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天来  作者:
超越者達
82/101

道化師になれなかった者

物心ついた時から泥水を啜っていた。

街を歩けば石を投げられた。

全てはこの醜い姿のせいだ。

僕の姿は普通の人間の姿とは大きく逸脱していた。

肌は爛れたように赤く、顔は溶けた蝋人形のように醜い。

そのせいで化け物と蔑まれるようになった。

だから、身を隠したくてずっと誰も寄りつかない路地裏で毎日の食事を探す毎日。

無機質な毎日だった。

僕は自分の皮膚を好きに変形できることに気づいた。

それでもっとまともな姿になろうとしたけど、長い間能力を保つ事はできなかった。

手を変な形にして暇を潰すくらいの使い道しか見出せなかった。

だが、ある日2人の男が僕に話しかけた。

「やぁ、君1人なの?」

僕を蔑んだ者達とは違う優しい口調に僕は戸惑った。

「ぼ、僕になんか用?」

「俺たち、芸人をやろうと思ってるんだ」

「芸人?」

「そう、小道具とか使って街中でショーでもしようと思ってるんだけど、君のその能力それに向いてるよ」

「見てたのか…」

「ごめんね、ちょっと見させてもらっちゃったよ。で、どうかな?」

このまま、ずっとここにいるよりはマシだと思った。

「分かった。でも、仮面を用意してくれ。客が寄り付かないよ」

「…そうか、用意しとくよ」


僕たちは芸人として、色んな街を渡り歩くようになった。

僕の能力はやはり芸人向きだったみたいで人気だった。

仮面さえ取らなければ、僕は普通に人として見てもらえた。

「やっぱ、君を雇ってよかったよ」

男の1人、クランはそう言った。

「あぁ、元々俺たち、人気なかったんだよ。お前のおかげで客も増えてきた」

そして、もう1人の男、セルトはそう言った。

「そう言ってもらえて嬉しい。僕はこんな見た目だからずっと日陰で過ごすんだと思ってた。でも、君達のおかげで少し自分が好きになれたよ」

僕がそう言うと、2人は嬉しそうに微笑んだ。

僕はずっと、この3人で芸人として生きていけると思ってた。

あの出来事が起こるまでは。


その日はいつも通り芸人としてのショーをしていた。

いつもと同じように順調に事が進むのだと思ってた。

でも、現実はそう上手くいくようにできてなかった。

僕を軽蔑する視線から守っていた物、仮面が外れてしまった。

少しの沈黙の後、子供が泣き出した。

その親は子供を庇うように覆い被さって、化け物を見るような目で僕を見た。

客は僕たちから離れていく。

僕は何が何だか分からなくなってしまった。

2人は僕を馬車に戻した。

ショーはそのまま終わりを告げた。

「…すまない」

クランが申し訳なさそうに言った。

「君を守ってやれなかった」

「僕は、もう、ショーができない」

『気にしないで』と言えたらよかったのにそこまで僕は強くなかった。

「そんな事言うなよ」

セルトが僕を説得する。

「仮面一つなかったら僕は普通には見てもらえないんだ」

「そんな事…」

「あったじゃないか!」

僕は腕を振り払った。

僕の感情の揺れ動きに合わせて、皮膚は刺々しく変化した。

そして、セルトの腕を傷つけた。

「っ!」

セルトは僕を見ていた。

その目があの観客達の化け物を見る目と同じように思えてしまった。

「うわあああ!」

僕は馬車から飛び出した。

「おい、待て!」

僕は耐えきれずに走った。

脇目も振らずに、ただただ走った。

すると、目の前に誰かがいた。

そいつに構わず走ったが、そいつは俺を掴んだ。

「さっきのショー、見ていたぞ」

その男はそう言った。

「だったらどうした、僕を笑いにきたのか?」

「そうではない。お前に居場所を作ってやろう。私の下につけ。そうすれば、もうお前は仲間だ」

「仲間…」

断ろうと思ったけど、これからどうするか、そんな想像ができなかった。

もう、惨めに野垂れ死ぬしかないのなら…

「分かった」

「いい子だ」

そうして僕は彼と共に歩いていった。

3話続いた闇の眷属関連の話は今のところこの話で一区切りということで

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