黒蝕.10
エルノアの脳裏に焼き付いた記憶。
ヴェインの力、闇の氾濫、自身の身に癒えない傷をつけたあの力。
「ヴェイン…!」
エルノアに緊張が走る。
「ブラックホール!」
闇が溢れ出す。
「ディバインアロー!」
エルノアがそれをかき消した。
「多少の計画のブレはあったけど、ある程度順調に行きそうだ。」
「お前はこの戦争を起こして何を企んでいる!」
エルノアはヴェインに問いただす。
「ヴァーデンとルクリエルの抹殺だよ。そこによくも邪魔をしてくれた、と思ったが。好都合だ、エルノア、お前も殺してやる。」
エルノアはすぐに神器をヴェインにかざした。
「さぁ、悪夢を始めようか!」
ヴェインの周りに闇が湧き上がる。
メアリー、エリィ、シャルーダは崩壊したエクスカリバーの方に向かった。
「向こうに超越者らしい者がいた。」
エリィはそう言った。
「問題ない。3人で飛び込んで一人でもルクリエルの首に手が届けばいい。」
メアリーがそう言った。
「…何か来るっ!」
エリィは自分達に近づいてくる気配にいち早く気づいた。
リゼアが飛び込んできた。
「ボム!」
3人の中心で爆発が起きる。
「っ!」
爆発に吹き飛ばされ、3人はそれぞれ分けられた。
「やられたな…」
(あいつらが見えん。あの爆発だけで俺たちをここまで離すのは無理だ。転送魔法で適当に飛ばしたか…。どちらにせよあの短時間じゃそう遠くには行けないだろう。早くあいつらと合流して…!)
2人を探そうとするエリィの前に、ヴェルタナが立ちはだかった。
「…なるほどな、俺たちを分断してそれぞれ叩くつもりか、他の奴らにもついているんだろ?」
「そうだ、お前達の好きにさせる訳にはいかないのでな。」
ヴェルタナは鎌をエリィに向ける。
「なら、お前を殺して計画を遂行してやる。」
エリィの手にあった黄色いナイフが消えた。
その時、ヴェルタナの頬が傷つく。
「!」
すると、ヴェルタナの全身が切り刻まれていく。
ヴェルタナは傷口から溢れた血を操り、エリィの方に飛ばす。
「ルビーニードル」
エリィは青いナイフを手に取り、またそれを消した。
次の瞬間、エリィの目の前に覆い被さる血が掻き消された。
「っ!」
唐突な衝撃をヴェルタナは咄嗟に鎌で防いだが、受けきれず少し後ろに下がる。
「あんたヴェルタナだろ?」
「私を知っているのかい?」
「そりゃあね、吸血鬼の中じゃ有名人だよ。」
エリィは嘲るような笑みを浮かべながら話す。
「人間と暮らしてたクソ馬鹿野郎ってな。」
「あ?」
ヴェルタナはエリィを睨みつける。
「あ?じゃねえよ。何で吸血鬼が食いもんと暮らしてんだよ。非常食か?」
「…」
「ダンマリかよ。お前は超越者になったらしいけどな、お前は吸血鬼の恥晒しなんだよ!」
「もういい、黙れ…!」
「あぁ?」
「決めた、お前は今すぐに殺してやる!」
「…やってみろよ!」
エリィの能力は赤、青、黄の3色のナイフをそれぞれ2本ずつ与えられる。
赤色のナイフは相手の血を吸収し、ナイフを消費して吸収した血の量に比例した威力の爆発を起こす。
青色のナイフはナイフを消費すると威力の高い斬撃を繰り出す。
黄色のナイフはナイフを消費した時、威力の低い複数の斬撃を与える。
そして、複数のナイフを使うと効果を重複させる事ができる。
(今、さっきの会話でナイフのクールダウンは終わった!全部のナイフを使ってお前を切り刻んでやるよ!)
「死ねっ、ヴェルタナ!」
「ブラッドクロス!」
血の十字架がエリィの正面に出現する。
「くそっ!」
青のナイフと黄色のナイフを合わせて、それを消した。
(2本使っちまったが、まだまだ手持ちはある!)
しかし、目の前にヴェルタナの姿はなかった。
「どこだ…?」
次の瞬間、エリィの右腕が切り飛ばされた。
「っ!?」
ヴェルタナは血に隠れて、エリィを上から狙っていた。
飛んだ腕が分解される。
(何だ、これは。ヴェルタナの能力か?)
「誰かを愛するのに、食う側も食われる側も関係ない。その者が愛おしいなら、自分を作り変えてでも共に歩んでみせる!吸血鬼としての立場なんて気にするものか!私はこの生き方を曲げるつもりはない!」
「何をべらべらと!腕を落としたくらいで勝った気になってんじゃ…!?」
エリィの動きが鈍くなる。
「何だ…これは…!?」
「ハーヴェスト」
エリィの魂が砕かれた。
エリィの体は地面に打ち捨てられた。
「…さぁて、リズ達の方はどうなってるかな?」
ヴェルタナはその場を立ち去った。




