僕はもう逃げたりしないよ
最初は、オレたちが落下したあの場所だった。
「ここは安全だと思うが、油断はするなよ。」
どうすればこんなにふわっふわになるんだろう。考えながら歩いていると足が上がらなくなった。
「僕の家に何勝手に入ってんのさ!」
少女が現れた。可愛い。
「すまない、翔子様を助けるためなんだ。」
「翔子様を?どういうこと。」
翔子様って、翔子ちゃんだよな。様って?
「それに、この世界から出ることが出来やがるんですよ。」
「この世界から?」
何の話だろう。さっぱりついていけない。
「…そう言う訳だけど。」
「分かった。協力するよ。勇者もいるんでしょ。」
話がまとまったみたいだ。
「僕は秋山葵。女子じゃなくて男子だから間違えないでよね。」
男子!?嘘!?
「僕はれいとだ。この2人が勇者の由里殿と健人殿で、それが姉のちよこだ。」
「じゃあ、行こう。」
葵さんがそういうと、足が上がるようになった。
「あのさ、勇者さん…。本当に…あっうぅ、いいか。えっと、翔子様にあったことあるの?」
「ここに来る前にあったわよ。」
「ふ~ん。」
そのあとは、何か考えているようで誰も話さなかった。
「何かお腹すいてきたわ。」
確かにけっこう腹減ったな。
「じゃあ、喰いやがれです。」
ちよこさんに豆みたいなものをもらった。何これチョコレート?
「あっ、気を付けて。次は人食い草?みたいなのだった気がするから。」
「怖いわ。」
「でも、僕としてはそのまんま行って食べられちゃっていいと思うよ。」
『はあ?』
食べられちゃっていい?どういうことさ、それ。
「多分この下に別の世界があるだけだと思うんだよ。だから、食べられるの覚悟で走ってってみる?」
そういうことか。本当に大丈夫なら。
「さすがにそれは…。」
「そうよ危ないわ。」
「だが他に案はないんだろ?やってみようぜ。」
「ここで考えていても時間が経つだけいやがるのです。」
『それもそうか(そうね)。」
本当に大丈夫なんだよな…。
「行くよ。」
葵さんは走りだした。オレたちも続いて走り出し、食べられた。
「おぬしら、脱走しようなどと愚かな。ほっほっほ、どこから来たのじゃ?」
「…。」
「本当のことを答えるのじゃ。そうせぬと、雪ごと全ての神にお仕置きが必要になってしまうのぅ。」
神…、あの人たちってやっぱり神なのかな。
「僕は葵、綿あめ草原の管理人だよ。」
綿あめ…。それでふわっふわだったんだ。雑だな。
「管理人がそのようなことをしたのか!!許せん。綿あめ草原だと翔子であろう。あのちび使えなすぎるのじゃ。」
「いや、翔子様は悪くない。僕が勝手にやったこと。全て僕が悪いの。」
「ほう。」
このおっさんむかつくなあ。
「僕がみんな悪いの。他の人は許してあげて。」
「うむ。分かった。ならばと・く・べ・つ・に他の奴らは許してやろう。感謝するのじゃ。そしてわしを崇めよ。ほっほっほっほ。」
うぜぇ。むっちゃ、うぜぇ。
「うーん、おぬし、なかなかに可愛いのぅ。わしの女になるのなら許してやるぞ。」
そしておっさんは葵さんのことをむりやり抱きしめた。
「やめてえぇぇ~!!僕は男だよぅ。」
「んなっ!」
葵さんかわいそうに…。
「ねぇ仁志くん。」
おっさんの後ろから男の子が出てきた。
「ひ・と・しくん、何してるのかなぁ。」
「殿!こっこれは違うのじゃ。」
「なぁに?」
「違うのです。」
「何が違うのかなぁ、説明してくれる?」
「こいつらが綿あめ草原を脱走しようとしたのです。」
口調めっちゃ変わったな。
「本当に脱走なんてしようとしたの?」
「うん。」
葵さん!?正直にそんなこと言うなんて…。何か考えがあるのかな。
「どうして?」
「下に別の世界があると聞いたから見てみたなと思って…。それで隠しカメラ持ってるんだけど、見て。そのおじさん僕のこと抱きしめてるでしょ。」
葵さんは少しニヤッとした。
「仁志くん、どういうこと?ここのルール覚えてるよねぇ。」
「あっその、いや違うんです。お許しください。その、…。」
「綿あめ草原の子たちだよね。帰してあげるから、もうこっちには来ないようにね。」
オレたちは、上に上がって行き人食い草の上に出た。
「これで、難点は抜けた。早く行こう。」
葵さん最初からそのつもりで…?
「転びやすいから気を付けてね。」
そう行っている途中に由里は転んでいた。逆に凄い。
「由里、大丈夫か?」
「じゃあ、2人で行きなよ。危ないからさ。」
『うん。』
由里はオレの手を取った。手を繋ぐなんて…。歩いていると由里が何度もよろけた。危ないな。そこを抜けると由里の手が光り、指輪の宝石が増えた。
「確かにあの時の指輪だね…。」
「ここ、どうなってやがるんです?何か吸い込まれやがるのです。」
「ああ、そこは草の上を通って泥に触んなければ大丈夫だよ。」
結構きついな。どうにか気を付けて行き、何とか抜けることが出来た。…と思ったが、ちよこさんが最後の最後で泥に触ってしまったのか沈んでいった。
「姉上!!」
れいとさんと由里が手を引っ張って、上に上げようとしている。あれ?葵さんは?葵さんはどこにいるんだろう。まさか、途中で…。
「健人、手伝って。」
「あっおぅ。」
オレは、とりあえずちよこさんを助けた。
「ねぇ、葵さんは?」
どこを見ても見当たらない。
「…助けて。」
よく見ると少し前のところに手だけ出ていた。
「あっ!」
由里は走り出して葵さんを引っ張り上げた。
「迷惑かけてごめんね。」
オレたちは、何事もなく中央の木までたどり着いた。
「ここに手を。」
由里が木に触ると、木に吸い込まれていって家の中に出た。
「鎖が外れました。ということは、私は力を取り戻したのですね。」
「他の人も助けてくれるわよねぇ。」
『うん。』
やる気満々だな。てか、葵さんついてくるつもりなのか。まあ可愛いからいいか。
「次は霞よね。霞はパッと見弱そうだから、弱く見えたのかしら。」
「私はいつだって、かよわい女の子よっ!!」
霞さんか、何か面白い人だな。
「何でみんな目をそらすの。」
「とにかく、お願いね。」
由里はうなずいて霞さんに触った。すると、光に吸い込まれて森に出た。最近落ちないな。まぁ、なんだかんだでオレたちの新しい旅が始まる。




