あの大空を羽ばたけば、嫌なことなんて全部忘れられるのかな
…私と葵といちごの3人で、夜まで遊び続けたのです。
「…そろそろ私は帰らないとです。」
…23時46分、もう少しで日にちが変わるのです。…こんな遅くまで遊んでたの、初めてかもです。
「すぃー、そうですなー。子供に夜更かしさせたら、怒られてしまいますぞ。」
…子供と失礼ですね。…3、4個しか変わらぬですのに!
「…葵は帰らぬのですか?」
「んー。」
…葵は俯いていたのです。
「ん? もう帰るよ。ねえいちご、思い出したよ。」
…思い出したって、何をです?
「すぃー!? 本当ですかいな。もしかして私の…。」
…いちごが葵を、『ちらっ』と見たのです。
「うん。パーティの理由、分かったよ。」
…何なのです? …気になるから、教えて貰ってから帰るのです!
「…私にも教えろです。」
「ん。」
…葵はいちごの方を見てから、『こくり』と頷いたのです。
「今日が多分…いちごの…17歳の…誕生日なんだよ…。」
…今日、ですか。…そういえば言ってたですね。…誕生日の時の話をするときにも、『八年前の”今日”の話ですぞ』ってです。…それに、『もともと、パーティのつもりだった』とか、『たまたま今日だっただけなんですかいな』とかも言ってたです。…そうですか。…そう言う事だったのですか。…偶然、ですよね。…蘭、そこまでは知らぬですよね。
「すぃーすぃー☆そうなんですぞ。」
…いちごが『くるくる』と回ったのです。
「…プレゼントは。」
…私が言おうとすると、いちごは首を振ったのです。
「プレゼントはもう、貰ったと…私は思ってますぞ。」
…なぜです? …知らなかったし、私はあげてないですよね。
「貰いました、親友と言うプレゼントを。私にとっては、…葵とまた…一緒に、遊べたことが…最高の、最っ高のプレゼントですぞ。これからも…私は…はあ。これからまた…敵に戻っちゃから…だから!! 本当に今日は、ありがとう。最後にまた、あの頃に戻れた気になれましたぞ。…さよなら。」
…最後って何なのです!? …さよならって、いちごはどうするのです!?
「いちご…。そっか、戻っちゃうんだね。僕も楽しかったよ、さよなら。」
…葵は顔を伏せたのです。…ああ、そう言うことですか。
「また暫くお別れだけど、いつでも会いに来ていいからね。僕はいつでも待ってるよ、今度こそ…信じてる…待ってるから…。」
…良かったのです。…葵がいちごのこと、信じてくれて…ですがいちごは、悪世界に戻るのですね。
…でも私もそうかもです。…美希を倒すよう命令されたころに”悪世界の王様は雄哉”って知ってたなら…裏切ることも、狙うこともなかったかもです。
…下手したら私も美希ではなく、雄哉を選んでいたかもしれないですね。
「…雄哉に宜しくです。…いちご、おやすみなさいです。」
…次にいちごと会うときはきっと、微笑み合うのではなく…、闘い、睨み合うのです。…でも…いつか…また一緒に…笑顔で………なのです…。
「じゃあ、ね?」
…葵がゆっくりと歩き始めたのです。
「…葵、いちごが悪くないことが分かったですね?」
…私もゆっくり歩きだし、葵の耳元で囁いたのです。
「うん、分かったよ。心友とか言ってたくせに、信じてなかったんだね。でも、誤解が解けてよかったよ☆」
…葵はそう言って、ピースしてきたのです。
「でももう、いちごのこと疑ったりしないZE♪イェーイ!」
…葵、テンション高くないですか? …どうしたのです?
「…いちごー! …すぐ悪世界に、助けに行くですよー! …雄哉を、戻してあげるですからー! …待っててですー!」
…私は大きく手を振って、精一杯大きな声で叫んだのです。
「またね~!!」
…葵も同じように、手を振って叫んだのです。
「すぃー!! 最高の時間をー! ありがとう! ございましたなー!!」
…いちごも叫び返し、ジャンプしながら手を振ってくれたのです。
…こうして私達はいちごと、笑顔で別れることが出来たのです。
…最近は全くなかったであろう、満面の笑みで、最っ高の笑顔でなのです。
「久しぶりだな。こんなに笑ったのも、こんなにはしゃいだのも。こんなに、…楽しいのも。稚夏は僕よりもずっとそうでしょ? 姫…いや王女と言うだけあって、完全に自由って訳にはいかないもんね。退屈な挨拶とかも、いっぱい聞かなきゃなんないんでしょ?」
…挨拶や紹介を聞くのも、別に嫌いじゃないのですよ。
「…ですが、久しぶりに心から楽しめたな、とは思ったですね。」
…毎日がつまらない訳じゃないのです。…今夜がとびっきりに、楽し過ぎただけなのです。
「あっここ曲がるともう、いちごが全く見えなくなっちゃうね。」
「…そうですね。」
…永遠にお別れ、みたいな雰囲気ですね。
「じゃあさ、ここから地上まで走ろうよ。」
…走ろう、ですか。…普段の葵らしくはない提案ですね。…でもまあ、たまにはそんなのもいいですね。
「…了解なのです。…競争ですよ? …よーい、ドンです。」
…私は走り出したのです。
「えっ!? ちょっ! 待ってよ~。」
「…待てと言われて、待つはずがないではないですか。」
…だって、競争なのですよ?
「え~! スタートが早いとかズルいもん! フライングだよ。」
「…葵が先にスタートすればよかったではないですか、そうしても私は文句を言わないですよ? …残念ながら、ズルいといわれる筋合いはないのです。」
…競争だって、少しは考えるものです。
「い~じ~わ~る~。」
葵と稚夏の楽しそうな声が徐々に小さくなっていき、やがて辺りは静まり返ってしまった。ふう、もう深夜ね。今日はここで寝ちゃおうかしら。そう思い私は、部屋に布団を敷いた。
「おやすみ。」
一人そう呟いて布団の上に倒れると、ドアを叩く音が聞こえてきた。何なのよ、こんな時間に。ああそれとも、忘れ物かしら。
「すぃー、誰ですかいな。」
私はドアを開けた。するとそこには、雄哉が立っていた。
「ぎりぎりセーフ! いちご、HAPPY BIRTHDAY☆」
雄哉にも、そう言って貰えるなんて…今年は最高の誕生日ね。
「雄哉、ありがとう。でももう、アウトだと思うわ。」
0時6分だものね。
「えー。そっか、アウトか。いちご、ごめんね。大好きだよ。」
「はふっ!」
だ、大しゅきって。…いちご、落ち着きなさい。私の『好き』と、雄哉の『好き』は違うの。分かってるはずよ。
「いちご、赤いよ? 暑いの? あっでも、いちごは赤いほうが美味しいよね。」
雄哉は微笑んで、私の頭を撫でた。すぃー、すぃーすぃー。
「雄哉、それよりも…本当に伝説のメンバーを集めるつもりなの?」
そんなの、恐ろしい意外に何もないじゃない。勝てるつもりでいるの?
「それは多分、私じゃない私が言ったこと。でも面白そうだし、いいんじゃない? レジェンドゲーム。」
レジェンドゲーム? いやいや雄哉さんや、カッコ良さげな言い方されても…ダサいよ。
「レジェンドゲームは明日、不思議世界でやるからね。いちごも一緒に見よ。」
不思議世界まで行くの? わざわざそんな遠くの世界にする必要あるのかしら。
「また明日~!」
雄哉は部屋から出て行き、雄哉がいたところには袋が残った。
「何かしら。」
私はその袋を開けてみた。手紙が入ってる、…勝手に読んじゃおっ。
『いちご、誕生日おめでとう。去年も一昨年も忘れちゃって、ゴメン。忙しくても、あの言い方は酷かったよね…。3年分のプレゼントだよ、使って。』
私への手紙か、じゃあこれも私へのプレゼント?
「あっこれ…。」
そういや言ったっけ。『ネックレスが欲しい』って。玩具でも嬉しいくらいなのに、本物の…宝石だ…。それにこれ、緑の光を放ってるわ。魔力回復効果がついているのかしら。…ってあれ? 緑じゃなくて黄緑だわ。
「そっか。」
緑色の宝石は、使用すると弾けてしまう。ネックレスになんか付けられない。それに比べて黄緑の宝石は、着けている限り魔力を回復し続ける。こっちの方がアクセサリー向けだけど、激レアだからかなりのお値段とか。凄いわねこれ。高級品だから嬉しいってわけじゃないけど、でもこれ…他の部分も合わせると全部で1億近くするんじゃない? あり…が…と。
私が目を開くと、時計には9:08と表示されていた。
「嘘!?」
…って何だ、6:08か。寝惚けて読み間違えたのね。
「いちご、やっと起きてくれたよ。6時に来て起こし続けてたんだから。」
雄哉!? いたんだね…。
「昨日遅くまで起きてたからかな、まだちょっと眠いわ。」
すぃー。早寝早起きをモットーに生きてるから、日が変わるまで起きてるなんてないのよねー。
「今日は折角、楽しいゲームをやるんだよ? 寝惚けてないで、早く用意しなよ。」
私は眠気を覚ます為に、部屋の外の冷たい水を顔に掛けてきた。
「ねえ雄哉、ゲームって言っても何すんの?」
ゲームをやるとしか聞いてないけど、いろんなゲームがあるものね。
「くじ引きで3つのチームに分かれて貰う。で、そのチームで…不思議世界の攻略頑張って貰うよ。」
そういや訊いたことあるかも。不思議世界には3つの扉があって、とか何とか。まあ不思議って名前なだけあって、謎だらけなのよね…。
「成程ね。…でさ、雄哉…部屋から出てくれる?」
これからお風呂に入るんだからさ。
「出るの? まあ…分かったよ。」
雄哉は不満そうに出て行った。
「私がドアを開けるまで入って来ないでよ?」
待たせるんだから急がないと。私は服を脱ぎ棄て、急いで髪や体、序でに顔を洗った。そして、少し寒かったが湯には入らず服を着た。
「雄哉、もういいよ。」
私はドアを開けた。
「あれいちご、風呂に入ったの?」
雄哉の質問に、私は頷いた。
「いちご~、ちゃんと乾かさなきゃダメだよ。」
雄哉が私の髪をタオルで、丁寧に拭いてくれた。
「あんがと。いただきます。」
私は朝ご飯を作るのもめんどくさくて、買っておいたパンを食べ始めた。
「食べる?」
「え、食べる食べるー!」
後ろから手が伸びてきて、パンを1つ掴んだ。…何か怖いわ。
「これ美味しいね。」
別にそこまで美味しくないと思うわ。
「髪に付けないでよ?」
髪弄りながらパンなんて食べてさあ。
「分あってる。」
そう言ってその後は、無言のまま食べ続けた。
「ごっちゃま。」
私は2つ食べ終わると、髪を整える作業に入った。
しかし私が髪を結び終わっても、雄哉はまだ食べていた。
「もう7:30よ。何時間食べてんの?」
「じゃ、じゃあ…これで終わりにするよ。」
どんだけ食べるつもりだったんだっつーの。
「よし、不思議世界に向かおう。」
今から向かえば、攻略の開始は8:00ってとこかな。
「めんどくさいわね、参加者は8人でいいの?」
「うん。じゃあ8人に魔法を掛けに行こう。」
そうよね。何度もワープを重ねながら、一人一人連れてったりしちゃダメよね。だってそれじゃあ、私の魔力の限界がばれちゃうもの。ばれないようにする為に8人に魔法を掛けといて、自分が不思議世界に行く。その後呼び寄せれば、同時に全員を引き寄せたように見えるでしょう?
「まず、彩世界に行こう。そこに、勇者の…由里くん?がいる。」
彩世界か。不思議世界から、更に遠ざかって行くわ。
「黄雷エリアでいいのよね…?」
雄哉が頷いたのを確認してから、私はそこにワープした。
「可哀想に、私の命令でこんな風にされたんだね。」
雄哉は、全員の縄を解いた。その間に私は呪文を唱え、由里に魔法を掛けた。
「次は健人くんのとこに行こう。星運岡にいるっぽいよ。」
「愛世界の?」
私は今回もちゃんと、雄哉が頷いたのを確認してからワープした。
「何やってるの?」
雄哉が喋ってるうちに魔法を掛ける。
「お前ら、何の要だよ。」
若そうな男性が出てきた。この人、この世界の王様に似てるわ。確か…永輝、とか言ったっけ?
「今日は闘いたくないよ。じゃあね。」
成程。持ち物的に…魔法石を取りに来てるんだわ。貧乏な愛世界じゃ、高く売れる魔法石は貴重な資源だものね。しかし、王様がわざわざ自分で取りに来ないわよね? すぃー。
「魔術師の3人は、笑顔世界にいるみたい。」
笑顔世界のどこよ。
「失笑の街にいる…のかな。」
失笑の街って、あまり笑顔じゃないわよ?
「分かりましたぞ。」
私は曖昧な記憶を辿って、恐らくそこと思われる場所にワープした。
『キ、止まらないから~ イェイ♡』
するといきなり、大勢の声と歌が聞こえてきた。ってことは合ってるのね。
「ライブ中かな、じゃあやめとく?」
ライブ中に連れてったら、ファンの人達に悪いものね。
「じゃあ皆~ありがとね☆」
「バイバ~イ♡」
ってあれ? 終わったの?
「すぃー!」
私は3人を呼んだ。
「3人はこれから予定ありますかいな。」
「ないよ。」
優花が答えた。ないの?
「私達のライブは気紛れだからな。好きな時に好きな場所でやるんだよ。」
花恋が説明してくれた。そうなんだ…。こう話している間に、3人にも魔法を掛ける。
「ふーん、ありがとう。いちご終わった? じゃあもう次行こう。次は戦士達だね。恐怖世界にいるみたいだけど、大丈夫?」
恐怖世界か…あそこ嫌いなのよね。
「でも、行くしかないわ。行きましょう。」
私は恐怖世界にワープした。でもここ、位置情報が分かりずらくなってるのよね。私も雄哉も、戦士達の場所がまだ掴めてないし。
「すぃー、どっちにいるかも分からないの?」
この薄暗さ大っ嫌い。情報を調べずらいのも、魔法の効果が弱まるのも大っ嫌い。おばけが…出そうだし…。
「多分…あっち?」
雄哉が指差した方からは、呻き声が聞こえて来ていた。
「私が捜して、場所が分かってから呼ぼうか?」
「いやっ!」
恐怖世界から外の世界へは、殆ど何も届かないんだから。待つにしても、恐怖世界で待たなきゃいけない…1人で。
「1人になるの怖いよ、一緒に行くぅ。」
殺人天使ということで、私が来ることを天国からのお迎えって言われるくらいなのに…まさかおばけが怖いなんて、笑っちゃうわよね。
「あははは、その辺はやっぱ女の子だよね。」
笑われた…。笑っちゃうって言っても、本当に笑われるとムカつくわ。
「あっ! こっちに誰か近付いてくる、7人かなぁ。」
7人? 多いわね。
「幽霊とかじゃないよね…すぃー。」
すぃー。言ったって全然、甘くならない。雄哉を疑うんじゃないけど、この魔法…効果あるの? …はぁ、ダメね。あるわけないじゃない、でもこれくらい無邪気に信じないと。
「すぃーすぃー。」
うわ~ん、やだよぅ怖いよぅ。笑い声が近付いてくるに連れ、姿も見えるようになってきた。6、人?そっちも私達に気付いたのか、こっちに走って来た。やっぱ6人だよ? でも気配は7つある。あと1人は何なの? やっぱり、やっぱり…。
「ああびっくりした。1人足りないと思ったら、妖精がいるんじゃん。」
…成程成程。妖精だから小さくて、この暗さでは見えなかったのね。
「それは分かったけど、怖いからもう行く!」
明らかに強い人が3人いたので、その3人が戦士だと判断して魔法を掛けた。てか今気づいたけど、私…雄哉の手を握ってたの!? 急に恥ずかしくなってきたわ。
「分かったよ、不思議世界へ行こう。」
私は急いで不思議世界へワープした。
「呼ぶわよ?」
少し落ち着いてから、雄哉に言う。
「どうぞ!」
私は上に駆け上がって行き、雲の椅子を設置した。そしてそこに座ると、由里に掛けた魔法が解けぬうちにと思って早速8人を呼んだ。
「ひゃっ! 何なの?」
最初に呼んだ由里が悲鳴を上げた。その後も次に現れ、ざわざわとうるさくなった。でも、魔術師はさすがね。感覚でワープと分かるのかしら? この世界のことも知ってたりして。だって妙に冷静よね。魔法を掛けたときに気付かれた…、ってことはないと思うだけどね…。
「静かにしろっ!」
雄哉? いや、王様の方みたいだわ。
「君達にはゲームを行って貰う。チームを決めるから、そこのカードを引いてくれ。」
赤、青、黄、三色のカードが用意されていた。王様は、勇者には赤、戦士には青、魔術師には黄色のカードを引かせた。
「同じ数字のカードを持ってる人がチームだよ。」
チームが決まったらしい。へえ、面白い決め方じゃん?
「①の人は風の扉、②の人は林の扉、③の人は日の扉の前に行って! じゃあ、用意…スタート。」
一斉に3つの扉が開いた。




