愛は負けない筈だわ
「えっ本当? 行くわ! 行きたいわ! すぃー♡」
超絶可愛い♡ あのね! ニコッとしたのがね、可愛いの♡ 結構ムッとしてたりニヤッとしてたりすることが多いから、私だけに素直な笑顔を見せてくれるのが嬉しいのよ。分かるでしょ?
「ワープお願い。」
「すぃー!」
いちごが呪文を唱えると、エンジェルタウンの入口にワープした。
「ねえ、ど……あっ1 どこですかいな?」
いちごははしゃいでたのが恥ずかしくなったのか、周りを見ると大人しくなってしまった。子供っぽくしてた方が、更に可愛さ倍増だと思うのになぁ。
「1回ここを離れない?」
私の言葉にいちごは、こくりと可愛らしく頷いた。そして私達は、少し離れた建物の陰に座った。あっ! 座ったって言っても、地面に座っちゃ汚いから椅子は用意してあるよ? だって王様だもん。
「まず私だよ。この格好じゃ不味いと思うんだ。普通の格好にしてくれる?」
何か、一般人っぽい奴。私だって持っている筈だから。
「普通、ねえ。これでいいかしら。」
私の服が変わった。王様っぽくない、普通の人が来ていそうな感じだ。
「雄哉の服が変われば違うものね。私ならばれないかしら。行きましょう。」
いちごが歩き出した、私の手を握って。いちごも少し頬を赤らめてて、恋人同士みたい。手を握って歩くくらいはあったのに、今は妙に恥ずかしいな。
「早く来てよ、私まで恥ずかしくなって来ちゃうじゃないの。」
もう十分恥ずかしそうだよ? ああ、いちご可愛いよぅ。
「えっあっうん、暗くなんないうちに行こう。」
もう5時だし、冬だったら暗くなっちゃう時間だよ。
「ねえ、どこにあるの?」
「ここを走ってって、右んとこ。」
詳しくは知らないけど、右って分かってるなら楽でしょ? 道は一直線だしさ。
「左は見ないでいいのよね。」
ここの逆走は禁止だから、右って言っても方向は決まってるもん。半分しか確認しなくて済むし。
「うん、多分ね。走ってって右なんだから、走らないとだよ。」
走ってってってゆう風に書いてあったんだもん。多分走らなきゃ見つからないんだよねっ。
「そんな訳ないでしょ?」
もう、いちごったら。走って何だから走る、ちゃんと信じないとダメだよ。もっと素直に行こうじゃないの。
「じゃあ、先に見つけた方が勝ちね。」
私は軽く走り出した。
「ちょっ、勝ちって何よ。すぃーすぃー♡ ねぇ、待ってよ。」
続いて、いちごも走り出してくれた。
「あっ、あれかしら。」
少し行ったところで、いちごは私の裾を掴んだ。
「あそこに天使のつばさって書いてあるわよ。」
いちごが指差した先を見ると、お世辞にも綺麗とは言えないような建物が建っていた。そしてその建物の前の看板には、はっきりと天使のつばさと書いてあった。
「何かイメージと違うけど、まあ入ってみよう。」
「えっ、ええ。分かったわ、……すぃー。」
いちごがドアに近付くと、ドアは勝手に開いてくれた。完全に手動って見た目してるけど、自動ドアだったんだ……。
「いらっしゃぁい、……ひひひ。」
ドアの先には、不気味な笑い方をするおじさんがいきなり待ち構えていた。
「入館料、払って下さい。」
怖いからスルーしようとすると、おじさんは低い声でそう言って来た。確か書いてあったけど、結構高かったんだよね。子供だったら半額だった気がする。
「何歳から大人になるの?」
いちごは子供で通れないものか。そう思って、私は一応問い掛けてみた。あんまりもう子供って歳じゃないんだけどね。
「16歳までが子供、17歳からは大人とさせていただいております。」
いちごはもう17歳なんだよね。ってことは、ギリギリ大人ってことか。まだ誕生日も来たばっかりだし、本当にギリギリだね。まあいくら下に見えるからって、ズルはダメかな? 絶対17に見えないんだけど。
「いちごはいい、私が払うってば。」
2人分しっかり払うと、私達は入館を許して貰えた。やったー。
「どうぞ、お通り下さい。」
私達はドアを開けて貰い、カーテンを潜った。綺麗だし広いなぁ。空間拡大魔法と……、あれ? あんなぼろかったのに、どうやってこんな新しそうで綺麗に見えるんだろう。幻惑魔法なら分かる筈だから、違うってことでしょ? もしかして、掃除の仕方とかで本当に。でも何でわざわざ外見を悪くしてるんだろ。外から見てあんだけ汚かったら、行こうとしてた人も行く気無くしちゃうよね。
「うわ綺麗☆ 凄いビックリしたわ。」
さっきまで怯えて潤んでいたいちごの瞳が、キラキラと輝き始めた。
「じゃあいちご、まずお風呂に行こうか。」
「行こうかって、すぃー!? 私を男湯に連れ込もうとしてるんじゃないわよ!」
手を繋いだままお風呂に行こうとすると、いちごに殴られてしまった。でもしょうがないじゃん。私が女湯に行ったら怒られちゃうでしょ?
「待ち合わせ、決めとかないとだよね。」
仕方がないので、混浴は諦めてあげることにする。でも王様だよ? 1人で行かせたら心配じゃん。
「そうね、あの椅子で待ってて頂戴。」
分かったあの椅子ね。てかいちご、私が待つこと前提だね。私の方がお風呂は長いと思うんだけど……。
「すぃー、それじゃっ。」
手を振りながら、いちごは女湯へと消えて行った。
「ふふっ。」
私も中に入り服を脱ごうとした時、少女の笑い声が聞こえてきた。でも、周りを見ても男しかいない。
「わたしはそこにいないわ。そして、あなたがどこにいるのかもわからないわ。でもひとつだけわかるの。わたしはあなたのてきだから……気を付けてね。」
私の敵? どうゆう意味さ。てかどこにいるのか分からないってことは、……ここを見てる訳じゃあないってことだよね! 覗きじゃないんだよね!
「ふふっ王様、わたしが誰だかわかる? わかったらおねがいね、まってるからさ。」
他の人には聞こえてないのかな、皆戸惑う様子もないし。でも私、こんな声の知り合いいたかな。子供っぽい声じゃない。子供っぽさを装った声。大人ぶる子供を装った、そんな感じなのかな。
「じゃ~ね~。」
何なのかな? 声が急に機械っぽくなって、ぷちんって電源が切れたみたいな音も。
「雄哉君に似てるね。」
はい? 私が考えていると知らないおじさんに話し掛けられたので、普通に驚いて戸惑ってしまった。
「えっ、雄哉だけど……。あの、知り合い……?」
人見知りって奴かな、声が小さくなってくよ。でも今は悪世界の王のふりもしないで、私は私としていられるから楽でいいね。
「雄哉君じゃ! ああ、今までどこにおったんじゃああ。」
その叫び声に、知らないおじさんがいっぱいこっちを向いてきた。
「雄哉がっ!?」「雄哉たんなら……。」「雄ちゃんだよ……!」
周りがざわついてる。てか皆、私の呼び方可笑しくね? 馴れ馴れしいわ! 私だって仮にも王様なのにさ。
「だ、誰かと……で……。わわ、私は……。」
そう、この下手な演技こそが雄哉だよね。悪世界で暮らして来て、もう演技くらいは身についたけどさ。
「私はその、王とかじゃなな、ないから! 人違いだからっ!」
私は走って逃げた。そして角を陣取ると、服を脱ぎ始めた。これは完全に私服だし、適当にロッカーに入れちゃっていいよね。私は服をロッカーに放り込むと、タオルを抱いて洗い場へ早歩きで行った。そしてしっかり洗ってから、湯船に浸かっていた。
「本当に大丈夫なのかよ。」
「もう、そんなに心配しなくても大丈夫ですって。けほんけほん。」
あれ? 聞いたことある声だな。きょろきょろしていると、ツンデレ少年くんと葵くんが話しているのを見つけた。ってか、むっちゃ近くにおったけん。気付くまでそんなに時間が掛かった意味が分からんわ。
「永輝くん、久しぶりだね。」
別人してればいいものを、私はあえて話し掛けた。
「ん? お前、雄……哉か……? 何……で……?」
永輝くんは何でそんなに驚くの? 私がいたらそんなに可笑しいの? ただの行方不明だった王様なのに。
「ねえ雄哉、けほんけほん。最近気配が、こほんこほん。悪世界にあるのは、げほっ。どう、してなの? こほこほ、けほけほ。」
葵くんも悪世界と甘世界の関係を知らなかったり? だって知ってたら分かるでしょ。同じ世界なんだから、王様だって同じ人物の筈だって。
「咳、大丈夫? 病気悪くなっちゃったんでしょ? お風呂来てていいの?」
質問に答えるのはめんどくさかったので、私は逆に葵くんに質問をした。それも、全く関係のない質問。
「病気は、けほけほ。完全に治ってるから! 僕の質問に答えてよ。甘世界を、どうしてるの? こほん。雄哉に限ってないとは、はあ、思うけど。まさか……ふう。」
へえ? 随分私のこと信じてくれてるみたいだね。でもまさかだよ。
「葵、どうゆうことだ? 雄哉を疑ってるのかよ。皆があれだけ心配してた雄哉を。」
永輝くんも、私のことを庇っちゃってる。でも、会ったことはないタイプだよね。生まれる前から悪世界が存在してた、そんな世代なのかな? 分からないけど。
「んーまあ、信じておきます。とりあえず今は、ね。」
やっぱり天才葵くんは違うねぇ。さぁて、いい勝負になれるかな。
「あっ私ね、気になることがあるの。永輝くんの種族って何?」
折角会ったんだし、そう思って私は問い掛けてみた。でも私が聞くと、永輝くんの表情が少し歪んだ。何かが永輝くんを通ったかのような……。隠してるとは少し違うってこと? 隠されているのかな。
「俺の種族……。それはな……、俺も分からないんだ。」
普通だったら、自分の種族が分からないなんて信じらんないよね。隠してるの? だとか、そう思って当然だよ。でも私自身がそうだから、疑ったりすることはないね。
「葵の援助があっても、姿が変わらないんだ。だから人間かと思われたが、魔法は使えるんだよ。そんだから、分かんなくて……。」
だってどう見ても、隠してる感じなんて全くしないもん。
「あと、属性魔法? からも調べよう! とかも試してみたよ。結果は、無……だった。」
天才くんだって分からないんじゃ。誰がやっても分からないってことだろうね。
「あれ? 調べ方は大体分かるけど、どうしたら無属性が分かるの?」
天才くんの特殊な技術とか?
「だって、得意魔法ってのが無かったんだもん。どの属性も、かなり平均的に使えたの。訓練とかしてないだろうにさ。」
ふ~ん、私と同じかな。もしかしたら、同種族だったり……? つまり永輝くんの種族が分かれば、私の種族も……。
「そう? ありがとね。」
この流れはよくない。そう思った私は、お礼を言ってお風呂を出た。そして服を着て、さっさと出て行った。そして待ち合わせの椅子に座った。
「…………。」
私はぼーっとしていた。推測20分くらいすると、やっといちごが出て来てくれた。
「やっぱり待ってたのね、ふふふ。」
私が逃・げ・て! 出てくるのを知っていたの? いつもなら「待ってて。」じゃなくて「待ってる。」って言うもんね。う~、葵くんがいることも知ってて?
「すぃー? どうかしたの? ねえ早くスィーツ食べに行こうよ。」
無邪気な笑顔を浮かべ、いちごは私の手を引く。
「う、うん。そうだね。」
気配を消している気配がある、姿も消しているのかな。それも感覚的に、かなり高レベルだね。怪しいなあ、怪し過ぎるなあ。
「すぃー? 食べ放題、追加料金いらないんだってよ☆」
嘘でしょ? 何それ、優しいね。いちご可愛いね、キラキラだね!
「いちご、先に行ってもいいよ。」
早く早くって感じにキラってるんだもん。
「すぃー、雄哉も早く来てね♡」
いちごがルンルン走ってった。ああ、可愛いなあ。私も歩いてそこまで行った。
「ご利用になられますか?」
隣のお兄さんに聞かれた。当たり前じゃん。
「え、ご利用になられます。」
てかいきなり言われたから、自分に敬語使っちゃったじゃん!
「30分間とさせていただきます。」
そうだよね。食べ放題って言っても、料金払ってない訳だし時間ありだよね。だとしても優しいよ。
「延長の場合は追加料金をいただ……あははは。」
わ~ら~う~な~。私に何が起こってるかは秘密だよ? てかわざとだから! ただ雄哉らしいボケってゆうのをやっただけなんだから~!
「笑わないでよぅ。まあ分かったから、もう食べていい?」
久しぶりにパンじゃない食事だね。たまにパンみたいなのもあるけどさ。
「失礼しました。では、どうぞ。」
ほんっと失礼しちゃうよ。仕事はしっかりやんないとダメだよ? 私がお皿を受け取って入ると、すぐにいちごが見つかった。
「あっ雄哉ぁ♡」
いちごが駆け寄ってきた。まあ可愛い。
「座って食べなよ。」
お行儀悪いよ! もう、いちごらしくもない。私偉いでしょ? いちごの可愛さに負けずに、ちゃんと悪いことは注意できたよ。
「私も持ってくるね。座って、待っててよ?」
てか、どんだけクッキーよそってんの? にしても美味しそうだね。私は身にケーキのショコラを何個も持ってった。そして気付いた。私もやってることは一緒だったね……。
「雄哉! 遅いよ。私、お代わり持ってくるわ。」
私が座って食べ始めると、速攻でいちごが帰ってきた。
「ゆうやんじゃん。また幼女攫って来たの?」
幼女? ああ、いちごのことかな? ってゆうかぁ、何で皆こんなに馴れ馴れしいのさ。私、王様!
「変わらないね、ロ・リ・コ・ン☆」
ロリコン言うな! あれ私、10年以上行方不明だったんじゃ……? ここまで驚かれないとちょっと。
「私幼女じゃないもん。」
いちごがニコニコと否定した。いやあ、可愛いねえ。
「そうかい、それはゴメンね。ゆうやん、甘世界を……。」
そこまで行ってその人は去って行った。
「すぃー♡ すぃーすぃー♡ 美味しいね☆」
「はむ。おお! これはおいひいにぇ。」
私達が黙々と食べ続けていると、お皿から振動を感じた。ビックリしてお皿を見ると、時間みたいなのが表示されていた。残り5分になると知らせてくれる的なのかな。最後食べるぜ! そう思った私は沢山よそって来た。
「私もう出るわ。あの椅子で待ってるわね。」
私が戻った時、いちごが店員さんに連れて行かれた。そっか、いちごの方が先に入ってるもんね。その分かな。
「分かったよ。」
私が食べていると、残り1分でまた振動を感じた。1分!? 急がないと! 私が何とか口に全部押し込んだ時丁度、時間が無くなりお皿が消えた。ふーん、30分経ったら自動で転移するようになってたとかかな。
「お客様、延長なさりますか?」
それでその情報は店員に送られる、と。
「いいや、もう出るよ。」
私はすぐにいちごのところへ行った。
「雄哉、もう帰る?」
今は6時12分、まだ行けるね。
「折角愛世界まで来たんだもん。遊ぼうよ☆」
滅多に遊べないもんね。いちごを今日くらい、楽しませてあげないと。
「ホントに? いいの!?」
目が輝いてる、超可愛い♡ 私のsweet strawberry♡ はうぅ♡
「うん、いいよ。今日だけね……。でもこれから、もっと大変になるかもしれない。」
いちごに辛い思いばっかりさせちゃってるから、ちゃんと遊ばせてあげないと可哀想だよ。せめて私が私のときくらいは……。
「そっか、私……頑張るわね。んでんで、今日はどこに行くの?」
どこ行こうかな。いちごみたいな女の子が行きたがるとこ、生憎私は分からないんだよ。
「行きたいとことかある?」
分からないんだからしょうがないじゃん。
「じゃあ、想い出の丘に……。あそこに、行ってみたいの。」
え? それくらい行ったことあるよね。てか一緒に行ったよね? 行ってみたい? でも場所に指定としては、確かに乙女っぽい気がする。
「分かったよ☆ あっでも、いちごがワープはしなきゃいけないんだ。」
店内だったら魔法無効化空間になっている可能性が高いし、店を出てからにするかな。
「外出よ。」
私が言うと、いちごは軽く頷いてくれた。
「ふふっ、すぃーすぃー♡」
いちごはスキップで、とても楽しそうに出て行く。
「ありがとうございました。コイツを良かったらどうぞ。次回から使用できる割引券になります。半年が期限になりますので。」
コイツって! それはないんじゃない? 私はチケットみたいなのを2枚受け取った。
「すぃー、もうワープしてい~い?」
何だこの可愛らしい生き物は。可愛い、ヤバいよ。どうしたらいいんだろう、この可愛さに私は立っていることで限界だね。
「うん、お願い。」
私が店から出ると、すぐにいちごが想いでの丘までワープしてくれた。




