…さあ、戦の幕開けです
「健人、早く来て。私、大切な、話があるの。」
「大切な話って…?」
…健人達が来たのですね。…悪いですが、見させて戴くのです。
「あのね、私さ…。」
「…ん。」
…言おうか躊躇っている由里を見て、健人は優しく微笑んでいたのです。
「私ね、健人のことが好き。大好き。」
…その場に座ると由里は、覚悟を決めたようでそう言ったです。
「今まではさ、友達と思ってたの。でもね、こっちに来て気付いたの。私は健人のこと、友達だけど、でももっと…。だから、異性として好きになったんだなって。この愛しさは、胸の痛みは、恋なんだなって。」
…私は最低です。…こんないい子を、純粋な子を、苦しめようとしているのですから。
「オレ、何と無く分かってた。でも自分からは言い出せなかった。だって、オレのこと好きだろ?なんて聞いたら、ただのナルシストだとしか思えなかったから。まあ結局、怖かったんだ。だから由里から言い出してくれるのを、ずっと待ってた。由里の強さに、頼っていた。」
「えっ!?そうだったんだ…。」
…ではやはり、ライバルとは程遠かったのですね。
「じゃあ私と、交際を前提に結婚して!」
…交際を前提に結婚です?…どうゆうことなのです?
「由里、可笑しいぞ。それと結婚は、まだ無理だろ。結婚は、2年後もお前の気持ちが変わらなかったらな。」
…結婚、なのですか。…そうですか、そうですか。…そうですよね。…由里は私とは違い、天然で可愛くて優しくて可愛いですから。
「あっあわ、ごめん。えっと、再婚を前提に、結婚して?」
「再婚?わざとじゃないんだよな…。まあ分かってるよ、オレはこれからもずっと、由里と一緒にいるから。由里を好きでいる、少なくとも由里がオレを嫌いになるまではな。」
…そうですか。…そうですか。
「ホント?じゃあずっと一緒だね、だって私は絶対に健人を嫌いになったりしないもん。」
…可愛いのですね。…そうですね。…です、よね。…分かってたのに、2人の恋の応援に来たはずなのに、どうして涙が溢れてくるです?…ですよ。…そんな理由は偽りだって、分かっちゃっているからですよ。…納得なんてさせられるはず、ないのです。
「…うぅ、ひっく。」
…あっつい、声が出ちゃったです。
『稚夏!?』
…見つかってしまったのです。
「…ごめんなさいです。…ごめんなさいです。」
…最低ですよね。…いくら優しい2人でも、さすがに怒るですよね?
「稚夏、もしかして、健人が…?」
「…違うのです。…そんなんじゃないのです。」
…私は恋などしていないのです。…2人が結ばれるのを、素直に喜べるのです。…辛くなんかないのです。
「好きでも、いいのよ?好きになるのは、自由だから。ねえ、教えて。」
…そんなの、そんなの。
「じゃあ正直に言ってくれれば、そこで覗き見てたことを許してあげる。それでどう?」
…許して貰わなくても結構です。…私は、最低なのですから。
「むう、じゃあさ。覗いていたお詫びに、それでどう?謝罪の代わりに、私達に教えてよ。」
…そんなの、ズルいですよ。…もう、分かったですよ。…何が何でも、言わせるつもりなのですね。
「…大好きですよっ!…でも私は由里が大好きだから、大切だから…由里に…幸せになって欲しいのです…。」
…私の思いを伝えた時点で、苦しめているのは分かっているのです。
「そんなこと言わないでよ。私は稚夏にも、幸せになって欲しいもの。」
…そう言われると、甘えちゃうですよ。…欲望が出ちゃうのです。…こうやって。
「…わがままを聞いてくれるのですか?」
「うん、いいよ。わがままなんかじゃないもん!」
…優しいのですね。
「…ダメでいいのですが、1日甘えさせてほしいのです。…今日だけの夢、見せて欲しいのです。」
…最低です。…私は最低なのです。
「稚夏…。ふっ私はいいわよ。健人、お願い。今日1日、稚夏の恋人になってあげて。」
「稚夏ちゃんの…?オレはいいが、そっちの方が傷付けちゃうと…。」
…本当に優しい人です。…とっても、とっても優しい断り方なのです。
「…ああ、それでもいいです。…嫌いになるくらい、傷付けてくれるならです。…あうぅ。」
…優しくなんかされなければ、好きになることもなかったですのに。
「ごめん、やっぱりオレには無理だ。1日だけの恋人も、嫌われるほど傷付けることも…。」
…ですよね。…分かってるです。…いいのです。
「稚夏ちゃん、ありがとう。気付いてあげられなくて、ごめんな。」
…何なのです?
「でもオレは、由里が好きだから、稚夏ちゃんの想いには答えられない。恋人にはなれないが、友達でいて欲しい。酷いよな…。だがな、稚夏ちゃんさえいいなら、一緒にいて欲しい。」
…本当に、酷いのですね。…あんまりですよ。…友達として一緒にいて欲しい、ですか。
「…なら、私のことを稚夏って呼んで欲しいのです。」
「ん?」
「…だから、私のことも呼び捨てにしてほしいのです。」
…健人は理解したようで、優しく微笑んだ。
「ありがとな、稚夏。」
…どこか、特別な気がするのです。…今までは呼び捨てなんて、由里しか見たことなかったですのに。…私もですね!…知り合いから、友達に上がれたのですね。
「稚夏、ごめんね。」
…由里が申し訳なさそうに、言ってきたです。…元々私が悪いですのに。
「…いいえ、いいのです。…私は友達として、2人の恋を応援するですよ。」
…楽に、なったのです。…私は変わったという事、葵に教えてやるですよ。
「…葵に自慢してこようです。」
…私だって、いつまでも変わらないわけじゃないのです。…葵に言われた通り、自分が楽になる道を自分で見つけたのです。
「葵に?いいわね。」
「おい、自慢って。」
「…行くですよ!」
…葵の家の前に転移したのです。




