第1章2話:商品
さて。
まずは商品が必要だ。
売るものがなければ商売は始まらない。
メアリーヌが最初に考えついたのはスイーツだった。
(この世界では砂糖が簡単に手に入りますわ)
この異世界には『砂糖草』と呼ばれる植物がある。
水に入れて煮詰めると糖が採取できる、異世界ならではの植物だ。
まるで雑草のごとく生えてくる植物で、草原や野山からいくらでも手に入る。
つまり砂糖の原価がすさまじく安いのだ。
(中世ヨーロッパならば砂糖は貴重品ですが、この世界では逆。砂糖が安いからこそスイーツの大量生産が可能なのですわ。ただし砂糖だけ手に入っても、全てのスイーツが簡単に作れるわけではない……)
たとえばショートケーキは砂糖で作ることができる。
しかしショートケーキには小麦が使われる。
異世界の炭水化物はライ麦を使うことがほとんで、小麦は高級品だ。
もしショートケーキを大量生産しようとしたら、小麦の費用が重くのしかかるだろう。
(そこでわたくしが思いついたのは【マカロン】ですわ!!)
この世界ではマカロンは存在しない。
可愛らしいお菓子だと注目されやすいはずだ。
さらにマカロンはアーモンド、卵、砂糖草だけで作れる。
どの素材も安く手に入るので、たくさん生産することができるだろう。
――――メアリーヌはさっそく屋敷の厨房に移動する。
【生産魔法】を発動する。
生産魔法は、ものづくりをサポートしてくれる魔法だ。
(まず生産魔法でアーモンドからアーモンドパウダーを作る)
生産魔法は製作工程を大きく省略してくれる魔法だ。
レシピさえわかっていればアーモンドの加工も簡単にできてしまう。
(次に生産魔法で砂糖草からグラニュー糖を作る)
マカロンで使われる砂糖はグラニュー糖。
グラニュー糖は個人で自作するのが難しいものだが、生産魔法を使えば一発だ。
よし。
残りの工程も、生産魔法でパパッとやってしまおう。
そうして調理を続け……
マカロンが完成した。
「完璧ですわ!」
茶色のマカロン。
うん。
マカロンだ。
見た目はこんなものだろう。
問題は味だ。
フォークでひとくち切り取る。
口に運ぶ。
「もぐもぐ……」
メアリーヌの目が見開かれた。
「美味しいですわ!」
外側はさくっと。
中は優しくしっとり。
強すぎない甘みが舌を楽しませる。
しかし。
(普通のマカロンですわ。これでも十分、売り物にはなると思いますが……パンチ力に欠ける気がしますわね)
率直にそう思ったメアリーヌ。
そもそもマカロンは、味つけが大事なお菓子だ。
アーモンドと卵と砂糖だけでなくプラスアルファが必要だろう。
というわけで。
苺とブルーベリーを用意したメアリーヌ。
ストロベリーマカロンと。
ブルーベリーマカロンを作る。
色にもこだわる。
ストローベリーマカロンはピンク色。
ブルーベリーマカロンは藍色だ。
(控えめな味ではなく、ちょっと濃い味つけをして……と)
苺とブルーベリーの味を濃厚に感じられるように、濃いめの味付けを意識する。
生産魔法を使って完成させる。
さっそくブルーベリーマカロンを食べてみた。
「美味しいですわー!!!」
さっきより大声で感動を口にするメアリーヌ。
次にストロベリーマカロンを食べてみる。
「うんうん、これですわこれですわ!! マカロンといえばこれですわー!!」
味つけをしたマカロンは、しっかりと美味しくなっていた。
(このスイーツは、間違いなく売れますわ!)
とメアリーヌは確信を深めた。
さっそく販売のための準備を開始することにする。




