芸人達を探した。
そして、とある街で遂にそれらしき団体を見つけた。
「あんたら芸人?」
芸人の1人にそう聞いた。
「そうだけど、入団希望かい?それなら…」
アレスは黙って、かつてシャルーダがつけていた仮面を見せる。
それは、アレスがシャルーダの死体から取り出したものだった。
「それは…!」
その芸人は心当たりがあった。
「おい、セルト来てくれ!」
そして、セルトという芸人を呼び出した。
「なんだよ、クラン。大声出して…」
セルトがクランの方に寄ってきた。
「これ…」
クランはアレスの持っている仮面を指差す。
「っ!」
セルトも気づいたようだった。
「あんたらに手紙だ。この仮面の持ち主からだよ。」
アレスは2人の様子を見た後、シャルーダの書いた手紙を渡した。
「手紙…?」
「あいつからお前らに宛ててのものだ。」
困惑するクランにアレスがそう言った。
「あいつはどこなんだ?」
セルトは恐る恐る聞いた。
どこか予感していたような、でも信じたくない、そんな様子だった。
「死んだ。俺が殺したんだ。」
アレスは淡々と告げる。
「っ!」
2人の表情が強張る。
「…そうか。」
クランは必死で冷静に答える。
「随分と冷静に振る舞おうとするんだな。俺はお前の友達の仇だぞ?」
「あんたは手紙を届けてくれた。悪い人には思えない…」
クランはそう答える。
「そうか、手紙を読むといい。かけがえのない友人の遺言だ。」
アレスはそう言って去っていった。
アレスは街を出て、しばらく歩く。
「〜ったく。嫌なことさせるよなぁ。」
ため息混じりにそう言った。
「…」
アレスはふと、手紙を見た彼らの様子、そしてどんな事が書かれていたか、彼らの紡いできた友情をどう締め括ったのか考えた。
「…やめよう。俺には…あいつら以外にはあの手紙を完全に読み取ることはできないんだ。さっさと帰ろうか。疲れちまったよ。」
アレスの声は広大な夜空に溶けていった。




