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統合再編

第二章ラスト二話です!

 魔剣にとり憑かれた者との戦いは、呪いを一つ解呪した事により俺の勝利で幕を閉じた。


 その後迷宮から脱出した俺達は、事の詳細を教員達に報告。

 試験は中止となり、教員達は発生した事態の処理に追われる事となった。



 迷宮試験から三日後、昨日まで臨時で休みになっていた学院が再開。


「はぁ……」


 教室で自分の席に座るや否や、テディは溜息を零した。


「どうしたテディ。浮かない顔をして」

「昨日まで俺達事情徴収詰めだったじゃねぇか……疲れてたのにおちおち寝てもいられなかったんだ、浮かない顔にもなるだろ」


 テディはそう愚痴を漏らす。

 彼の言う通り、俺を含め魔剣と戦った者たちは昨日まで詳しい情報や状況を教員達に説明していた。

 ちなみに魔剣に憑りつかれていた人間がニルトだと知ったのはその最中。

 模擬戦から一か月も前の事だったので、すっかりと奴の存在など頭から消えていたのだ。

 

「いやぁ~それにしても入学してまだ二か月も経ってないのに本当に濃い学院生活だねぇ~。やっぱりイブっちといると面白い事がいっぱい起きて助かるよ」

「本当にな。マジで疫病神でも憑いてるんじゃないのかお前」


 ジト目でテディは俺の方を見る。


「失礼なことを言うなテディ!! ていうか何だ神とは?」

「……え? え、え~と……あれ、何だろ」

「全く、相も変わらず意味の分からん男だな。お前は」

「お前に言われたくねぇ!! ……って?」


 俺とテディがそんな言い合いをしていると、聞かせるかのように教室の扉が開いた。


「イブル、テディ、ミュー!! 学院長がお呼びだ!!」


 現れたのは、えーーーーーー。


「誰だお前は?」

「馬鹿お前!! 副学長のガルムさんだよ!!」


 テディは俺の頭を掴むとぶんぶんと揺らす。

 この俺の対し何と豪胆な男だ。


「え~事情徴収はもう終わったと思うんですけど~」


 面倒くさそうにミューが頬を膨らませる。

 俺も全く同じ気持ちだ。

 正直面倒くさいから行きたくない。


「それとは別件だ。いいから来い」


 別件?


「仕方ない……行くとするか」


 事情徴収では無いと分かった俺は、重い腰を上げた。



 ガルムの後に付いて行くように大聖堂へと到着した俺達。

 

「失礼します。三名を連れて来ました。アリシア様」


 そう言ってガルムは大聖堂の奥で座る学院長を見る。


「む? 何だネスティ、お前達も呼ばれていたのか?」

「はい。私達も副学長に呼ばれまして」


 大聖堂にいたのは学院長だけではない。

 ネスティ、エヴァ、アーシャ――――先の魔剣との戦いに関与した者達が全員集められていた。


「何これ~? やっぱり事情徴収の続きじゃないの~?」


 その場にいたメンバーから俺と同じ事に気付いたミューは露骨に嫌そうな顔をする。


「だから違うと言っているだろ……。アリシア様」


 ガルムはアリシアに発言するよう促した。

 その意図を察したのか、彼女はゆっくりと口を開く。


「そうですね。では、本題に入りましょう……えーと、皆さん本日はお日柄も良く誠に……」

「アリシア様」

「……この前の入学式の時、あまり上手に話せなかったので、こうやって丁寧に入ろうかと」

「そんな事は言わなくていいです。というか本題に入ると言ったのに今の言い方は明らかに可笑しいですよ」


 ……俺は何を見せられているんだ?


 突如として繰り広げられるアリシアとガルムのやり取りに俺は困惑する。


「コ、コホンコホン……」


 わざとらしく咳払いするアリシア。

 切り替えるように改まった彼女は話し始める。


「今回、大した被害を出す事無く事態を収束出来たのはあなた方の貢献によるものです。魔剣は回収され、毒素に侵されていたシルバークラスの生徒も無事回復……学院側は勿論、私個人としても非常に感謝しています。そこで何か褒賞を与えようと思いまして」

「褒賞?」


 唐突に出された単語に俺は首を傾げる。


「はい。何か『一つ』、おっしゃってください。どんなものでも、可能な限りこちらで用意させていただきます」

「え、えぇ!? 本当ですか!?」


 アリシアの言葉にテディは驚愕した。


「ん~、と。それって全員の意見を合わせないといけないって事だよね? 皆どうする?」

 

 ミューは俺達を見ながら言う。

 全員と望みが一致しているという状況など無い……一先ず他の意見を聞くのは当然の流れである。


「私はイブル様に委ねます」


 するとネスティがそんな事を言い始めた。


「わ、私もです!」

「異論はない。勝手に決めて良い」

「……何だかんだこっちも貴族の端くれ……金には困ってないし、俺も特に無いな」

「皆優しいね~……って、まぁ最初から私も同じ考えだったけど!」


 何やら俺を抜きにして勝手に話が進んだようだ。


「何だお前達、望みはないのか?」


 ネスティはともかく、欲の無い者達だ。それでも人間か?


「いや気付けよ!? 皆お前に褒賞の内容を決める権利譲ったんだって!!」

「何ィ!? つまり俺は今、『一回だけ何でも叶う権』を所持しているという事か!!」

「そういう事だね~」

「お前達……」


 ふっ、ならば……!!


 ニヤリと笑い、俺はアリシアを見る。


「決めたぞ。望みを!!」


 生成した望み。

 いや、正確には――――最初から頭の片隅にこの望みは存在していた。


「俺の望み……それは、シルバークラスとゴールドクラスの統合とそれに伴う再編成。そしてその際、俺とテディ、ミューの三人をネスティのクラスに入れてもらうぞ」

『っ!?』


 俺がそう言った瞬間、その場にいたほとんどが目を見開く。


「お、おいお前何言って!?」

「取り乱す出ないテディ。これは初めから決めていた事だ……俺の席を温めてくれているネスティもそろそろ痺れを切らしていただろうからな!!」

「イブル様……!!」

「何をふざけたことを言っている貴様!! 貴様の一人にゴールドクラス昇格ならともかく、それはあまりにも度が過ぎているだろう!!」


 反論したのはガルムは。

 それを聞いた俺は溜息を吐き、言った。


「学院長は何でも良いと言っている。些か口数が多かったが、クラスを統合すれば再編成の必要性は出てくる。そこに更に条件を加えた言っただけだ。広義的には、クラス統合という望みしか俺は言っていない!!」

「屁理屈を……!!」

「やめなさい、ガルム」


 歯ぎしりを立てるガルムに対し、アリシアは制止の言葉を掛ける。


「……それが、望みですか?」

「あぁ!! 以外は認めん!!」

 

 高らかな俺の宣言に、アリシアは顎に手を当て、一瞬考える。

 だが一瞬だ。

 一瞬の内に思考の是非を満たした彼女は顔を上げ、俺を向き直った。

 

「いいでしょう。では、そのように取り計らいます」

「アリシア様!? それはつまり……!!」

「はい。シュヴァリア勇者学院はシルバー・ゴールド制度を廃止。クラスの統合と再編成を行います。すぐに動いて下さい」

「で、ですが……それはあまりにも……!!」

「ガルム……私は学院長、最終的な決定権はすべて私にあります――――何か文句が、ありますか?」


 突然だ。

 ボーっとしており、今まで何を考えているのか分からないようなアリシアが、初めて権力者としての権威を見せたのだから。


「そ、それは……!」


 ガルムもそれには臆したようで、頬から一筋の汗を垂れ流す。

 そしてすぐに、観念したような表情を見せた。 


「……分かり、ました。では、そのように」

 

 深々とガルムはお辞儀をすると、踵を返し、大聖堂を後にした。


「お、おいおい……これじゃあ本当に……」


 一連の行動から、これから起きる事に現実感を抱けぬテディは口をプルプルと震わせる。


「『天職』など関係ない。それはお前ももう十分に理解したであろう? ならば次にすべきは制度の撤廃だ……これで全員が同じ土俵に立つ事になる!! 俺一人が上に上がるだけなどというちんけな欲望では満足しない!! 底なしの欲望、望みは高く……これが俺という人間よ!! ガハハハハハハハ!!」

「い、いやそれはそうだけど……」

「イブっちぃ!!」

「ごほぅ!?」


 俺がテディを指差しキメポーズをしているとそれを遮るようにミューが腕を絡ませる。


「何だミュー!?」

「えへへ~。分かるよイブっち~、本当は私達と離れるのが寂しくて~、だからあんな事言ったんでしょ~?」

「なぁっ!? ばばばばば馬鹿言うな!! そんな理由ではない!!」

「え~? 本当かなぁ~?」

「本当の本当だ!!」

「イブル様……後、ミューさん」

『っ!?』 

 

 凍てつく声音が、俺とミューの背中を襲う。

 

「お、おい……ネスティ!! 落ち着け!! ミューはこういう奴なんだ!! オマエも十分理解しているだろう!!」

「そそそそそそそうそうそう~。スキンシップみたいなものだよ~!」

「おいさりげなく俺を盾にしようとするな!!」


 ミューは俺を前にした状態でネスティの方へと振り返る。


「そ、そんな事してないよ! ただちょっと私の防衛ラインになってもらおうとしているだけで……!!」

「同じ事だ!! ってネスティ!?」

「……!」


 俺はネスティの行動に困惑する。

 彼女は俺の胸に飛び込むと、そのまま腕を後ろに回し抱き着いたのだ。


「……同じクラスになれば、もうこちらのものです。あなたには、負けません」

「え~っと……あはは、じゃあお互い頑張ろうね♪」


 何だ。

 また俺を抜きにして今度はネスティとミューだけで会話が進んでいる。

 双方に抱き着かれているのに全くと言っていい程会話に入り込めない。


「ははは、これから騒がしくなりそうですね……」

「うん」

「本当にごめん……こっちの馬鹿共が……」


 その様子を端から見ていたアーシャとエヴァにテディは謝罪した。

ここまで読んでいただきありがとうございます!!

本作が少しでも気に入って下さった方は是非ブックマークや感想、広告の下の☆から☆☆☆☆☆→★★★★★というように評価などしていただけると幸いです!!

皆さんの応援に日々励まされています!!


※ブックマーク110件到達!! 

 総合評価は470ptを超えました!! 本当にありがとうございます!!

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