私には守るべきものがある そのために戦うだけよ
「知らないのか。そうだよね、若いもんね。産まれてないのかもね。じゃあ特別に私が話してあげるよ。」
…雄哉だって若いではないですか。
「昔々あるところに、小山雄哉と言う心優しい王様が住んでいた。」
☆
「どうして犯罪がこんなに起きるんだ?」
ある日王様は、神様にそう尋ねました。
「欲が原因だよ。でも君は欲が余り出てないだよ。可哀想な子だよ、助けてあげたいだよ。」
そう言って神様は、王様に選択肢を与えました。
「このままこの世界で暮らすのと、悪い人だけを追い出してしまうの、どっちがいいだよ。」
「悪い人なんて追い出してくれ。」
幼かった王様は、神様の意図が分かりませんでした。そして疲れ切っていたので、そう答えてしまったのです。その答えに、神様は悲しみました。
「分かっただよ。」
そして神様はその世界を半分に切り、約束通りルールを違反した人は新しい世界に送ってしまいました。
☆
…悪事を働いたことがあったって、本当に悪い人な訳ではないのです。…本当に悪い人なんて、いないのですよ。…だから神様は、王様も新しい世界に送ってしまったのですね?
…しかし神様は本当に、酷いですよね。…純粋な子だったですのに。…仕返しも仕方ないと思えて来たですよ。
「私にも分かってるんだよ?悪世界なんざ作りたかなかったよ。そこで、3人にお願いがあるんだ。私を戻して、くれないか?こんな世界嫌だ、こんな私嫌だ。…助けてくれ。」
…そうですか。…やはり雄哉は残ってるですね。…悪に手を染めてはいるですが、まだ救出の余地はあるです。
「そのお願い、承りました。」
「ちょっと待って、じゃあ誰が悪の王なんだ?おかしいぞ。」
…雄哉を動かしているのは何です?…雄哉のどこかに、暗い思いがあるのです。
「おかしいところなどございませんよ。目の前にいらっしゃるお方が、まさに悪の王でしょう?」
…和は体を乗っ取られて、いちごは雄哉に言われて、なら雄哉はどうしてです?…雄哉が他の世界と戦う意味は、理由は何なのです?
「…どうして私達を捕まえたのです?」
「それは私じゃないんだよ。私の体が勝手に動くの、私の口がおかしなことを言うの。」
…誰かの操作魔法ですね。…雄哉に産まれた暗い思い、そこに入り込んで操ってるです。
「…1人でいるときでもそうなる訳じゃないですよね?」
「うん。1人とかなら、私は私だよ。それといちごと2人きりの時も、私はずっと私だよ。いちごは私を助けようとしてくれてる、だから疑ったりしないでね?」
…いちごも悪くないです、分かってるです。
「…誰かが操ってるのですね?」
「えっそれって、和とは違うのか!?」
…桜、和がどうなのかも知らないのですか?
「…和は操られているのではなく、体を乗っ取られているのです。…操るのは高レベル違法闇魔法使いですが、乗っ取るのは神なのです。」
…和はもともと、破壊神が封印してあったですし。
「私が私じゃなくなる前に、皆でここから逃げて。早くしないと、華世界が!私がいちごにも言っとくからさ。」
「では、失礼させて戴きますね。」
…若菜の転移で、脱出出来たです。
「10人全員いますわね。でも、どうするんですの?」
「ワープや転移じゃ、この外には出られないわ。でもだからと言って、悪世界にいるままってわけにはいかないでしょう?」
…宮崎姉妹が言ったのです。…さて、どうしましょうです。
「助けを待つってのはいけねーのか?」
「駄目ね、そんなんだから私にしか名前を覚えて貰えないのよ。」
…蘭だけでないですよ?…私も覚えてるです。…加奈です。
「あのさ、私さ、その…知らない人、ばっかりなんだけど…。名前、教えてくれない…?」
…そうですね、由里が会ったことある人は少ないですよね。
「今日は遅いし、宿にでも行くか?自己紹介はそこでってことで…。」
…桜が提案したです。…まあ今日中に行こうとするよりも、そっちの方が安全かもですね。…だって敵はきっと殆ど、闇が得意な属性なのですから。
「いいんじゃないっすか?じゃあ、そこの宿でどうっす?」
…数少ない知らない少女が、近くにあった小さな宿屋を指して言ったです。
「では、少々お待ち下さい。」
…若菜が先にそこに入って行き、何らかの交渉をしているようだったです。…そして暫くすると若菜は、私達も呼び込んだのです。
「ではここで泊めていただけるんですの?」
…美希の質問に若菜は軽く頷くと、宿主の代わりに部屋まで案内もしてくれたのです。…若菜、貴方は何なのですか?
「こちらの部屋でございます。」
…若菜が開けてくれた部屋に全員入ったです。…若菜は最後に入って来て、自然に扉を閉めて鍵まで閉めたのです。
「…ではとにかく、順に名乗ろうです。…あと、種族も知りたいのです。」
『オー!』
…元気ですね。…私達が座ると、1人の少女がきょろきょろしながら話し始めたのです。
「葵からですか?葵は愛川葵です。皆さんとは初めましてなので、ちょっと怖いです。優しくして欲しいのですっ。葵の種族は、猫さんなのです。にゃーにゃー。」
…言い終わると、ぺこりと頭を下げて座ったのです。…ん?葵と言うですか。…その上猫なのですか。…№1が葵って名前で種族は猫だって聞いたことあったですが、あの怪物さんのことじゃなかったのですね。…だから攫われてなかったのですか。
「私は斉藤桜!種族は普通に、犬だ。これでも小説家何だぞ、宜しくな。」
…葵が座ると次に桜が立ち上がり、元気にニコッと笑ったです。
「中島和。犬。」
…桜が座ると和が立ち上がり、ポツリと名前と種族だけ呟いて座ってしまったです。
「私は宮崎美希ですわ。種族は鬼ですのよ、ふふっ。」
…次に美希が立ち上がり、微笑みながらすぐ座ったのです。
「私は宮崎蘭、妖精よ。私のことは、皆知ってるでしょう?」
…蘭は最早、立ちもしないで言ったのです。…蘭は全員と知り合いなのですか?
「あたしは菊池加奈だぜ、忘れんなよな!」
…加奈は元気にジャンプまでして、叫ぶようにして言って来たです。…少し声が大きいですよ。…後種族言ってないですが、加奈の種族は人間でいいのですよね?…あっ次が私ですか。
「…田中稚夏なのです。…人魚なのです。」
…私は立って言い、そのまま座ったのです。
「うちは本田日向っす。一応詳しく言うと、種族はトラ猫っす。結構初対面も多いけど、宜しくお願いしやす。」
…日向、ですか。…猫ですか。…そうですか。…では要するに、猫は全体的に交流が少ないってことでいいんですね?…由里も猫ですし。
「えっと、私は山中由里よ。種族は、猫って言われたっけ。」
「わたくしは渡辺若菜と申します。伝説の魔術師の妖精と言うものをやらせて戴いております。」
…そうですよね。…伝説につく妖精は、妖精の中のトップスリーですもんね。…1番高い、つまり蘭は勇者の妖精です。…そして2番目に高い若菜は、2番目の魔力の魔術師についてるです。…そして3番目の雛乃は、伝説の中で1番魔力が少ない戦士についているのです。
「で、どうするつもりなんだ?どうやって出るつもりなんだよ。私脱出ミッションは苦手なんだよな…。」
…桜が言ったです。…脱出ミッションですか。…そうです、ミッションと思えばいいのです。…私にクリアできぬミッションなどないのです。
「正門から出れば問題ないと思われるのですが…。」
…正門から堂々と出るのですか?
「誰か、幻惑魔法使える?いけるかもしれないわ。」
…ここの正門門番には幻惑魔法、いやそもそも魔法が聞かないはずです。…蘭がそれを知らないってことはないですよね。…どうするつもりです?
「うち、一応使えるっすよ。」
「葵も、出来ますっ。」
…猫の得意分野なのですか?
「そう、私以外に2人いれば大丈夫そうかしら。」
…分からないのです。
「だってさ、敵が見抜けない様にすればいいのでしょう?」
…見抜けない様に、です?
「あの門番の人、何の能力も持ってないわ。あるアイテムを使って、魔法無効化の力を持っているだけ。」
…アイテム、なのですか。…では、それを奪うのです?
「奪う役は私に任せて、いい人を知ってるのよ。」
…いい人?ですか。…何のです?
「では蘭に任せるぞ。私達はどうすればいい?」
「私達がーっ。」
…美希は言葉の途中で黙ってしまったのです。…何です?
「よう、人間共よ。くくくくく。」
…和がまた、乗っ取られてしまったのです。
「この小娘のせいで、なかなか会えなかったな。」
…しかし和も、今まで封印し続けていたのなら凄い事です。
「どうしちゃったんです?葵、意味分かんないです。」
「何か、いきなり変わっちゃったわよ!?」
…他の人もですが、特に葵と由里が戸惑っている様子だったのです。
「おー!何かカッケーな!」
…加奈はやはり、バカなのですか?
「ん?何だよ、そう怖い顔するなって。私は人間共を助けてやるために来たのだ。安心しろ。」
…助けるため、です?
「あんな低俗な人間が、私に命令するなどと気に食わんからな。私の真の恐ろしさを、思い知らせてやろうと思って。それとこの和って子を、助けてやりたいんだ。」
…良かったです。…闘う破目にでもなったら、どうしようと思ったです。
「別に悪い奴じゃなかったのか。和のこと、思ってくれててさ。」
…凄い形相で睨んでいた桜の表情が、少し和らいだのです。
「誰も悪い奴なんかじゃありませんわよ。和さんの様に、優しさを教えてくれる人がいれば優しくなれますもの。」
「…美希の言う通りです。…桜、貴方はどこ出身でそんなこと言ってるんです?」
…華世界の人には、この考えが染みついてると思ったですが。
「でもぉ、華世界ってマジでいいとこなんすね。」
「…日向のことも、招待するですよ。」
…今は華世界が良いところと言われているです。…私がそうしているです。…しかし私はいつか必ず、全ての世界を変えてみせるのです。…華世界を良いところではなく、普通にするのです。
「少しお静かにお願い致します。気配を消して近付いてくる、怪しい気配がございます。」
…気配を消している、気配なのですか?…若菜の言っている意味が分からないのです。…でもとにかく、静かにすればいいのですね。
…。…。……いつまで静かにいてればいいです?…そもそも私は、気配と言うのに敏感でないのです。
「諦めたご様子です。」
…もういいのですか?
「人間共よ、そろそろ眠るがよい。明日、朝方に行くぞ。」
…和?が言ったのです。…もう寝るのですか。…しかし朝方では、蘭が仕事できないと思うのです。…まあそんなの、知ってるはずないと思うですが。
…むにゃむにゃ、眠くなってきたのです。…お休みです。
…私はそのままコロリと倒れ、眠りについたのです。




