黒蝕.12
「やぁやぁ、君が僕のショーのお客さんかな?」
「はぁ?」
シャルーダが意味不明な事を言い出し、アレスは困惑する。
「僕は旅芸人をやっていてねぇ。こういうのは得意なんだ。まぁ、見ててよ。」
アレスに手の甲を見せ、掌を隠す。
「さぁ、僕の掌には何もありませんでしたが?」
そして、掌をアレスの方に向ける。
すると、シャルーダの手に一輪の薔薇が咲いていた。
「何という事でしょう!何もなかった手に可憐なお花が…」
「いや、そういう能力だろ。皮膚を好きに変える能力。」
「…」
シャルーダは黙った。
「お客様、では次はジャグリングでも見せましょう。」
シャルーダは手から球体をいくつか出現させ、慣れた様子でジャグリングする。
「おお、これはすごい。」
「では、おらっ!」
シャルーダは突然、球をアレスに投げつけた。
球は爆弾だったようで、アレスの周りで炸裂した。
「はぁ〜、すっきり」
「この馬鹿野郎!客に爆弾を投げつける奴があるか!」
「うるさい!素直ではない客には指導くらいくれてやる!」
「芸人としてあるまじき発言だぞ!」
「今は芸人ではない!」
シャルーダは皮膚を剣のように変形させて切りかかった。
アレスも剣でそれを受ける。
「そうだな、お前は闇の眷属だったな!
ダークフレア!」
黒い炎が2人の間に生じる。
「あっぶね!」
シャルーダはすぐに後ろに下がった。
アレスはシャルーダに飛びかかり、剣を振り下ろす。
「くそっ!黒い炎は見せただけか!」
「そうだ!」
シャルーダはアレスに蹴り飛ばされた。
「あんた、全然戦い慣れてないね。まさか戦い初めて?」
「言っただろ、芸人だったって!」
「この戦いから退いて、ヴェインの仲間もやめるんなら命を助けてやる。」
「…そうして、僕は何をすればいい?」
「また、芸人でもやればいいじゃないか。」
「…できない。もう僕には芸人はできないんだ。」
シャルーダの声に覇気がなくなる。
「さっきやってたじゃねえかよ。」
「できないって言ってるだろ!」
シャルーダは声を荒げた。
「それで、今はあいつの配下としてここにいるのか。お前は自分がどんな世界に迷い込んだのか分かってないだろ。こんな事よりマシな事なんていっぱいある。」
「うるさい!何も知らないくせに!」
シャルーダは子供が暴れ回るように、刃物を振り回す。
アレスはシャルーダから離れた。
「何があったか知らないけど、ヴェインの仲間になる程の理由なのか?あいつが本当にまともな奴だとでも思ってるのか!?」
「そんなのは関係ない!僕みたいな奴は、自分の居場所を作るのに精一杯なんだ!居場所を作ってくれる人が誰であろうと、縋るしかないんだよ!」
「…ヴェイン以外にいなかったのかよ!」
「っ!」
シャルーダは同じ旅芸人の2人を思い出した。
シャルーダの剣がその動揺を表すように揺れる。
「…それでも、僕にはもうヴェインしかいないんだよ!」
シャルーダはアレスに斬りかかる。
「馬鹿野郎…」
アレスはシャルーダの体に剣を突き刺した。
「受け入れてくれる仲間はきっといたんだろうに。」
「あぁ…いたさ…いたよ。そう、僕が手放したんだ。あいつらはきっと僕を受け入れてくれた。僕が、怖がったんだよ。」
シャルーダは皮膚を変化させ、一枚の紙とペンを作り出した。
「すまない…これを彼らに届けてくれないか?旅芸人として東の地方で活動していたはずだ。わがままなのは分かってる。でも…」
「いい。そんなに俺は白状じゃない。探して届けるよ。」
「ありがとう…」
アレスは手紙を受け取った。
シャルーダの死を見届けて、アレスはその場を後にした。




