あなたがそこにいてくれれば、私は世界を敵にしてもいいわ
「この森が檻になっていますぞ。ほら、入って下さいな。」
いちごが何かを操作すると、私は森に入れられた。
「では、暫くそこにいて下さいな。」
「蘭くん、頑張ってね。」
手を振って、いちごと雄哉は遠ざかって行った。暫くってどれくらいよ。……まあそんなことよりも、雄哉は私を信じてくれたのかしら。妖精でいれば顔なんて分からないと思って、雛乃のふりをしたんだけど……。雛乃を警戒してくれるかしら。
でも酷かった? 悪世界の王じゃなくて、雄哉本人に対して挑発したところもあるんだけど。上手く乗ってくれるかしらね。……姉様……信じてね……、華世界の平和は……私が……この宮崎蘭が……! ……永遠に続かせて見せるわ。
でも今の今、私に出来ることは何もない。だから、この森の探検でもしよう! そう思い私は森の奥へと進んで行った。結構歩いていると、洞窟のようなものを見つけた。面白そうじゃない……。
私はそ~っと洞窟の中に足を踏み入れた。狭そうね、妖精の姿で行った方がいいかしら。そう思った私は、妖精になり洞窟の奥深くまで過酷な道を進んで行った。
はあ、お腹空いたわね。その場に座った私の前に籠が出現した。籠の中には『蘭くん、お腹空いたら食べてね♡』と書かれた手紙とサンドウィッチが入っていた。雄哉、助かったわ。私は人間に戻り、サンドウィッチを一口齧った。チョコレート? 4つも入っていたのに、全てがチョコレートだったわ。まあ、チョコレートは好きだからいいんだけどさ。
んっ? 何かしら、これ。私が食事をしていると、すぐ近くに気配を感じた。でもこんなところに人がいる訳……。
「久しぶりですぅ。」
岩の陰から小さな少女が出て来た。プリン山の洞窟にいた子ね。
「久しぶりでしゅね。どうかしたんでしゅきゃ?」
この喋り方も、最近あまりしてないものね。普通に喋りずらいわ……。
「とっても強いあなたを、仲間にしたかったから来たのですぅ。」
私を仲間に? では敵じゃあないつもりとゆう事ね。
「へえ、話だけは聞いてあげまそう。キミはどこの人なにょでしゅか?」
私だって、あまり変なところのみかたはしたくないわ。
「甘世界の魔王に仕えているんですぅ。」
あの、愛唯とか友子ね。あの子は戦わなそうなんだけど……。
「目的は何でしゅか? ボクを何に使うちゅもりにゃのかを、教えて欲しいのでしゅが……。」
同じ魔王に仕える者として、敵視はしていないけれど。でも何するか分からないのに、協力するだなんて言えないわよね。
「助けて欲しいのですぅ。リンに、脅されているのですぅ。」
リンって、侵略しに来て優花が怒って封印した人? 脅すって、無茶苦茶弱かったあの人が。信じられないわ、人違いかしら。
「桁違いの強さになってるんですぅ。」
強く? ふ~ん、面白そうじゃない。調子に乗っているのならば、力の差と言う物を教えてやるわ。
「リンをまた封印すればいいんですか?」
あっ、普通に敬語使っちゃったわ。でもまあ、これくらいは大丈夫よね。
「それが出来るのならば、そうして欲しいのですぅ。」
バカにしないで欲しいものだわ。この私が、あんな青年1人倒せないとでも? 有り得ないわ。
「分かりました。任せて下しゃい。」
でも、どの程度の強さなのかしら。ふふふ、楽しみね。そのとき、もう1つ気配を感じたわ。どうしてこんなところにそんなに人が来るのよ。
「僕から逃げられると思っているのですか?」
どこにいるのかしら。声は聞こえるのだけど、いまいち居場所が分からないわ。
「蘭さん、そんなに警戒しなくて大丈夫ですよ。」
光が殆どないから、遠いのかよく見えないわ。そう思って私は、少し光を発生させて声がした方へ送った。あれは……、リン? 丁度良かったわ。
「あれ? そんなに僕と闘いたいんですか。それならっ!」
リンはいきなり目の前に現れた。何かの呪文を唱えている。手から赤く光る何かが出ているから、高レベルな火属性魔法かしらね。確かに昔とは随分違うみたいね。これを喰らえば、私だって不味いのかもしれない。私は遠くに転移しバリアを張った。
こんだけすれば大丈夫でしょう。……? 何て強い風。これは遠距離魔法だったの? 私の行動を読んで、こっちへと? 私はギリギリで違うところに転移した。予想以上に強いわ。これじゃあ、らむね
を守ることなんて出来ないわね。
「ボクはリンと闘いましゅかりゃ、……はあ……。らむねは、離れていて下しゃいっ!」
案外疲れていて驚いたわ。でもまあ、本気で闘えば勝てない強さじゃない。
「分かったですぅ。気を付けてですぅ。」
へえ、止めないんだ。私が負けてボロボロになっても関係ない。いやむしろ、それはそれでプラスだものね。まあ私も、他に誰もいない方が闘いやすいわ。ふん、止められないで良かったわね。
「本気になってくれました? それだったら、僕も本気で行きますね。子供だからって容赦はしませんから。去年の借り、返させて戴きますっ!」
この様子だと、氷属性魔法が来るのかしら。私はそれを防ぐ為に、火属性魔法地獄の炎をリンに放った。そして同時に、リンの後ろに転移して高レベル闇魔法金縛りを使った。覚えたばっかりだし得意じゃない闇魔法なんだけど、効果はどれくらいあるのかしら。実験にもいいわね。
でもそれで逃げられたら嫌だわ。私は念の為、愛属性魔法のラブラブハートを放った。ここまですれば動けない筈だわ。リンの方は大丈夫ね。私は転移して、強力な風魔法で地獄の炎を押した。これで威力も増す筈ね。私は自分の魔法を喰らうなんて絶対に嫌なので、妖精になって洞窟の高さギリギリまで登った。はあ、洞窟って闘いずらいのね。
「ねえ、リン。洞窟で闘えば、殆どの威力が下がってしまうわ。それじゃああまり面白くないでしょ? 外で闘わないかしら。」
闘いを楽しんでいるリンだから、この誘いにも乗ってくれるでしょう。
「ええ、そうで……ね。外へ行きま……う。」
恐らく私達2人とも、光属性魔法使いだわ。洞窟の中とかが1番ダメだったわね。ああでもリンの様子を見ていると、ラブラブハートがかなり効果あるみたいね。
そのとき、地面が明るくなった。地獄の炎がやっと発動したのね。広がった炎はだんだん集まっていき、リンを少しずつ燃やして行った。これを1人で喰らえば結構きついと思うわ。そして魔法が切れた後、私は人間になって地面の落ちた。降りるのがめんどくさかったんだもん。にしても、リンったら今のは結構喰らっちゃったみたいね。でも本人は疲れてるだけだし、何とかバリアを張ったとかかしらね。
「外に転移するわね。」
私は2人纏めて全員を外に転移させた。
「僕まで転移させては、その分魔力が無駄になってしまうではありませんか。」
何よコイツ、私のことをバカにしているのかしら。そんなに低レベル魔法使いな訳ないじゃない。
「転移させる人数が1人から2人になったって、使う魔力は殆ど変わらないわよ。でもまあ、感謝してくれると嬉しいわ。」
そう言った後そ~っと、早口で呪文を唱えた。私はリンが動く前に強力な木属性魔法を使って、リンの体をその辺の木で縛って吊し上げた。これは洞窟の中じゃできなかった魔法だわ。
「昔と同じじゃない。とっても無様な格好をしているのね。」
私はバカにしてクスクスと笑いながら、リンを縛っている葉や蔓に火を点けた。そして逃げたりしないよう、更にきつく縛り付ける。
「僕は昔とは違います。弱かったあの頃からは変わったんです。僕は強さを手に入れたんですっ! バカにしないで下さいよぅ。」
結局弱者が、強さに憧れていただけのことなのでしょう。
「弱い心のまま強さを手に入れても、その強さを使いこなすことなど出来ないわ。でもまあ、力を持っている悪人の気分を味わうことが出来た? 良かったわね。」
半端な強さで私に挑むなんて、やっぱりその時点で弱者なのよ。くすくす……。
「もっと強くなって来なさい。それからまた、勝負をしましょう。」
私はその場を去った。あの程度でよくぞまあ……。だって高い魔力や高レベル魔法を持っているのに、それを使えていないんだもの。それじゃあ意味ないでしょう? まあ自分の力に自惚れてしまえば、完全に弱者でしかないわよね。それと、能ある鷹は爪を隠すとか言う言葉は知らないのかしら。それとも能ないの? ふん。
「どうですぅ? 強かったですぅ?」
らむね、どっから現れたのかしら。気配に気が付けなかったわ。
「まだまだでしゅにぇ。弱しゅぎて封印する気にもにゃれましぇんでしたよ。」
あんな雑魚を封印した優花のこと、逆に尊敬するわ。ゆかたんじゃなくて、優花のことを……ね。
「本当ですぅ? さすがですぅ! やっぱり強いですぅ。」
らむねがキラキラとした目で、私のことを見つめてきた。子供のこうゆうめって、純粋だから苦手なのよね……。たとえ裏があると分かっていても、ね。
「えっと……、これで助けりゃれましたきゃ?」
助けるってどうゆうことのなのか、いまいち分からないわよね。
「今は助かったですぅ。ありがとうですぅ。でもまた来たら宜しくできるですぅ?」
また来たら、ねえ。でも当分は来ないんじゃない? 何度も負けに来るような性格してないわ。負けたならば、負けない強さを手に入れるまで現れないタイプよ。今回もそうだったしね。まあ負けず嫌いなのかしら。だとしても、悔しい、強くなりたいという想いは大切だわ。その想いがなければ、強くはなれないものね。
「はい、勿論でしゅよ。だからまたリンが現れたら、ボクを呼んで下しゃいね。」
去年だけで、あれだけ強くなったのでしょう? また来年、期待して待ってるわ。
「じゃあ、らむねも帰るですぅ。ありがとうです~ぅ。」
らむねが手を振って来るから、私も仕方なく手を振り返した。それを見てらむねは笑顔になり、転移して消え去ってくれた。さ~て、これから何しようかしら。もう捜索するって気分じゃなくなっちゃったし……。
転移の練習でもしようかな。呪文を唱えずに発動させるってのが、前やったやつよね。今回は……、使用魔力をもっと減らすっての。あと、転移の光を出さずに転移するってのを頑張ってみようかしらね。
私は、出来るだけ軽く転移してみた。やはり光ってしまう。でも私だって、1回じゃ成功しないって分かってるわ。何度も何度も練習してこそよ。私は光を出さずに転移する為に、何回も転移し続けた。
たった1日では出来るようになったりしない。私は次の日も次の日も転移し続けた。お腹が空いたときにはパンが届くから、そこも困ることないしね。食事を出してくれる訓練所みたいな感じ。だから逃げることも出来るけど、その場所にいたわ。牢屋に入れられていたら、絶対に逃げ出していたわ。さすがはいちごよ。
はあ、また失敗だわ。
はあ、また失敗だわ。
数日それを繰り返していた。そして遂に……。
「出来たわ、成功よ!」
光を出さない転移を手に入れた。でも私は光属性魔法使いなのに、光を出さないように研究するってのも可笑しな話よね。で、次は何にしようかしら。
あっそうだわ! 石属性魔法ってのを試してみよう。通常魔法があまりできないから、中々大変だと思うけど……。まあ、知識はあるわ。私がどうにか頑張っていた時、近くに気配を感じた。誰? 誰がいるの?
「蘭、大丈夫ですの?」
この声は、姉様!? 気配で分からなかった自分にショックだわ。
「姉様~、ボクはこっちでしゅ~っ!」
私は叫んだ。姉様が来るまで、他のたくさんの気配を……。1つは確実に稚夏だわ。愛妃姉様もいるわね。多分、葵もいると思うわ。
「あっ、蘭~! 大丈夫ですの!? 怪我はありませんこと?」
姉様が私に駆け寄ってきた。でも姉様が自分でこっちの方まで来るなんて、珍しいこともあるのね。ここって多分、夢世界でしょ?
「はい、問題ありましぇんよ。姉様は大丈夫なのでしゅか?」
ここまで来るだけでも、十分危険はあるし……。姉様に危険なことさせるくらいなら、自分で抜け出しちゃえば良かったわ。
「大丈夫ですわ。ほら蘭、帰りますわよ。」
姉様は嬉しそうに笑いながら、さっさと笑っていった。私もそれを追い掛けて走って行った。あれ? 他の人はいいのかしら。




