…それが、愛の力ですか
「あっその前に!……よしっ、もういいよ♡」
どうしたんだろ。
「ほら、行くわよ✿」
僕達は想い出の丘に向かい、歩き出した。
「ねえそういえばさ、葵って…あの時何祈ってたの?」
「ん?」
あのときって?
「私と初めて、会ったときよ。」
あのときか。
「平和だよ。」
結局叶わなかったけどね。
「平和?あの時はまだ…。」
「未来への鍵ってやつ?あれに出たの。平和は長く続かない。少しすると、平和を大きく乱す奴が出てくるだろう。だから主は、願いを叶える丘で祈るのだ。そうすれば、防げるかもしれぬってね。」
でもあの頃だって、彩世界では戦が続いてたんだろうし、別に平和ではなかったよね。それに祈ってても、防げなかったし。いやまあさ、かもしれぬってだけだから、しょうがないんだけどさ。
「未来への鍵って!葵、伝説のアイテムじゃない…?」
「星にもらったんだよ。」
『君にあげるわ。大切にしてよね。信じてるから。』とか、そんな感じのこと言ってたんだよね。どうして星は、僕に渡したんだろう。
「本当に、葵は神に親しいわね。星様って、全てを操る最強の神でしょ…。」
「いや、そんなのただの噂だよ。全てを操れなんかしなかったじゃん。最強なんかじゃ、ないさ…。ってあっ、関係を知られないように、様付けで呼ばなきゃなんないんだった。ま、瑠美ならいっか。」
星が全てを操るなんてとんでもないね。自分の心も上手く操れない、ただの女の子だよ。てか、瑠美以外周りにいないよね…。
「それとね、言われた通り祈ってたら、ある時こんなことも言われたよ。もうすぐ主の、運命の相手がここにやって来る。…それが、瑠美だったのかな。」
そう言われた次の日くらいに瑠美に会ったもんな。あの日は凄かったな。他の日とは比べ物にならないくらい、綺麗な星空でさ。
「運、命…!えへへ☆」
「瑠美は何しに来てたの?」
想い出の丘に来るんじゃ、何か祈ってたのかな。
「夢の続きが知りたくて♡」
「は?」
ゆ、夢の続き!?んー、よく分かんないな。
「可愛い女の子が想い出の丘で、何かを祈ってる夢を見たんだ♪でもその子、悲しそうな顔をしてて、それで助けたいなーって思ったの。でもでも夢から覚めて、会えるわけないじゃん?だ・け・ど~、何か忘れられなくて。丘に行ったら何か分かるかな、そう思って行ったの。まあ結局、その女の子に追い返されちゃったけどね。ふふっ、でもその時行ったおかげだよ。私と葵が会えたのも。」
僕にはない発想だよ。夢で見た子を助けたいなんて…。本当に……。
「優しくってバカみたい♡」
…ん?その『女の子』って、僕じゃない?
「あ~ら、バカは酷いんじゃないかしら。」
「大丈夫♡バカにはいい意味だってあるんだからね☆」
瑠美とか稚夏はいいバカ、雛乃は普通にバカ。バカはバカでも、違うバカなんだもん。
「え~でもぉ、バカって言われて褒められた気なんてしないもん。」
「そういういい意味の悪口は、永希様の得意分野だよ♪」
昨日だって、僕を遊ばせるために『僕がいなくたって大丈夫』なんて…。ホ~ント、バカばっか。
「あっふふ♫でも永希さんは、もうちょっと素直に言ってもいいと思うわよ。」
「ん、僕もそう思うよ。」
ひねくれてんじゃない?
「わ~!丘が見えてきたっ☆」
でもあの丘、見えてから長いんだもん。結構遠くにいても、近くにあるように見えるし。
「星、見えればいいね。」
「絶対見えるわ。だって私達が出会えたのは、運命なんだもの。未来は曇っているはずがないわ。絶対に、輝いてるもん♩」
「ふふっ、そうだね♡」
瑠美、凄いな。子供っぽいところも根拠のない自身も、戦争で命令をしているときとは別人みたい。ほど正反対じゃん。
「ほ~ら、急ごうよ☆」
もう日が沈みかけていた。
「綺麗な夕日だね。明日は多分晴れるよ。」
「でも正直さ、どんな天気だってロマンチックになるわよね。」
確かに…。天気はあまり関係ないよね。
「雹って微妙じゃない?」
雹が降っている中でとか、超危ないし。
「奴は君を痛みつけるよ。この雹のようにね。」
瑠美が雹という設定でやってくれたみたいだ。ちょっと声を低くしてるところが、むっちゃ可愛い。どこがロマンチックなのかは分からないけど…。
「…意味分かんないよ。まあいいや、台風とか…激しく荒れてるときはムリじゃないかな…?やっぱりさ。だって、普通は家ん中にいるでしょ?」
大雨のシーンはあるけどね。大雨ん中、外にいるとか意味分かんないけどね。
「台風…?えーっと、この風で君が吹き飛ばされないように、しっかり抱いていてあげるよ。」
とっても意味が分からないね。『君』は何なのだい!?
「快晴だって逆にきつそう。」
「えっ簡単よ。快晴にはこれしかないでしょ。君に出逢えて、俺の心に掛かっていた雲も、全て消し飛んだよ。」
…え?『君』に出逢う前、『俺』に何があったんだい?つーか、これしかないって…。
「素敵な夕日、やりずらいわね。あの夕日に向かって走り出せっ!って感じかしらね。」
「うえぇっ!?」
何か、全然違くない?さっきまでも、ロマンチックではないけどさ!
「どうしたの?」
「のり違過ぎじゃない?」
つーか、何の話やねん。
「まあ要するに、わざわざ天気を出すってのは、その人の気持ちを映したいわけでしょ?そうゆうことを伝えたかったのよ。」
まあ、それもそうだね。
「ほら細かいことを気にしちゃダメよ♪そんなことよりさ、ほらっ☆丘に着いたよ♡早くの登ろ~よ~☆」
「んー暗くなっちゃ危ないし、走って登ろう☆」
まあ下りるときには、暗いだろうけどさ。
「葵~早く早くぅ♡」
「瑠美、気を付けてよ?」
走ってって言ったって、ダッシュじゃ危ないよ。躓くものはほぼなくたって、坂道だし薄暗いんだよ!?
「葵、暗くなって来たよ…。」
「んー、星出てるかなあ。」
てっぺんに着くと、上を見上げた。
『綺麗…。』
あの時と、一緒だ…!
「変わってないわ。やっぱり結ばれる運命なのよ♡」
「そうだね♡そうだと、いいね♡」
僕はその場に寝っころがった。
思い出すな。出会った時のこと…。




