魔法少女42
「ーーなるほど...」
五分ほど涼さんの説明を聞いた後亘一さんはゆっくりと目をつぶり何かを考えるようにそうつぶやいた。すごいなこの人、俺が朱音から魔法少女の話を聞いたときはめちゃくちゃ取り乱してしまった覚えがあるけど亘一さんはパッと見た感じすごく冷静だ。
「ごめんなさい、仮にも婚約者なのに説明すらしていなくって」
「いや、大丈夫だ。今知ることができただけで十分だ。これから、ここから君のサポートができる」
「え?」
亘一さんはそう言って何かを胸元から取り出しながらざっと膝をついて涼さんの方を見上げる。
え、うそ?まじで?なんで?ここで?まさかの今ですか!?
「ーー涼風涼さん」
「は、はいっ!?」
あまりにも真剣な亘一さんの声を聴いて涼さんはかなり上擦った声で返事をする。そりゃそうだ。普通に考えてこの構図は完全にプロポーズのそれである。あの朱音ですらこの光景を見ておろおろしてるくらいだ。なにそれかわいい
「僕は幼い時に君に一目ぼれをし、そして両親の力で君を僕の婚約者にしてしまった。君の人生を縛ってしまった。」
亘一さんのその言葉は俺には少し懺悔のように聞こえた。
「僕は卑怯者だ。こんな卑怯な手を使って君のことを自分のものにした。そしてその行為について罪悪感を持っていながら僕は君がそばにいるという幸せにおぼれて、満足して、君の意思を確かめることすらしなかった卑怯者だ」
「ち、違うわよ?亘一君のご両親は嫌ならきちんと断ってくれていいとおっしゃられていたわ!?でも、それでもこの婚約を私は私の両親のために望んだから受けたのよ?だから卑怯なんて」
「いや、卑怯者だ。そこにいる僕の先生が気づかせてくれた。」
「せ、先生?」
あ、どうも先生です。朱音と涼さんにびっくりした顔で見られたのでとりあえず手を振ってアピールする。朱音に二度見された。なんだよ朱音さんその目は、優君がアドバイスできることなんてあるの?って感じのまなざしだな。失礼な!
「そう、先生だ。彼のおかげで気付けたんだ。ーーー僕は君に告白すらしていなかったなと」
おっと、危ない。俺は亘一さんがそういった瞬間恋愛ドラマでも見ているような感じでキャーーという黄色い悲鳴を上げそうになった朱音の後ろに回り後ろから口をスッと押える。朱音さん?気持ちはわかるけど今は静かにしようね?あっ!?今俺の手をぺろって舐めたな!?ってなんだその目は!?人の手を舐めておいて俺の方を挑発するような目で見るんじゃない!!優君のプロポーズはまだ?って心の声が聞こえてきたぞ!?
「だから、今ここで。君の秘密を知った今この場所で、僕の思いを伝えさせてほしい」
「...」
涼さんは顔を真っ赤にしたままコクンと小さくうなづいた。
「涼風涼さん、君が好きです。僕の、恋人になってくれませんか?」
亘一さんはそう言って胸元から小さな箱に入った指輪を差し出し...指輪!?指輪!?なんで指輪!?というか指輪出すならプロポーズじゃないの!?なんで今指輪!?
俺が後ろから抱きしめてる朱音もちょっと困惑してるぞ!?
「ーーふふ...こういう場面でプロポーズでもなく恋人になってくれっていうところが亘一君らしいわね?」
涼さんはそう言って亘一さんの方に歩み寄る。
「あたりまえでしょう?私はあなたとの婚約を受け入れた時からずっと恋人のつもりだったわよ、ばか」
そう言って指輪を受け取った涼さんの顔は、見惚れてしまうくらいきれいな笑顔を浮かべていた。
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「というわけで、ありがとう先生」
「どういうわけかわからないですけど、お礼なんていいですよ。俺は何もしてないんで」
「いや、君からの言葉の数々のおかげで僕は一歩踏み出すことができたんだ。だからありがとう」
うーーむ、なんだ。年上の尊敬すべき男性からこうやってお礼を言われるのは少し照れるな。俺はそう考えながらきゃいきゃいしてる女性陣の方を見る。そこには指にはめた指輪を見ながら盛り上がっている涼さんと朱音がいた。というかものすごく盛り上がってる。一応ここはまだ境界の中なんだけど...油断しきってるなぁ...
「それで、亘一さん魔法少女関連の話を聞いてどう思いました?」
「ーー必ず守る。かな?」
あらら、かっこいいね
「なら俺と一緒ですね」
「あぁ、どうやら僕にも魔力が流れているようだからね。」
亘一さんはそう言って目をつむり力み始めた。え?なに?どゆこと?
「はっ!!」
「ーーまじかよ」
俺の目の前に黒い陰陽師?いやそれにしてはかなり身軽?な服を着た亘一さんがいた。
「あぁ、やはりできたね。魔力の話を聞いて涼さんに告白してから、なんとなく僕の中に知らない力が生まれたように感じてね。できてよかったよ」
「うっそーーん...」
俺変身するために師匠に超スパルタ教育(腕を斬り飛ばされる)されてようやく変身できたのにこの人一発で変身しやがった...ほら見ろ女性陣もあきれて、いやあきれてないな朱音に「どんだけ好きなの」と突っ込まれた涼さんが顔を覆ってうずくまってる。
「ただ、こうして変身できたということは。そういうことだよね?」
「えぇ、そういうことですね。」
涼さんは亘一さんに魔法少女の魔力が流れて行ってしまうことについても説明していたので(顔を真っ赤にしながら)普通に涼さんが亘一さんのことが好きだということがばれている。本当はこのことは説明したくなさそうにしていたが俺がいる以上説明しないといけなかったもんね...亘一さんからの「なぜ三月君は魔法を使えるんだ」っていう質問もあったし...
「はは。うれしいものだな惚れた人が自分のことを思ってくれているとわかるということは」
「よーくわかります」
俺と亘一さんがそう言って女性陣の方を見るとどちらも顔を真っ赤にしてうつむいていた。うーん相変わらずうちの彼女はとてもかわいいな。俺は改めてそう思った。
「ゴホン!じゃあ現状の把握からするよ?」
「うーす」
「はーい」
「よろしく頼む」
気を取り直して冷静になった朱音がそう言ったので俺含めほか三名はしっかりと返事をする。クロ?クロなら今は境界の主を探しに行ってるよ?なんか朱音がクロにお願いしてた。
「とりあえず。優君が悪魔堕ちをやっつけてくれたので今のところ敵はいないです。ただ、なぜか境界が壊れていません。」
そう、これが謎なのだ。境界はその中にいる境界の獣、もしくは悪魔を消滅させれば消えるはずであ...る...え?もしかして殺さないといけないのかこの悪魔堕ち
「あーっと優君は気が付いたみたいだけどそうじゃないよ、その悪魔堕ちはたぶんただこの境界に侵入しただけの外野だからね、そいつ殺しても境界はなくならない。」
「そうね、明かにその悪魔堕ちはこの境界を維持するにしては弱すぎる」
「なるほど?」
「えーとわかってなさそうだから説明するとね?境界っていうのはその境界を作り出した境界の獣の強さによって大きさが変わるの、だからこそその悪魔堕ち程度の実力じゃこの境界の主足りえないんだよ」
あーー、すっごく理解した。なるほどねーってじゃあ何か?俺たちはほかにものすごく強い境界の獣か悪魔がまだいる境界の中でいろいろしてたの?うそでしょ?
「しかも...この境界は現実世界を侵食する形で作られたのよねぇ...初めての体験というか聞いたことがなかったけど、こんなことができるということは...甘く見積もってもフェイス級がいるわよ」
「うっそん...」
朱音と涼さんはかなりやばい現実を突きつけてきた。
「失礼、フェイス級とは?」
あ、そっか亘一さんはフェイスのこと知らないのか
「えーと、クソ強い化け物です。多分優君じゃないと勝てないというか勝負にすらならないやつ?ですかね」
朱音が亘一さんの質問に答えた。うーんそれは確かに...あいつの能力はマジでチートだからな...けどそんなチートな化け物と同等レベルの奴がいるのか...
「戦力が足らねぇ...」
「「ほんとにそう」」
あのレベルの境界の獣を相手するんだったら天ちゃんと風ちゃんと後数十名くらいの手助けが欲しい、切実に。ただ無理なんだろうなぁ...
「そうなのか?」
「そうねぇ、一応日本魔法少女協会序列二位の朱音ちゃんがいるし再生魔法っていうすごい能力を持った優君もいるけれど...それでもきびしいわね」
うん、今ものすごく気になる単語が聞こえてきたけど今は無視しておこう。朱音レベルですら二位なのか...
うーーん増援を呼ぶ方法なぁ...境界の中は電子機器が使えないし、どうしよう。どうにかして他の魔法少女を呼び出す方法...なーんか昔師匠とそういう話をした覚えが...
そうだ!!
「ーーー助っ人チケット!!!!」
「「それだ!!!!」」
そうだよ!助っ人チケットだ!師匠と一緒に色々検証してた時に朱音から逃げるために使ったあのチケット!!魔法少女ではないとはいえ一応魔力をもって変身もできるので俺は朱音と契約してるヨンっていうよくわからん鳥のぬいぐるみみたいなやつから一枚もらってたんだ!「一応君も新人みたいなものだし上げるヨン!」とか言って!
「確か出し方は...助っ人チケット召喚!」
俺がそう言うと助っ人チケットが現れたのですぐさま破り捨てる。このチケットは破り捨てた時に思い浮かべていた魔法少女を助っ人として呼び出せるチケット!そして今俺が思い浮かべるのはもちろん決まっている!前衛の俺と朱音、後衛の涼さん(亘一さんはまだどんな魔法が使えるか不明おそらく涼さんとおなじ呪い系統)ということは今喉から手が出るほど欲しいのはサポーター!!つまり!
「いでよ!天ちゃん!!」
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!天ちゃん参上!!」
そう言ってものすごくハイテンションの天ちゃんが俺たちの前に現れた。このチケットは呼ばれるときに誰から呼ばれるかわかるので天ちゃんはすぐに来てくれた。俺からの呼び出しってわかる機能がついてて助かるよ
「あっ!天ちゃん!ナイスよ!優君!今一番欲しい人材だわ!」
「...ちっ」
朱音さん?なんで天ちゃんを見て舌打ちしてるの?怖いですよ?
「いやぁ優君に呼ばれたからびっくりしたよ、それでここはいったいどこか......え?だれ?」
天ちゃんはそう言って亘一さんの方を見てフリーズした。そしてどんどん顔が赤くなっていく。あぁ...なるほどまさか知り合いじゃない人がいるとは思ってもみなかったんだな...
呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!とか言いながら腰に手を当ててもう一方の手は目の横当たりでピースながらきゃぴっと登場したんだ。さすがに知らない人に見られるのは恥ずかしかったか...
「ゆーくん...」
天ちゃんは顔を真っ赤にしながら俺の方に来て俺の胸元にポスっと収まった。
「はずい...」
ひ、悲惨だ...
「こ、今回ばかりは許してあげよう...」
朱音ですら天ちゃんに憐みの視線を向けている。とりあえずなでておこう...あまりにも...かわいそうである。
こうして天ちゃんがパーティーに加わった。
「あ、そうだ天ちゃん俺の剣ある?」
「ぐす...あるよ?カードに入れてる」
「神だ」
「えぇ...?」
天ちゃんはやっぱり素晴らしい




