夢なんて見るだけ。幻と同じよ。
翌朝
「うにゅん、よいそっ。」
布団から這い出ると、着替えや朝食などをちゃきっと済まし、図書室に向かった。
「…ん?」
誰もいないはずの図書室から音が…。
「誰かいんの!?」
返事がない。ん?その時僕の右足が、何者かに掴まれた。
「んにゃあ!?」
「ふふふふ、ははははは。そんなに驚くこと?もうなんてえへへへへ。」
何だ瑠美か。
「驚かせないでよ。左足、思いっ切り本棚にぶつけたじゃん!」
痛いな~。
「いや~、はっはっは。可愛いね。葵、本当に…どっからどう見ても女の子よ?」
「うぅ、意地悪。」
瑠美は酷いの~。ぶう。
「あ!そういや葵、伝説の魔術師って人が来るらしいわよ?」
伝説の、魔術師…。魔術師ってことは、flowerの3人?
「んーみゃあっ!」
どっかから、高い声が聞こえてきた。今度は何さ。…瑠美、じゃないだろうし。でも他に誰も…。
「貴方が葵様でございますか?」
誰?どこにいるの?気配は感じるけど、正確な居場所が掴めない。
「初めまして、渡辺若菜と申します。『葵っちんとこ、先に行ってて♪』と、北条優花様が仰っておられたので、こちらに参りました。は、はうぅ。」
…?あっいた!妖精か、全然気付かなかったな。
「ちょっと待って、今メール来た。」
花恋から?『ついに本世界まで襲われた。どうにか出来ないか?天・才・君♡』…何かムカつく。
あっ、桃花からも来た。『わたすめ、つかまつちやいせう。たすけて。』…?とりあえず、助けて欲しいのは分かった。…んー。私も捕まっちゃいそう。助けて。で、いいのかなぁ。
「若菜、いつどこに誰が来るの?」
僕のとこって言ったって。
「えっ?あっえっと~、本日の16時ごろ、北条優花様が、葵様のお部屋に伺いたいと…。」
僕の部屋?だからどこそれ!…て、ちょっと待って。北条優花様が!?じゃあ、伝説の魔術師って、優花1人が来るだけってこと?
「葵、その時間大丈夫なの?」
「ちょっとだけヤバめ。断っとく?」
16時じゃ、健人たち救助に動き始めていいくらいの時間だもんね。
「ねぇ若菜、悪いけど頼める?」
「何でございましょうか。」
一応断っとくか。
「優花が来るっての断っといて。それと桃花に、『助けに行くよ。』って伝えといて。」
「…はい。…承りました。では、葵様。」
若菜が消え去った。
「ん、瑠美の用は何?」
「サクポンから葵に、手紙が来てるわよ。」
桜からっ!?本世界まで襲われたって。…じゃあもしかして桜も!?
「見せて!」
僕は瑠美から手紙を奪い取り、読み始めた。
『葵、救助願い。追われてる
早く助けに来て。 私達、友達でしょ? 桜たんより』
いろいろと、突っ込みたいとこはあるけど…。何よりも、字汚っ!!
「何て?」
「追われてるから助けてって。」
字、汚いな。もうちょっと丁寧に書いてほしかったんだけど。
「甘世界が危ないかもってことね。本世界の存在がばれたんじゃ、愛華さんの計画だってばれてるでしょう?」
そうだよね、じゃあまずいな。
「瑠美、夜までに桜と愛華の救出に行こう。」
被害が華世界にまで及んでなければいいけど…。
「分かったわ。でもどうしてっ!そんなの、葵らしくないんじゃない?」
僕らしくないかあ…。確かにそうかもしれないね。
「ダメ、かな?」
「言っちゃ悪いけど、助けたいから助けるとかじゃないわよね。愛華さんの為に貴方が動くとは思えないわ。裏があるのね。」
瑠美のことは、どうしても騙せないんだよね。
「裏はないよ。助けたいから助けるだけ。まあ、愛華のことをじゃないけどね。ふふっ。」
稚夏…大丈夫かな…?
「葵!?貴方、愛華さんのことをっ!!」
ホーント凄いね。瑠美は頭良いな。まさかばれるとは思ってなかったよ。
「いけないわけ?だってさ、僕なんかのことを信じるから悪いじゃん。騙される方が悪いんだよ。」
僕はいちごに、そう教わったんだから。
「葵…。」
分かってるさ。僕だって、悪いと思わないわけじゃないけど…。でも…。
「…。…ん……行こう。桜達を助けに…。」
これなら間違ってないね。桜と稚夏だけど、『桜達』には違いないもん。
「…んー。瑠美、本世界に行くよ。」
転移用の本、この辺にあるはず。
「あった!瑠美来て!」
この本の、34ページに魔力があったんだっけな。
「何?」
瑠美が来た瞬間、光で何も見えなくなった。
見えてきた。




