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15/19

氷の姫、低査定素材を選んで期待する

白い湯気が、氷壁の陰へ立ち上った。


霜苔羊の骨を煮出した、澄んだ香り。


生姜。

香草。

ほんの少しの胡椒。


冷え切った寒冷階層の空気の中で、その湯気だけが、別の場所のように温かかった。


霜角巨牛の指が、氷原を掻く。


巨体が、ゆっくりと動き始めている。


補給に使える時間は長くない。


ソフィアは黒い保温ボトルへ口をつけた。


一口目。


熱い出汁が、冷え切った喉を濡らした。


骨を長く煮出した旨味が舌の上へ広がる。

深い。


それなのに、脂の重さはほとんどない。


澄んだ出汁が喉を滑り、生姜の熱だけを残して胸の奥へ落ちていく。


「……っ」


思わず、目を見開いた。


以前の粥も美味しかった。


けれど、これはまた別次元だった。


冷えた場所で飲むことまで計算された温度。

凍った喉へ最初に触れる塩気。

呼吸を邪魔しない薄さ。

それでいて、骨の味はきちんと濃い。


戦闘中であることを、一瞬だけ忘れそうになる。


二口目。


香草の匂いが鼻へ抜け、奥から胡椒の刺激が追いかけてきた。


浅くなっていた呼吸が戻る。


冷気を吸い込んでも、もう喉は痛まない。


肩から余計な力が抜けていく。


そして。


やはり美味しい。

ものすごく、美味しい。


温かい出汁が身体に必要だから、というだけではない。


戦闘中の補給だからでもない。


普通に。

めちゃくちゃ美味しい。


霜角巨牛の右腕が持ち上がった。


氷原へ拳をつき、巨体を起こそうとしている。


あと一口。


ソフィアは三口目を飲んだ。


出汁の底に、ごく薄い甘みがあった。


骨の奥から引き出された、丸い甘み。


生姜。

香草。

胡椒。


それらが最後の一口で、きれいにまとまっていた。


「……美味しい」


声が漏れた。


小さく。


けれど、完全に素の声だった。


飲み終えたソフィアは、反射的にボトルをもう一度傾けた。


四口目。


ほんの少しだけ。


あと一口飲んでも、戦況には影響しない。


むしろ身体は温まる。


……そう。


これは必要な補給である。


決して、もっと味わいたいわけではない。


ボトルの口が、唇へ触れかけた。


三口まで。


ボトルの耐水タグに書かれた朔の字が目に入る。


ソフィアの動きが止まった。


「……」


霜角巨牛の拳が、氷原を叩いた。


轟音。


氷壁に亀裂が走る。


目の前では、大型討伐対象が起き上がろうとしている。


自分は今、その最中に四口目を飲もうとしていた。


ソフィアは静かにボトルを下ろした。


「戦闘中に、こんなに美味しいものを飲ませる方が悪いと思います」


……責任転嫁だった。


自覚はある。


それでも、四口目は飲まなかった。


蓋を閉める。

固く。

最後まで。


ボトルを装備の内側へ戻し、右手を開いた。


指先に、三本の氷針が生まれる。


細い。

透明。

三本とも同じ長さ。


先端から根元まで、太さに揺らぎがない。


胃へ落ちた熱が、爆発的に魔力を増やしたわけではない。


身体が急に軽くなったわけでもない。


ただ。


右手の奥へ溜まっていた重さが、静かにほどけていた。


落ち始めていた精度が、本来の場所まで戻っている。


それで十分だった。

氷壁が砕ける。


霜角巨牛の右腕が、壁を内側から打ち抜いた。


白い氷片が爆ぜる。


巨体が、左側を下にしたまま起き上がろうとしていた。


右の拳を氷原へ突き立てる。

背中が浮く。

左脚を身体の下へ引き込もうとする。


左半身ごと凍らせることはできる。


ソフィアにとって、それ自体は難しくない。


しかし広く、深く氷を入れれば、筋膜と内部の水分を伝い、残した右肩や頸肩部まで凍結が走る。


―――ならば。


止める場所は、二つだけでいい。


ソフィアは氷壁の陰から出た。


一本目の氷針を放つ。


狙うのは右肩ではない。


氷原を掻いていた左手。


すでに外装が砕けている手首の隙間へ、細い氷が滑り込む。


氷針は左手を貫き、そのまま氷原へ深く沈んだ。


霜角巨牛の左手が、床へ縫い止められる。


巨牛が吠えた。


右腕へ力を込め、強引に上半身を起こそうとする。


ソフィアは二本目を放った。


左膝。


先ほど砕いた外装の内側。


曲がりかけた関節へ氷針が入り、左脚を伸びた状態のまま固定した。


霜角巨牛の動きが止まる。


右腕は使える。

右脚も動く。


だが、下になっている左手を引けない。

左膝も身体の下へ入れられない。

巨体の重心を、右側へ移せない。


ソフィアには届かない配信画面の向こうで、コメント欄が流れる。


『左手を床に固定した?』


『次は左膝?』


『右側、一度も狙ってないな』


『左半身ごと凍らせないの?』


『広く凍らせたらせっかく残した肩まで冷えるんじゃ』


『必要な関節だけ止めたのか』


霜角巨牛の右拳が氷原を叩いた。


轟音。


拳を中心に、太い亀裂が走る。


縫い止められた左手の周囲も砕け始めた。


氷針が軋む。


外装ごと引き千切るつもりだ。


ソフィアは動かない。


押さえ続ける必要はない。


立ち上がるまでの動きを、遅らせればいい。


一秒。

二秒。


霜角巨牛が左腕を引いた。


砕けた手首の外装が氷原に残り、氷針が折れる。


巨体が前方へ(ねじ)れた。


固定された左膝が動かない。


下半身がついてこないまま、上半身だけが起き上がる。


頭部が低い位置へ残る。


その顔が、ソフィアへ向いた。


赤く充血した左目。


ソフィアは踏み込んだ。


霜角巨牛が口を開く。

喉の奥へ、白い冷気が集まっていく。

凍結の息。


吐き出される前に。


ソフィアの右手から、最後の氷針が離れた。


細い線が、白い空気を切る。


氷針は頭部の外装には触れない。


砕けている左側を通り。


開かれた左目へ、真っ直ぐに入った。


霜角巨牛の身体が硬直する。


喉へ集まっていた冷気が、行き場を失って口元から漏れた。


氷針は眼窩(がんか)の奥で止まらない。

必要な場所まで入り。

そこで初めて、氷が開いた。


頭部の外側は砕けない。


ただ。


霜角巨牛の左目の奥から、白い霜が広がった。

一本の細い枝が伸びるように。

透明な氷の筋が、頭部の内側へ走っていく。


霜角巨牛の右腕から、力が抜けた。

持ち上がりかけていた巨体が、再び左側へ沈む。


巨牛の口から、最後の白い息が漏れた。


それきり。


動かなくなった。


―――静寂。


霜角巨牛の身体を支えていた氷が、遅れて細かくほどけていく。


砕けるのではなく、薄い氷片となって、ふわりと空中へ浮かび上がる。


一枚。

二枚。


無数の透明な氷が、寒冷階層の淡い光を受けた。


蒼。

銀。

白。


色を変えながら、ソフィアの周囲をゆっくりと舞う。


銀髪の間を抜け。

大鎌の消えた右手をかすめ。

倒れた霜角巨牛の上へ、雪のように降り積もっていく。


氷原の中、巨大な魔物の命だけが、静かに止まっていた。


配信用ドローンも。

コメント欄も。

ほんの一瞬だけ、沈黙した。


『……綺麗』


最初に流れたのは、その一言だった。


続いて、画面が一気に加速する。


『うおおおおおお!』


『勝った!』


『最後、左目だけ?』


『外を壊さず中から倒したのか』


『右肩、最後まで地面についてないぞ』


『戦闘技術がすごすぎる。必要な場所だけ残したんだ』


『補給後、なんか調子良さそうだったよな』


『あの黒いボトル何だよ』


ソフィアは右手を下ろした。


「対象の活動停止を確認しました」


冷たく、澄んだ声が響く。


舞い落ちる氷片の中で、ソフィアは霜角巨牛(フロストミノタウロス)の周囲を確認した。


右奥の平坦な場所。


大型ソリが入れる広さは残っている。


左側の外装は砕けていた。


左肩。

左手首。

左膝。

左眼。


けれど、右肩は上を向いている。

右側にはほとんど損傷は無いように見える。


「回収班の方々は、対象の左側から進入してください」


少し間を置き、ソフィアは続ける。


通信の向こうで、一瞬だけ沈黙があった。


これまでのソフィアは、回収班の進入方向まで指定する必要がなかった。


討伐後に残るのは、粉砕された氷片と素材片だったからだ。


やがて、責任者から返答が届く。


『了解しました。左側から進入します』


ソフィアは配信用ドローンへ向き直った。


銀髪には、細かな氷片が付いている。

左頬には、途中でかすめた氷の薄い傷。

探索服の袖には、霜角巨牛の黒い血が一滴だけ残っていた。


汚れ一つないいつもの勝利ではない。


けれど。


残したいものを残して終えた勝利だった。


「本日の大型討伐任務は、これで完了となります」


静かに一礼する。


「ご視聴、ありがとうございました」


その肩越しを、最後の氷片が一枚だけ舞い落ちた。


ドローンのランプが、赤から黒へ変わる。


―――配信終了。


その合図を待っていたように、後方の封鎖線が開いた。


防寒装備を身につけた回収班が、大型ソリと工具を押して氷原へ入ってくる。


分析班。

素材回収班。

後処理班。


黒や灰色の装備が、倒れた霜角巨牛の周囲へ広がっていく。


その端に、見慣れた黒い作業着があった。


朔だった。


ソフィアの方へは来ない。


回収班とともに霜角巨牛の左側へ回り、砕けた外装の状態を見ている。


手袋を替える。

左肩の下へ保護材を入れる。

右肩へ触れる前に、首元の凍結状態を確認する。


ソフィアが残した進入経路を、迷うことなく使っていた。


目は合わない。

頷きもしない。

褒める言葉もない。


それでも。


朔が余計な足止めを受けず、霜角巨牛のそばへ入っていく。


その光景だけで、自分が選んだ倒し方は、少なくとも彼の現場を困らせるものではなかったのだと分かった。


張り詰めていた頬から、ほんの少しだけ力が抜ける。


今はもう、配信中ではない。


だから、その安堵を隠す必要はなかった。


―――その後。


前線控室へ戻ったソフィアは、簡易検査を受けていた。


体温。

魔力残量。

呼吸。

指先の反応。


スタッフの指示に従い、右手へ小さな氷を作る。


薄い六角形。

透明。

形は崩れない。


「魔力残量は想定範囲内です。制御反応にも大きな異常はありません」


「分かりました、ありがとうございます」


黒い保温ボトルは、隣の椅子に置かれていた。


摂取量を記録するため、使用前後の重量も測られている。


三口。


朔の指定どおり。


四口目に行きかけたことは、ログへ残らない。


……絶対に残さない。


スタッフが補給物ログへの記録を進める中、別の職員が端末を持って控室へ入ってきた。


「氷室さん、素材報酬について確認をお願いします」


端末には、霜角巨牛の簡易図が表示されていた。


左側は赤い表示が多い。


損傷した外装。

左角。

左肩。

左手首。

左膝。


一方で、右側には青と黄色の表示が残っている。


「今回は、部位ごとの査定が可能です」


「今回は?」


「氷室さんの討伐素材は、これまで細かな凍結片として回収されることが多かったので」


職員は端末を操作した。


「換金自体は可能でしたが、個別の部位として申請できる状態ではありませんでした」


ソフィアは画面を見る。


素材を選ぶ権利がなかったわけではない。


選べる状態で残したことがなかったのだ。


「魔核、霜角芯、特殊腺などの研究指定部位はギルド管理になります。それ以外は換金、または許可範囲内で個人研究用サンプルとして申請できます」


「個人研究用サンプルでお願いします」


「用途を伺っても?」


「氷結損傷と、素材回収性の検証です」


嘘ではない。


今回、何を壊して。

何を残して。

どの程度の凍結が入ったのか。


朔のところへ持ち込めば、嫌になるほど細かく確認されるはずだ。


「個人研究用として受領できるのは、密閉素材ケース一箱分です。部位の希望はありますか」


ソフィアは端末へ触れた。


高査定部位ではなく。


黄色く表示された場所を、順番に選んでいく。


「頸肩部の筋膜が残っている端材を」


次に。


「肋骨端と骨端。それから、凍結侵入の少ない赤身端材をお願いします」


職員が、選択された部位を見る。


「……低査定部位が中心ですが、よろしいですか」


「はい」


「右肩周辺の上位部位を申請することもできます。ただ、その場合は容量上、先ほど指定された骨端と筋膜付き端材は入りません」


ソフィアは画面を見つめた。


右肩周辺の上位部位。

希少性が高く。

査定額も高い。

料理としての見栄えも、おそらく良い。


けれど。


朔は、そういう基準だけで素材を見ていない。


筋。

骨。

脂。

血。

切断面。


他の人が見過ごす場所から、使えるものを見つける。


「最初に指定した部位でお願いします」


迷いはなかった。


職員が、わずかに目を瞬く。


「承知しました」


ソフィアは黄色く表示された端材を見る。


「価値が低いとは、思いませんので」


それ以上、職員は何も聞かなかった。


端末上で申請処理を進める。


「安全検査は明朝までに完了する予定です。問題がなければ、明日の午前十時以降に密閉素材ケースでお渡しできます」


「ありがとうございます」


職員が控室を出ていった。


扉が閉まる。


一人になったソフィアは、端末を開いた。


朔とのメッセージ画面。


戦闘中には見ていない。


見る余裕も。

見る必要もなかった。


ソフィアは、申請した部位を入力した。


『頸肩部の筋膜付き端材、肋骨端、骨端、赤身端材を申請しました』


送信。


すぐには既読にならなかった。


まだ現場で、回収作業をしているのだろう。


ソフィアは端末を膝の上に置き、黒い保温ボトルへ触れた。


数分後。


端末が震える。


『誰に聞いた』


討伐への感想ではなかった。


勝ったことへの言葉でもない。


最初に気になるのは、そこらしい。


『誰にも聞いていません』


返事は早かった。


『なら、なぜそこを選んだ』


ソフィアは少しだけ考えた。


他の言い方もできた。


技術検証のため。

素材回収性を確認するため。


ギルド職員へ答えたように。


けれど。


朔にまで、言葉を選ぶ必要はない気がした。


『朔さんなら、そのあたりを使うと思いました』


既読がつく。


返事が止まった。


十秒。

二十秒。

作業中だから。


たぶん、それだけだ。


それでも、ソフィアは画面から目を離せなかった。


やがて。


『俺の都合で報酬を選ぶな』


予想していた返事だった。


ソフィアは、すぐに文字を打った。


『私が食べるものなので、私の都合です』


送信。


また、既読だけがつく。


今度の沈黙は、先ほどより長かった。


世界ランク三位の探索者が。

大型討伐を終えた直後。


低査定素材を選んだことを報告し、その返事を、控室でじっと待っている。


冷静に考えると、おかしい。


ただの素材取引。

ただの味見役契約。

それ以上ではない。


ない、はずなのに。

なんでこんなにも返事が待ち遠しく感じるのか。


端末が震えた。


『……ならいい』


短い返事。


それだけだった。


ソフィアの口元が緩む。


続けて、もう一通届く。


『受け取る前に写真を送れ。密閉ケースを開けた直後も』


もう、持ち込まれる前提で話している。


ソフィアは端末を持ち直した。


『何か作ってくれるんですか』


『状態を見てから決める』


『状態が良ければ?』


既読。


返事が来ない。


少し待つ。


端末が震えた。


『明日十時。受け取ったらケースを開けずに来い』


時間まで指定された。


続けて、もう一通。


『朝は軽くしろ』


ソフィアの視線が、その一文で止まった。


朝は軽く。


……つまり。


昼には、何かを食べる予定がある。


そう受け取っていいのだろうか。


ソフィアが返信を打とうとした、その時。


端末の画面上部へ、別の通知が表示された。


ギルド管理部。


【公式スポンサーより、本日の補給行動に関する確認面談】


日時は、明後日の十五時。


担当マネージャー同席。


確認予定項目。


摂取時刻。

摂取量。

内容物。

成分。

入手経路。


黒い保温ボトルを使用した以上、避けられない確認だった。


ソフィアも、ログへ記録すると答えている。


けれど。


その通知の下には。


先ほどまでやり取りしていた、遠野朔の名前が残っていた。


ソフィアは、その名前を静かに見つめる。


明日の午前十時。


素材を受け取り、そのまま地上ゲート裏の古いアパートへ行く。


霜角巨牛の端材。

骨。

筋膜。

赤身。


そして、状態が良ければ出てくる何か。

まだ料理の内容すら分からない。


焼くのか。


煮るのか。


骨から出汁を取るのか。


尋ねても、現物を見るまでは答えてくれないだろう。


それでも。


朝は軽くしろ。


その短い一文だけで、彼女の明日の予定には、温かな輪郭が生まれていた。


【神業】氷姫、霜角巨牛を必要な場所だけ壊して討伐


1:名無しの探索者

大型討伐見た?

戦い方、今までの氷姫と全然違わなかった?


4:名無しの探索者

左手と左膝だけ固定して、起き上がる動作を潰してた


8:名無しの探索者

全身を凍らせたんじゃなくて、荷重かかる二点だけ止めたのか


13:名無しの探索者

あの巨体相手に、どこへ力がかかるか一瞬で見切ってるの普通に化け物


19:名無しの探索者

世界三位を改めて実感したわ


25:名無しの探索者

最後の一発もヤバい

左目から通して外側を砕かず内部だけ凍らせてる


31:名無しの探索者

文字にすると意味分からん技術だな


37:名無しの探索者

しかも倒れる向きまで制御してたぞ


43:名無しの探索者

右肩を一度も地面につけずに、回収班が入れる位置へ落としてる


49:名無しの探索者

単に火力が高いんじゃない

戦場全部見えてるタイプの強さだわ


56:名無しの探索者

最後に氷が舞うところ綺麗すぎた


62:名無しの探索者

あれだけ細かい制御した後なのに、最後まで魔力の制御がぶれてないの怖い


68:名無しの探索者

そこで気になるのが黒いボトルなんだよ


91:名無しの探索者

あれだけ長時間戦って、終盤まで調子が崩れない方がおかしい


97:名無しの探索者

あの補給で調子が出たってこと?


104:名無しの探索者

普通は魔力補給しないと無理。でもスポンサーのゼリーではないよな


123:名無しの探索者

例の肉質が死ぬ男じゃね?


130:名無しの探索者

あるかも


138:名無しの探索者

氷姫が強いのは間違いない

でも最近、その強さを最後まで崩させない何かがいる


―――世界はまだ知らない。


彼女に黒い保温ボトルを渡した張本人が、すぐ近くにいたことを。


そして。


戦場では四口目を我慢した氷の姫が。


まだ名前も決まっていない明日の料理を、誰にも知られない場所で、誰よりも楽しみにしていることを。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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