皆と一緒に楽しく出来たらね
「ゆ~き~く~ん☆ 約束、覚えてるよね~☆」
私は雪くんに笑顔でそう言った。
「約束……。」
するといつも通り、不機嫌そうな顔で雪くんは出迎えてくれた。
「てか、忘れたとは言わせねえぞごら☆」
どうかな、私怖いかな?
「覚えているわ。今日が約束の日?」
「うん、そうだよ☆」
約束したのは私じゃない私さんだけど、一応約束くらいは私だって覚えてるもん。いやしかし、どんな伝説のアイテムをくれるのかな。
「はい、どうぞ。これが何かは知ってる?」
知らないよそんなの。私は雪くんが差し出してきた、目薬みたいなのを手に取ってみた。
「あんたが彩玉を持ってるみたいだから、これがいいかしらって思って。」
彩玉? 何それ。私そんなの持ってるの? 知らないよ。
「あれ? 持っていたわよね。てか、彩玉って知ってる?」
私が不思議そうな顔をしてしまっていたのか、不機嫌そうな顔のままだけど雪くんがは優しく問い掛けてくれる。
「いや、私は知らないよ。」
私じゃない私さんが知ってるかどうかはともかくね。
「彩世界の色を集めて作られる、これくらいのボールよ。」
そう言って雪くんは、手をOKの形にした。つまり、ピンポン玉より一回り小さいくらいってとこ?
「……あっ、持ってる! これでしょ?」
へえ、これって本当にいいアイテムだったんだ。
「そうよ。それにこれを一滴垂らすの。そうすると、何かが起こるの。私も何が起こるかは分からないけどね。」
だからつまり、私に使って貰って調べたのね。なるほど、あの条件を呑んだ理由はそれか。脅されたからじゃなくて、研究に使う為。私の状態に合わせて適当な理由を付け、謎のあるアイテムの中から何か渡そうとしていた。まあいいや、貰っとこ☆
「ありがたく貰っておくよ。じゃあね。」
「ええ、さようなら。永遠に。」
可愛い顔してるのに、何でそんな表情ばっかなのかな。勿体無いよ。
「ってあ! 雪くん、私を悪世界まで送ってくれよ。」
悪世界には絶対人がいるから、私の力でワープするわけにはいかないね。
「分かったわ、仕方ないわね。いつものおまけはどうしたの?」
そんなことをグチグチ言いながらも、雪くんは私をワープしてくれた。
「王様、1人でどっか行ってたの? です!」
佳子くんはそう言った後、私の服の臭いを嗅ぎ始めた。私匂ってるの!?
「いつもと違う臭いだ……です! 誰とどこに行ってたの? です!」
いつもの臭いって? 臭いで分かるの!? そこまで匂ってるんだ……、普通に傷付くな。
「佳子くん、何かよう? 何もないなら私はもう休むよ。」
ダメだよ。まだ私だから、会話すると雄哉だってばれちゃう。
「いや、ようはないけど……です! 疲れてるの? です!」
「はあ。いろんなとこに行ったから、疲れちゃってるよ。休ませて。」
私は佳子くんの心から心配しているような顔を、真っ直ぐに見ることが出来なかった。だから私は、逃げるようにしてその場を去った。さっさと歩いて、自分の部屋に戻った。
「雄哉、お帰り。」
するとそこにはいちごがいた。暫く旅に出るんじゃ……? まあいいや、いちごがすぐ帰って来てくれて良かったあ♡
「良かった。いちご、ただ1日出掛けるだけならあんな手紙書かないでよ。心配するでしょ。」
「そっか、1日か。……1日ね、そうなのね。」
いちご……もしかして……神々の世界に行ったとか……? あそこなら多分、1日で旅だってできるね。
「ちょっといいかな。」
私はいちごの手を掴み、右手の甲を確認した。やっぱり、小さな痣が出来ていた。
「あっ、これは違うのよ。」
いちごは左手でそれを隠すと、俯いてしまった。隠したいことなのね。じゃあ深く探ったりはしない。
「葵くんかな?」
「……うん、そうよ。」
やっぱりね。でも、仲直りできたのかな。私のせいで、あんな酷いこと言わされたんだもんね。
「本人には言わないでね!」
「うん、分かってるよ。私もそんなことしないさ。」
いちごはとってもいい子だから、いい事は陰で行う。お礼に助けて貰うことを嫌うから。お礼が欲しくて、慕われたくて……そんな理由で人の為に動くことを嫌うから。私だって、いちごのその行いを無駄にはしないさ。
「でも、やっぱ雄哉のおかげよ。雄哉のおかげで、寂しくなかったわ☆」
いちごは子供っぽく、可愛らしく笑ってくれる。私はその可愛さに、思わず見惚れてしまっていた。
「な、何よ。いつまで見てんの?」
「えっ? あ、ごめん。」
結構見つめてた系? マジか、ボーっとしてたわ。
「いや、謝らなくてもいいわ。それより雄哉、今日は何かあった?」
いちごは椅子に座って聞いてきたあ、立ちっぱだったんだ。
「彩世界に行った。それで、色塗りを阻止してきた。その後由里くんの家に行った。そしたら優斗お兄さんに会って、話をした。別れてから、1人で地獄に行った。」
うん、こんなもんだよね。
「地獄? ああ、アイテムは?」
「これだよ。」
私は雪くんに貰ったアイテムを渡した。いちごはこれが何だか知ってるかな。
「これ、知っているかもしれないわ。彩玉に垂らす奴じゃない?」
いちごがドヤ顔をしてきた。へえ、こんなの知ってるの? 凄いね、まだ研究中アイテムでしょ。効果を知っているのは、星くんただ一人。そんなアイテムを……。
「そうだよ! 知ってるなんて凄いね! 抱き締めてあげよっか!」
「五月蝿いわね、まずそこに正座しなさい。そして、そのアイテムと持っているであろう彩玉よ。早く私に預けなさい。」
いちごは、抱き締めようとした私をひらりと避けた。そして私の肩を掴み、無理矢理座らせた。私は王様なのに……。そう思いながらも私は、言われた通り正座して2つのアイテムを(彩玉って奴いっぱいあるし、2つではないのかな)いちごに差し出した。
「ありがとっ。これは私が預かっておくわね。」
「うん、お願い。絶対奪われないように……! ね♡」
何があるか分からないんじゃ、使い方にも困るけどね。
「分かっているわ。これはいいのよ、それより雄哉。由里の家に行ったって言ったわよね。本当に勇者のあの、山中由里の家に行ったの?」
確かに悪世界の王である私が勇者の家になんて、そんなの無謀すぎるよね。
「行ったよ。あのね、よく分からないんだけど……。由里くんの家に入ろうとしたら、私は私に戻ったの。勇者の特殊能力があったりするのかな。」
あの場では気付かなかったけど、この可能性も十分あるよね。あの勇者、最早ほぼ何でもアリだもん。チーターだもん、チートすぐるもん。
「勇者の能力について、私は知らないわ。でもただ、予想は……ありそうって感じね。」
「そうなのかな。やっぱり勇者の能力が関係してるのかな。」
全てを思いのままにする能力。それと、どんな能力も無効化できる能力。そんなところだっけ。さ~てそれに、私はどれだけ抵抗できるのかな。平和は望むけど、あまりにも私が瞬殺されちゃあ面白くないでしょ?
「まあ、そうだと思うわ。すぃー、その瞬間を利用すれば雄哉を操っている犯人が分かるかもね。……あっ! ねえ雄哉、いい事を考えたわ。」
いちごの口がニヤリとした。いいこと、ねえ。じゃあ、期待させて貰うよ。
「いいこと? ふふっ、面白いことかなあ。」
「すぃー。いや、あまり愉快なことではないのよ。目立つ仕事にはしたくないし、プラスは多くても相手にマイナスは殆どないんだもの。今更正義は無理だから、もうちょっと楽しみたいわ。」
そうそう! どうせ悪人として終えることになるのなら、精一杯楽しく生きたいよね。
「まあただ、とびっきりに……派手にしたいけど……。目立つと不味いの?」
何するんだか知らないけどさ。
「う~、出来れば隠したいわ。」
「そっか。じゃあ私は、誰もが他のことを見れなくなってしまうような、超絶派手なのをやるって言う噂流していい?」
やり方は単純だけど、それで隠せるかな。
「いや、止めて頂戴。派手なのじゃなくて、地味だけど性格悪い奴の方が私達らしいわ。そうね、それと噂じゃなくて……。……直接伝えに行っちゃう? ほら、本世界の情報屋? あれを使えば信憑性もあるわ。」
派手にしちゃダメなの?
「随分と慎重だね。そんな良い事なの? 楽しみだな。」
「いいえ、そんなことないわ。だって今は、私達の動きを絶対に読まれたくないの。ってゆう理由で、隠してるだけだから。決してこのことの為じゃないんだもの。」
王様の誕生日って皆が油断してそうな日に、5つもの世界が協力して攻め込もう! ってくらい派手なことやりたいよね。
「まあ、このことは私に任せてね。それよりもさ、スパイや裏切り者がいるみたいなのよ。」
「へえ、愛華くんとか見たいな?」
他にもたくさんいると思うけど、私に1番近いのは多分愛華くんだよね。
「愛華がそうなの!?」
「知らなかったの!?」
ビックリだよ。いちごのことだから、とっくに気付いてるもんだと……。
「そうなんだ、甘世界から?」
「知らないけど、多分そうだろうね。」
だって愛華くんは、愛唯くんのことをとっても大切にしてたもんね。
「じゃあ甘世界……いや、華世界の……。すぃー、すぃー? すぃー! 伝説の花だわ! そうよ! ねえ雄哉、伝説の花を狙ってると、さ・り・げ・な・く愛華に言って頂戴。」
どうして伝説の花なの?
「甘世界の方が、愛華くんには効果あるんじゃ……。」
「いいえ、甘世界と言ってしまえば愛華が自分で止めさせようとするでしょう。しかし華世界ならば、わざわざ自分でやったりしない。でも美希とかに伝えるくらいはするんじゃないかしら。」
それで警備をそこに集中させるってこと? なら華世界に『良い事』って奴をするの?
「でもいちご、華世界は伝説の花を守らないかもよ。珍しいけど、いらないから。とかそんなことを言ってたしさ。」
道具の為に人を動かすなんて、しないよね。
「ならいっそのこと、蘭を攫う計画でどう?」
蘭くんを攫う?
「地味でも性格悪い奴でもないじゃん。でもまあ、私はそれでいいよ。」
「すぃー、良かったわ。なら決定ね。愛華にはさ・り・げ・な・く! 言いなさいよ。」
大丈夫だよ。本当っぽく嘘を言うのは得意だから。
「よし、これでこの話は終わりよ。話題を変えましょう。」
いちごが『パンッ』と手を叩いた。
「じゃあさ、いちごに訊くね。星世界って知ってる?」
誰だかが話してるのをチラリと聞いたんだけど……。
「星世界? 知ってるわよ。」
いちごが知っているなら、本物なのか。私が未だ知らない世界、気になるね。
「えっ? 知ってるの? じゃあ教えて。私は知らないんだけど、面白そう♬」
どんな世界なのか、凄い気になるぅ。
「私は結構詳しく分かるわ。知っている限りを教えてあげる。」




