黒蝕.13
「イノセントカオス」
闇はヴェインの周囲を無差別に喰らい尽くす。
「くっ!」
ヴァーデンは自身の周りを暗黒物質で覆い隠した。
「ホーリーレイ!」
エルノアは光線を放つが、ヴェインの闇はそれすらも飲み込んだ。
「太極図、発動!」
エルノアの太極図は相手の魂を測った後、太極図内の白と黒の割合が等しくなるように模様が変化していく。
そして、それが等しくなった時、真に太極図は完成する。
完成すれば、エルノアは光と闇どちらの耐性をも身につけ、攻撃性能も他を凌駕する。
「これが…エルノアの本領か…」
ヴェインは笑っている。
それは何か面白いものを見る子供のような、好奇に溢れた顔だった。
「オメガ」
大地に侵食していた闇がそのエネルギーを解放して爆ぜる。
「ディバインシールド!」
エルノアの周りに出現した光が攻撃を遮断する。
「ブラックホール」
エルノアの光でさえ、逃れられないヴェインの闇が侵食してくる。
「ジャッジメント!」
高密度の光が十字状に出現し、果てしない闇に僅かな穴を開ける。
エルノアはそこから這い出るように脱出した。
(ヴェインの闇を削れない…。やはり、ヴェインの闇は僕の極光の力より強い…!それもあの神器のせいか…!)
『神器・冥界の命』
『闇の超越者』ヴェイン・ウラヌスの神器。
その効果は単純で闇の力の増幅。
ヴェインは天使から堕天使に堕ちる過程で、極光と極暗の二つの魂を得るに至った。
その上で神器の効果が上乗せされる。
つまり、ヴェインの闇の力は今、極を超えている。
「インフェルノゲート」
X状に闇が凝縮され、放たれた。
「ジャッジメント!」
エルノアの光とぶつかる。
ヴェインの闇がより強く、その黒い輝きを見せる。
エルノアの技が破られた。
「っ!」
エルノアの体に傷がついた。
血が滴り落ちる。
(奴を葬るには…僕の最大火力をぶつけるしかない…)
「ディバインパニッシュメント…」
エルノアは力を貯めている。
「ここで、そんな事をするか…呑気なものだな。当たるわけないだろう?」
ヴェインは余裕を見せている。
エルノアが力を貯める前に屠るか、技を放たれようとも避けられる自信があるからだ。
「シャドウバインド!」
ヴェインを黒い鎖が締めつける。
「っ!?」
ヴェインは身動きが取れなくなる。
「貴様にエルノアを殺させはしない!」
「っ!ヴァーデン!」
ヴェインの余裕が消えた。
この拘束を解くのに集中してしまえば、エルノアの一撃を避けられるかは怪しくなる。
しかし、拘束を解かなければ確実に大ダメージを受ける。
ヴェインは鎖の除去を優先した。
だが、鎖の効果が途絶えるより先にエルノアの攻撃が放たれる。
「っ!」
強烈な光がヴェインを焼き尽くす。
光が収まり、目が視界を取り戻していく。
ヴェインはまだ立っていた。
「まだ、立っているのか…!」
エルノアは目を疑った。
この一撃は確実にヴェインを消し去る事ができると思っていた。
「エルノア…私はまだ立っているぞ…。私は消えはしない…」
ヴェインは鎖を解いていない。
技で威力の減衰すら行ってはいなかった。
ただ、ヴェインの身一つであの攻撃を耐えたのだ。
「お前は…お前はなんなんだ…ヴェイン!」
エルノアのとある感情が蘇る。
かつての…1000年前に植え付けられた感情…自身の存在を揺るがす程の恐怖、葛藤、混迷、その混沌が。




