…それが愛の力っちゅうんやと、わいは思うで。
翌日目を覚ますとすぐに朝ご飯を食べ、健人と由里を探しにかかった。
『永希様、健人達はどこに?』
永希様なら知っていると思い、メールを送った。
『星運岡の麓。』
星運岡!?雪ですら苦戦したという、幻のあの岡!?
僕は健人達に丘のことを伝えるために、星運岡に向かって走り出した。それくらいの距離なら、僕だって走って行けるだろう。3人の姿が見えるほど近くに座り、息を整えた。そしてばれない様に後ろに行き、由里に声を掛けた。
「由里にいい事教えてあげるよ。」
「いいこと?何それ。」
このまま教えて、健人にばれる前に逃げればいい。
「ここの近くに想い出の丘ってとこがあるんだけど、そこで祈ると2人は結ばれるって言われてるの。ぜひ健人と!」
そう言って僕は、走って逃げた。そしてそのまま想い出の丘の上に登った。
「稚夏~!!」
「…もう帰るといいのです。」
ん?
「…私は好きにするですから、葵は戻ってていいのです。………お願いです。……………す。」
「ん、分かったよ。」
稚夏がそう言うんじゃ、仕方ないよね。僕は雪の家に戻った。
「葵、どこに行ってたんです?」
「瑠美、言わずに出てってゴメンね。ただの散歩だよ。」
嘘ついてゴメンね、瑠美。
「稚夏はどこに行ったの?」
雪に言われちった。
「…雪様のせいだよ。稚夏、怖かったみたいなの。」
理由ではないけど、言ってることが嘘ってわけじゃないし。
「まあ、いいじゃないの。どうせこの後解散するんでしょ?」
舞香ありがとっ!
「それもそうね。じゃあっ。」
雪は親切に、僕と瑠美を僕の家まで送り届けてくれた。
「瑠美、いいゲーム買ったんだ。」
「ゲーム?どうゆうの?」
稚夏、応援してるよ。…僕は、遊んでるから。
「これなんだけど。」
flowerをトップアイドルにして、世界中に花を咲かせようってゲームらしい。僕が持っているのは、優花編だけだ。
「flower みんなの花で 夜空に花の星咲かそ~!!」
瑠美はタイトルを読み上げ、何のゲームか分かったらしい。
「早くやろっ。」
僕が言うと、瑠美は首を傾げた。
「やっぱりいつもの葵じゃないわ。今日の朝、何があったの?」
演技には自信あるのに、瑠美のことは騙せないな。何でだろう。
「稚夏さんはどこにいるの?」
「さあ、知らないよ。」
稚夏…。健人と由里はどうだろう。
でも可笑しいな。稚夏は神様に好かれてるのに。悪いこともしないのに。恨まれることもしないのに。どうしてこんなに…。
「ねえ瑠美、運命は誰が動かしてるのかな。」
話を逸ら、せてないな…。
「私にそんなこと言われても…。だけど私はね、本人だと思うわ。自分の意志の強さで、変わると思うのよ。」
ほう、そうかもしれないね。稚夏が、選んだんだもんね。何だろう、でも僕が悲しくなっちゃうな。誰も、稚夏の痛みを分かってあげないのが。
「星に聞いてくる。」
僕は逃げるように家から出ると、星を呼び出した。
「いらっしゃい!この星様に何かご用かい?」
星と海香が目の前に現れた。
「星に質問がある。ルール違反なことなんだけどさ。」
「ルールに反する質問なの?私も、答えられないことはあるからね。」
稚夏の、運命…。
「海香ちゃん、ちょっと待ってね。」
「分かりました。」
星は、僕を森の中に引き込んだ。
「で、何?」
「稚夏の運命、どうなってる?」
元々は、良いはずだよね。
「凄いルール違反だよ。まあいい、答えてあげる。稚夏ちゃんは、最高に設定してあったよ。でもさ、上書きされまくってる。稚夏ちゃんの運命の本、見せたげよっか?」
いいの?それ。
「お願い。」
すると星は、1冊の本を渡してきた。これが、稚夏の?
「丁寧に使ってよ?破いたりしたら、稚夏ちゃんの体にも影響あるんだから。」
僕はページをめくってみた。
「20ページまでは、元々の予定。言うなら、運命って奴?それより先は、稚夏ちゃんが自分で変えた運命。」
96ページもある。まだ短い人生の間に、運命をそんなに変えたの?
僕は、最初の20ページを読んだ。それによると…。
華世界の姫として産まれる。
幸せに過ごしていたが、7歳で両親を亡くす。
両親の仇である魔王を許し、その娘と仲良くなる。
16歳で愛世界の王にプロポーズされ、結婚。
23歳で子供が産まれる。
その後は何事もなく幸せに暮らし、45歳という若さで病死する。
21ページより先も読んでみた。するとやはり、大きな違いがあった。
7歳の時に殺されるはずだった両親を、救助。
悪世界に攻め込まれる。
現れた勇者に、恋をする。
その中でも大きな違いが、この3つだ。
「…ってあれ?」
愛世界の王と結婚?愛世界の王って永輝様じゃ…。
「ありがあとう、星。呼び出したりして悪いね。」
「私は旅に戻るよ。何かあったら、すぐ呼んでくれていいよ。」
僕達は海香のところへ戻った。
「運命を本人に教えるのは、出来る限り避けるようにしてよ?じゃあねっ。」
「連絡がとれないところに行ったりしますので、休養だったら彩世界まで呼びに来て下さいね。」
2人が消えた。てかあの2人、彩世界にいるんだ…。ん?連絡がとれない、どんなとこに行ってるのさ。
「由里…。」
やっぱ丘に見に行っちゃおっかな。
「瑠美!」
「葵、何か要?」
瑠美が家から出てきた。
「…………。」
でも、やっぱダメだよね。
「…いや、何でもないよ。ゲームやろう。」
「…そうね、稚夏さんの居場所を私が知ったところで、意味ないし?」
瑠美…優しいね…。
「ほら、早く来なさいよ。」
瑠美は笑顔で僕の手を掴み、走り出した。
部屋に戻ると、ゲームをやり始めた。
『ある日突然幼馴染の優花が、世界に元気を届けたい!と言い出した。』という設定らしい。そんで、自分の名前決めてスタート。みたいな?
「凄いわね、ゆかたんと幼馴染だってよ。いいなあ、羨ましいわ。でもさ、何でflowerじゃなく3人を別々に売るんだろうね。」
「ああ、3人の希望でそうしたんだって。誰が本当に1番人気なのか決めたいってことでさ。」
どうせ言い出したのは優花だろうね。
「でも、人気投票やったりしてるじゃないの。」
「人気投票とは結果変わるかもよ。ゲームは1人1つとは限らないしさ。1人1票じゃなくて、投票に金取れば花恋が上がるんじゃないかな。」
花恋のとこのファンは凄いからね。…軽くじゃくて怖いもん。
「そうよね。ももちゃんとか初心者向けだからさ、人気は高いけどライブには少ないもん。」
「花恋のファンは、金をいくらでもつぎ込むようなんだからね。」
ホント、アレの良さが分かんない。
「でも葵も、変わってるわよね。ゆかたんと仲良いのに、ゆかたんのグッズ買ったりしてさ。CD買ったりライブの券買ったりもしてるけど、ただ歌ってもらえばいいじゃない。」
「それじゃ違うの!知り合いになったけど、ファンでいたいの!」
だから他のファンの人と、同じでいいんだもん。てゆうか、アイドルの優花と友達の優花は別人ってことだもん。
「でも、花恋様への対応は友達って感じじゃない?」
「花恋のファンじゃないからね。」
僕は優花とflowerのファンだもの。ほら、好きなグループにだって余り好きじゃない人もいるでしょ?
「ファンの人達の前でそんなこと言ったら大変よ?」
「花恋のファンは怖いからね。花恋に頼まれれば、殺人鬼にだってなりそうなくらいだもん。」
人間とは思えないよ…。
「そこまでは……しそうね。…あっ凄っ!」
何が?何が凄いの!?
「ちょっと待ってて。」
そう言って瑠美は、片方にしかつけていなかったイヤホンを両耳に装着した。何があったのさ。
「ふう、もういいわ。」
少しすると、また片方に戻した。
「何があったの?」
「あのね!イベントが発生して、ゆかたんが歌ってくれたんだ。それがCDにない曲だったから、ちゃんと聞かないと!って思って両耳に着けたのよ。葵、ごめんね?話の途中だったのに。」
聞きたかったな、その歌。
「じゃあそもそも、イヤホンつけなきゃいいじゃん。…あう、僕も聞きたかったよ。」
「あっ!それもそうね。分かったわ、イヤホンやめる。」
僕も聞けるんだ!やっぱそっちの方が絶対いいよね。
『ちゃダメだよ。君の夜空にだって、ぜ~ったいに!花は咲いてるんだからっ!ね♡』いきなり何!?状況が理解不能だよ。
「今ね、夢を諦めかけた鈴木さんの応援中なのよ。」
鈴木さんって誰だよ!
「あっ可愛いわよ。」
「えっ見せて。」
あ~可愛いね。ショボ~ンとした感じの優花だった。確かに可愛い。
「どうしよ、この画像保存したいわ。」
瑠美が、『次へ』ボタンを押そうか迷っていた。…いや、押さなきゃどうしようもないでしょうに。
「貸して。」
「えっはい。」
瑠美に渡されると、僕はその画面を保存して返した。
「ありがと、可愛いわよね。」
桜とかも、凄い優花のファンだったっけ。じゃあゲームは買ったのかな?でも忙しいか。ろくに執筆しないから、もう外出禁止状態にされてるらしいし。…まあ抜け出したのか、サク咲くの専門店入口で座ってたけどね。
『この世~界を 抱きしめて~ 君と共に 歩んでく~』
「ふぇ?」
優花、いきなり歌い出さないでよ。びっくりするでしょ!
「え!?ちょっと、え?」
ん?
「瑠美、どうしたの?」
「凄いかも、だってこれ毎回違う曲が流れてるのよ。」
この歌知らないし、CDにないやつだよね。あっ裏表紙に書いてあるかな。
「ケース貸して。」
「ほい。」
んー、やっぱ書いてあった。CDの曲46曲に、えっ!?新曲28曲も作ったの!?頑張ったね…。
「全部で74曲、かな?」
んー、フルも聞けるんだ。
「歌詞カードあった。…あと、ストーリーで流れた曲はフルバージョンを好きに聞けるみたいだよ。」
あっ、この辺は優花が作詞作曲してる。頑張ったね…。
「えっ!?何それ、凄くない!?」
「凄いよね!?だよね、だよね!高かっただけあるよね。」
29800円もしたんだから。
「3人で別々に作ったら、結構になるわよね。」
1人28曲ずつやってたら、3人で84曲になっちゃうもんね。
「本人が作った曲って、桃花面白そうだね。」
「あっ確かに。ももちゃんは出来なそうだわ。」
僕は瑠美と笑い合っていたが、稚夏の恋はそううまくいってなかった。
僕がゲームをやっていたころ、由里は勇気を出して恋をうまくいかせようとしていた。
想い出の丘で、恋は動き出した。




