…貴方と過ごした時間は、無駄なんかじゃないのです
「ふにゅう。」
私が目を覚ますと、すぐ隣に希が寝ていた。
「今何時だろっ。」
私は立ち上がり、寝ている人を踏まないように、隣のリビングまで行った。
「おはよう。」
リビングでは、沙羅が座って本を読んでいた。今の時間は、5時20分?学校の日でもこんな早く起きないのに。
「何読んでんの?」
「サクラ咲ク夜よ。新刊が出るってゆうから、1巻から読み直そうと思って。」
新刊出るからって、わざわざね。
「読む?」
結構皆、面白いって言ってたわよね。
「読んでみるわ。」
沙羅から1巻を受け取った。
それは、主人公の鈴木陸が戦国時代にタイムスリップして、じゃじゃ馬姫の堀山桜に天下を取らせようとする物語だった。ゲームみたいね。
「何読んでんの?」
私が、1巻の半分くらい読んだところで、葵が起きてきた。私と同じセリフじゃないの。
「サクラ咲ク夜よ。」
「あぁ、サク咲ク面白いもんね。」
サク咲ク?
「そんな訳し方、聞いたことないわよ。」
「えー、沙羅知らないの?桜が言ってたよ。」
「知らないわよ。てか、桜先生に会ったことないし。」
メインヒロインと作者の名前、一緒なんだね。
「ひなちゃんの登場ですっ!」
空気読まないマスターの雛乃も起きてきた。
「ひな、お腹空きました。朝ご飯作って来てくれません?」
「分かったわよ。」
沙羅が台所に行った。
「何の話してたんです。」
「サク咲クの話だよ。」
「ひなを仲間外れにして、酷いです。」
「仲間外れって、起こしたって怒るじゃん。」
「ひなより先に起きちゃいけないんです。」
意味不明よね。てか、雛乃はサク咲クで分かるんだ。
「でも、雛乃にしちゃ早起きだね。」
「ひなは凄いですからね。」
あんまし褒めてないわよね。
「うっせーな。朝っぱらから、何やってんだよ。」
永希も起きてきた。
「永希様も。こんな時間に起きてくるなんて珍しいですね。そこまで雛乃がうるさかったんですか?」
「お前が騒がせてんだろ?まあ、んなことより。どうすんだ?愛唯だかにも、もうばれてるだろうしよ。」
「そうですねぇ。僕に薬をくれるとのことですし、華世界に行きましょう。」
華世界?でも…。
「はいっ。ひなちゃんの華世界、ご案内します。」
「…平和に…見えるよね。皆…こうならいいのに。」
葵がぽつんと言った。…葵。
「何か言いました?」 「何か言ったか?」
「なっ、何も言ってないよ!?」
雛乃も永希も…。
「そうね。…早く…助けたいわ。」
私も、つい口に出してしまった。
「ゆりりん、大丈夫ですよ。皆のことは、ひな達が守るんですから。」
「でも、平和のために戦うって変だよね。結局さ、僕達が平和のために戦ってても、それで殺される人はいるんだよね。僕達は、英雄であると同時に、殺人鬼なんだよね。」
「傍から見たら酷い奴かも知んねぇが、やっぱさ。力で捻じ伏せるのが1番楽なんだよな。」
「…永希様。…そんなこと、言わないで下さいよ。それじゃあ、平和になんかなりませんよ。うぅ、僕は人殺しなんか嫌だよぅ。力で手に入れた平和じゃ、皆が傷付くだけなんですよ。」
「そんなことないよ。」
希!?いつの間に…。
「確かに戦うことに意味はない。でもね、仲良くしましょうですむほど甘かねぇんだよっ!!それは葵の方が分かってるでしょ。それに、悲しみを知っている人の方が、他人に優しく出来る。傷付くことは悪くない。恐れちゃ駄目。葵は知ってるんでしょ?分かってるんでしょ?わたしの言葉が。」
へ?
「でも僕は、誰も傷付けたくない!あんなの、もう見たくない…。」
あんなの?どんなの?
「愛世界は本当に酷かったですもんね。ひなも知ってますよ。あれは、怖いですよね。」
あれ?どれ?
「俺や瑠美が生きてただけでも、凄いくらいだからな。」
『え?何の話 (です)?』
健人と瑠美が起きてきた。まだ寝てんのは、蘭だけか。
「今日は早く華世界に逃げようって話だよ。…嘘じゃないからね。」
まぁ、その話もしたわね。
「…瑠美、愛してる。絶対、守ってあげる。」
「ん?ありがとっ。」
何ちゅう誤魔化し方よ。
「出来たわよ。」
沙羅が料理を運んできた。
「もう皆起きたの?」
「蘭ちゃんがまだだと思いますよ。ひな起こしてきます。」
「いねぇと思ったら、朝飯作りに行ってたんか。」
あぁ、永希が起きる前に作りに行ってたのか。
「おはようごじゃいましゅ。」
蘭が、雛乃の横をふらふらと飛びながら来た。
「蘭ちゃん、大丈夫ですか?」
「大丈夫でひゅかりゃ、お気ににゃしゃらずに。」
蘭は、寝ぼけてるの?
「分かりました。じゃあ、いただきますっ。」
雛乃が食べ始めた。私も食べよっ。
『いただきます。』
にしても、沙羅の料理美味しいわね。今度料理、教えて貰いたいな。
「みにゃしゃん、えむくにゃいんでしゅか?」
欠伸をしながら喋ったため、いつもより更に聞き取りずらかった。
「何言ってるか分かんないんですけど。」
「いや、どうしても朝は弱いんでひゅよにぇ。はひゅみゃんと。」
何つった?最後何て言いました?
「らひぃにょうりゅ。」
何語じゃい?それ。
「何喋ってるか、全然分かんないよ。」
「それほどでみょ。」
はい?
「来るよ。急いで。」
葵が低い声で言った。何が来んの?急ぐって?
「予想より、早かったわね。皆、急いで食べて頂戴。」
何が早かったの?よく分かんなかったけど、食べれなくなるんじゃ嫌なので、沙羅の言うとおりに急いで食べた。
「沙羅以外を華世界に、でいいのね。」
食べている間に復活していた蘭が言う。と、同時に光に包まれて花畑に出た。




