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異世界で俺は孤児になりました   作者: 睦月 霊華
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ジーンとの話し合い

 食堂を退出した俺とジーンは、セシルに近くの空いている部屋まで案内された。


「お飲み物でございます。では、私はこれで失礼致します。どうぞごゆるりとお話ください。」


 気を遣ってくれたようで、最低限の仕事と挨拶だけ済ませると、セシルは直ぐに部屋を出て行った。

 俺はその心遣いに心の中でお礼を言うと、気持ちを切り替えてジーンへと顔を向けた。


「ジーン、一体何故泣いているんですか?」

「・・・。」


 俺の問いかけに何も答えようとしないジーンに内心頭を抱える。このまま話していても、平行線になる事は明らかだ。かといって、諦める訳にもいかない。

 俺は散々頭を悩ませた末、一つのかけに出ることにした。

 

「ジーン。何も答えたくないのなら、それでも構いません。ですがその場合、俺もそれ相応の態度を取らせていただきます。」


 俺はわざと少し強めな口調で話す。例え方法が狡かろうと何だろうと、何故泣いたのか聞き出さなくては気になって仕方がないのだ。

 泣いてるジーンには悪いが、洗いざらい話してもらいますよ。俺はバレない様に薄くニコリと笑う。

 

 やがて、俺が本気だと理解したのか、ゆっくりとジーンが口を開いた。


「………………レンは、…………平気、なのか?」

「………何がでしょうか?」


 ジーンの言葉の意味が分からず、俺は首を傾げる。真剣に話そうとしてくれてるのは伝わるのだが、何を問いかけているのかいまいち分からない。

 

「レンは、俺いなくても大丈夫なのかと聞いてるんだっ!」 

「…っ…。」


 俺は突然怒り出したジーンに、驚いて反射的に固まる。

 ジーンに怒られたことなんてなかったから、ちょっとびっくりした。いくら過保護でもきちんと怒れるんだな。

 あ、でも、今のは完全に八つ当たりだよな。俺が精神年齢は大人の男だから良かったが、これが本当の子供相手だったら、ただ怖がらせて嫌われるだけだったぞ。

 

 俺は言葉に出しては決して言えないそんな事を心の中で思いながら、ジーンと見つめ合う。

 こういう時は先に目を逸らしたら駄目だ。それじゃ何も伝わらないから。


「…………っ。」


 あ、ジーンが先に目を逸らした。これは俺の勝利って事でいいよな。別に勝負をしている訳ではないんだけどな。

 俺は自分のくだらない考えに内心で苦笑しながら、気持ちを切り替える為、ジーンに気付かれないよう小さく息をつく。


 さて、そろそろ俺も何か話さないと。流石に沈黙は気まずい。


「……えっと、ジーン。…ジーンは、俺が王都の学院に行くのは反対なのですか……?」

「……………………………………ああ。」

 

 俺の問いかけに、たっぷりと間を開けた末、ジーンはゆっくりと頷いた。

 俺はそれに内心で、やっぱりか、と思いながらも、どう説得しようかと頭を悩ませる。

 

「……ジーンは、俺が学院に入るのは相応しくないと思うのですか?」


 俺は首を傾げながら、ジーンを見る。まあ、この質問は、ジーンは否定するだろう。これは本音を聞き出す為の只のブラフだ。


「え、ち、違う!俺は、別にそういう意味で言ったわけじゃない!」


 俺は心の中でニヤリと笑みを浮かべる。


「じゃあ、どういう意味なんですか?」

「そ、それはだな。……」

「それは?」


 チラチラとこちらを見てくるジーンに俺は首を傾げる。

 勿論、言うまで許すつもりはない。


「・・・・。」

「・・・・。」

「・・・・。」

「・・・・。」

「・・・・はあ。」


 暫くの沈黙の末、結局先に折れたのはジーンだった。


「レン。言っても俺を嫌わないでいてくれるか?」


 ジーンの不安げな表情に、俺は安心させるように満面の笑みで頷く。


「もちろんです!」


 ジーンはその言葉に安心したのか、一度俺の顔見ると、直ぐに俯いた。

 って、何で!?何で俯くの?そして、耳が赤くなってるけどどうした?


「…っ、ご、ゴホンッ。えっと、 それじゃあ、約束通り話そう。」

「え、あ、はい。」


 うおっ!危ねえなあ。いきなり顔上げんなよ。心配してそのまま顔近づけてたらぶつかる所だったじゃねぇか。

 俺は心の中でぼやきながらも、しっかりとジーンを見る。


「っ、な、なあ。そんなジッと見つめないでくれ。話しにくい。」

「え?あ、はい。」  


 俺はジーンの言葉に、頭に疑問符を浮かべながら頷く。

 さっきから何回も見てるんだけど……。いきなりどうしたんだ?

 

「よし。話すぞ。いいな?」


 俺はジーンが聞いてくるのに頷く。まあ、そんな疑問は後でもいいか。

 俺はそう吹っ切ると、ジーンが話し出すのを黙って待つ。


「………俺はさ、レンと離れるのが嫌なんだ。レンと一緒に暮らすようになってから、一人の家が明るくなったように感じた。レンは一人でも大丈夫かも知れないけど、俺はもう無理だ。だから、王都の学院なんかに、行かないでくれ……。」

「・・・。」


 俺はジーンの本音を聞いて絶句した。

 これは、説得は難しいかもしれない。こういう悲しいからという理由の相手には、こちらにどんな正当性があろうと通じない。

 それに、俺は日本にいた頃はこういう経験をした事がない。どうしよう。


 俺はチラリとジーンを見る。

 まるで捨てられた子犬のような顔をしている。……はあ。俺はジーンのこういう顔には弱いんだよ。仕方ないな。この手だけは使いたくなかったんだけどなあ。


「……ジーン。もし、良いならですけど、俺と一緒に王都に行きますか?…俺は、どうしても魔法を諦めきれないんです。ですから、ここでジーンにどんなに反対されようとも王都の学院に行きます。ですから、俺と離れるのが嫌なら、一緒に王都に行きませんか?」


 俺は一気に言いたいことだけ言い終えると、そこで口を閉じてジーンを見る。

 ジーンは俯いて何か考えてるようだった。俺はそれを黙って見つめ続ける。




 暫くして、ジーンは顔を上げると、俺を真っ直ぐ見つめて言い切った。


「俺もレンと共に王都へ行こう。」


 俺はその言葉にじわじわと笑みが浮かぶのがわかった。よし!これで気兼ねなく王都に行ける!よかった!

 俺は溢れ出るそんな思いを、言葉に出してジーンに伝える。


「ありがとう!ジーン!」


 

 こうして、俺の王都行きは無事に認められる事になったのだった。



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