夢は見るものじゃないわ!叶えるものなのよっ!
「葵、本気?本当にこんなんで、愛世界が助かると思ってんの?」
そうだよね。夕日に照らされた小屋の中で、瑠美が言う。
「ねぇ、聞いてるの!?」
「うん、聞いてるよ。…僕も分かんないさ。これで、平和が戻るなんて、そんなの信じられないよ。だけどさ、出来る限りの努力はしたいんだよ。」
勇者を楽しませたり、喜ばせたりするだけで平和が…。信じらんない。あの2人、そんなに特別なわけ?
「葵は偉いね。私じゃ無理よ。無駄になる、努力なんて。」
いいや、自分に得のない努力を、瑠美はよくやるじゃん。でも僕のは違う。優しさで動いてるんじゃなくて、いい人と思われたいだけ。
「偉くなんかないよ。皆に、信頼されたいんだ。頼って欲しいんだ。僕はね、信用できる仲間が欲しくて、戦ってるんだから。」
1人は嫌なんだよ。でもまた、裏切られるのも嫌なんだ、よ。
「私じゃ、ダメ?私のこと、信用してくれないの?」
瑠美のこと、信じてるつもりだよ。でもなぜか、寂しくなっちゃう。心の奥から大好きだけど、心の奥底では好きじゃない。信じ切ってない。
「私に、いけないとこがあるの?何で!?どうして!?どうして私じゃいけないのよっ!!私分かってるよ!?私知ってるよ!?葵が1人で泣いてたこと、写真を見つめて、ため息をついてたことも!」
瑠美…。写真は多分、瑠美の古い写真だよ。
「私が悪いの!?どうすれば葵は信じてくれるのよ…。」
「瑠美は、悪くない。」
言葉が出てこない。何でだろ、涙が出て来ちゃう。
「何よ!私じゃ不満なわけ!?」
「違う!!」
瑠美は悪くないんだよ。
「僕はね、自分に満足できてないんだよ。自分が情けなくて、泣いてんだよ。彼女のこと、守れなくてさ。」
女の子みたいな外見だって、漢らしく生きていたいのに。酷いよ。傷付けるだけで、守ることが出来ない力なんて。あんまりだよね。
「私が葵の心を、ズタズタにしちゃったの?」
瑠美は悪くない。瑠美のせいにしたくない。
「違うよ。瑠美には、助けられてるさ。」
瑠美だけだよ。助けてあげるなんて、初対面で言ったりすんのは。
「ねえ、私のことを信じてよ。…葵。」
僕も信じてるつもりなんだけどな。胸の中じゃ、まだどっか恐れてる。
瑠美も『あいつら』と同じなんじゃないか。
利用するだけして、去って言っちゃうんじゃないか。…って。
僕の方が、悪いよね。瑠美の思いを踏みにじってるよね。
「そろそろ話してよ。…何があったの?…どうして、心を開かないの?…作り笑顔をばらまいて、誰にも本当の顔を見せないなんて、辛くないの?悲しくないの?」
演技には自信あったんだけど、瑠美にはお見通しか…。
「葵、私に出会うより前。もっと幼いころに何かあったんでしょ。」
何かって何?瑠美、もしかして…!!
「私が思うに、彩世界でなんじゃないかな。心に穴が開いちゃったのは…。ふふっ。」
…心に…穴…?…彩…世界…で?
「………分かった。質問に答えよう、話せばいいんでしょ?…何があったの?ってのは、いちごの本性を初めて見たときの話でいいかな?…ご察しの通り、彩世界で裏切られたんだよ。」
「…。…裏切、られた…。」
瑠美は、乾いた声でそう呟くと、こくりと頷いた。
「でもさ、沙羅には悪いけど、彩世界は戦ばっかりで酷いところだった。そんな世界でも僕はさ、いい子だったんだよ?小さい頃の僕ってのは、自分で言っちゃうくらい素直な子だったよ。疑うことも出来ない、嘘も吐けない…それに、他人が大好きで、怖いもの知らずだった。今の僕からは考えられない、真逆の性格だったよ。」
本当に、話しても大丈夫だよね…。
「…葵…、……分かってるんだね。」
自分の悪いとこなんて分かってるよ。
「でもね、あの日、全てが変わったの。」




