10パーセントVS100パーセント
ニルト戦ようやく終了!
「それではイブル様。失礼します」
「うむ!!」
「『深層解呪』」
テディが魔剣に対して攻撃を開始した瞬間、ネスティはイブルの体に触れ……新たに習得したスキル、『深層解呪』を使用する。
するとイブルの体に一本の黒い鎖が浮き出た。
「う……ぐぅ!!」
自分を縛る鎖が悲鳴を上げるようにイブルも少しばかり苦しそうな声を漏らす。
「大丈夫ですか……!? イブル様……!!」
「構わん!! 続けろ……!!」
心配するネスティの声を一蹴し、イブルは継続の指示を促した。
「はい……!! はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ネスティとイブルの声がシンクロする。
そして直後、耐え切れないかのようにギチギチと悲鳴を上げる鎖はガキィンと音を立てて決壊したのである。
◇
オレノモクテキハ、『剣聖』ノマッサツ……。
ソレハマチガイない……。
ダガ、アノトキオレハ……モクテキヲミアヤマッタ。
魔剣の言う通りだ。
先程の足止め、そこには魔剣の目的であった『剣聖』も参加していた。
普通ならば、自分の目的が自らの足で向かってきてくれたという状況……それは僥倖以外の何物でもない。
しかし、あの時既に魔剣の意識はイブルの方へと向いていたのだ。
何か不味い事態が起こる……そんな焦燥感に駆られた魔剣は、目的であった『剣聖』を二の次に無意識に据えてしまっていた。
だが、魔剣の判断は間違っていない。
事実……『剣聖』よりも恐ろしいものが、この世に誕生してしまったのだから。
◇
「来い」
「ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……アァァァァァァァァァ!!!!」
俺が指で挑発すると、魔剣はその柄を握りしめ、襲い掛かる。
「『暗黒連斬』!!!」
凄まじい速度の斬撃、だが……先程よりも余裕綽々《よゆうしゃくしゃく》に俺はその全てを回避する。
「ぬるいぬるいぬるい!!」
いいぞ……俺の身体能力が少しだが戻っている……!! そして視界が先程に比べ鮮明だ!!
攻撃を避けながら、俺は自分の動体視力と身体能力が上昇している事に歓喜した。
「ナゼダ……!! ナゼソレホドノチカラヲニンゲンゴトキガユウシテイル!?」
「喋るとは余裕だなぁ!! ならばもう少し力を出すか!!」
「ッ!?」
一瞬にして攻撃に転じた俺に魔剣は目を見開く。
「ガハハハハハハハ!!!」
「ガアァァァァァァァァァァ!?」
俺はただ高速で拳を振るう。
スキルも何一つ使用していない、ただ純粋に膂力にものを言わせたパンチだ。
だが俺のあまりにも速く、凄まじい打撃力を孕んだその攻撃に……魔剣は防ぐのも避けるのもままならず全てをその体で受ける。
「アァァァァァァァァァァァァ!!!」
しかし俺がいくら高貴なる攻撃を与えても、敵の体は再生を続けた。
「ふむ。面倒だな」
「グゥ……!!」
俺は魔剣の腹部に腕を突っ込むと内部で内臓を掻き回す。
だが、それでも敵の再生能力は発揮……中々のものである。
「ならば……」
腹部から腕を引き抜く俺。
血塗られた拳を眺め、ニヤリと笑う。
「久々に、使うか……!!」
そう決意を固めると、俺の右手に……大気のマナが集まり始めた。
「ァ……!?」
「何を硬直している? 今の俺は無防備だ。殺す最後のチャンスだぞ?」
「グゥ……!! アァァァァァァァァァ!!!!!」
ざっくばらんに魔剣は俺に剣を振るう。
腕、足、胴、頭――――。
だがそのどれも、俺を殺すに至らない。
辛うじて発生する斬り傷は、たちどころに俺の『回復』で復元される。
「ナンダナンダナンダナンダ!! ナンナンダオマエハァァァァァ!!??」
「何度も言わせるな!! くどいぞ……!!」
その言葉を皮切りに、俺の準備が整う。
「さぁ……!! 終わらせる!!」
俺は世の概念を収束させた拳を強く握り締め、言った。
「……!!!」
「む……? なぜ逃げるのだ?」
酷く顔面を歪ませた魔剣は、背を向けて逃げ出す。
そこには既に交戦の意思はなく、敗者の背だけが存在した。
「逃がさん!!」
「ヒィィィィィィ……!!」
俺は逃げた魔剣の正面に再び立ち塞がる。
「諦めろ!! お前は俺の幹部を傷つけ、呪いの解けた俺の前に立ち塞がった……!! 自身の運の無さを呪うが良い!!」
「ヤメ……!! ヤメ……!!!」
魔剣が制止するよう言葉を放つが、そんなもの聞く気は毛頭ない。
「消えろ!!」
「ヤメロォォォォォォォォォ!!!」
魔剣の断末魔にも似た絶叫を聞きながら、俺は久しぶりのスキルを使用した。
「『傲慢の拳』!!!」
満を持して、俺は崇高で偉大なる一撃を放つ。
拳が魔剣の肉体に触れると、空間が歪む。
それに耐えかねるように奴は地面へと叩きつけられた。
「ガハァァァァァァァァァァァァ……!?」
地にクレーターを形成する。
「ウゥ……アァァ……マダ、マダァ……!! ッ!?」
体を再生させようとする魔剣、しかしそこ奴は異変に気付く。
「……ナ、ナゼダ……フクゲン……デキナイ……!!」
「ガハハハハハハハ!! 当然だ、お前は俺のスキルを食らったのだからな!!」
『傲慢の拳』、拳に世の概念を収束させ殴る――――ただそれだけのスキル。
しかし、殴られた者にある効果を及ぼす。
「このスキルを食らった者は俺の許可なしで回復・復元をする事が出来ない!!」
「ソ、ンナ……バカナハナシガ……!?」
「事実だ。受け入れろ! 故にお前はもう死ぬ……、だがその前に聞きたい事が聞けていない。お前は誰の差し金で動いている?」
再度拳を握りしめ、俺はしゃがみ込む。
「ッ!!」
「さぁ、早く言わねば、その肉体……面影が無くなるまで殴り続けるぞ?」
「フ、フザケ……!! イイノカ!! コノカラダハオマエノガクインノセイトダ!! ソレヲ……!!」
「ガハハハハハハハハハ!! 今更何を言うか!! そんな些末な事、微塵も気にする必要は無いわ!!」
「オ、オマエ……!! アクマカ!!」
「魔王と言っているのだが……最早訂正するのも億劫だな」
もういい、さっさと恐怖に屈服させて吐かせるか。
「さぁ……お前は何処まで耐えられるか……楽しみだ……!!」
「ウ、ウゥゥゥゥゥゥゥ……!! ッザ、ケルナァァァァァァ!! アァァァァァァァァァ!!!!!」
魔剣がそう叫ぶと、闇の瘴気が周囲に発散され大気中に霧散していく。
そして、それにつられるようにニルトの体が徐々に元の姿に戻る。
発生源の魔剣からは、邪気が唐突に消え去っていった。
「……え!? ちょっと待て!! まさか自ら死を選んだというのか!? おい!! まだ聞きたい事があったのだぞ!! おぉぉぉぉぉぉぉぃ!!!」
くそ……!! まさか奴に自分で死ぬ気概があったとは……!! 誤算だった……!!
俺は口を歪ませ、母体となっていた肉体とその手から離された魔剣に目をやった。
「やったぁ!!」
「ってうぉ!?」
「イブル!!」
「ってお前もか!? 何なのだ二人して……!?」
少しばかりショックを受けていると、ミューとテディが抱き着いてくる。
俺の事が好きなのは分かるが、時と場所をわきまえてもらいたいものだ。
「……」
「これで、終わったん……ですか?」
エヴァとアーシャもまた、俺の元に近付いてくる。
「あぁ。母体はただの死骸、魔剣は意思を失った。一先ず、終わりだ」
俺はそう告げると、抱き着いた二人をそのままに立ち上がった。
「イブル様!!」
「……ネスティ」
俺が振り返ると、第一の幹部が俺を見ていた。
酷く安堵したように、彼女は―言う。
「お疲れさまでした」
「……あぁ!! だが、この勝利は俺だけの成果ではない。ここにいる全員が、死力を尽くした結果だ。無論、お前もその一人……自分を誇るが良い!!」
「いえ、私は……」
「そんな事、無いですよ!!」
そこで口を挟んだのは意外――――いや、意外ではない人物。
「アーシャさん……」
「ネスティさんがイブルさんに何をしたのか、よく分からないですけど……あなたのお陰でイブルさんが勝ったのは間違いないって分かります!! それにネスティさんが命を懸けて助けてくれたから、今私がここにいれるんです!! だから……ありがとうございます!!」
アーシャと呼ばれた女は鼻をすすりながら言う。
彼女の言葉に、嘘は無いだろう。
精一杯の……必死の……心からの思いがソレに乗っている事は容易に理解出来た。
「ネスティ!」
「……はい」
「謙遜するな。此度の事、誠に大義であった!!」
俺がそう高らかに宣言するとしばし彼女はアーシャを見ながら戸惑った様子を見せると、口を開く。
「……どういたしまして」
その顔は、間違いなく友人に向けるに相応しい表情だった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
本作が少しでも気に入って下さった方は是非ブックマークや感想、広告の下の☆から☆☆☆☆☆→★★★★★というように評価などしていただけると幸いです!!
皆さんの応援に日々励まされています!!
※ブックマーク110件目前!!
総合評価450に達しました!! 本当にありがとうございます!!




