メアリーの部屋/死の色
色ってどうやって見えるんだろう。
赤色、青色、黄色…
本で名前だけは見たけど、実際にどう見えるんだろう。
ここは鉄の監獄。
ここじゃ色は見えない。
ずっと自分の肌と服と壁の色を見ている。
監獄は時間が分からないけど、一日中に3度の食事でおおよその時間を測れる。
そして食事と一緒に、一日に一冊の本が私に与えられる。
「暇なんだろ?だったら読めよ」
この監獄を作っている奴はそう思っているんだろうか。
最初は読む気はなかったが、一瞬の閃きのような好奇心と無限にさえ感じさせる虚無の時間が私に本を読ませた。
文字の知識は知らぬ間に備えられていたから本を読むことに苦労はしなかった。
ただ、苦痛だった。
しかし、幸か不幸かこの本は私に知能と知識を与えた。
私はここが監獄だと気づけ、私は普通ではなく囚われた者なのだと理解した。
それと同時に私の絶望は加速した。
この監獄からは逃げられない。
そう私に思わせた。
だが、そんな私に転機が訪れた。
この監獄部屋の唯一外界へと繋がる扉。
そこには当然鍵がかかっていたが、そこの側には何かの暗号のようなものが書いてある。
そして、鍵はダイヤル式。
番号さえ分かれば脱出できる。
暗号は単純に知識さえあれば解ける問題だった。
皮肉にも本の知識が私を助けたんだ。
私は扉を開けた。
でも、その外の空間はあの部屋と何も変わらなかった。
鉄の壁鉄の床、それが一筋に伸びた廊下があるだけだった。
しかし、近くには私がさっき開けたような扉がいくつもあった。
ドアスコープが付けられていて外からなら中が見れるようになっていた。
しかし、中には誰もいない。
どの部屋を見ても誰もいなかった。
唯一、一部屋だけ少女が座っていた。
私は仲間ができたと思った。
私は扉を叩いた。
彼女は気づいて扉を見た。
「誰かいるの!?」
最初は怯えていたが、その後、威嚇するように言った。
「いる!敵じゃない!」
「…本当?」
「本当!」
彼女はまだ警戒している様子だったが、扉の方に少しずつ歩いてきた。
「扉に暗号とダイヤル式の鍵が付いているの分かる?」
「…うん」
「それ解ける?」
「解けない…これには気づけたけど、分からないの、もっと本を読めばよかった…!」
少女は泣きそうになっている。
「大丈夫、私に任せて」
「え…?」
私は沢山本を読んだ。
問題さえ教えてもらえれば解くことは容易い。
彼女に問題を教えてもらって、彼女を救出した。
「すごい…頭いいんだねぇ」
「そうでしょ」
私は嬉しかった。
ずっと1人だと思ってたから。
勇気をもらった私は力強く出口を探して突き進んだ。
「ねぇ、外に出たら何をしたい?」
彼女がそう聞いてきた。
「私は色を見てみたい」
「色…?」
「うん。本で見た色って本当に鮮やかそうで、見てみたいと思ったの。ほらここってこんなだから」
鉄の壁を指差して私はそう言った。
「そっか…。私はね、」
「うん?」
「本で見たことある色んな場所に行きたい。あなたと一緒に…」
彼女は顔を恥ずかしそうに赤らめていた。
「うん。きっと行こうね」
私は彼女の手を取って、歩く。
「うん!」
彼女は元気よくそう言った。
私は赤色がこんなに可愛らしい色なんだと知った。
しばらく進んでいると少し広い部屋があった。
「何?ここ」
「分からない…」
すると眠気が襲いかかってきた。
「何っ!?…これ…」
私達は意識を失った。
私達はある部屋に閉じ込められていた。
そこはあの小さな監獄に似ているけど、一つだけ違った。
部屋の壁の一辺が網目上になっていて、隣の部屋が見える。
隣の部屋には彼女がいた。
「大丈夫!?」
私はそう言った。
「私は大丈夫だけど、これ…」
彼女は扉を指差す。
「っ!」
そこには鍵があった。
そして、横にもう一つ言葉が書かれていた。
『神はただ1人に愛を注ぐ』
その意味は理解できた。
先に問題を解いた方が出られて、もう1人は殺される。
「…!」
意味を理解した私は絶句した。
私はこの問題を解ける。
でも…彼女は…?
私は動けなくなった。
「ねえ?」
彼女は私に話しかける。
「私の事はいいから。問題を解いて?」
「は…?」
彼女は微笑んでそう言った。
「嫌!嫌だ!」
「私は問題を解けない。あなたが行くの」
「答えなら私が教えられる!あなただって…!」
「いいの…私は、あなたと少しでも一緒にいれただけで…」
「っ!」
私は、重い体を動かして。
解答を、ダイヤルに答えを合わせた。
「そう、それでいい…」
彼女は最期まで微笑んでいた。
その一片に少しの涙が見えた。
彼女は部屋に設置された銃で撃ち殺された。
「っ!」
力無く倒れた彼女の死体からは血が広がっている。
「オエェッ!」
私は吐いた。
罪悪感、色を失った彼女の死体、血の恐ろしさ、全てに圧迫された。
私は赤色がこんなに恐ろしいのだと知った。
私は出口を探して進んだ。
最後の扉を開けるとそこはさっきまでの空間ではなかった。
その部屋は色がついていた。
鉄の壁じゃない、もっと鮮やかな色。
「やぁ、優秀な被験体さん」
そこにいた誰かが話しかけた。
「誰…?」
「私はハイラ」
「ここはどこ?」
「ここはね、私の脳みそになる者を育ててるんだ」
「は…?」
「君は優秀だ。私の脳みそになりなさい」
理解した。
最初から生きる道なんて用意されてなかった。
彼女が生きようと、私が生きようとこいつにいいように使われるだけ。
あぁ、私はこんな…こんなものが見たかったんだ。
こんな醜いもの…
「神様…もう何も見えなくていいから…私に…力を貸して…!」
街で発生した、乳児失踪事件。
その犯人であるハイラは地下に大きな施設を作り、そこで自分の脳みその代用を育てていた。
しかしある時、ハイラが不可解な死を遂げた。
そして、施設にいた被験体No.108が脱走した。
彼女の能力は何かを代償に武器を得る能力。
彼女は視力を引き換えにハイラを殺す武器を得た。
視力を失ったが、彼女は満たされていた。
彼女は自由を得たのだから。
被験体No.108は後にヴェインにメアリーと名付けられる。
問題は数字が答えになるような問題でした。
計算問題とか、数学の知識問題とかのやつです。
もう1人の子はその知識が足りませんでした。
あと、最後は同時に解いても僅かな時間の差でどちらか片方は生き残れないです。




