魔法少女43
「なるほどー、おっけぇ!よくわかったよめちゃくちゃピンチだね!」
「「「うん!」」」
あれから天ちゃんは何とか気を取り戻して亘一さんに挨拶をして(涼さんの彼氏だと聞いてめちゃくちゃ驚いてた)俺たちがなぜ天ちゃんを助っ人として呼んだかを説明すると天ちゃんは死んだ目でそう言った。
そうなんだよなぁ...だいぶピンチなんだよなぁ...
おそらくここまでの規模の境界が急にできたため魔法少女協会にも連絡は言っている可能性があるそうだがまぁ助っ人は来ないと仮定した方がいい。だって外界と境界の中は時間の進み方が違うんだから。こちらの時間で数時間経ったとしても向こうでは数分程度とか普通にあり得る。そんな状況で助っ人が乱入してくるなんてほとんどない。俺が前回のフェイス戦の時に乱入できたのは正直本当に綱渡りだったのだ。事前にしっかり準備してたからできたのであって今回のような突発な事件の場合不可能である。
なので今回の境界の攻略はここにいるメンバーだけでする必要がある。もちろん逃げるという選択肢もあるが境界から無理やり脱出するためにはいろいろ制約があるので今それはできない。だってこの境界には人質といってもいいくらいに一般人が巻き込まれているのだから。境界内の魔力の濃度のせいで気を失った状態から意識を取り戻すことはないこの人達を置いて俺達だけ脱出するという選択はできない。
「とりあえず、境界の獣探しだよね?じゃあシロおいで!」
「ガウ!」
天ちゃんがそう言って腕にある紋章に魔力を流しシロを召喚した。
「シロ、話は聞いてたよね?お願いできる?」
「ガウ」
シロはクールに任せて!といった感じに吠えた後ものすごい速度でその場から走っていった。これでクロとシロの二匹が索敵に行ってくれたわけだが...
「朱音、魔力感知に反応ないよな?」
「うん、ないね」
「てことはこれだけの境界を作っておきながら魔力のコントロールが完璧ってこと?」
俺がそう朱音に聞くと天ちゃんがこほんッと軽く咳払いをした後どうやって答えようか悩んでいる朱音の代わりに説明を始めてくれた。
「完ぺきってことじゃなくて化け物級にコントロールがうまいってとこだね。魔力は完全に隠せるものじゃないから、どれだけ卓越した魔力のコントロールができても絶対にその人の魔力はちょびっと漏れるんだ。ただ境界の中って魔力が多すぎて感知がしにくいんだけどそのせいでそのちょびっとした魔力すら感知できてないのが今の状況だね!」
「おぉ、ものすごくしっかりとした答えが返ってきた...ありがと天ちゃん」
「えっへん!」
あら、かわいい。ということは
「十中八九境界の獣ではなく悪魔だね。魔力をコントロールして隠すなんて無駄なこと...獣はしないから」
朱音がそう結論付けた。うへぇ...境界の悪魔かよ...あいつらバカみたいに強いんだよなぁ...おそらく悪魔といってもピンからキリがあるので弱いのだと何とかなる可能性があるけど師範が最後に戦っていた境界の悪魔クラスの奴が出てきたらかーなりまずい、というか勝つならピエロでぎりだ。あいつは完全に一対一戦闘向けの能力をしてるから多対一なら何とか勝ちを狙えるんだよなぁ
そんなことを考えていると天ちゃんが口を開いた。
「うーん、とりあえず前衛は優君と朱音として私は臨機応変に動く、涼ちゃんは後衛、で亘一さん?はどうしよっか?まだどんな魔法が使えるかもわかってないですよね?」
「あぁ、その通りだ。すまない現状僕が明らかに足手まといになっている。」
亘一さんが不甲斐なさそうにそう言った。
「あ、いえそういうつもりで言ったんじゃなくて...」
「いや、気にしなくていい。今回僕ができることは話を聞く限り後衛にいる涼さんの護衛くらいだろう、だから僕も後衛で頼む」
「そう...ですね。ごめんなさい...」
まぁそれが無難だろうな...魔法が使えるようになって強くなったとはいえ亘一さんは戦闘経験なんて全くと言っていいほど持っていないんだ。魔力が発現して師匠に訓練を付けてもらい戦闘勘を養うことができた俺とは状況が違いすぎる。というかそう考えると師匠の育成方法はかなり俺にあってたな。時間がない中で戦えるものを作り出すには基礎をすっ飛ばして実戦で学んだ方がかなり都合がいい
ピーーン
「っと、ごめんみんなクロからなんか届いた。」
びっくりした。一応俺とクロは魔力がつながっているのである程度の通信が可能なのだ。それが今反応した。「がう、がうがうがう!」という通信が届いたのだ。
え?意味が分かんねぇ!?って?えーとだなこれは...
「優君?クロはなんて言ってるの?」
翻訳するために少し考えこんでいると心配そうに朱音がそう声をかけてきた。
「ーーなんか変なものを見つけたらしい」
「「「変なもの??」」」
俺がそう言うと朱音、天ちゃん、涼さんがそろって首を傾げた。君たち息ぴったりだね?
「うん、繭?みたいなもの?だってさ」
「...繭?ってことは羽化する?」
朱音が腕を組みながらそう自身の推測を述べる。あー、きた朱音の直感が働いた。これはあれだな
「「「ーーーすぐに移動する!!」」」
朱音のその言葉を聞いた俺と天ちゃんと涼さんは全く同じタイミングでそう言ってクロの位置が分かる俺を先頭に移動を始めた。
あまりにも素早い行動に亘一さんが取り残されそうになったが亘一さんもすぐに動き始め...あ、魔力による身体能力強化ができてないから亘一さんの速度が遅い...
「先に行って!ある程度亘一君を鍛えてから合流するわね!」
その光景を見た涼さんが即その判断を下した。うん、それがいい。今は人数を分けても問題ない。人数が分かれたとしても一刻も早く現場につくことが大事だ。そんでもって朱音に最大火力で焼いてもらう!じゃないと100%その繭らしきものからなにか出てくるぞ!絶対に!
「え?ちょっ!?ーーー待ってよ!」
どうやら朱音も移動開始が遅れたようだけど...一瞬で追いついてきた...うちの彼女やべぇ...
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走ること3分、俺と朱音と天ちゃんはクロと合流し繭のそばに到着していた。あ、シロも合流した。
「あーこれはまずい」
繭を見た瞬間朱音がそう言葉を漏らす。くっそやっぱりか!朱音の直感は馬鹿みたいに当たるんだよな!某家庭教師漫画に出てくるボ〇ゴレの超直感みたいなもんである。
「朱音行ける!?」
天ちゃんが慌てたようにそういうと朱音はうなずきすぐさま詠唱を始める。
「火 南 朱 天之四霊の一柱たる炎帝 猛き焔を我に捧げろ!纏え!集え!!顕現しなさい!!終局 朱天ノ斧!!」
その詠唱が終わると朱音の身の丈ほどある大きな斧が現れる。というか熱い!?
「結界起動!」
俺が熱さに悶えていると天ちゃんがカードを投げ繭の周りに結界を作り繭を閉じ込めた。
「朱音!いつも通り斧を振るときだけ開けるよ!」
「任せた!」
「任された!!」
「集え!集え!集え!朱雀の焔よ一点に集え!!終焉 朱天ノ斧!!」
朱音が二段階目の詠唱を終わらせる。うわ、やっば...これが朱音の最大火力...斧の周りの空間が燃えている?いやその場にある魔力すら燃えている。これが...朱雀の本領、天を焦がし魔を燃やす剛斧
「獄」
朱音が斧の完成と同時に繭に向かって斧を振った瞬間天ちゃんが結界を開ける。そしてまた結界を閉じ...
「あっづ!?」
手が!?俺の手が燃えた!?結界越しなのに!?というか結界も一瞬で燃えたんですけど!?これほんとに結界意味あったの!?一秒も結界が持たなかったよ!?
「ーーありゃ、優君ちゃんとガードするか離れないと。朱音の『獄』はやばいんだから。みてよクロとシロを朱音が斧出したのを見た瞬間にめちゃくちゃ遠くまで逃げてるよ?」
天ちゃんがそう言って全身に何重にも結界を自身の周りに浮かび上がらせた状態で俺にそう声をかけてくる。ってほんとだ!?クロとシロが豆粒みたいな大きさに見えるくらい遠くにいる!?
っと、とりあえずこの燃えて炭化してまた燃えた俺の腕を治さないと...いやぁ...熱かった...
「えぇ...なんで優君が燃えてるの...」
俺と天ちゃんがそんなことを話していると朱音がやっべぇ斧を消してこちらに歩いてきた。
「朱音が悪い」
「それはごめん」
「お詫びにパンツみせ「家でね?」まじすか...?」
え?マジすか!?なんで!?あの朱音がセクハラに乗ってきた!?しかもいつもみたいに無理をして言ってる感じでもない!?あの朱音が俺のセクハラに顔を赤らめていないだと!?(たとえ彼女だとしてもセクハラはやめましょう)
「あ、朱音?ど、どうしたの!?いつもの朱音じゃないよ!?」
ほらみろ!天ちゃんも何事だ!?って顔で驚いてるぞ!いつもの鉄壁ガード朱音さんはどこ行ったんだよ!!付き合って一年もたつのにいまだに手すらつながせてくれなかったあの朱音さんはどこに行ったんだよ!!
「いや、そろそろ私も頑張んないとなぁって思ってさ...なんか泥棒猫もいることだし」
「そっち方面で頑張らなくてもいいんだよ!?俺はめちゃくちゃうれしいけどね!?」
「そうだよ朱音!そっち方面の誘惑は私がやるから!頑張らないでよ!」
「いや、それが問題だから私がこうしてるんだけど...というか、おいこら天ちゃんさらっと本音言ったな?」
「あ、ーーーてへぺろ?」
「ぎるてぃ」
あーーっと朱音が天ちゃんにとびかかってロメロスペシャルを仕掛け...ロメロスペシャル!?なんで!?
「...んっ...いたぃ...あかねぇ、ぎぶだよぉ...」
ーーーなんかエロいな...天ちゃんの今の格好もかなりすごい......天ちゃんが来ている魔法少女服のデザインも相まって天ちゃんのすばらしい美脚がこれでもかと披露されている。ふむ、写真撮りたい。じゃなくて!?
「繭はどうなったか確認しないと!?」
「あ、それは大丈夫、ちゃんと燃やせた手応えはあったーーーいや、え?なんで?境界が崩れ始めてない?」
朱音はそう言った後すぐさま天ちゃんを放り投げ周囲の警戒を始める。天ちゃんも華麗に着地し手元にカードを数枚出現させる。そうして三人と二匹で繭のあった場所を見つめるが何もない、というか燃えカスすらない、いったいどんな火力だよ...
「...繭は燃えてるね」
「うん、でも崩壊してないってことは...」
その時何が起きてもすぐさま対応できるようにするためにかなり気を回していた魔力感知に爆発的な魔力、それと見覚えがある魔力が引っ掛かった。この魔力は...
「ーーー涼さんの魔力!?朱音!天ちゃん!」
俺がそう言うと同時に天ちゃんが即指示を出し始める
「朱音!すぐに優君から魔力回復をしてもらって!シロ!クロ!私たちを乗せて全速力で移動お願い!」
「がう!!!」「ガウ!!!」「再生の炎!!」
弾けるように俺たちは動き始めた。くっそ、何がどうなってんだ!?朱音の直感ではあの燃やした繭がやばいってヒットしてたのに!朱音の直感が外れた?いや、そんなことは今までなかった。学校生活でも私生活でも朱音の直感は基本当たるんだ。俺がクロの背中で朱音を後ろから抱きしめながら回復させ、そうやって思考を回し考えていると天ちゃんの声が聞こえた。
「優君!すぐに戦闘に入れるように準備して!たぶんというか私の予想だけど繭はーー1個だけじゃなかったんだと思う!あの繭に近づいてギリギリなんとか感じ取れた魔力と今涼さんが戦っている敵の魔力がものすごく似てる!」
天ちゃんはかなり最悪な予想を俺に告げた。くっそ...ホントに最悪だよ!




